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壁の向こう側
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穏やかな空に香る潮風。船旅をするにはやや大きく揺れる波の中、そこには多くの船が集まり、前方の海域に見える怪しげな雲が広がる海域を目指していた。その海域に近づくにつれ、波は激しさを増していく。
徐々に船同士の間隔を広げていく船団。次第に海面が荒々しい波の影響で泡立ち、白く染まりだす。その先には何者か分からないが、巨大な二体の生物が掴み合いの戦いを繰り広げており、その手前では大きな波がこちらへ向けて迫っていた。
「前方より巨大な波が押し寄せて来ます!」
キング達によってある程度は緩和されたものの、それでも依然脅威である高さに変わりはない。パーティーに遅れた者達に対する挨拶にして、少し厳し目の仕打ちであった。
辺りが暗くなり、雷鳴が激しく鳴り響く中、とても船だけの力で乗り越え等れるような波ではない。ここからは船ではなく乗船している者達の力量が問われるのだ。この程度のもので振り落とされるようでは、例え生き残りレイドに参加できたとしても、とても生き残れないことを示唆している。
「おい!大砲の準備だ!あの波の勢いを少しでも削ぐんだ!」
「魔法職に就いている者は迎撃を始めろ!」
それぞれの船で大波をどうにかしようと、慌ただしく動き始める。そして大波の内側で大波を乗り越えたダラーヒムの船団が、彼等の砲撃音を耳にする。だがキング達のように大波を越えた海賊達にとって、彼等の安否など知ったことではない。
寧ろ彼等もここで、海賊の有象無象共を間引いてしまおうと考えているだろう。レイド戦が終わった後は、ほとんど島などなくゴールである大陸を目指すのみとなる。船の性能や、船員達の実力で劣っているなど微塵も思ってはいないが、今回のレースが初参加となる者も当然その中に混じっている。
この程度の大波すら乗り越えられないようでは、この蟒蛇の攻撃に耐えることなど不可能。邪魔になるくらいなら、そのまま海の藻屑になってもらった方が、彼等にとっても都合が良かった。
そして大波を乗り越え、レイドというパーティー会場に招待された者達に関しては、新しいデータとしてクラスや戦い方など調べておこうというのだ。今後敵になるとしても配下になるとしても、実力者のことを知っておくに越したことはないからだ。
しかし、そんな彼等の思いを裏切るように、多くの者達が大波へ挑み乗り越えようとしていた。その間引かれようとしている海賊達の中には、シン達と行動を共にしているデイヴィスの親友、ロバーツも含まれていたのだ。
「ロバーツ!俺達もそろそろ準備を・・・」
「あぁ、分かってる。・・・間に合って良かったぜ。漸くアイツと再開出来るんだからな。全く・・・一体どこをほっつき歩いていたんだか・・・」
懐かしむロバーツの顔を見て、心配とはまた違った表情で様子を伺う一人の船員が彼に声をかける。
「・・・ロバーツ・・・。言っておくが、お前はもう船長なんだぜ?今更いなくなった奴に、アンタの築き上げた海賊団を返上しようなんて馬鹿な気は起こさねぇでくれよ?」
「それぐらい弁えてるし、理解してるさ。アイツが海賊に戻りてぇって言出だしても、この船団は俺達のモンだ。また新入りとしてこき使ってやるだけだ」
ロバーツはデイヴィスの船団を引き継ぎ新たな船長となったが、デイヴィス脱退の後の船団は暫くの間、誰が後継者となるかで派閥が生まれていた。結果的にデイヴィスの信頼を最も集めていたロバーツが船員達によって選ばれたが、候補者の何人かは自分を慕う部下を連れ、それぞれの海賊として旅立っていった。
今まさに、ロバーツへ声をかけていた船員。彼はアンスティス海賊団の船員だが、デイヴィスと待ち合わせしていた島で襲撃に遭い、彼の部隊は流された後にロバーツの船団と合流していたのだった。
その男の名を“ウォルター・ケネディ“と言う。ウォルターはロバーツとの交流もあり、アンスティスとロバーツの仲を取り持つ役目をしながら、船長であるアンスティスの信頼を得ている人物。
ロバーツに助けられた後、彼は予定を変更しロバーツと共にデイヴィス、並びにアンスティスの合流を待ち、キング暗殺計画に加わろうとしていた。ロバーツに経緯を話し、ウォルターの提案で合意してくれた。
アンスティス合流までは、ロバーツの船員として行動を共にすることとなっている。早速手を貸してもらおうと、ロバーツはウォルターに大波の迎撃を任せた。
「さぁウォルター、お前の力であの波をなんとかしてくれないか?」
「・・・はぁ・・・。この為にやって来たのだと言わんばかりの、人使いの荒さだな・・・」
「拾ってやったんだ、ちょっとは協力してくれてもいいんじゃないか?それに、久々にお前の力を見ておきたいしな!鈍ってないだろうなぁ?」
「信用を得る為にも、良い機会か・・・。暫く戦線を離れていたとは言え、この程度のことなど造作もない」
