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オルレラの記憶障害
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その後もツクヨは、他の冒険者や作業員達にそのことを伏せたまま、ニコラの言う通り本来この大穴へ来た目的とは違った、穴を埋める作業の護衛というクエストをこなしていく。
つい先ほどまで掘り返していた穴を埋めるという行動に、誰も違和感を覚える事なく事は順調に進んでいった。辺りも暗くなり、その日の作業が終了となった後、冒険者達はそのままオルレラのギルドへと戻り解散となる流れだったのだが、ツクヨはルーカスに少し寄りたい所があると言い、帰路につく一行から離脱した。
すぐに合流することを条件にこれを承諾したルーカス。これもツクヨが真面目にクエストをこなした事により彼の信頼を得られるようになった結果と言える。
そうまでしてツクヨが寄りたかった場所というのは、他でもない大穴の調査を行う為に設けられた、仮設の作業場だった。彼らがクエストをこなしている間に、モンスターに襲われ惨状となっていた作業場は既に元通りに修復されており、何事もなかったかのように機能しているようだった。
様子を見に来たツクヨは、近くを通りかかった作業場の護衛をしている者に話を聞くことにした。伺ったのは、修復士のニコラに関する事だった。
しかし彼は既に仕事を終えたようで、作業場を後にしていた。他の調査のために訪れていた作業員達も撤退を始め、数日後にはここも解体となる予定だという。
そこそこの大所帯での作業の割には、随分と早い切り上げのように感じたが、何を調査しているのか、調査にどれくらいかかるものなのか詳しく知らないツクヨにとって、それはさして大きな問題ではなかった。
ニコラがその場を去った事を知ったツクヨは、それ以上の詮索をする訳でもなく、ルーカスと約束した通り、帰路に着く彼らの元へと戻っていった。
一行がオルレラのギルドへ到着すると、冒険者達に今日の分の報酬が支払われた。ツクヨもギルドから報酬を受け取り、ルーカスへ挨拶をしてからツバキのいるエディ邸へと帰る。
ツクヨを最初に迎えたのは、エディ邸で働く使用人だった。それは、エディがもうじき帰ってくるであろうツクヨとミアを迎える為の指示だったのだそうだ。
使用人の男は、ツクヨ達がオルレラに着いてエディ邸を訪れた時からずっと一緒にいた。しかし、色々と調べることがあり、彼自身について話を聞く時間がなかったツクヨは、ニコラの元であった異変を話す前に、雑談がてら使用人の男とも話をする。
如何やら彼も、このオルレラに流れ着いた後、エディ夫妻に拾われ使用人として働かないかと話を持ちかけられたのだそうだ。
それまでの経緯や自分が何者であるかなどの記憶が混濁としていた彼は、‘オーバン“と呼ばれていた記憶だけを頼りに、エディ邸で働きながらゆっくりと情報を集め、記憶の整理を行なっているのだという。
彼の話を聞きツクヨが感じたのは、彼もまた記憶に異変が生じた被害者の一人なのかもしれないということ。いや、それどころか彼だけではなく、このオルレラの街全体が、記憶に何らかの障害を受けている可能性すら感じていた。
エディ邸で働く使用人がオーバンという名の流れ者である事と、彼もまた記憶の障害を受けているのではないかという事を感じたツクヨは、話を切り上げエディ夫妻の元へ向かい、夕食の準備を手伝うことになった。
その後、ミアが帰宅してからはいつもと同じだった。エディ夫妻と共に食卓を囲み、他愛のない会話をしながら談笑し合い、何気ない時間を過ごした後に彼ている部屋へと戻っていった。
だが、これまでの日々と違うのは、ミアと共に部屋へ帰ってきてからだった。ツクヨは、その日あった事をミアに全て話した。
クエストの途中で強力なモンスターと戦った事や、そのモンスターが生まれた経緯、そして修復士のニコラの事や彼のクラスである錬金術で生み出された精霊の事まで、細かいところまで疑問に感じたことは全て話し尽くした。
すると彼女も、今日はいつもと違ったことが起きたと話し始める。突然の耳鳴りと共に、自分の目的やこれまでの行動があやふやになり、ジャンク屋にいたイクセンという人物と会った時に、まるで初めてではないような感覚に陥ったことなど、彼女も記憶に障害を受けているようだった。
「そうか、君もだったのか・・・。しかし何故、今になってこんな事が?私の会ったニコラという男が、何か関係しているのか・・・」
「さぁ、如何だろうな・・・。それなら何故、遠く離れたアタシにまで影響が及んだのか、気になるところだな」
彼女の言うように、ツクヨがクエストを行なっていた大穴は、オルレラの近郊とはいえ、街からは距離が離れている。もしこれが誰かの仕業とするならば、その範囲はあまりに大きいように思える。
それこそ、聖都でシュトラールが行なっていたような、都市全体に及ぶほどの術式や魔力量を誇っていることになる。それほど大きいとは言えないこの街に、そんな怪物じみた人物がいるなどとは、とても考えたくないものだ。
「それに、そのニコラって男がもし本当に元凶なら、そいつが離れていった事で何かしらの変化がある筈だ。アタシらが受けている状況を見る為にも、少し様子見をした方がいいかもしれないな・・・」
