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回復アイテム
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シン達が互いの無事を確認していると、道路の奥から何者かが近づいて来る。二人はその気配に気付き、身を隠そうとするが、直ぐにそれが誰だか分かると、身体から緊張感が抜け大きく息を吐いた。
「お前らも無事だったか?」
そこにいたのは、一人バイクに乗り追手の攻撃を引き受けていた朱影だった。高速道路の爆発後、黒煙に包まれ姿を確認出来なくなっていたが、どうやら彼も無事、崩落した道路を飛び越えられたようだ。
「旦那ぁ!瑜那がッ・・・」
相方の瑜那を抱えた宵命が、意識を失った少年を朱影に見せるように道路へ下ろした。呼吸はしているものの、頭部からの出血がどこまで命に関わりがあるのか、素人の彼らでは判断がつかない。
そもそもシンには、彼らが自身と同じ人間の身体構造をしているのか、少し疑問に思った。身体能力的には、シンのいる現実世界の人間に比べ、圧倒的な能力差を誇る彼らだが、それならその身体はこの世界に準じたものになるのか、それとも各世界のものになるのか。
例えば慎の場合、現実世界の彼は生身であり、当然ながらWoFの世界からやってきたモンスターの攻撃をまともに食らえば、命に関わる致命打に繋がる。
しかし、WoFの世界において多少の攻撃では命に関わる大ダメージに繋がるケースは少ない。これはステータスという概念が適用されていることが大きい。
ただ、現実世界において出血量というものは、多く発生してしまえば傷の大きさに関わらず命に関わる重大な要因になるということだ。
朱影らが異世界からやってきた者で、この世界において何らかのステータス補正を受けていれば、出血量というもの自体の重要性が変わってくると考えられる。
実際、シンがWoFの世界で命懸けの戦いをした際も、現実なら致死量に達しかねない出血をしているものの、死に至ることはなかった。
有力なケースとして、聖都ユスティーチにおいて聖騎士イデアールとの戦いに敗れたシンは、大量の出血の中彼が置いていった回復アイテム一つで、死に至ることはなかった上、その後のシュトラール戦へ向けての戦線復帰も早かった。
その事を考慮すれば、彼らも高度な医療技術がなくとも、何らかの方法で回復が可能なのではないだろうか。つまりWoFでいうところの、回復アイテムのようなものが存在していれば、十分治療は可能だということ。
「なっなぁ、アンタ達は戦いの傷をどうやって癒しているんだ?これまでも戦いの中で怪我人は出ただろう?何か傷を癒せるアイテムみたいな物はないのか?」
すると、少し難しい顔をしながら朱影が答える。
「無いことはない。だが、今持ち合わせは無い・・・。それは俺達が意図的に作り出せるものではないからな」
「なら、どうやって手に入れるんだ?その口ぶりだとこの世界に無い訳じゃないんだろ?」
現実世界において、所謂回復アイテムという存在はない。しかし朱影の言葉には含みがある。つまり、手に入れられない訳ではないようなのだ。異世界の薬草や回復効果のある薬品は、この世界に存在しない。
要するに作ることは出来ないが、何らかの方法で入手は可能なのだろう。
「この世界にいるモンスター達を始末した時に、稀に落とすんだ。ただ、何分貴重な物だ。そう簡単に個人が持っているようなモンじゃねぇ。大抵はアジトに保管してあるもんだ」
「白獅は車に積んでくれていなかったのか?」
「そんな余裕はなかったんだろう。お前も見ただろ?アジトが襲撃された時に多くの怪我人を抱えちまってる。その治療に宛てなきゃならねぇんだ・・・」
転移した別のアジトには、慎の知らないところで傷を負ったアサシンギルドの面々がいた。その治療に宛てられていたのが、その回復アイテムと呼ばれる存在だったのだ。
「それに、白獅の奴がなんであんなオンボロ車で移動しろっつったのか。それは相手側の探索や検知を掻い潜り、隠密で電力施設へ向かうのを想定していたからだろうよ。・・・まさかこんなにも早く挫かれるとは、思ってもみなかったがな」
何も白獅は冷徹な人間ではない。慎達が危険な目に遭わぬよう考えて、彼らに最新の車ではなくあえて旧世代の車で向かわせたのは、搭載されているシステムのバージョンが古ければ古いほど、検知に時間が掛かるからなのだそうだ。
最新であればあるほど、直ぐに位置情報やハッキングの餌食になり易い。その点、旧世代モデルであればある程度の遅延が見込める。それを考慮しての隠密だったのだが、彼らを襲撃する“敵“には、それを見つけ出すだけの技術があったということだ。
「モンスターが落とす・・・。じゃぁさっきの連中からは!?あれだけ倒してたんだ、探しに行けば何個かッ・・・」
言葉を続けようとしたシンだったが、朱影が首を横に振っているのをみて、その望みがないことを察する。
「あれはモンスターじゃねぇ。何らかの生物兵器みてぇなモンだ。いくら倒しても何も落とさねぇ・・・。実際に戦った俺が言ってんだから、間違いねぇよ。流石に見落とさねぇ・・・」
「じゃぁ彼の治療は一体どうすれば・・・」
「その辺にいるモンスターを狩るか、或いは電力のあるアジトに行けば修復が可能だ」
