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神代 コウ

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看破と徒党の海賊

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 絶えず穏やかな流れを作り形を保つトゥーマーンの座る椅子。ジャウカーンの活躍を見せられた彼女も、ついに椅子から立ち上がると部下達に命令し、船を波の方へと向けさせる。

 無事キングの船団と合流したトゥーマーンの船団は、彼女等が作り出した水の架け橋から魔力を断ち切り、海面へとゆっくり落下して行く。バケツをひっくり返したような雨という表現が可愛らしく思えるほど、それこそ池の水が全て一辺に落下してくるような激しい水飛沫を跳ね上げる。

 だが、それでも蟒蛇の起こした大波はそれをももろともせず飲み込んで、変わらず海面にいる小さな人間達を一掃する為、全てを薙ぎ払ってくる。

 トゥーマーンはそれまで以上に神妙な面持ちで大波を見据えると、その細く白い腕を前方に伸ばし、指の調子を確かめるように妖艶に動かす。すると、彼女の指の動きに誘われるように、大波に飲み込まれた筈の彼女等の作った水の架け橋分の水が、海水とは別に水の中を動き回り、特殊な海流を作りながら流れて来る。

 そしてトゥーマーンの乗る船に大波が近づくと、彼女は勢いよくその腕を天に向けて振り上げた。彼女の魔力が込められているである水が織り交ぜられた大波の一部が、突然上空へ向けて登って行く。それはまるで、巨大な滝が逆さまになったかのような光景だった。

 重力を無視して上空に落下するような勢いで登って行く海水は、轟音を響かせながら暗雲の雲を突き抜けていき、白い水飛沫となって海域にゆっくりと霧のように降り注いだ。

 「これは・・・失われた魔力が戻って来る」

 「アイツがいりゃぁ無限に技が撃てるなぁッ!ハッハァー!」

 トゥーマーンの技によりしっとりと降り注ぐ水を全身に浴びるジャウカーン。彼女の口にした通り、蟒蛇の大波ごと雲の上まで吹き上げたその水飛沫は、傷を癒す治癒の効果や失われた魔力を再び湧き上がらせる再生の力を持っていた。

 「お・・・恩恵のお裾分けだ。エ・・・エイヴリー海賊団にも活躍してもらわねばならぬからな・・・」

 彼女の巻き上げた治癒の雨を浴びていたスユーフが、帯刀している刀に手をかけ目にも留まらぬ剣技で斬撃を大波の向こう側の空へ放つと、彼等の元に降り注いでいた雨を斬撃が導き、蟒蛇の背後へ回ろうと滑空するエイヴリー海賊団の船団の方へ向けて運んでいった。

 「せッ・・・船長、水飛沫が・・・」

 「何だ・・・?身体の傷が癒えていく。それに魔力まで・・・」

 数多の召喚でドラゴンを呼び出し戦っていたロイクや、未だ怪我の再生を図るリーズの元にも、トゥーマーンの治癒の雨がやって来る。スユーフの放った斬撃は、まるで鳥のように巧みに風に乗りながら雨を導き、蟒蛇やメルディアがぶつかり合う海域には降らぬよう器用に運んでいた。

 ツクヨと同じく、剣による攻撃手段だけしか披露していなかったスユーフだったが、やはり彼もそれだけの男ではなかったのだ。

 「ふん、余計な真似を・・・。これで存分に働けってかぁ?ガキ共が動かねぇってんなら、ダメージポイントは俺等がガッツリ頂くだけだ・・・」

 クラフトで多くの魔力を消費していたエイヴリーもまた、トゥーマーンの治癒の雨を受け回復していく。半ば強制的に受けた恩恵で、疲労すらも取り除かれた彼等は、万全の態勢を整え滑空し、蟒蛇の背後を目指す。

 「ボ・・・ボス、トゥーマーンの水飛沫をエイヴリー海賊団の元へ送りました」

 「いちいち指示しなくても察してくれるお前のそういうところ、俺ちゃん好きよ~ん!ご苦労さ~ん。これで向こうの士気は上がるってもんでしょ。初動のポイントは美味しくねぇからなぁ~。まぁ、最後に笑うのは俺ちゃんなのよ~」

 キングはレイド戦序盤のポイントはエイヴリー海賊団にくれてやるつもりのようだった。ヴェインやシャーロット等他の海賊達も徐々に合流しつつある中、彼は蟒蛇の動きや攻撃を観察し、逆転の機会を虎視眈々と狙っている。

 合流したジャウカーンとトゥーマーンにより、キングの船団は蟒蛇の大波による攻撃を難なく乗り越えて見せた。これで現状、レイド戦の行われている海域にいる全員が蟒蛇による大波をやり過ごすことに成功する。

 彼等を避けるようにして後方へ消えていく大波。しかし、その向こう側から大きな砲撃音が鳴る。船団の後列で守りを固めていたダラーヒムの部隊が音の鳴っている方角を双眼鏡で覗くと、そこには無数の海賊船が徒党を組んでレイド戦へ攻め込んで来ていた。
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