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束の間の宴
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それほど深く考えて聞いた話ではなかったのだが、結果として街に着くまでの時間潰しにはなった。
一行の帰還を迎えたのは、関所に滞在する獣人族や人間達だった。目的の食料をその場に預け、ミアはガルムらと別れ、ガルムら一部の者達はアズールのところへ向かった。
森の足元くらいしか見えぬ暗さとは違い、復興作業に追われる彼らを照らす明かりの中、シン達と滞在していた巨大樹へ歩みを進めるミア。その背後に迫る影があった。
何者かの怪しげな気配を察したミアは、その者が背後に近づき手を伸ばしたところで、護身術でその手を捻りあげると意外にもその手は軽く、その人物の持ち上げてしまうミア。
「お前・・・何やってんだ?」
「いてててッ!悪かった悪かった!ちょっと脅かしてやろうと思っただけなんだって!だから離してくれよ、ミア!」
彼女の背後に歩み寄っていたのは、帰りを待っていたツバキだった。先に彼女の姿を見つけたツバキは、待たせた仕返しにとミアを驚かせる計画を企てた。
ミアの性格をよく知るシンはやめておいた方がいいと助言したのだが、悪巧みをするツバキはそんなシンの言葉も聞かず、嬉しそうに作戦を考えていた。
獣人ほどの気配感知能力を持っていないミアは、近づいてくるまで自分をつけている者がいるなど気づかず、ある程度の範囲に入ったところで漸くツバキの存在に気がつく。
しかし、それでもまだ目視していないので、後をつけて来ている者がツバキとは分からない状態にあった。故に掴み上げるまでその人物が誰なのか分からなかったのだ。
痛がるツバキを下ろすと、後ろの方から歩いてくる数人の姿がミアの視界に入る。街灯に照らされたその者達の顔は、今のミアにとって誰よりも安心できる人達の顔だった。
「おかえり、ミア」
「遅かったね。狩猟っていうのはやっぱり夜がいいのかい?」
「心配しましたよ?女性が夜にこんな危ない森にいるなんて!虫に刺されたりしてませんか?」
皆、一様に思いの丈を彼女にぶつけるように言葉をたたみ掛ける。ミアはやれやれといった表情で首を振ると、顔を上げると同時に安心したような表情へと変わっていた。
「おいおい、いっぺんに喋るな」
心の拠り所へと戻った彼女は、彼らから向けられる質問に順番に答えると、今度はミアが疑問に思っていたことを彼らに返した。
「まさかずっと待ってたのか?」
「いや、俺とツクヨは・・・」
シンがミアの質問に答えようとしたところで、手を捻り上げられたツバキと三人の帰りを待っていたアカリ達が一気に捲し立てる。
「ずっと待ってたんだよッ!」
「ずっと待ってましたよッ!?」
「ピィィィーーーーーーッ!」
「うおっ!?何だってコイツらこんなに・・・」
ツバキとアカリに挟まれ、そのあまりの勢いにたじたじになるミアの様子を見てシンとツクヨは笑っていた。そんな二人に笑ってないで助けろと声を掛けるが、彼らもまたリナムルへ帰ってきた時に二人の洗礼を受けていたのだ。
一人だけ何事もなく戻れると思うなと言わんばかりに、シンとツクヨは助ける素振りを見せない。
こうして、微笑ましい再会を無事に迎える事ができた一行は、アカリの経験した事のないという“祭り“というものを、擬似的に満喫することにした。
定番のリンゴ飴や果物をキンキンに冷やした食べ物などは、リナムルで採れる果物で代用されており、美味そうな匂いを漂わせる屋台には、研究員が獣人族達が捕ってきたモンスターの肉を、人やエルフでも食べられるように魔力抜きし、見るからに白米が進みそうな見た目をした料理へと昇格させていた。
他にも、エルフ族が蓄えていた珍しい花などを使った髪飾りや、植物の蜜やハーブを使った飲み物などがあり、健康に良さそうな様々な成分を集めた苦いドリンクを罰ゲームにし、賭け事をして負けた方が飲むといった楽しみ方もしたりしていた。
リナムルの街の店は様々な種族による出店や工芸品などを作ったり材料を加工する、仮設の簡易テントなどで一杯だった。それこそ全ては回りきれない程に彼らの好奇心を刺激し、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
街灯の明かり以外にも、リナムルの街を照らすものが森の奥に顔を覗かせる。復興に努める者達の活気は衰えを知らず、交代で作業を継続させ続けているのだろう。
屋台を周り遊び疲れたのか、ツバキとアカリは良い匂いのする木材で作られた長椅子で寄り添うように眠っている。豪快に口を開けながらいびきをかくツバキと、何処かの令嬢かのように上品に眠るアカリ。
そして彼女の抱える紅葉は、二人が夜明けの風に病を患わせないように、暖かな熱を蓄え大人しくしている。
店のテラスに座り、エルフ族や獣人族が好むという珍しいお酒を嗜みながら、そんな子供のような二人を見守るシン達だったが、案の定ミアだけは飲み過ぎて二人よりも先に酔い潰れていた。