朱影の言葉に違和感を感じたシン。治療や回復ではなく、修復と言ったのは何故だろう。電力の通っているアジトであれば機材を使って何らかの治療が可能ということなのだろうか。
何にしても、一刻も早く電力施設に向かい、電力の復旧を行う必要がある。彼らは別の乗り物を探し、東京のセントラルを目指す。
「お前らも無事だったか?」
そこにいたのは、一人バイクに乗り追手の攻撃を引き受けていた朱影だった。高速道路の爆発後、黒煙に包まれ姿を確認出来なくなっていたが、どうやら彼も無事、崩落した道路を飛び越えられたようだ。
「旦那ぁ!瑜那がッ・・・」
相方の瑜那を抱えた宵命が、意識を失った少年を朱影に見せるように道路へ下ろした。呼吸はしているものの、頭部からの出血がどこまで命に関わりがあるのか、素人の彼らでは判断がつかない。
そもそもシンには、彼らが自身と同じ人間の身体構造をしているのか、少し疑問に思った。身体能力的には、シンのいる現実世界の人間に比べ、圧倒的な能力差を誇る彼らだが、それならその身体はこの世界に準じたものになるのか、それとも各世界のものになるのか。
例えば慎の場合、現実世界の彼は生身であり、当然ながらWoFの世界からやってきたモンスターの攻撃をまともに食らえば、命に関わる致命打に繋がる。
しかし、WoFの世界において多少の攻撃では命に関わる大ダメージに繋がるケースは少ない。これはステータスという概念が適用されていることが大きい。
ただ、現実世界において出血量というものは、多く発生してしまえば傷の大きさに関わらず命に関わる重大な要因になるということだ。
朱影らが異世界からやってきた者で、この世界において何らかのステータス補正を受けていれば、出血量というもの自体の重要性が変わってくると考えられる。
実際、シンがWoFの世界で命懸けの戦いをした際も、現実なら致死量に達しかねない出血をしているものの、死に至ることはなかった。
有力なケースとして、聖都ユスティーチにおいて聖騎士イデアールとの戦いに敗れたシンは、大量の出血の中彼が置いていった回復アイテム一つで、死に至ることはなかった上、その後のシュトラール戦へ向けての戦線復帰も早かった。
その事を考慮すれば、彼らも高度な医療技術がなくとも、何らかの方法で回復が可能なのではないだろうか。つまりWoFでいうところの、回復アイテムのようなものが存在していれば、十分治療は可能だということ。
「なっなぁ、アンタ達は戦いの傷をどうやって癒しているんだ?これまでも戦いの中で怪我人は出ただろう?何か傷を癒せるアイテムみたいな物はないのか?」
すると、少し難しい顔をしながら朱影が答える。
「無いことはない。だが、今持ち合わせは無い・・・。それは俺達が意図的に作り出せるものではないからな」
「なら、どうやって手に入れるんだ?その口ぶりだとこの世界に無い訳じゃないんだろ?」
現実世界において、所謂回復アイテムという存在はない。しかし朱影の言葉には含みがある。つまり、手に入れられない訳ではないようなのだ。異世界の薬草や回復効果のある薬品は、この世界に存在しない。
要するに作ることは出来ないが、何らかの方法で入手は可能なのだろう。
「この世界にいるモンスター達を始末した時に、稀に落とすんだ。ただ、何分貴重な物だ。そう簡単に個人が持っているようなモンじゃねぇ。大抵はアジトに保管してあるもんだ」
「白獅は車に積んでくれていなかったのか?」
「そんな余裕はなかったんだろう。お前も見ただろ?アジトが襲撃された時に多くの怪我人を抱えちまってる。その治療に宛てなきゃならねぇんだ・・・」
転移した別のアジトには、慎の知らないところで傷を負ったアサシンギルドの面々がいた。その治療に宛てられていたのが、その回復アイテムと呼ばれる存在だったのだ。
「それに、白獅の奴がなんであんなオンボロ車で移動しろっつったのか。それは相手側の探索や検知を掻い潜り、隠密で電力施設へ向かうのを想定していたからだろうよ。・・・まさかこんなにも早く挫かれるとは、思ってもみなかったがな」
何も白獅は冷徹な人間ではない。慎達が危険な目に遭わぬよう考えて、彼らに最新の車ではなくあえて旧世代の車で向かわせたのは、搭載されているシステムのバージョンが古ければ古いほど、検知に時間が掛かるからなのだそうだ。
最新であればあるほど、直ぐに位置情報やハッキングの餌食になり易い。その点、旧世代モデルであればある程度の遅延が見込める。それを考慮しての隠密だったのだが、彼らを襲撃する“敵“には、それを見つけ出すだけの技術があったということだ。
「モンスターが落とす・・・。じゃぁさっきの連中からは!?あれだけ倒してたんだ、探しに行けば何個かッ・・・」
言葉を続けようとしたシンだったが、朱影が首を横に振っているのをみて、その望みがないことを察する。
「あれはモンスターじゃねぇ。何らかの生物兵器みてぇなモンだ。いくら倒しても何も落とさねぇ・・・。実際に戦った俺が言ってんだから、間違いねぇよ。流石に見落とさねぇ・・・」
「じゃぁ彼の治療は一体どうすれば・・・」
「その辺にいるモンスターを狩るか、或いは電力のあるアジトに行けば修復が可能だ」
朱影の言葉に違和感を感じたシン。治療や回復ではなく、修復と言ったのは何故だろう。電力の通っているアジトであれば機材を使って何らかの治療が可能ということなのだろうか。
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