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事件と目的
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シンがレースを終え、白獅から貰ったアイテムの故障を伝える為、WoFの世界をログアウトするよりも前、現実世界ではある動きがあった。
それはシンとも関わり合いがある話であり、今後彼を巻き込む大きな出来事の序章に過ぎなかった。
二人目の犠牲者が出た頃、現実世界にあるアサシンギルドは何者かによるプレイヤー殺しが起きているという情報を掴む。ここで言うプレイヤーとは、シン達のようにWoFをプレイしている人達であり、必ずしもあちら側の世界へ転移出来る者達ばかりという訳でもない。
だが、妙なことに死体が残るケースと、死体も見つからず突然行方が途切れるというケースで事件が分かれているのだ。どちらも警察という組織が調査をしているが、一向に犯人の足取りは掴めず手掛かりも見つけられずにいた。
「白獅はどう思う?弱い奴らがクソみてぇな雑魚に狩られてるだけか、それとも別の何かに殺されてるのか・・・」
アサシンギルドのアジト内で、姿を消したプレイヤーと殺害されたプレイヤーのデータを参照し、モニターの前で思考を巡らせている白獅。そこへ同じくアサシンギルドのメンバーだろうか、腕を組んで壁にもたれかかる粗暴な男が、話題になっている事件について彼に尋ねる。
男の言う雑魚とは、シンが異変に巻き込まれた時に現れたWoFのモンスター達のことだ。シンもまた、街中で人が襲われている現場を目撃し目をつけられる結果となった。
彼の場合、ミアによって身を守られたが、何も知らなければ現実世界に姿を現したモンスターに、生身の状態で敵うはずなどない。
シンもそうだったが、異変に巻き込まれたWoFプレイヤーは、自身のキャラクターの力を使えるなど知るよりもないのだから。それこそ誰かに教えてもらわなければ、武器を手にすることすら出来ない。
白獅らアサシンギルドのメンバー達は、そういったプレイヤーの保護と協力を目的として探している。組織としての戦闘力増加と、彼らが転移することの出来ない、WoFの世界の調査を依頼する構成員としてだ。
勿論、シンのような特殊なケースを除き、ほとんどの者達が断る、或いは保護だけを目的とし、戦闘には参加しない調査員として協力することが多数だった。
それも当然の話だろう。誰も現実のものとは思えぬおかしな出来事のせいで、命を危険にさらしたくはない。痛い思いもしたくないというのが本音だろう。
ある程度、身を守れる手段を教えてもらい、弱いとされる街に現れたモンスターの始末くらいはするものの、それ以上の役には立たなかった。
粗暴な男の問いに白獅は、少し悩んだ末に現状の分かり得た情報と予想から、自らの考えを述べた。
「死体が消えている場合もあるんだ。そこらのモンスターに、そんなことをする知能があるようには思えない。それに消えているのは身体だけじゃないようだ・・・。どうやらデータも消されているらしい」
「あぁ?どういう事だ」
「死体があれば俺達の方でもデータを参照して、何か手掛かりを掴むことも可能なんだが、どうやら犯人はそれを理解してやってるように思える」
「つまり、俺達みたいな奴らがいるってぇのを知ってるってことか?」
「さぁ・・・。そこまでは分からないがな。ただ、今まで以上に慎重になった方がいいのは確かだ。もしかしたら、我々を探している奴もいるかもしれない・・・」
「はッ・・・。向かって来るってぇんなら好都合じゃねぇか」
そう言うと粗暴な男は部屋を後にしようとした。この男の性格から、こちらを付け狙う者がいるのなら、それを逆手に取り誘き出そうとでも考えたのだろう。当然、それも有効な手段ではあるが、同時に大きなリスクも伴う。
「おい!目立つようなことはするなよ?こちらの存在が知れれば、襲撃されないとも限らないんだからな」
粗暴な男を引き止めるように、言葉を投げかける白獅。それを聞いた彼は大きくため息をつき、白獅の目の前まで歩いてくると、苛立ちの籠った鋭い眼光で睨みつける。
「俺に指図すんじゃねぇよ。誰もテメェの手下になった訳じゃねぇんだ。目的が同じだから協力してる。それ以上でもそれ以下でもねぇ。俺は俺のやり方でやらせてもらうぜ」
暫く睨みつけた後、男は振り返ることなく部屋を後にした。白獅は大きなため息をつき、モニター前の椅子へ倒れるようにもたれ掛かる。
白獅との会話を終えた粗暴な男が、自動ドアを抜け通路へと出てくる。するとそこに、同じくアサシンギルドのメンバーであり、シンをアジトに連れて来た、最良化されたパワードスーツを身に纏う女性が立っていた。
「警告。アジトを危険に晒す行為は認められない」
すれ違った男は、背中越しにその女へ問いかける。
「だったら、何だってんだ・・・」
「貴方の始末も検討しなければならない。同盟者同時の争いはデメリットでしかない。大人しく好機を待つことを提案する」
しかし粗暴な男は、彼女の言葉を聞いて止めていた足を再び前へと動かし始めてしまう。彼女の言葉は最もだった。まるで機械に諭されるかのように、正論を叩きつけられる。
「勝手にやってろ。・・・俺達も、いつまでもここに留まってる訳にはいかねぇんだよ・・・」
少しだけ声を和らげた粗暴な男は、そのまま通路を抜けアジトを出て行ってしまった。
