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刃が鱗に触れる。鋼鉄に輝く鱗はツクヨの持つ刀剣に触れた途端、真っ二つに両断され、獣人の肉体強化が施された後とは思えぬ程簡単に切られると、そのまま時は加速したように現実の速さに戻る。
蛇女の太く大きな尻尾は瞬く間に両断され切り飛ばされると、研究室の壁を突き破らんとする勢いで吹き飛んでいく。瓦礫を巻き込み大きな音を響かせて吹き飛んだ尻尾は、まだ神経が残っているのかその場でピクピクと動いていた。
「なッ・・・!」
「何じゃ!?一体何が起きたッ!?」
その場にいた誰もが状況を理解できず混乱していた。一人冷静な精神状態を取り戻していたツクヨは、蛇女の尻尾を切り捨てた後、顔を上げて素早く本体のある上半身まで飛び上がり、次なる一撃を見舞う為に行動を起こしていた。
彼のその姿を捉えた蛇女はすぐに我に帰ると、複数ある腕の四本を使い白刃取りのように受け止める。だが先の威力を見るに、到底受け止められるような斬撃では無かった。
反応の遅れた身ではツクヨの一撃を完全に受け止めることは不可能だと判断した蛇女は、実験を兼ねて受け止めようとしていたのだ。身体を後ろへ仰反らせながら、残りの腕で自身の身を最大限に硬化させる魔法を掛けていた。
ツクヨは空中で剣を振り下ろし切って、反対側に立つアズールの元へ着地した。彼が剣を振り下ろし切ったことからも、蛇女が今の一撃を受け止められなかったことが窺える。
蛇女の四本の掌からは血飛沫が飛び散り、両断するまでには至らなかったものの、蛇女の上半身に胸部から腰に掛けて大きな切り傷を残していった。
「くッ・・・!この下郎がッ!!」
「アズール!畳み掛けるよ」
「お前ッ・・・!その手・・・」
彼の手は自身のものか切り伏せた蛇女の返り血によるものか赤黒い液体で染まり、滴ると言う表現では些か足りない勢いで流血していた。彼自身、痛みによるダメージを受けているはずだが、精神がその痛みを凌駕しているのだろう。
気にする素振りもなくツクヨは黒く染まった剣を握りしめ、覚悟の眼差しを目の前の敵に向けていた。
「分かってる・・・恐らく時間は限られているだろうね。けど・・・だからこそ!その限られた時間内に、やれるだけのことをしよう!揺動とサポートをお願いしたい、手を貸してくれッ!」
「ッ・・・頼りにする!」
左右に分かれ動き出したツクヨとアズール。蛇女が注視するのは、その殺傷能力からもツクヨだった。当然だろう。自身に真面にダメージを与えるのに苦労を強いられるアズールは対策が可能だ。
それに引き換え、突如として強敵となって現れたツクヨの一撃は、一振りで身体を両断する程に強力な致命傷になり得る威力を持っている。先にどうにかしなければならないのがどちらかなのは、火を見るよりも明らかだ。
掌に付けられた傷と上半身の大きな切り傷は浅く、一瞬にして何事もなかったかのように再生していく。その能力も他種族の能力から奪い取ったものなのだろうか、再び体勢を立て直した蛇女はすかさずツクヨに対し、近づけぬように風の刃を幾つも見舞う。
「武器になるような物など、全て取り上げた筈ッ・・・。何だ、あの剣は!?」
素早い身のこなしと剣捌きで風の刃を防ぎながら走り抜けるツクヨ。相手にされなかったアズールはその隙に蛇女の背後へと回る。だが取り巻きのラミア達が行く手を阻もうと立ち塞がっている。
「今更貴様らなんぞ、相手にならんッ!」
力強い踏み込みで一瞬にして間合いを詰めると、先頭のラミアの頭を鷲掴みにし、勢いよく地面に叩きつける。一撃でねじ伏せてラミアの身体を持ち上げ、その場で勢いをつけて母体の蛇女へ向けて投げつける。
しかし、またして防御の役割を担っている腕が背中で手を合わせ、光の障壁を生み出し衝突を防ぐ。
「チッ!後ろに目でも付いてるのかよッ!?」
