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誘導
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だがシンはそれで満足もしていた。ギルドの仲間達やゲーム内で知り合った人達と楽しむのには、それ以上の力や能力などを望んではいなかった。彼曰く、作業が増えると操作に支障をきたしそう。今更新しいことを覚えるのは大変だというのも理由として大きかったようだが。
「そっか。まぁ確かに、そんなに困らないか。それにシンがそんな風に思うんじゃ、私には到底使いこなせそうにないかもなぁ~」
「今のクラスと遠いものを想像するからいけないんじゃないのか?アタシのようにメインクラスを支援するようなクラスを選べば、今以上に戦略が広がるってもんだと思うけどな」
「ミアは器用だから」
「嫌味か?」
「そうじゃないけど・・・羨ましいなって思うよ」
ユーザー目線での話を展開するシン達は、いつの間にかいなくなっていたアカリについてミアに問う。彼女は唯一ツバキの机の方へ向かわなかったので、アカリの行方について何か知ってる筈だ。
「そういえばアカリは?姿が見えないけど・・・」
「外で待ってるってよ。紅葉が外の空気を吸いたいって。色々削ったり薬品の匂いでまいっちまったんだろ」
「それは悪いことをしたな・・・。一人にしておくのも何だし、俺も外で待ってるよ」
そういうとシンは、ツバキを待つミアとツクヨと別れ、施設の外へと出ていった。外の空気はアカリが紅葉から聞いた通り澄み切っていた。吸っていて気持ちいと分かる程の空気を身体に取り込み、シンは周囲を見渡してアカリと紅葉を探す。
すると彼女は近くのベンチに腰を下ろし、紅葉は羽を広げて気持ちよさそうに彼女の周りを低空飛行で旋回していた。
「アカリ、話が長くなっちゃってごめん」
「いえ、私は大丈夫です。それにほら、紅葉も気持ちよさそうに飛んでますし」
「ピィィィ!」
成長した姿で嬉しそうに羽を広げる紅葉と、それを嬉しそうに笑顔で見届けるアカリの姿は子供を持たぬシンであっても微笑ましいシーンの一つとして、リナムルの思い出に追加された。
「ねぇ、シンさん。次はどんな街に行く予定なのかしら?」
「そうだなぁ・・・。アークシティっていう、この世界でも最先端の技術力を持ってるっていうところを目指してるんだけど、そこに向かう為にはまだ幾つも街を超えて行かないといけないみたいでね・・・」
オルレラの街からの因縁でアークシティという巨大な国なのか街なのか。そこを目指すようになった一行は、これまでの苦難は黒いコートの人物の差金なのではないかと疑い始めていた。
クエストの循環が乱れた時に、それを正す為に現れる。つまり、シン達がアークシティを目指し、様々なクエストを乗り越えていけば自ずと彼らは姿を見せるかもしれない。
その時こそが、今現実の世界とWoFの世界に起きている異変について問いただすチャンスだと目論む。
しかし、未知の能力と力を持つ彼らに対抗する術をシン達は持っていない。それに、どうやら黒いコートを纏った者達には派閥のような仲違いのようなものが起きているようだ。
リナムルの地下研究所で出会った二人の黒いコートの人物。彼らは互いに対立し、シン達を捕らえようとする者と逃がそうとするもので争っていた。今彼らがどうなったのかは分からないが、助けようとする派閥の働きにより今のシンとツクヨはあるのだ。
「街の商人さんが言ってましたの。リナムルからアークシティを目指すなら、北へ向かうのが良いって」
「北・・・?」
シン達がレースを終え、ホープ・コーストからオルレラ、そしてアカリや紅葉と出会った街であるホルタートと、偶然か必然か彼らは自ずとアークシティへ向かう為、北へ北へと進んでいた。
「えぇ、すると次に辿り着くのは“音が満ち溢れる街“だと、その方はおっしゃってましたわ」
「“音が満ち溢れる街“・・・?なんて街なんだ?」
「ごめんなさい。そこまでは聞けませんでしたわ。でもとても楽しそうな街であることは、その方からのお話で伺えました。私も是非、その街へ行ってみたいですわ!」
シン達と行動を共にし始めて最初に訪れたリナムルで、まさかこんな目に遭うなんて誰も思っていなかった。結果として皆無事でことなきを得たが、いきなり怖い目に遭うなんて、可哀想なことをしてしまったなと考えたシンは、どの道アークシティを目指すのであれば、その商人が言っていたように北へ向かうしかない。
ならばそのままリナムルから発つ商人達の馬車に同行し、森を抜けていくのが良いだろう。元よりミア達と話していた時から、商人の馬車がリナムルへやって来るタイミングを見計らっていた。