そう言うとウォルターは、手から無数の砲弾のような物を作り出すと、空中にそれを綺麗に並べ宙に浮かせる。そして片腕を上げた彼が、その腕を大波の方角へ向けて振り下ろすと、まるで大砲の一斉射撃のように砲撃が開始された。
徐々に船同士の間隔を広げていく船団。次第に海面が荒々しい波の影響で泡立ち、白く染まりだす。その先には何者か分からないが、巨大な二体の生物が掴み合いの戦いを繰り広げており、その手前では大きな波がこちらへ向けて迫っていた。
「前方より巨大な波が押し寄せて来ます!」
キング達によってある程度は緩和されたものの、それでも依然脅威である高さに変わりはない。パーティーに遅れた者達に対する挨拶にして、少し厳し目の仕打ちであった。
辺りが暗くなり、雷鳴が激しく鳴り響く中、とても船だけの力で乗り越え等れるような波ではない。ここからは船ではなく乗船している者達の力量が問われるのだ。この程度のもので振り落とされるようでは、例え生き残りレイドに参加できたとしても、とても生き残れないことを示唆している。
「おい!大砲の準備だ!あの波の勢いを少しでも削ぐんだ!」
「魔法職に就いている者は迎撃を始めろ!」
それぞれの船で大波をどうにかしようと、慌ただしく動き始める。そして大波の内側で大波を乗り越えたダラーヒムの船団が、彼等の砲撃音を耳にする。だがキング達のように大波を越えた海賊達にとって、彼等の安否など知ったことではない。
寧ろ彼等もここで、海賊の有象無象共を間引いてしまおうと考えているだろう。レイド戦が終わった後は、ほとんど島などなくゴールである大陸を目指すのみとなる。船の性能や、船員達の実力で劣っているなど微塵も思ってはいないが、今回のレースが初参加となる者も当然その中に混じっている。
この程度の大波すら乗り越えられないようでは、この蟒蛇の攻撃に耐えることなど不可能。邪魔になるくらいなら、そのまま海の藻屑になってもらった方が、彼等にとっても都合が良かった。
そして大波を乗り越え、レイドというパーティー会場に招待された者達に関しては、新しいデータとしてクラスや戦い方など調べておこうというのだ。今後敵になるとしても配下になるとしても、実力者のことを知っておくに越したことはないからだ。
しかし、そんな彼等の思いを裏切るように、多くの者達が大波へ挑み乗り越えようとしていた。その間引かれようとしている海賊達の中には、シン達と行動を共にしているデイヴィスの親友、ロバーツも含まれていたのだ。
「ロバーツ!俺達もそろそろ準備を・・・」
「あぁ、分かってる。・・・間に合って良かったぜ。漸くアイツと再開出来るんだからな。全く・・・一体どこをほっつき歩いていたんだか・・・」
懐かしむロバーツの顔を見て、心配とはまた違った表情で様子を伺う一人の船員が彼に声をかける。
「・・・ロバーツ・・・。言っておくが、お前はもう船長なんだぜ?今更いなくなった奴に、アンタの築き上げた海賊団を返上しようなんて馬鹿な気は起こさねぇでくれよ?」
「それぐらい弁えてるし、理解してるさ。アイツが海賊に戻りてぇって言出だしても、この船団は俺達のモンだ。また新入りとしてこき使ってやるだけだ」
ロバーツはデイヴィスの船団を引き継ぎ新たな船長となったが、デイヴィス脱退の後の船団は暫くの間、誰が後継者となるかで派閥が生まれていた。結果的にデイヴィスの信頼を最も集めていたロバーツが船員達によって選ばれたが、候補者の何人かは自分を慕う部下を連れ、それぞれの海賊として旅立っていった。
今まさに、ロバーツへ声をかけていた船員。彼はアンスティス海賊団の船員だが、デイヴィスと待ち合わせしていた島で襲撃に遭い、彼の部隊は流された後にロバーツの船団と合流していたのだった。
その男の名を“ウォルター・ケネディ“と言う。ウォルターはロバーツとの交流もあり、アンスティスとロバーツの仲を取り持つ役目をしながら、船長であるアンスティスの信頼を得ている人物。
ロバーツに助けられた後、彼は予定を変更しロバーツと共にデイヴィス、並びにアンスティスの合流を待ち、キング暗殺計画に加わろうとしていた。ロバーツに経緯を話し、ウォルターの提案で合意してくれた。
アンスティス合流までは、ロバーツの船員として行動を共にすることとなっている。早速手を貸してもらおうと、ロバーツはウォルターに大波の迎撃を任せた。
「さぁウォルター、お前の力であの波をなんとかしてくれないか?」
「・・・はぁ・・・。この為にやって来たのだと言わんばかりの、人使いの荒さだな・・・」
「拾ってやったんだ、ちょっとは協力してくれてもいいんじゃないか?それに、久々にお前の力を見ておきたいしな!鈍ってないだろうなぁ?」
「信用を得る為にも、良い機会か・・・。暫く戦線を離れていたとは言え、この程度のことなど造作もない」
そう言うとウォルターは、手から無数の砲弾のような物を作り出すと、空中にそれを綺麗に並べ宙に浮かせる。そして片腕を上げた彼が、その腕を大波の方角へ向けて振り下ろすと、まるで大砲の一斉射撃のように砲撃が開始された。
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