1,146 / 1,646
心地よい酔いの中で
しおりを挟む
このような仲間達と一緒に過ごす宴は、海でのレースを終え世界的にも有名な三大海賊らと酒を酌み交わした時以来だった。
今にして思えば、それからシンは暫くの間現実の世界へと戻り、そこで異変がもたらす影響を目の当たりにした。新たな仲間や敵対組織、そしてWoFの世界では未だに発見できていないアサシンギルドの面々との共闘など、短期間で経験するにはあまりに多過ぎる情報量を出来るだけ記憶の中に留めてきた。
それが同じ境遇にあるミアやツクヨの為にもなると信じて。それに情報の整理は、そのアサシンギルドの仲間である白獅がシンに代わりやってくれている。
彼らもまた、元の世界へ戻る為に現実世界で情報を集め、シンにはもう一つの世界であるWoFの世界の調査を任せることになった。
「こんなにゆっくり話のも、久しぶりだよね!」
「あぁ、何だか不思議な気分になる」
「不思議?」
シンのこれまでの人生では、想像もつかないほど多くの出会いがあった。友人だと思っていた者の裏切りにより孤立し世界を閉ざした彼は、極力人との関わりを持たないようにしてきた。また裏切られ、自分が傷つくのが嫌だったからだ。
それが“異変“をきっかけにミアに出会いツクヨに出会い、ツバキやアカリと紅葉というこちらの世界の仲間にも出会った。今までの日常では到底出会う事のなかった者達との出会いは、シンの心を豊かにし、空っぽだった鳥籠に色鮮やかな光景と世界を与えた。
危険なことには代わりないが、変化のない閉ざされた毎日を過ごすよりもずっと充実していて、いつか心の中で願っていた友との他愛の無い時間を過ごすという夢も叶ったとシンはツクヨに語った。
酒が入り、普段ではあまり話すことのなかった自分の過去をツクヨに語るシン。それを聞いて彼は、自分ごとのように親身になってシンの話に没頭し、涙を流していた。
「分かるッ!分かるよぉ~。私も現実の世界で生きていただけじゃ体験することもなかった世界のことを知れたし、色んな人達の色んな場所での生活に触れてきた。如何に自分が閉ざされた世界に生きてきたのかを実感したよ!」
熱の入るツクヨの語りに、シンも思わず頷き共感する。ツバキやアカリの前で話せない話題で大いに盛り上がった二人はそのまま現実の世界では味わえないような酒を口にしながら、徐々に眠気に襲われ先にどっちが寝てしまったのかさえ分からないまま眠りについた。
シンが目を覚ます時には、既に陽は一番高いところまで昇っており、二人が飲み明かしていたテラスには、仕事を終えた者達が彼らと同じように疲れを癒しにやって来ていた。
「う・・・頭がっ・・・いつまで寝てたんだ?」
「やっとお目覚めか?酒に溺れるなんて、人のこと言えないじゃないか」
頭を抑えうなされていたシンの元へやって来たのは、青白い顔をしたミアだった。彼女は何故かウンディーネと共におり、魔法をかけられているのかその身体からは淡い緑色をしたエフェクトが発生していた。
「何を言ってるのよ、ミア。貴方もこんな事が必要になる程飲まないでよね!」
「・・・何してるんだ?」
どうやらミアも、あの酔い潰れていた後に目を覚ますと、昼間から再び新しい酒を飲み直していたようだった。あまりにもアルコールを摂取し続けたせいか、ウンディーネの介護が必要となるほどふらふらになっていたのだという。
「人間の身体の半分以上は水分で出来てるんだよ。なら水の精霊にはもってこいの分野じゃん?だからこうして・・・うっぷ・・・」
「いい加減その瓶を手放しなさいよ!」
「大きい声を出すなって。頭に響くから・・・」
いつも通りのミアの様子を見て、驚くと共に安堵したシンは他のみんなはどうしているのかと彼女に問うと、何も言わずに指差したベンチのところにツクヨが横たわり眠っていた。
ツバキとアカリ達は、酒の匂いを漂わせる彼らを見て呆れたのか、目を覚ましたら呼んでくれといい、各々再び興味を引かれる場所へと向かっていったのだという。
「折角集まれたのに、またバラバラになったのか・・・」
「まぁ・・・今回ばかりはあの子らが正しいわな。ツクヨ起こして迎えに行こうか」
そういうとミアは、ウンディーネに言われた通り酒瓶をテーブルの上に置き、ベンチに眠るツクヨの身体を揺すり声をかける。
木漏れ日に目を細めながら立ち上がったシンは、大きく両腕を上に上げて身体を伸ばす。人の手が加えられた街中とはいえ、ここリナムルは森に囲まれた街故に、空気も他の街とは全くといっていいほど違った。
深呼吸をして身体に取り込んだ空気は澄み切っており、まるで身体中に染み渡るかのように全身に空気が行き渡るのを感じるようだった。
眠そうに目を覚ましたツクヨを連れ、三人はまずアカリが向かったという植物を使った薬や強化効果を持つアイテムの精製をしているとい施設へと赴く。
そこではWoF内に存在するアイテムの他、こちらの世界の住人でも使うような薬や道具が作られていた。
