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意識を繋ぎ止めるもの
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部屋の奥から聞こえてきた音は、ツバキが想像していた通りモンスターと戦うレインコートの子供の立てる音だった。そこで見つけたのは、先程見かけたオレンジ色のレインコートではなく、緑色のレインコートの子供だった。
戦況は、逃げる子供を死霊系のモンスターが追うといった状況だが、逃げながら放つ子供の魔法がモンスターに命中すると、一撃で大ダメージを与える程強力で苦戦しているといった様子はない。
だが、別の場所から壁を擦り抜けてきたモンスターが、逃げ回る少年に襲い掛かる。ツバキはすぐに足に取り付けられたガジェットを起動し、少年の背後に迫るモンスターへ魔石から送られる魔力を帯びた攻撃を放つ。
「炎舞脚ッ!!」
宙を舞いながら回転し、ガジェットのブースト機能を利用した強烈な勢いで振るわれる炎を纏った足技をお見舞いする。モンスターは引火した羽毛のように燃え上がり、悲鳴を上げながら姿を消した。
「大丈夫かッ!?」
少年の元へ辿り着いたツバキが、その深く被ったフードを剥がさぬようにレインコートの少年の肩に触れる。すると少年は小さく頷き、何やら小さな声で何かをツバキに伝えようとしている。
少年の声に耳を傾けるツバキは、まだ周囲に気配を残すモンスターの影に警戒しながら、先程の攻撃で消耗した足のガジェットに取り付けられた魔石を交換する。
「アッチ・・・トモダチ・・・イル。タスケル・・・」
そう言って少年が指差した方向には、また別の部屋へ通じているであろう扉があった。
「あぁ、分かった。助けられた借りは返す!・・・だが今は、安全を確保しねぇと・・・」
足に魔石を補充したツバキが立ち上がろうとすると、少年はツバキの服を引っ張り静止させる。何故引き止めるのかとツバキが振り返ると、少年は首を小さく横へ振っていた。
「カズ・・・ヘラナイ。マモノ・・・キエナイ・・・」
「・・・あぁ?何だって?」
如何やら少年が言うには、ここに出現する死霊系のモンスターは、倒しても倒しても次から次へと湧いて出てくるのだという。つまり、この施設に安全な場所を作るというのは不可能だという事だろう。
モンスターを出現させている何か、或いは呼び寄せている物を止めない限りは、止まることはない。他のレインコートの子供達を助ける為には、モンスターと戦いながらじゃなければならないようだ。
「つまり節約しろってことか。だが、事が済むまで魔石が保つかどうか・・・」
ツバキが手持ちの魔石の数を確認していると、その側で緑のレインコートを着た少年が、自らフードを外していた。前回の自らフードを外した少女同様に、彼もまたそれを外せば如何なるのか、理解してやっているように思える。
「なッ!?お前それッ・・・。如何なるか分かって・・・」
「・・・大丈夫、分かってるよ。ここでの僕達は、これを脱いでは存在できない。でもこれは“先生“が残してくれたものだから・・・。僕達を繋ぎ止める、唯一のものだから・・・」
「繋ぎ止める・・・?」
またしても意味深な語りで話し出す少年。何処かへ“帰る“だの“繋ぎ止める“だの、ツバキには何のことなのかさっぱり分からないが、彼らがここに留まる為の制約か何かの類なのだと把握する。
「そう。僕達はここに“望んで“留まっている。それは僕達に“感情“を教えてくれた“先生“を助ける為なんだ」
彼らが挙って口にする“先生“と呼ぶ人物。恐らくこの施設の人間であるとみて間違いないだろう。更に言えば、ツバキがこの研究施設に足を踏み入れて最初に目にした研究日誌。
それを記した人物こそ、彼らの口にする“先生“と呼ぶ人物なのかもしれない。地下で見た書類の中には、被検体自体に興味を示すような文言は書かれていなかった。
その事からも、この研究施設の中には人としての道徳心を失った者達が殆どであったことが想像に容易い。
「その“先生“ってのが、この空間を作り出してるのか?」
「そうだね、不本意ではあるだろうけど・・・。おや?もう時間なのか・・・」
これまでにないほど情報を吐き出してくれた少年の身体は、他の子供達と同様に消え始めていた。
「不本意?その先生ってのは、何が目的なんだ?」
「先生は、僕達を苦しませまいと、僕達の“意識“だけをこの施設に留めたんだ。けど、それは先生を永遠に苦しめる事になる。だから・・・」
彼の身体は、既に現世にその形を保っていられないほど消えかけていた。声ももう出なくなってしまったのだろう。それ以上、緑のレインコートの少年が口を開く事はなかった。
「分かった。お前達は俺の命の恩人だ。その先生の事は任せてくれ・・・!」
ツバキの言葉を聞いて、少年は満面の笑みを浮かべて姿を消し、残されたレインコートだけが床に落ちた。
これで漸く、脱出の手掛かりが掴めた。恐らくは、彼らの言う先生と呼ばれる人物を解放することで、この謎の空間から抜け出すことができるのかもしれない。
漠然としていた目標は形を成し、不安を抱えていたツバキの身体を突き動かす原動力となった。
存在が消えることに対し、抵抗を持っていない様子の子供達。それでもツバキの方からそれを強制するのは気が引ける。だが、先程の少年のように、もしかしたら自ら話をしてくれるかもしれない。