視線の端でアズールも捉えながらも、蛇女はツクヨの動きに集中する。周囲を回るように動いていたツクヨは、このまま行くと反対側にいたアズールの元へと合流する。
「タイミングを見誤ったのかえ?このままでは、お仲間の獣と合流してしまうぞ?」
無言のまま駆け抜けるツクヨは、アズールの前に立ち塞がるラミアの群れの中へと突入する。するとその瞬間、彼の姿が一瞬にして消えたのだ。人のサイズに近いラミアの身体に隠れ身を隠したにしては、移動する姿が見当たらない。
「ッ?何じゃ、どこへ消えた!?」
風の刃を止めて、見失ったツクヨの姿を探す蛇女。既にその場から離れたことも考慮し、僅かに周囲へ視線をズラした瞬間、光を反射する輝きに目を奪われる。
ツクヨはその反射する光とは逆方向から現れた。蛇女の視界外から隙を突いた見事なタイミング。既に蛇女の上半身を両断できる位置にまで接近していたツクヨは、全身全霊の一振りを放つ。
彼の手に手応えはあった。身を翻し着地したツクヨは、自身の放った一撃が生み出した結果が如何様な物であるかを確かめようと振り返る。
蛇女の身体は不自然に傾き、血飛沫を巻き上げてその上半身がずるりと下半身の断面から滑り落ちていた。
「ぁぁ・・・馬鹿なッ・・・!」
身体には獣人の肉体強化と、魔法による防御魔法を施したようなエフェクトが、今にも消えそうな火が立ち上らせる煙のように残っていた。強化が間に合わなかったのか、掛けても尚ツクヨの一撃の前には効果が無かったのか。
背後を取ったはずの一撃に、よくぞそこまで迎え撃つ準備ができていたと驚く程の対応だったが、上回ったのはツクヨだった。
生々しい音と共に地面に落ちる蛇女の上半身。そして支えとなっていた下半身も司令塔を失ったかのように崩れ落ちる。
息を持つかせぬ一瞬の出来事に、ツクヨは自分でも知らず知らずの内に止めていた息を大きく吐き出した。
その直後、ツクヨの身体がかまいたちに襲われたかのように切られた。血を噴き出す傍腹に手を当て、何が起きたか分からぬといった様子で傷口に視線を落とす。
「・・・えっ・・・?」
蛇女の太く大きな尻尾は瞬く間に両断され切り飛ばされると、研究室の壁を突き破らんとする勢いで吹き飛んでいく。瓦礫を巻き込み大きな音を響かせて吹き飛んだ尻尾は、まだ神経が残っているのかその場でピクピクと動いていた。
「なッ・・・!」
「何じゃ!?一体何が起きたッ!?」
その場にいた誰もが状況を理解できず混乱していた。一人冷静な精神状態を取り戻していたツクヨは、蛇女の尻尾を切り捨てた後、顔を上げて素早く本体のある上半身まで飛び上がり、次なる一撃を見舞う為に行動を起こしていた。
彼のその姿を捉えた蛇女はすぐに我に帰ると、複数ある腕の四本を使い白刃取りのように受け止める。だが先の威力を見るに、到底受け止められるような斬撃では無かった。
反応の遅れた身ではツクヨの一撃を完全に受け止めることは不可能だと判断した蛇女は、実験を兼ねて受け止めようとしていたのだ。身体を後ろへ仰反らせながら、残りの腕で自身の身を最大限に硬化させる魔法を掛けていた。
ツクヨは空中で剣を振り下ろし切って、反対側に立つアズールの元へ着地した。彼が剣を振り下ろし切ったことからも、蛇女が今の一撃を受け止められなかったことが窺える。
蛇女の四本の掌からは血飛沫が飛び散り、両断するまでには至らなかったものの、蛇女の上半身に胸部から腰に掛けて大きな切り傷を残していった。
「くッ・・・!この下郎がッ!!」
「アズール!畳み掛けるよ」
「お前ッ・・・!その手・・・」
彼の手は自身のものか切り伏せた蛇女の返り血によるものか赤黒い液体で染まり、滴ると言う表現では些か足りない勢いで流血していた。彼自身、痛みによるダメージを受けているはずだが、精神がその痛みを凌駕しているのだろう。
気にする素振りもなくツクヨは黒く染まった剣を握りしめ、覚悟の眼差しを目の前の敵に向けていた。
