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探し物
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食事を終えた獣は袖で口を拭うと、目的を果たしたのかその場を立ち去ろうと、まだ壁すら作られていない階層の縁にまでゆっくりとした足取りで向かう。
アスファルトを照らして走る車と、夜中にも関わらず至る所から漏れる人工物の光に満ちた都会の街で、その男の姿は街行く人々のそれとは異質の雰囲気を醸し出していた。
何よりの理由は、その見た目にあると言っていいだろう。近代的な都心部の街並みにそぐわないボロボロの黒い布をマントのように羽織り、裂けた口を覆い隠すように顔の下部を隠している。
こんな見た目で街を歩けば、すぐに注目を集めてしまいそうなものだ。高さにして六階から七階くらいの高さがあろう場所から、まるでプールにでも入るかのようにすっと足から飛び降りる男。
落下の速度は凡そ通常の人間のものと何ら変わらない。黒い布が落下の速度と風に煽られ、頭の上の方にまで靡いている。
そして地面に足が触れると、一体どれ程の高さから飛び降りたのかを忘れてしまうほど、易々と着地してみせる。しかし、例えこの男が如何に強靭な肉体の持ち主であろうと、地面や周りの物はその着地の影響を受ける筈。
それなのに、男の着地はまるでちょっとした段差から飛び降りたかのような反応しか示さなかったのだ。大した音も立てず、土煙すら上がらず、そして人の多い都心部でありながら、その姿を誰一人目撃することはなかった。
男はそのまま大通りの方へと歩いていく。道には仕事帰りだろうか、スーツ姿の人々や、あまり目立たぬようにお洒落を楽しむ人々の姿が見える。
しかし、男の場違いな格好を見る者は何処にもいない。関わり合いにならぬよう、見ないようにしているのではない。まるで男を認知していないかのようにすれ違っていく
暫く照明に照らされる夜の街を歩いていると、男は何かの視線を察知する。それは車の行き交う大通りを挟んだ反対側の歩道。男の異質な姿にチラリと視線を向けた者がいたのだ。
男は狙いを定めたかのように、歩みをその視線を送った者の方へと向ける。奇妙な格好をした男が自分の方へ向かって来るのを察したのか、つい視線を送ってしまった者は関係ない風を装いたいのか、スマートフォンを取り出し男の方を見ないように足取りを速めた。
だが男は、車が何台も行き交う大通りを突っ切るように、周りを確認することもなくその者の方へと向かってくる。
思わず視線を送ってしまった者には、異様な光景に見えて仕方がない。車も車で、道路を歩いている男が見えないのか速度を落とすことなく直進していく。
そして、このままでは男が車に轢かれるかという決定的瞬間、反対側にいた視線を送った者は再び男を認知するように、視線を送ってしまったのだ。
明らかに目が合う二人。男はその者が自分を見ていることを確認すると、その裂けた口を僅かに開き、不気味な笑みを浮かべる。
頭をよぎった奇妙なものを見た時のような不気味な感覚は恐怖へと変わり、自身の元へ向かって来る男から逃げるように、その者を走らせた。
獲物が逃げ出したのを確認した男は、それを追うように走り出す。だが、男のいく手を阻むように直進して来た車が男にぶつかった。本来ならそこで大事故となっているところなのだが、車は男に接触することなく道路を駆け抜けていった。
加速した男は、逃げる獲物に瞬く間に追いつくと首を鷲掴みに、建物の壁に押し当てた。街中には多くの人々が行き交っている。そんな光景が人目につくところで行われれば、嫌でも目立つだろう。
しかし、車が男を無視して直進したように街中の人々が、まるどその光景が見えていないかのように、何事もなく時が流れているのだ。
「ぁっ・・・がっ・・・。だッ誰か・・・!」
男は片手でその者の首を締め上げながら、もう片方の袖の中から一人目の男を殺した時と同様に機械蜘蛛を取り出す。足元に落ちた蜘蛛は周囲を見渡し、男が掴んでいる人物の落としたスマートフォンを探す。
遠くには飛んでおらず、すぐに見つけると蜘蛛は再びコードそのスマートフォンに差し、データを抜き取っていた。
男はその手で締め上げている人物の顔を睨みつける。そしてまた、独り言のようにぶつぶつと口を開く。
「・・・テメェも、何も知らなそうだな。ちったぁ抵抗してみろよ・・・。これじゃぁいつになっても見つけられねぇ・・・」
蜘蛛がデータの解析を終えると、ホログラムでとある人物像を投影する。それを確認した男は、一度だけ大きくため息を吐くと、締め上げていた者の首をへし折り殺害した。
道端に崩れ落ちたその者の身体は全身ノイズがかり、次第に激しくなるとそのまま電源を落としたテレビのように姿を消してしまった。
「そいつもいらねぇから処分しとけ」
男の言葉に従い、機械蜘蛛はデータを抜き取った後のスマートフォンをコードで繋ぎ、引きずりながらその場を後にする男の後を追った。
「・・・おいおい、持って帰る気かよ」
機械蜘蛛はどこか嬉しそうに足をバタバタさせている。
彼らの姿は誰にも見えていない。だが一部の者達には、その姿が視認出来るようだ。男はその者達を片っ端から襲っているようだった。何かを見つけるため、個人情報が詰まっている端末を利用し、データを抜き取る。
そして用済みになった者達は、足がつかぬよう始末する。その死体さえ何処かへと消しながら。