一体誰が何の為にやっているのか、或いはこの地特有の現象なのか。いずれにせよこちらから何かアクションを起こすことができない以上、様子を伺うしかない二人は、未だ眠りについたままのツバキの様子を見つつ、新たに生まれた謎についても調べていくことになった。
つい先ほどまで掘り返していた穴を埋めるという行動に、誰も違和感を覚える事なく事は順調に進んでいった。辺りも暗くなり、その日の作業が終了となった後、冒険者達はそのままオルレラのギルドへと戻り解散となる流れだったのだが、ツクヨはルーカスに少し寄りたい所があると言い、帰路につく一行から離脱した。
すぐに合流することを条件にこれを承諾したルーカス。これもツクヨが真面目にクエストをこなした事により彼の信頼を得られるようになった結果と言える。
そうまでしてツクヨが寄りたかった場所というのは、他でもない大穴の調査を行う為に設けられた、仮設の作業場だった。彼らがクエストをこなしている間に、モンスターに襲われ惨状となっていた作業場は既に元通りに修復されており、何事もなかったかのように機能しているようだった。
様子を見に来たツクヨは、近くを通りかかった作業場の護衛をしている者に話を聞くことにした。伺ったのは、修復士のニコラに関する事だった。
しかし彼は既に仕事を終えたようで、作業場を後にしていた。他の調査のために訪れていた作業員達も撤退を始め、数日後にはここも解体となる予定だという。
そこそこの大所帯での作業の割には、随分と早い切り上げのように感じたが、何を調査しているのか、調査にどれくらいかかるものなのか詳しく知らないツクヨにとって、それはさして大きな問題ではなかった。
ニコラがその場を去った事を知ったツクヨは、それ以上の詮索をする訳でもなく、ルーカスと約束した通り、帰路に着く彼らの元へと戻っていった。
一行がオルレラのギルドへ到着すると、冒険者達に今日の分の報酬が支払われた。ツクヨもギルドから報酬を受け取り、ルーカスへ挨拶をしてからツバキのいるエディ邸へと帰る。
ツクヨを最初に迎えたのは、エディ邸で働く使用人だった。それは、エディがもうじき帰ってくるであろうツクヨとミアを迎える為の指示だったのだそうだ。
使用人の男は、ツクヨ達がオルレラに着いてエディ邸を訪れた時からずっと一緒にいた。しかし、色々と調べることがあり、彼自身について話を聞く時間がなかったツクヨは、ニコラの元であった異変を話す前に、雑談がてら使用人の男とも話をする。
如何やら彼も、このオルレラに流れ着いた後、エディ夫妻に拾われ使用人として働かないかと話を持ちかけられたのだそうだ。
それまでの経緯や自分が何者であるかなどの記憶が混濁としていた彼は、‘オーバン“と呼ばれていた記憶だけを頼りに、エディ邸で働きながらゆっくりと情報を集め、記憶の整理を行なっているのだという。
彼の話を聞きツクヨが感じたのは、彼もまた記憶に異変が生じた被害者の一人なのかもしれないということ。いや、それどころか彼だけではなく、このオルレラの街全体が、記憶に何らかの障害を受けている可能性すら感じていた。
エディ邸で働く使用人がオーバンという名の流れ者である事と、彼もまた記憶の障害を受けているのではないかという事を感じたツクヨは、話を切り上げエディ夫妻の元へ向かい、夕食の準備を手伝うことになった。
その後、ミアが帰宅してからはいつもと同じだった。エディ夫妻と共に食卓を囲み、他愛のない会話をしながら談笑し合い、何気ない時間を過ごした後に彼ている部屋へと戻っていった。
だが、これまでの日々と違うのは、ミアと共に部屋へ帰ってきてからだった。ツクヨは、その日あった事をミアに全て話した。
クエストの途中で強力なモンスターと戦った事や、そのモンスターが生まれた経緯、そして修復士のニコラの事や彼のクラスである錬金術で生み出された精霊の事まで、細かいところまで疑問に感じたことは全て話し尽くした。
すると彼女も、今日はいつもと違ったことが起きたと話し始める。突然の耳鳴りと共に、自分の目的やこれまでの行動があやふやになり、ジャンク屋にいたイクセンという人物と会った時に、まるで初めてではないような感覚に陥ったことなど、彼女も記憶に障害を受けているようだった。
「そうか、君もだったのか・・・。しかし何故、今になってこんな事が?私の会ったニコラという男が、何か関係しているのか・・・」
「さぁ、如何だろうな・・・。それなら何故、遠く離れたアタシにまで影響が及んだのか、気になるところだな」
彼女の言うように、ツクヨがクエストを行なっていた大穴は、オルレラの近郊とはいえ、街からは距離が離れている。もしこれが誰かの仕業とするならば、その範囲はあまりに大きいように思える。
それこそ、聖都でシュトラールが行なっていたような、都市全体に及ぶほどの術式や魔力量を誇っていることになる。それほど大きいとは言えないこの街に、そんな怪物じみた人物がいるなどとは、とても考えたくないものだ。
「それに、そのニコラって男がもし本当に元凶なら、そいつが離れていった事で何かしらの変化がある筈だ。アタシらが受けている状況を見る為にも、少し様子見をした方がいいかもしれないな・・・」
一体誰が何の為にやっているのか、或いはこの地特有の現象なのか。いずれにせよこちらから何かアクションを起こすことができない以上、様子を伺うしかない二人は、未だ眠りについたままのツバキの様子を見つつ、新たに生まれた謎についても調べていくことになった。
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