今、巷で騒ぎになっているWoFプレイヤー襲撃事件。アサシンギルドや街に現れるモンスターの他に、また別の存在がシン達の暮らす現実の世界へ侵食してきている。
敵か味方か。それぞれはそれぞれの存在を意識し、相手の情報を掴もう動き出す。
それはシンとも関わり合いがある話であり、今後彼を巻き込む大きな出来事の序章に過ぎなかった。
二人目の犠牲者が出た頃、現実世界にあるアサシンギルドは何者かによるプレイヤー殺しが起きているという情報を掴む。ここで言うプレイヤーとは、シン達のようにWoFをプレイしている人達であり、必ずしもあちら側の世界へ転移出来る者達ばかりという訳でもない。
だが、妙なことに死体が残るケースと、死体も見つからず突然行方が途切れるというケースで事件が分かれているのだ。どちらも警察という組織が調査をしているが、一向に犯人の足取りは掴めず手掛かりも見つけられずにいた。
「白獅はどう思う?弱い奴らがクソみてぇな雑魚に狩られてるだけか、それとも別の何かに殺されてるのか・・・」
アサシンギルドのアジト内で、姿を消したプレイヤーと殺害されたプレイヤーのデータを参照し、モニターの前で思考を巡らせている白獅。そこへ同じくアサシンギルドのメンバーだろうか、腕を組んで壁にもたれかかる粗暴な男が、話題になっている事件について彼に尋ねる。
男の言う雑魚とは、シンが異変に巻き込まれた時に現れたWoFのモンスター達のことだ。シンもまた、街中で人が襲われている現場を目撃し目をつけられる結果となった。
彼の場合、ミアによって身を守られたが、何も知らなければ現実世界に姿を現したモンスターに、生身の状態で敵うはずなどない。
シンもそうだったが、異変に巻き込まれたWoFプレイヤーは、自身のキャラクターの力を使えるなど知るよりもないのだから。それこそ誰かに教えてもらわなければ、武器を手にすることすら出来ない。
白獅らアサシンギルドのメンバー達は、そういったプレイヤーの保護と協力を目的として探している。組織としての戦闘力増加と、彼らが転移することの出来ない、WoFの世界の調査を依頼する構成員としてだ。
勿論、シンのような特殊なケースを除き、ほとんどの者達が断る、或いは保護だけを目的とし、戦闘には参加しない調査員として協力することが多数だった。
それも当然の話だろう。誰も現実のものとは思えぬおかしな出来事のせいで、命を危険にさらしたくはない。痛い思いもしたくないというのが本音だろう。
ある程度、身を守れる手段を教えてもらい、弱いとされる街に現れたモンスターの始末くらいはするものの、それ以上の役には立たなかった。
粗暴な男の問いに白獅は、少し悩んだ末に現状の分かり得た情報と予想から、自らの考えを述べた。
「死体が消えている場合もあるんだ。そこらのモンスターに、そんなことをする知能があるようには思えない。それに消えているのは身体だけじゃないようだ・・・。どうやらデータも消されているらしい」
「あぁ?どういう事だ」
「死体があれば俺達の方でもデータを参照して、何か手掛かりを掴むことも可能なんだが、どうやら犯人はそれを理解してやってるように思える」
「つまり、俺達みたいな奴らがいるってぇのを知ってるってことか?」
「さぁ・・・。そこまでは分からないがな。ただ、今まで以上に慎重になった方がいいのは確かだ。もしかしたら、我々を探している奴もいるかもしれない・・・」
「はッ・・・。向かって来るってぇんなら好都合じゃねぇか」
そう言うと粗暴な男は部屋を後にしようとした。この男の性格から、こちらを付け狙う者がいるのなら、それを逆手に取り誘き出そうとでも考えたのだろう。当然、それも有効な手段ではあるが、同時に大きなリスクも伴う。
「おい!目立つようなことはするなよ?こちらの存在が知れれば、襲撃されないとも限らないんだからな」
粗暴な男を引き止めるように、言葉を投げかける白獅。それを聞いた彼は大きくため息をつき、白獅の目の前まで歩いてくると、苛立ちの籠った鋭い眼光で睨みつける。
「俺に指図すんじゃねぇよ。誰もテメェの手下になった訳じゃねぇんだ。目的が同じだから協力してる。それ以上でもそれ以下でもねぇ。俺は俺のやり方でやらせてもらうぜ」
暫く睨みつけた後、男は振り返ることなく部屋を後にした。白獅は大きなため息をつき、モニター前の椅子へ倒れるようにもたれ掛かる。
白獅との会話を終えた粗暴な男が、自動ドアを抜け通路へと出てくる。するとそこに、同じくアサシンギルドのメンバーであり、シンをアジトに連れて来た、最良化されたパワードスーツを身に纏う女性が立っていた。
「警告。アジトを危険に晒す行為は認められない」
すれ違った男は、背中越しにその女へ問いかける。
「だったら、何だってんだ・・・」
「貴方の始末も検討しなければならない。同盟者同時の争いはデメリットでしかない。大人しく好機を待つことを提案する」
しかし粗暴な男は、彼女の言葉を聞いて止めていた足を再び前へと動かし始めてしまう。彼女の言葉は最もだった。まるで機械に諭されるかのように、正論を叩きつけられる。
「勝手にやってろ。・・・俺達も、いつまでもここに留まってる訳にはいかねぇんだよ・・・」
少しだけ声を和らげた粗暴な男は、そのまま通路を抜けアジトを出て行ってしまった。
今、巷で騒ぎになっているWoFプレイヤー襲撃事件。アサシンギルドや街に現れるモンスターの他に、また別の存在がシン達の暮らす現実の世界へ侵食してきている。
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