一行の帰還を迎えたのは、関所に滞在する獣人族や人間達だった。目的の食料をその場に預け、ミアはガルムらと別れ、ガルムら一部の者達はアズールのところへ向かった。
森の足元くらいしか見えぬ暗さとは違い、復興作業に追われる彼らを照らす明かりの中、シン達と滞在していた巨大樹へ歩みを進めるミア。その背後に迫る影があった。
何者かの怪しげな気配を察したミアは、その者が背後に近づき手を伸ばしたところで、護身術でその手を捻りあげると意外にもその手は軽く、その人物の持ち上げてしまうミア。
「お前・・・何やってんだ?」
「いてててッ!悪かった悪かった!ちょっと脅かしてやろうと思っただけなんだって!だから離してくれよ、ミア!」
彼女の背後に歩み寄っていたのは、帰りを待っていたツバキだった。先に彼女の姿を見つけたツバキは、待たせた仕返しにとミアを驚かせる計画を企てた。
ミアの性格をよく知るシンはやめておいた方がいいと助言したのだが、悪巧みをするツバキはそんなシンの言葉も聞かず、嬉しそうに作戦を考えていた。
獣人ほどの気配感知能力を持っていないミアは、近づいてくるまで自分をつけている者がいるなど気づかず、ある程度の範囲に入ったところで漸くツバキの存在に気がつく。
しかし、それでもまだ目視していないので、後をつけて来ている者がツバキとは分からない状態にあった。故に掴み上げるまでその人物が誰なのか分からなかったのだ。
痛がるツバキを下ろすと、後ろの方から歩いてくる数人の姿がミアの視界に入る。街灯に照らされたその者達の顔は、今のミアにとって誰よりも安心できる人達の顔だった。
「おかえり、ミア」
「遅かったね。狩猟っていうのはやっぱり夜がいいのかい?」
「心配しましたよ?女性が夜にこんな危ない森にいるなんて!虫に刺されたりしてませんか?」
皆、一様に思いの丈を彼女にぶつけるように言葉をたたみ掛ける。ミアはやれやれといった表情で首を振ると、顔を上げると同時に安心したような表情へと変わっていた。
「おいおい、いっぺんに喋るな」
心の拠り所へと戻った彼女は、彼らから向けられる質問に順番に答えると、今度はミアが疑問に思っていたことを彼らに返した。
「まさかずっと待ってたのか?」
「いや、俺とツクヨは・・・」
シンがミアの質問に答えようとしたところで、手を捻り上げられたツバキと三人の帰りを待っていたアカリ達が一気に捲し立てる。
「ずっと待ってたんだよッ!」
「ずっと待ってましたよッ!?」
「ピィィィーーーーーーッ!」
「うおっ!?何だってコイツらこんなに・・・」
ツバキとアカリに挟まれ、そのあまりの勢いにたじたじになるミアの様子を見てシンとツクヨは笑っていた。そんな二人に笑ってないで助けろと声を掛けるが、彼らもまたリナムルへ帰ってきた時に二人の洗礼を受けていたのだ。
一人だけ何事もなく戻れると思うなと言わんばかりに、シンとツクヨは助ける素振りを見せない。
こうして、微笑ましい再会を無事に迎える事ができた一行は、アカリの経験した事のないという“祭り“というものを、擬似的に満喫することにした。
定番のリンゴ飴や果物をキンキンに冷やした食べ物などは、リナムルで採れる果物で代用されており、美味そうな匂いを漂わせる屋台には、研究員が獣人族達が捕ってきたモンスターの肉を、人やエルフでも食べられるように魔力抜きし、見るからに白米が進みそうな見た目をした料理へと昇格させていた。
他にも、エルフ族が蓄えていた珍しい花などを使った髪飾りや、植物の蜜やハーブを使った飲み物などがあり、健康に良さそうな様々な成分を集めた苦いドリンクを罰ゲームにし、賭け事をして負けた方が飲むといった楽しみ方もしたりしていた。
リナムルの街の店は様々な種族による出店や工芸品などを作ったり材料を加工する、仮設の簡易テントなどで一杯だった。それこそ全ては回りきれない程に彼らの好奇心を刺激し、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
街灯の明かり以外にも、リナムルの街を照らすものが森の奥に顔を覗かせる。復興に努める者達の活気は衰えを知らず、交代で作業を継続させ続けているのだろう。
屋台を周り遊び疲れたのか、ツバキとアカリは良い匂いのする木材で作られた長椅子で寄り添うように眠っている。豪快に口を開けながらいびきをかくツバキと、何処かの令嬢かのように上品に眠るアカリ。
そして彼女の抱える紅葉は、二人が夜明けの風に病を患わせないように、暖かな熱を蓄え大人しくしている。
店のテラスに座り、エルフ族や獣人族が好むという珍しいお酒を嗜みながら、そんな子供のような二人を見守るシン達だったが、案の定ミアだけは飲み過ぎて二人よりも先に酔い潰れていた。
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(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
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