男がいた最初の建設現場。大きな物音を聞きつけた何者かが通報し、警察が到着する。だがそこには誰も何もない。あったのは、輪切りにされた鉄パイプと、建物の床に当たる部分に残る鋭利な傷跡だけだったのだ。
アスファルトを照らして走る車と、夜中にも関わらず至る所から漏れる人工物の光に満ちた都会の街で、その男の姿は街行く人々のそれとは異質の雰囲気を醸し出していた。
何よりの理由は、その見た目にあると言っていいだろう。近代的な都心部の街並みにそぐわないボロボロの黒い布をマントのように羽織り、裂けた口を覆い隠すように顔の下部を隠している。
こんな見た目で街を歩けば、すぐに注目を集めてしまいそうなものだ。高さにして六階から七階くらいの高さがあろう場所から、まるでプールにでも入るかのようにすっと足から飛び降りる男。
落下の速度は凡そ通常の人間のものと何ら変わらない。黒い布が落下の速度と風に煽られ、頭の上の方にまで靡いている。
そして地面に足が触れると、一体どれ程の高さから飛び降りたのかを忘れてしまうほど、易々と着地してみせる。しかし、例えこの男が如何に強靭な肉体の持ち主であろうと、地面や周りの物はその着地の影響を受ける筈。
それなのに、男の着地はまるでちょっとした段差から飛び降りたかのような反応しか示さなかったのだ。大した音も立てず、土煙すら上がらず、そして人の多い都心部でありながら、その姿を誰一人目撃することはなかった。
男はそのまま大通りの方へと歩いていく。道には仕事帰りだろうか、スーツ姿の人々や、あまり目立たぬようにお洒落を楽しむ人々の姿が見える。
しかし、男の場違いな格好を見る者は何処にもいない。関わり合いにならぬよう、見ないようにしているのではない。まるで男を認知していないかのようにすれ違っていく
暫く照明に照らされる夜の街を歩いていると、男は何かの視線を察知する。それは車の行き交う大通りを挟んだ反対側の歩道。男の異質な姿にチラリと視線を向けた者がいたのだ。
男は狙いを定めたかのように、歩みをその視線を送った者の方へと向ける。奇妙な格好をした男が自分の方へ向かって来るのを察したのか、つい視線を送ってしまった者は関係ない風を装いたいのか、スマートフォンを取り出し男の方を見ないように足取りを速めた。
だが男は、車が何台も行き交う大通りを突っ切るように、周りを確認することもなくその者の方へと向かってくる。
思わず視線を送ってしまった者には、異様な光景に見えて仕方がない。車も車で、道路を歩いている男が見えないのか速度を落とすことなく直進していく。
そして、このままでは男が車に轢かれるかという決定的瞬間、反対側にいた視線を送った者は再び男を認知するように、視線を送ってしまったのだ。
明らかに目が合う二人。男はその者が自分を見ていることを確認すると、その裂けた口を僅かに開き、不気味な笑みを浮かべる。
頭をよぎった奇妙なものを見た時のような不気味な感覚は恐怖へと変わり、自身の元へ向かって来る男から逃げるように、その者を走らせた。
獲物が逃げ出したのを確認した男は、それを追うように走り出す。だが、男のいく手を阻むように直進して来た車が男にぶつかった。本来ならそこで大事故となっているところなのだが、車は男に接触することなく道路を駆け抜けていった。
加速した男は、逃げる獲物に瞬く間に追いつくと首を鷲掴みに、建物の壁に押し当てた。街中には多くの人々が行き交っている。そんな光景が人目につくところで行われれば、嫌でも目立つだろう。
しかし、車が男を無視して直進したように街中の人々が、まるどその光景が見えていないかのように、何事もなく時が流れているのだ。
「ぁっ・・・がっ・・・。だッ誰か・・・!」
男は片手でその者の首を締め上げながら、もう片方の袖の中から一人目の男を殺した時と同様に機械蜘蛛を取り出す。足元に落ちた蜘蛛は周囲を見渡し、男が掴んでいる人物の落としたスマートフォンを探す。
遠くには飛んでおらず、すぐに見つけると蜘蛛は再びコードそのスマートフォンに差し、データを抜き取っていた。
男はその手で締め上げている人物の顔を睨みつける。そしてまた、独り言のようにぶつぶつと口を開く。
「・・・テメェも、何も知らなそうだな。ちったぁ抵抗してみろよ・・・。これじゃぁいつになっても見つけられねぇ・・・」
蜘蛛がデータの解析を終えると、ホログラムでとある人物像を投影する。それを確認した男は、一度だけ大きくため息を吐くと、締め上げていた者の首をへし折り殺害した。
道端に崩れ落ちたその者の身体は全身ノイズがかり、次第に激しくなるとそのまま電源を落としたテレビのように姿を消してしまった。
「そいつもいらねぇから処分しとけ」
男の言葉に従い、機械蜘蛛はデータを抜き取った後のスマートフォンをコードで繋ぎ、引きずりながらその場を後にする男の後を追った。
「・・・おいおい、持って帰る気かよ」
機械蜘蛛はどこか嬉しそうに足をバタバタさせている。
彼らの姿は誰にも見えていない。だが一部の者達には、その姿が視認出来るようだ。男はその者達を片っ端から襲っているようだった。何かを見つけるため、個人情報が詰まっている端末を利用し、データを抜き取る。
そして用済みになった者達は、足がつかぬよう始末する。その死体さえ何処かへと消しながら。
男がいた最初の建設現場。大きな物音を聞きつけた何者かが通報し、警察が到着する。だがそこには誰も何もない。あったのは、輪切りにされた鉄パイプと、建物の床に当たる部分に残る鋭利な傷跡だけだったのだ。
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