「分かってる・・・恐らく時間は限られているだろうね。けど・・・だからこそ!その限られた時間内に、やれるだけのことをしよう!揺動とサポートをお願いしたい、手を貸してくれッ!」
「ッ・・・頼りにする!」
左右に分かれ動き出したツクヨとアズール。蛇女が注視するのは、その殺傷能力からもツクヨだった。当然だろう。自身に真面にダメージを与えるのに苦労を強いられるアズールは対策が可能だ。
それに引き換え、突如として強敵となって現れたツクヨの一撃は、一振りで身体を両断する程に強力な致命傷になり得る威力を持っている。先にどうにかしなければならないのがどちらかなのは、火を見るよりも明らかだ。
掌に付けられた傷と上半身の大きな切り傷は浅く、一瞬にして何事もなかったかのように再生していく。その能力も他種族の能力から奪い取ったものなのだろうか、再び体勢を立て直した蛇女はすかさずツクヨに対し、近づけぬように風の刃を幾つも見舞う。
「武器になるような物など、全て取り上げた筈ッ・・・。何だ、あの剣は!?」
素早い身のこなしと剣捌きで風の刃を防ぎながら走り抜けるツクヨ。相手にされなかったアズールはその隙に蛇女の背後へと回る。だが取り巻きのラミア達が行く手を阻もうと立ち塞がっている。
「今更貴様らなんぞ、相手にならんッ!」
力強い踏み込みで一瞬にして間合いを詰めると、先頭のラミアの頭を鷲掴みにし、勢いよく地面に叩きつける。一撃でねじ伏せてラミアの身体を持ち上げ、その場で勢いをつけて母体の蛇女へ向けて投げつける。
しかし、またして防御の役割を担っている腕が背中で手を合わせ、光の障壁を生み出し衝突を防ぐ。
「チッ!後ろに目でも付いてるのかよッ!?」
視線の端でアズールも捉えながらも、蛇女はツクヨの動きに集中する。周囲を回るように動いていたツクヨは、このまま行くと反対側にいたアズールの元へと合流する。
「タイミングを見誤ったのかえ?このままでは、お仲間の獣と合流してしまうぞ?」
無言のまま駆け抜けるツクヨは、アズールの前に立ち塞がるラミアの群れの中へと突入する。するとその瞬間、彼の姿が一瞬にして消えたのだ。人のサイズに近いラミアの身体に隠れ身を隠したにしては、移動する姿が見当たらない。
「ッ?何じゃ、どこへ消えた!?」
風の刃を止めて、見失ったツクヨの姿を探す蛇女。既にその場から離れたことも考慮し、僅かに周囲へ視線をズラした瞬間、光を反射する輝きに目を奪われる。
ツクヨはその反射する光とは逆方向から現れた。蛇女の視界外から隙を突いた見事なタイミング。既に蛇女の上半身を両断できる位置にまで接近していたツクヨは、全身全霊の一振りを放つ。
彼の手に手応えはあった。身を翻し着地したツクヨは、自身の放った一撃が生み出した結果が如何様な物であるかを確かめようと振り返る。
蛇女の身体は不自然に傾き、血飛沫を巻き上げてその上半身がずるりと下半身の断面から滑り落ちていた。
「ぁぁ・・・馬鹿なッ・・・!」
身体には獣人の肉体強化と、魔法による防御魔法を施したようなエフェクトが、今にも消えそうな火が立ち上らせる煙のように残っていた。強化が間に合わなかったのか、掛けても尚ツクヨの一撃の前には効果が無かったのか。
背後を取ったはずの一撃に、よくぞそこまで迎え撃つ準備ができていたと驚く程の対応だったが、上回ったのはツクヨだった。
生々しい音と共に地面に落ちる蛇女の上半身。そして支えとなっていた下半身も司令塔を失ったかのように崩れ落ちる。
息を持つかせぬ一瞬の出来事に、ツクヨは自分でも知らず知らずの内に止めていた息を大きく吐き出した。
その直後、ツクヨの身体がかまいたちに襲われたかのように切られた。血を噴き出す傍腹に手を当て、何が起きたか分からぬといった様子で傷口に視線を落とす。
「・・・えっ・・・?」
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