World of Fantasia

神代 コウ

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再び、現実の世界へ

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 大通りに出たところで、それぞれの目的地が真逆となったシンとマクシムは、そこで別れることとなった。ヘラルトのことは残念だったが、まだ死が確定した訳ではない。

 だが、マクシムの言う通り海へ出たのは彼の意思であり、彼も危険なことは承知の上であっただろう。

 二人はまた何処かで会おうと、握手を交わした。背中合わせに道を違えた二人は、人混みの中へと姿を消し仲間の元へと帰っていった。確認したいことを全て終えたシンは、ミア達の待つ会場へと戻る。

 どういう訳か酒瓶に囲まれていたミアが、シンが席を立つ前と何ら変わらぬ様子で酒を飲んでおり、全く酒に手をつけていなかったツクヨが机に突っ伏し、酔い潰れていた。

 「・・・これ、ミアが飲んだの・・・?」

 衝撃のあまり唖然としているのか呆れているのか、椅子の傍で立ち尽くすシンの方を振り返り、グラスに注がれた少ない酒を一気に飲み干す。

 「お?戻ったのかシン!君も飲んだ方がいいぞ。ここの酒はあっちより美味い!どっかの酒場みたいに、馬鹿な野郎もいないしな!」

 グラン・ヴァーグで情報を集めていた時の、酒場のことを言っているのだろう。ミアがそこで海賊の男と揉め事を起こし、そこで初めてキングという男に出会ったのだ。

 彼との最初の出会いは衝撃的だった。何せキングは聖都での出来事を知っており、尚且つシン達がその一件に絡んでいるのではと疑って掛かったのだ。それ以上に、キングがシュトラールと同じ雰囲気を醸し出し、強者のオーラを纏っていたことに驚いた。

 「そろそろ宿舎に戻った方がいいんじゃないか?」

 「話し聞いてたぁ?そんな素面で寝たら、気持ちよく寝られないでしょうが」

 「ツバキはどこへ行ったんだ?見当たらないけど・・・」

 「アイツはまだ取材を受けてるよ。ガキによってたかってよぉ。早く寝かせるならアタシじゃなくて、あっちだろ」

 そう言ってミアは顎でツバキのいる人集りの方を指す。彼の姿は確認できず、カメラのフラッシュのようなものが、人集りの奥でビカビカと光っているのだけが分かる。

 彼らが到着するより前に、会場に到着していたシンは先に少量の酒を嗜んでおり、酔いどころを失ってしまっていた。今更酒を飲む気分にもなれず、シンはレースの途中から使用できなくなっていた、現実世界の方にいる白獅より託された義眼のアイテム、テュルプ・オーブのことを報告しに行こうとした。

 何故か肝心なところで、一切の通信が途絶えてしまったテュルプ・オーブ。こちらの世界でのイベントが、丁度一区切りついたので次の目的地も決まっていない今、現実世界に戻り報告に行くのがいいだろうと思った。

 「レースの途中から、白獅からもらったアイテムが機能しなくなったんだ。これからちょっと戻って、報告してきてもいいかな・・・?」

 するとミアは、グラスを握る手を止め飲むのを中断し、シンの方へ振り向く。胡散臭そうな顔で口を開いた彼女は、どうにもシンの言う“白獅“という人物を信用いていない様子だった。

 ミアからすれば、その人物の存在はシンの話に出てくるだけで声も顔も、存在すら確認していない未知なるもの。話は合わせているものの、実際のところ現実世界にあるという“アサシンギルド“の存在も、シンがそう思いたいだけで幻覚や思い込みのようなものに苛まれているだけではと、疑念を感じざるを得なかった。

 これまでその疑念を口をにすることはなかったが、死闘を終え酒が入り少しだけ気持ちが緩んだのか、初めて彼の前でその疑念を語り始めた。

 「・・・大体なぁ、その“白獅“と言う者は信用できるのか?単に君を利用しているだけじゃないのか?そいつに貰ったアイテムってのも、私達を監視するものだったりするんじゃないのか?」

 彼女に言われて初めてそんな考えが頭を過った。シンは現実世界に戻った際、白獅の仲間と思われる者に命を救われている。その後、実物としか思えない壁をすり抜け、彼らのアジトだという“アサシンギルド“を訪れることとなった。

 今にして思えば、そんなこと信用できる筈がない。彼らが遭遇している現状も、到底本当のことにようには思えないが、ミアやツクヨからすれば、シンの話の中にだけ存在するそれらを鵜呑みにできるだけの判断材料がない。

 妙な力を手にして戻ってきたシンは、何処にいる誰かも分からぬ者、そもそも存在しているのかさえ怪しい者と通信をし始める始末。何かよからぬことに利用されているのか、或いは精神を汚染されているのを疑っても不思議ではないくらいだ。

 「・・・考えたこともなかった。でも、彼らは俺を助けてくれたんだ。それに俺達の他に、WoFの世界と通じていたプレイヤーの存在を教えてくれたし、この目でサラのキャラデータを持つ“本体“を見たんだ」

 現実とは思えぬ現実の世界で彼らが見せてくれたもの。それはシン達と同様に、WoFへ転移できるようになってしまった“異変“に遭遇した人物。その成れの果てだった。

 サラは、シン達が初めて遭遇したWoFの世界で起きている“異変“に囚われていた人物。アンデッドの身体に蝕まれ、家族同然だった者を救うため幾多の冒険者を、その運命の輪に巻き込んでいた悲劇の少女。

 しかし、シンがアサシンギルド内部で白獅によって見せられた彼女の本体は成人のものであり、本物の身体という訳ではなく、生前の彼女の肉体的データだったのだ。

 彼らはシン達が知っている以上に、“異変“の事を知っている。だが、未だにその本質には迫れていないという様子だった。彼らも別々の世界から、シン達が“現実世界“と呼ぶ世界に転移してきたのだそうだ。

 謂わば彼らもWoFへ転移できるようになったシン達と同じ、“異変“に巻き込まれた被害者なのだ。しかし妙なことに、彼らは元いた世界へは戻れないのだそうだ。

 その違いについても、未だに分かっていない。だが、互いに何も分からないからこそ、双方にとってお互い協力し合うことで、“異変“の真相に迫れるのではないだろうか。

 「それだって本物かどうかなんて、私達には確認のしようがないないだろ?協力し合わなきゃならないのは分かるけど、あまりこちらの手の内ばかり見せびらかすのは危険だ」

 ミアはシンを心配してくれているのだろう。勿論、彼らの身を守るために情報開示は出来るだけ必要最低限に止める必要がある。正論やそれらしい事を言って本心を隠そうとするのが、ミアの癖らしい。

 「・・・もしかして、心配してくれてる?」

 「馬鹿・・・。早く行ってこい。じゃないと置いていくからな!」

 徐々に彼女の扱い方が分かってきたような気がしたシン。微笑ましいやり取りの後、彼女は再び今のやりとりを忘れるように酒と料理を楽しみ始める。ミアの優しさを感じつつも、シンは現実世界へ戻るためログアウト操作を始める。
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