World of Fantasia

神代 コウ

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種明かし

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 頭から血を流し、意識を失ったままの少年をゆっくりと下ろすシン。言葉を失っていた宵命は、漸く我に帰るとやっとの思いで言葉を絞り出した。

 「ゆっ瑜那は!?瑜那は無事なのかッ!?」

 「大丈夫。気は失ってるけど死んじゃいない・・・」

 慎の変化にそれ程驚いた様子ではない宵命。実は慎がアサシンギルドへ案内された時から、初めのアジトにいた面々には慎のWoFでの姿を、データで公開していた。

 これから行動を共にする同胞の姿を知らないのでは、いざと言う時に連携が取れないどころか、互いに攻撃し兼ねないからだ。慎のみにあらず、彼らのようにWoFの世界へ転移できる者達のある程度のデータは共有される。

 無論、慎達も望めば朱影や少年達のデータも見ることが出来る。だが、あくまで公開されているデータは一部のみのようで、あちらの世界での容姿やクラスくらいの誰にでも公開されているようなものばかり。

 当然と言えば当然だろうが、内部に敵が潜んでいたり、外部からのハッキングに合わないとも限らない。だが、それならそれで、WoFの運営会社を直接ハッキングすれば分かるのではという疑問が湧いてくる。

 しかし、奇妙なことにそう言った事例や事件は起きたことがなく、誰もそういった話題には触れない。何か裏があるのは間違いないが、ハッカー達の間でも触れてはいけない話題になっているのかもしれない。

 「それで旦那、一体どうやって一瞬でここまで移動してきたんだ?瞬間移動ってやつか!?それとも空でも飛んだって言うのか!?」

 宵命は、シンが瑜那を抱えて車から落下するところを目撃している。大地に生い茂る木々の中へと消えていったように見えたが、その直後に彼らは宵命の背後に現れた。彼に気配を感じさせる暇もなく。

 それがどういうトリックなのか、彼はまるで子供のように目を輝かせてシンに問う。彼はまだ少年なので、そうなるのも分からなくはないが、こうも押しの強い質問攻めをされることに、シンは慣れていなかった。

 「かっ影だよ。アサシンのスキルを使ったんだ。影を使ってトンネルを作るんだ。入り口を木々の影にし、出口の影は上に伸びるワイヤーを辿らせ、近場の影に繋げた。後は下の影に入り込むだけってわけ」

 「影ッ!!やっぱり旦那も“影“を使うんだなッ!」

 少年の反応に、シンは少し驚いた。シン“も“と言うことは、彼らも技の何処かに影を用いているということだろうか。言われてみれば、心当たりが無い訳ではない。

 朱影の見せた、道路から無数の槍を出現させた大技。それはシンがWoFの世界で黒いコートの男に襲われた船での死闘。その中で、相手の男は彼らと同じ、影を用いたスキルを披露して見せた。

 わざわざ披露したと言うことは、見られても彼らにとって何のデメリットにもならないことであることは想像できる。そこからアサシンギルドに何らかの関係があることを探られたり、如何なるクラスのスキルであっても使いこなせるのではと推測されても問題ないのだ。

 ただ、もしそんなことが出来るのであれば、それは最早WoFというゲームを運営開発している、或いはその関係者であることは間違いないが。

 「“も“・・・?それじゃぁもしかして君達も?」

 「おうよ!俺達が壁を擦り抜けてるのは、影の中を移動してるからで、ワイヤーは別の場所から引っ張り出してきてんだ!それに俺達だけじゃないぜ?朱影の旦那も、輝阿の姉貴もそうだぜ!」

 やはりというべきか、シンと同じアサシンである彼らもまた、影のスキルを用いて戦っていた。恐らく、アサシンギルドにいる異世界からやって来たという者達は全員そうなのだろう。

 「そうか、それは連携が取りやすそうだな。互いに手の内を知っているなら、それなりにいい戦略が組めそうだ」

 しかし、シンの思っていた反応を宵命は返しては来なかった。どうやらそれぞれも相性もあるようで、何よりもアサシンギルドに集まった者達は我が強く、協調性に欠けているようなのだ。

 「それがそうでもないんスよ・・・。みんな共闘したがらないで。それに互いの邪魔になりかねないんスよね。狙う場所が被ると、技がぶつかり合っちゃうんで」

 「なるほど・・・」

 彼に言われて初めて考えた、相手の狙うべき部位のこと。大型の敵であれ小型の敵であれ、アサシンである彼らが狙うのは敵の急所や背後からのバックアタック。

 的が大きければある程度融通が効くかもしれないが、相手が人で合ったり小さなモンスターだったりすると、宵命の言う通り互いのスキルがぶつかり合い、折角のチャンスを取り逃がすという事態が起こってしまう。

 確かに、高速道路で見せた朱影の大技と宵命らのワイヤーでは相性が悪いような気もする。それよりもシンが気になったのは、アサシンギルドとはそんなにギスギスしているのだろうか、ということだった。
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