だが、アカリにその事を話したという商人は何故そんな情報を掴んでいたのか。そして何故彼女にそんな話をしたのか。それは彼らが知るにはまだ遠い先の話で、多種族が力を合わせて復興するリナムルに紛れていたのは、行方を眩ませたシン達を地下研究所で襲った黒いコートの人物だったからだ。
「そっか。まぁ確かに、そんなに困らないか。それにシンがそんな風に思うんじゃ、私には到底使いこなせそうにないかもなぁ~」
「今のクラスと遠いものを想像するからいけないんじゃないのか?アタシのようにメインクラスを支援するようなクラスを選べば、今以上に戦略が広がるってもんだと思うけどな」
「ミアは器用だから」
「嫌味か?」
「そうじゃないけど・・・羨ましいなって思うよ」
ユーザー目線での話を展開するシン達は、いつの間にかいなくなっていたアカリについてミアに問う。彼女は唯一ツバキの机の方へ向かわなかったので、アカリの行方について何か知ってる筈だ。
「そういえばアカリは?姿が見えないけど・・・」
「外で待ってるってよ。紅葉が外の空気を吸いたいって。色々削ったり薬品の匂いでまいっちまったんだろ」
「それは悪いことをしたな・・・。一人にしておくのも何だし、俺も外で待ってるよ」
そういうとシンは、ツバキを待つミアとツクヨと別れ、施設の外へと出ていった。外の空気はアカリが紅葉から聞いた通り澄み切っていた。吸っていて気持ちいと分かる程の空気を身体に取り込み、シンは周囲を見渡してアカリと紅葉を探す。
すると彼女は近くのベンチに腰を下ろし、紅葉は羽を広げて気持ちよさそうに彼女の周りを低空飛行で旋回していた。
「アカリ、話が長くなっちゃってごめん」
「いえ、私は大丈夫です。それにほら、紅葉も気持ちよさそうに飛んでますし」
「ピィィィ!」
成長した姿で嬉しそうに羽を広げる紅葉と、それを嬉しそうに笑顔で見届けるアカリの姿は子供を持たぬシンであっても微笑ましいシーンの一つとして、リナムルの思い出に追加された。
「ねぇ、シンさん。次はどんな街に行く予定なのかしら?」
「そうだなぁ・・・。アークシティっていう、この世界でも最先端の技術力を持ってるっていうところを目指してるんだけど、そこに向かう為にはまだ幾つも街を超えて行かないといけないみたいでね・・・」
オルレラの街からの因縁でアークシティという巨大な国なのか街なのか。そこを目指すようになった一行は、これまでの苦難は黒いコートの人物の差金なのではないかと疑い始めていた。
クエストの循環が乱れた時に、それを正す為に現れる。つまり、シン達がアークシティを目指し、様々なクエストを乗り越えていけば自ずと彼らは姿を見せるかもしれない。
その時こそが、今現実の世界とWoFの世界に起きている異変について問いただすチャンスだと目論む。
しかし、未知の能力と力を持つ彼らに対抗する術をシン達は持っていない。それに、どうやら黒いコートを纏った者達には派閥のような仲違いのようなものが起きているようだ。
リナムルの地下研究所で出会った二人の黒いコートの人物。彼らは互いに対立し、シン達を捕らえようとする者と逃がそうとするもので争っていた。今彼らがどうなったのかは分からないが、助けようとする派閥の働きにより今のシンとツクヨはあるのだ。
「街の商人さんが言ってましたの。リナムルからアークシティを目指すなら、北へ向かうのが良いって」
「北・・・?」
シン達がレースを終え、ホープ・コーストからオルレラ、そしてアカリや紅葉と出会った街であるホルタートと、偶然か必然か彼らは自ずとアークシティへ向かう為、北へ北へと進んでいた。
「えぇ、すると次に辿り着くのは“音が満ち溢れる街“だと、その方はおっしゃってましたわ」
「“音が満ち溢れる街“・・・?なんて街なんだ?」
「ごめんなさい。そこまでは聞けませんでしたわ。でもとても楽しそうな街であることは、その方からのお話で伺えました。私も是非、その街へ行ってみたいですわ!」
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ならばそのままリナムルから発つ商人達の馬車に同行し、森を抜けていくのが良いだろう。元よりミア達と話していた時から、商人の馬車がリナムルへやって来るタイミングを見計らっていた。
だが、アカリにその事を話したという商人は何故そんな情報を掴んでいたのか。そして何故彼女にそんな話をしたのか。それは彼らが知るにはまだ遠い先の話で、多種族が力を合わせて復興するリナムルに紛れていたのは、行方を眩ませたシン達を地下研究所で襲った黒いコートの人物だったからだ。
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