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肉の花
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そこには、奇形のモンスターの強靭な前足を食い千切る大きな食虫植物のようなものが、殺されたと思っていた女の身体から飛び出していたのだ。
「なッ・・・何だこりゃぁ・・・!?」
女の首元から下腹部にかけて大きく縦に裂けている。その様子からも分かる通り、彼女はまともな人間ではない。そしてシンの知る限り、このような悍ましいスキルを使うクラスなど、WoFにはなかった。
彼女の身体から飛び出したそれは、言うなれば人間の口を縦にしたような肉肉しい見た目をしており、その悍ましさで言えば奇形のモンスターと変わりない。
「ギャァァァーーー!痛い・・・痛い・・・怖い・・・恐い・・・」
奇形のモンスターは人の言葉を使い苦しい感情を表に出す。その声は悲痛に歪む老若男女の声色をしていた。
モンスターはそのまま暴れ出すが、彼女の身体から飛び出す大きな口が、唸り声のようなものと共に何かの液体を撒き散らし始めた。
それに触れた奇形のモンスターの身体は、高濃度の酸に触れたように煙と共に肉を焼く音を響かせた。
溶けたモンスターの身体から垂れた液体が、地面と触れるモンスターの足を繋ぎ止め、まるでキンキンに凍った氷に触れ、皮膚がくっつく現象と同じものを引き起こし、動きを封じた。
何の影響があるか分からない以上、スキルで操っている影を触れさせるのも危険と判断し、シンは奇形のモンスターから影を退けさせた。
影の縛りがなくとも、大きな巨体は自身の溶けた身体によって地面にくっつき、逃れられずにいた。
そこへ、女の身体から飛び出た不気味な大口が近づき、奇形のモンスターを丸呑みにした。
一瞬の内に食い千切られたモンスターは、地面にくっついた足の部分だけを残して、跡形もなく消え去った。残された足からは絞り出すように血液が飛び出し、力なくその場に倒れた。
奇形のモンスターを丸呑みにした大口は、徐々に縮みながら彼女の裂けた身体の中へと戻っていく。そしてその悍ましいものが綺麗に収納されると、彼女の身体は上下からゆっくり閉じていき、何事もなかったかのようにその場に立ち尽くしていた。
あまりの出来事に言葉を失うシン。すると、その女の方からシンが何者なのか尋ねてきた。
「アンタ、どこの人?」
「・・・どこの・・・?」
彼女の質問は妙だった。普通ならシンが何者なのか尋ねるものだろう。お前は何者だ、誰だといった質問を投げかけそうなものだった。しかし、彼女が尋ねたのは、まるでシンがどこかに属しているかのような聞き方だったのだ。
つまり、彼女はこの世界に起きている異変のことを、少なからず知っている事になる。WoFのユーザーであれば、そんな聞き方はしない。WoFを遊んでいたユーザーであれば、シンがアサシンのクラスであることを見抜いていても不思議ではない。
そして、彼女がもしアサシンギルドの人間なら、白獅らからその存在を知らされていることだろう。何より、東京のセントラルにあるアサシンギルドのアジトは、撤退を余儀なくされていて、特別な用事や任務がなければこんな危険なところにはいないだろう。
考えた末、シンが辿り着いた先は一つしかない。今、東京という大都市部を停電に追いやり、何やら怪しげなことをしている、スペクターやイヅツの所属するこの組織の人間なのではないか。
だが、安直に彼らの名前を出すのは危険と思ったシンは、彼女が飲み込んだモンスターに用があったとだけ伝える事にした。もし組織の人間であれば、シンが何故モンスターなどに用があるのか分かる筈だ。
「アンタが食っちまったモンスターに用があったんだが・・・」
するとシンの予想通り、彼女はその用事とやらを知っているようだった。
「そう、“サンプル“を取りに来たの。・・・でもここはもう大丈夫だから。他をあたって・・・」
「他って・・・」
シンに与えられた任務は、地下駐車場にいたはずのサンプルを持ち帰ること。現在、そのサンプルと思わしきモンスターの片割れは、駐車場に拘束しておいてきた。
そして本命の奇形のモンスターは、今まさに彼女によって食われてしまったのだ。もしこっちのモンスターが、任務で言い渡されたサンプルだとするならば、任されたシンの立場がない。
「アンタが食っちまったのが、俺に言い渡された任務の目標だったかもしれないんだ。なぁ?アンタも組織の人間なんだろ?何とか連中に説明してくれないか?」
「はぁ~・・・うざっ・・・」
大きな溜息と共に、彼女は後ろを振り向きその場を立ち去ろうとしてしまった。シンが慌てて彼女を引き止めようとすると、そこへ一人の男の声が聞こえた。