今にして思えば、それからシンは暫くの間現実の世界へと戻り、そこで異変がもたらす影響を目の当たりにした。新たな仲間や敵対組織、そしてWoFの世界では未だに発見できていないアサシンギルドの面々との共闘など、短期間で経験するにはあまりに多過ぎる情報量を出来るだけ記憶の中に留めてきた。
それが同じ境遇にあるミアやツクヨの為にもなると信じて。それに情報の整理は、そのアサシンギルドの仲間である白獅がシンに代わりやってくれている。
彼らもまた、元の世界へ戻る為に現実世界で情報を集め、シンにはもう一つの世界であるWoFの世界の調査を任せることになった。
「こんなにゆっくり話のも、久しぶりだよね!」
「あぁ、何だか不思議な気分になる」
「不思議?」
シンのこれまでの人生では、想像もつかないほど多くの出会いがあった。友人だと思っていた者の裏切りにより孤立し世界を閉ざした彼は、極力人との関わりを持たないようにしてきた。また裏切られ、自分が傷つくのが嫌だったからだ。
それが“異変“をきっかけにミアに出会いツクヨに出会い、ツバキやアカリと紅葉というこちらの世界の仲間にも出会った。今までの日常では到底出会う事のなかった者達との出会いは、シンの心を豊かにし、空っぽだった鳥籠に色鮮やかな光景と世界を与えた。
危険なことには代わりないが、変化のない閉ざされた毎日を過ごすよりもずっと充実していて、いつか心の中で願っていた友との他愛の無い時間を過ごすという夢も叶ったとシンはツクヨに語った。
酒が入り、普段ではあまり話すことのなかった自分の過去をツクヨに語るシン。それを聞いて彼は、自分ごとのように親身になってシンの話に没頭し、涙を流していた。
「分かるッ!分かるよぉ~。私も現実の世界で生きていただけじゃ体験することもなかった世界のことを知れたし、色んな人達の色んな場所での生活に触れてきた。如何に自分が閉ざされた世界に生きてきたのかを実感したよ!」
熱の入るツクヨの語りに、シンも思わず頷き共感する。ツバキやアカリの前で話せない話題で大いに盛り上がった二人はそのまま現実の世界では味わえないような酒を口にしながら、徐々に眠気に襲われ先にどっちが寝てしまったのかさえ分からないまま眠りについた。
シンが目を覚ます時には、既に陽は一番高いところまで昇っており、二人が飲み明かしていたテラスには、仕事を終えた者達が彼らと同じように疲れを癒しにやって来ていた。
「う・・・頭がっ・・・いつまで寝てたんだ?」
「やっとお目覚めか?酒に溺れるなんて、人のこと言えないじゃないか」
頭を抑えうなされていたシンの元へやって来たのは、青白い顔をしたミアだった。彼女は何故かウンディーネと共におり、魔法をかけられているのかその身体からは淡い緑色をしたエフェクトが発生していた。
「何を言ってるのよ、ミア。貴方もこんな事が必要になる程飲まないでよね!」
「・・・何してるんだ?」
どうやらミアも、あの酔い潰れていた後に目を覚ますと、昼間から再び新しい酒を飲み直していたようだった。あまりにもアルコールを摂取し続けたせいか、ウンディーネの介護が必要となるほどふらふらになっていたのだという。
「人間の身体の半分以上は水分で出来てるんだよ。なら水の精霊にはもってこいの分野じゃん?だからこうして・・・うっぷ・・・」
「いい加減その瓶を手放しなさいよ!」
「大きい声を出すなって。頭に響くから・・・」
いつも通りのミアの様子を見て、驚くと共に安堵したシンは他のみんなはどうしているのかと彼女に問うと、何も言わずに指差したベンチのところにツクヨが横たわり眠っていた。
ツバキとアカリ達は、酒の匂いを漂わせる彼らを見て呆れたのか、目を覚ましたら呼んでくれといい、各々再び興味を引かれる場所へと向かっていったのだという。
「折角集まれたのに、またバラバラになったのか・・・」
「まぁ・・・今回ばかりはあの子らが正しいわな。ツクヨ起こして迎えに行こうか」
そういうとミアは、ウンディーネに言われた通り酒瓶をテーブルの上に置き、ベンチに眠るツクヨの身体を揺すり声をかける。
木漏れ日に目を細めながら立ち上がったシンは、大きく両腕を上に上げて身体を伸ばす。人の手が加えられた街中とはいえ、ここリナムルは森に囲まれた街故に、空気も他の街とは全くといっていいほど違った。
深呼吸をして身体に取り込んだ空気は澄み切っており、まるで身体中に染み渡るかのように全身に空気が行き渡るのを感じるようだった。
眠そうに目を覚ましたツクヨを連れ、三人はまずアカリが向かったという植物を使った薬や強化効果を持つアイテムの精製をしているとい施設へと赴く。
そこではWoF内に存在するアイテムの他、こちらの世界の住人でも使うような薬や道具が作られていた。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる