World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
727 / 1,646

もう一つのアジトへ

しおりを挟む
 シンの到着から間も無くして、すぐに魔物達との戦闘を終えたイヅツが、二人の元へとやって来る。最後に見た剣は手元になく、身体に汚れ一つつけることなく帰ってきた。

 「今戻った。アンタも無事に運んでくれたみたいだな」

 彼の言葉に、随分と早かったなと声をかけようとしたシンだったが、上官の方が先に帰ってきたイヅツに同じ言葉を投げかけたのだ。

 オートマタという魔物は、個体にもよるがWoF内ではそれほど強力な敵ではない。しかし、そこそこの数はいた筈。本来のWoF内データに存在するシンのキャラであっても、あの数を始末するのにはもう少し時間が掛かる。

 勿論、クラスの相性というものもあるが、ある程度複数の敵を相手にする戦闘に慣れていないと、こうも早く帰ってくることはできないだろう。それにイヅツは、疲労した様子もなければ、汚れ一つついていない。

 WoFのユーザーはこの“異変“に巻き込まれ、現実世界での戦闘に慣れていないと彼は言っていたが、当の本人は少なくとも今のシン以上には、この世界での戦闘を経験していたことになる。

 「随分と早かったな。そんなに簡単な相手だったのか?」

 「いや、今回は彼が居たから役割分担ができた。それだけのことだ・・・」

 多くは語らなかったが、イヅツはそれとなくシンが組織において有益な存在であることを伝えた。すると上官は、シンの方に視線を向け、足から頭へと品定めするかのように眺める。

 「足手まといではなさそうだ・・・。いいだろう、ついて来い。お前が見たがってたもの・・・見せてやる」

 僅かに声のトーンを落とし、低い声で度胸を確かめるように、シンへそう告げると、足早に上官の男は都心部から更に離れていくように移動を始める。

 どうして魔物を捕らえているのか。その理由を見せてやるということは、これから彼らの拠点へと移動するのかもしれない。

 拠点に着けば、今より更に気が抜けない状況になることは目に見えている。引き返すなら今の内だろうが、上官に逆らうことなく従っているイヅツを見るに、どうやら2人掛かりでもこの上官の男を仕留めるのは難しいということか。

 或いは、ここで仕留めてはマズイ理由があるのだろう。恐らく他の場所でも同じような小隊が、この東京のセントラルシティにいるのは間違いない。

 もし部隊長の者を殺せばすぐに連絡がいき、決して逃れられないことを示唆しているのかもしれない。下手なことは出来ぬと、シンは黙って上官の男の後を追う。

 それに続いて、イヅツはシンが捕らえた魔物を担ぎあげ、2人の後ろから殿を務めるようについていく。

 再び三人はパルクールのように建物の間や屋上を飛び回り、道中の警備ドローンの発する光を避けながら進んでいく。その様子にシンは違和感を感じた。何故目的の場所へ向かう時は気にしなかった警備ドローンを、今更意識し始めているのか。

 疑問はあれど、今は黙って後を追うことに集中することを選んだシン。意外なことに上官の男は、ドローンの動きを確認し、ちゃんと最後尾にいるイヅツがカメラに映されぬタイミングを見計らって進んでいる。

 騒ぎになれば面倒ごとが起こるのは目に見えている。どうやら急いでいる訳でもないので、アクシデントを避けるのは必然。それにしても、冷酷に感じていた上官の男が、その様なことを気にしていること自体に違和感を感じる。

 少しヒヤヒヤする場面もありながらも、三人はビル群の間にある薄暗い路地裏まで降りてきていた。

 するとそこには、彼らの仲間と思われる数人の人物が立っていた。思わず身構えるシンだったが、上官の男が到着早々にその者達から挨拶をされているのを見て、身体の力を抜く。

 「スペクターさん、お帰りで?」

 「あぁ、ゲートの準備頼むわ」

 そう言うと、その場にいた複数の者達が動き出し、何やら装置の様なものを動かし、建物の扉に取り付けた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

処理中です...