「ジェニタル。何だ、お前が鎮めてたのか」
声のする方へ視線を向けると、そこには組織の研究施設に残っていた筈のスペクターがいた。
「なッ・・・何だこりゃぁ・・・!?」
女の首元から下腹部にかけて大きく縦に裂けている。その様子からも分かる通り、彼女はまともな人間ではない。そしてシンの知る限り、このような悍ましいスキルを使うクラスなど、WoFにはなかった。
彼女の身体から飛び出したそれは、言うなれば人間の口を縦にしたような肉肉しい見た目をしており、その悍ましさで言えば奇形のモンスターと変わりない。
「ギャァァァーーー!痛い・・・痛い・・・怖い・・・恐い・・・」
奇形のモンスターは人の言葉を使い苦しい感情を表に出す。その声は悲痛に歪む老若男女の声色をしていた。
モンスターはそのまま暴れ出すが、彼女の身体から飛び出す大きな口が、唸り声のようなものと共に何かの液体を撒き散らし始めた。
それに触れた奇形のモンスターの身体は、高濃度の酸に触れたように煙と共に肉を焼く音を響かせた。
溶けたモンスターの身体から垂れた液体が、地面と触れるモンスターの足を繋ぎ止め、まるでキンキンに凍った氷に触れ、皮膚がくっつく現象と同じものを引き起こし、動きを封じた。
何の影響があるか分からない以上、スキルで操っている影を触れさせるのも危険と判断し、シンは奇形のモンスターから影を退けさせた。
影の縛りがなくとも、大きな巨体は自身の溶けた身体によって地面にくっつき、逃れられずにいた。
そこへ、女の身体から飛び出た不気味な大口が近づき、奇形のモンスターを丸呑みにした。
一瞬の内に食い千切られたモンスターは、地面にくっついた足の部分だけを残して、跡形もなく消え去った。残された足からは絞り出すように血液が飛び出し、力なくその場に倒れた。
奇形のモンスターを丸呑みにした大口は、徐々に縮みながら彼女の裂けた身体の中へと戻っていく。そしてその悍ましいものが綺麗に収納されると、彼女の身体は上下からゆっくり閉じていき、何事もなかったかのようにその場に立ち尽くしていた。
あまりの出来事に言葉を失うシン。すると、その女の方からシンが何者なのか尋ねてきた。
「アンタ、どこの人?」
「・・・どこの・・・?」
彼女の質問は妙だった。普通ならシンが何者なのか尋ねるものだろう。お前は何者だ、誰だといった質問を投げかけそうなものだった。しかし、彼女が尋ねたのは、まるでシンがどこかに属しているかのような聞き方だったのだ。
つまり、彼女はこの世界に起きている異変のことを、少なからず知っている事になる。WoFのユーザーであれば、そんな聞き方はしない。WoFを遊んでいたユーザーであれば、シンがアサシンのクラスであることを見抜いていても不思議ではない。
そして、彼女がもしアサシンギルドの人間なら、白獅らからその存在を知らされていることだろう。何より、東京のセントラルにあるアサシンギルドのアジトは、撤退を余儀なくされていて、特別な用事や任務がなければこんな危険なところにはいないだろう。
考えた末、シンが辿り着いた先は一つしかない。今、東京という大都市部を停電に追いやり、何やら怪しげなことをしている、スペクターやイヅツの所属するこの組織の人間なのではないか。
だが、安直に彼らの名前を出すのは危険と思ったシンは、彼女が飲み込んだモンスターに用があったとだけ伝える事にした。もし組織の人間であれば、シンが何故モンスターなどに用があるのか分かる筈だ。
「アンタが食っちまったモンスターに用があったんだが・・・」
するとシンの予想通り、彼女はその用事とやらを知っているようだった。
「そう、“サンプル“を取りに来たの。・・・でもここはもう大丈夫だから。他をあたって・・・」
「他って・・・」
シンに与えられた任務は、地下駐車場にいたはずのサンプルを持ち帰ること。現在、そのサンプルと思わしきモンスターの片割れは、駐車場に拘束しておいてきた。
そして本命の奇形のモンスターは、今まさに彼女によって食われてしまったのだ。もしこっちのモンスターが、任務で言い渡されたサンプルだとするならば、任されたシンの立場がない。
「アンタが食っちまったのが、俺に言い渡された任務の目標だったかもしれないんだ。なぁ?アンタも組織の人間なんだろ?何とか連中に説明してくれないか?」
「はぁ~・・・うざっ・・・」
大きな溜息と共に、彼女は後ろを振り向きその場を立ち去ろうとしてしまった。シンが慌てて彼女を引き止めようとすると、そこへ一人の男の声が聞こえた。
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