先生を助けたいというのは、彼らの共通認識なのだろう。その重要なキーワードを得られただけでも大きな収穫だった。
ツバキは床に残された緑のレインコートを拾い上げ、彼が最後に指し示した施設の奥へと足を踏み入れていく。
戦況は、逃げる子供を死霊系のモンスターが追うといった状況だが、逃げながら放つ子供の魔法がモンスターに命中すると、一撃で大ダメージを与える程強力で苦戦しているといった様子はない。
だが、別の場所から壁を擦り抜けてきたモンスターが、逃げ回る少年に襲い掛かる。ツバキはすぐに足に取り付けられたガジェットを起動し、少年の背後に迫るモンスターへ魔石から送られる魔力を帯びた攻撃を放つ。
「炎舞脚ッ!!」
宙を舞いながら回転し、ガジェットのブースト機能を利用した強烈な勢いで振るわれる炎を纏った足技をお見舞いする。モンスターは引火した羽毛のように燃え上がり、悲鳴を上げながら姿を消した。
「大丈夫かッ!?」
少年の元へ辿り着いたツバキが、その深く被ったフードを剥がさぬようにレインコートの少年の肩に触れる。すると少年は小さく頷き、何やら小さな声で何かをツバキに伝えようとしている。
少年の声に耳を傾けるツバキは、まだ周囲に気配を残すモンスターの影に警戒しながら、先程の攻撃で消耗した足のガジェットに取り付けられた魔石を交換する。
「アッチ・・・トモダチ・・・イル。タスケル・・・」
そう言って少年が指差した方向には、また別の部屋へ通じているであろう扉があった。
「あぁ、分かった。助けられた借りは返す!・・・だが今は、安全を確保しねぇと・・・」
足に魔石を補充したツバキが立ち上がろうとすると、少年はツバキの服を引っ張り静止させる。何故引き止めるのかとツバキが振り返ると、少年は首を小さく横へ振っていた。
「カズ・・・ヘラナイ。マモノ・・・キエナイ・・・」
「・・・あぁ?何だって?」
如何やら少年が言うには、ここに出現する死霊系のモンスターは、倒しても倒しても次から次へと湧いて出てくるのだという。つまり、この施設に安全な場所を作るというのは不可能だという事だろう。
モンスターを出現させている何か、或いは呼び寄せている物を止めない限りは、止まることはない。他のレインコートの子供達を助ける為には、モンスターと戦いながらじゃなければならないようだ。
「つまり節約しろってことか。だが、事が済むまで魔石が保つかどうか・・・」
ツバキが手持ちの魔石の数を確認していると、その側で緑のレインコートを着た少年が、自らフードを外していた。前回の自らフードを外した少女同様に、彼もまたそれを外せば如何なるのか、理解してやっているように思える。
「なッ!?お前それッ・・・。如何なるか分かって・・・」
「・・・大丈夫、分かってるよ。ここでの僕達は、これを脱いでは存在できない。でもこれは“先生“が残してくれたものだから・・・。僕達を繋ぎ止める、唯一のものだから・・・」
「繋ぎ止める・・・?」
またしても意味深な語りで話し出す少年。何処かへ“帰る“だの“繋ぎ止める“だの、ツバキには何のことなのかさっぱり分からないが、彼らがここに留まる為の制約か何かの類なのだと把握する。
「そう。僕達はここに“望んで“留まっている。それは僕達に“感情“を教えてくれた“先生“を助ける為なんだ」
彼らが挙って口にする“先生“と呼ぶ人物。恐らくこの施設の人間であるとみて間違いないだろう。更に言えば、ツバキがこの研究施設に足を踏み入れて最初に目にした研究日誌。
それを記した人物こそ、彼らの口にする“先生“と呼ぶ人物なのかもしれない。地下で見た書類の中には、被検体自体に興味を示すような文言は書かれていなかった。
その事からも、この研究施設の中には人としての道徳心を失った者達が殆どであったことが想像に容易い。
「その“先生“ってのが、この空間を作り出してるのか?」
「そうだね、不本意ではあるだろうけど・・・。おや?もう時間なのか・・・」
これまでにないほど情報を吐き出してくれた少年の身体は、他の子供達と同様に消え始めていた。
「不本意?その先生ってのは、何が目的なんだ?」
「先生は、僕達を苦しませまいと、僕達の“意識“だけをこの施設に留めたんだ。けど、それは先生を永遠に苦しめる事になる。だから・・・」
彼の身体は、既に現世にその形を保っていられないほど消えかけていた。声ももう出なくなってしまったのだろう。それ以上、緑のレインコートの少年が口を開く事はなかった。
「分かった。お前達は俺の命の恩人だ。その先生の事は任せてくれ・・・!」
ツバキの言葉を聞いて、少年は満面の笑みを浮かべて姿を消し、残されたレインコートだけが床に落ちた。
これで漸く、脱出の手掛かりが掴めた。恐らくは、彼らの言う先生と呼ばれる人物を解放することで、この謎の空間から抜け出すことができるのかもしれない。
漠然としていた目標は形を成し、不安を抱えていたツバキの身体を突き動かす原動力となった。
存在が消えることに対し、抵抗を持っていない様子の子供達。それでもツバキの方からそれを強制するのは気が引ける。だが、先程の少年のように、もしかしたら自ら話をしてくれるかもしれない。
先生を助けたいというのは、彼らの共通認識なのだろう。その重要なキーワードを得られただけでも大きな収穫だった。
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