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教会の司祭と寮
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アルバには複数の作曲家がおり、催しものがあるとそれぞれの作曲家に新譜を依頼する事もあったりするようだ。今回、クリスの働いているという教会で行われるというコンサートでは、教会側ではなく外部に依頼した楽譜による演奏を行うのだろう。
人通りの多い大通りを進んでいくと、前方に大きく聳える立派な建造物が見えてくる。所謂、教会といったその外観と入り口に何者かの銅像のようなものも立っていた。
「見えて来ました!あそこが”グーゲル教会“です。先に楽譜を届けてきます。あと、寮に案内するに伴って、皆さんのことを司祭様にお話しておかなければならないのですが・・・」
教会の寮に泊めてもらう以上、教会の者に話を通しておかなければならないのは当然のことだろう。一行はクリスのお話を承諾すると、教会の中へと通された。
「司祭様、頼まれていた物をお届けにあがりました」
「ありがとう、クリス。おや?そちらの方々は?」
「旅の方々らしく、泊まるところに困っておられたので、お連れしました。司祭様、私達の寮には空きがございます。この方々にお貸しすることはできませんでしょうか?」
「えぇ、勿論構いませんよ。皆さんもお疲れでしょう、すぐに案内して差し上げなさい」
親身になって頼んでくれたクリスの働きもあり、シン達は何とか泊まれるっと頃を確保することができた。
クリスから荷物を受け取った司祭は、彼と一緒にシン達の方へと歩み寄る。
「ようこそアルバへ。私はこのグーゲル教会で司教をしております“マティアス“と申します。教会は助けを求める者や困っている者を拒みません。何かお困りならば、何なりとお話ください。きっと力になりますよ」
聖職者らしい暖かな表情と言葉で一行を受け入れたマティアス司祭。親切な対応に感謝しつつ、一行は用件を済ませたクリスに連れられ、彼らの寮へと案内された。
教会を出て少し歩いたところにその寮はあった。立派とは言えないがそれなりにしっかりした作りをしているようだ。それに彼らの想像していた寮というものよりも、随分と大きな外観をしていた。
「これが・・・寮?もっとその・・・古びた感じのものを想像してたけど」
「あぁ、こいつぁ意外だ。寮っていうよりも、しっかり宿屋みたいじゃないか」
寮と聞いて日本風の簡易的なものを想像していたツクヨとミアは、クリスら作曲家の卵達が暮らしているという寮の違いに困惑していた。
「有志の方々の寄付のおかげですよ。教会という事もあって、色々な方々に救いの手を差し伸べる活動をする一方で、それなりの資金も必要となってしまいます」
慈善事業もタダでは出来ない。当然の話だろう。ただこの街自体が観光客や移住民も多く、金の回りはすこぶる好調であるように見受けられた。その証拠といってはなんだが、街の外観や照明、人々の暮らしをサポートするインフラなどは、これまでにシン達が訪れた街よりも充実している。
「これも“音楽の力“ってやつか」
「そうです!音楽は僕達にとって“誇り“なんです」
誇らしげに語るクリスの表情は今までにないほど嬉しそうだった。余程音楽が好きで好きでたまらないのだろう。それ故に、うだつの上がらない作曲家としての実力に悩んでいるのかもしれない。
気分を良くしたクリスに、敢えてそういった話はせず、気持ちよさそうに話を続けさせる一行は、彼らの寮にある空き部屋の前までやって来た。
「空き部屋なので中は何もないですが、生活には不便はないと思います。皆さんの人数にしては少し狭いかもしれませんが、ご容赦ください」
「いやいや、十分過ぎるほどだよ。ありがとうクリス」
案内を終えたクリスは、寮の自分の部屋へと戻っていく。朝食の勧めを受けたが、そこまで世話になる事はできないと、一行はクリスの邪魔にならないように誘いを断った。
そもそも、アルバへやって来たのも噂に聞く限り、訪れた者を異様な魅力で虜にし移住までしてしまうほどに引きつける何かを確かめる為だった。
そこに黒いコートの者達による差金があるのではないか。もし何もなければ、そのままアークシティへの道中にあるアルバを通過してしまえばいい。
第一印象としては、なんの変哲もない賑やかな街だった。数件の宿屋を回った時も、断られはしたものの特におかしな点もなく、皆丁寧な対応をしてくれた。
嫌に感じる事もなく、ましてやこれまでに経験してきたような異変は何も感じられない。少し引っかかる事といえば、噂で聞いていたような“目に見える音“というものを目にすることがなかったくらいだろう。
「アルバ・・・いい街じゃないか。異変なんて見当たらないけどね?」
「まだ数時間しか経ってないんだ。何もないと決め付けるには早過ぎる」
「でもミアだって感じただろ?聞こえてきた音楽は、別に近所迷惑みたいなことにもなってないし、初めて聞く割には凄く気持ちが安らいだと私は思うけど?」
「音が溢れるっていうのは、音が日常に溶け込んでるっていう事なのか・・・?それ以上でも以下でもないと?」
確かにアルバの街には音楽が溢れていたように思う。だが、噂になるほどのことなのだろうか。ミアは噂になるほどの事には思えないといった様子だった。
他の街と比べれば音楽はよく耳にする。ゲームのシステムで言うと、一定の間隔で音楽が切り替わったり、或いは特定の建物に近づくとそちらの音楽が強調され始め、それまでの音楽が小さくなっていくような感覚だろうか。
「いいじゃねぇか、何でもよぉ。それより俺ぁこの街が気に入ったぜ!明日はもっといろんなところを回ってみたいな!」
「私も何だか身体が踊り出しそうでした!こんなに音楽が溢れているところは初めてです!」
ツバキとアカリはすっかりアルバの街が気に入ったようだ。実際のところ、シンもツクヨも街の居心地自体は良いところだと感じていた。聞こえてくる音楽に頭を揺らしたり、思わずリズムに誘われ足取りを変える事もあった。
音感の有無に関わらず、全ての生物に無自覚の内に音楽の素晴らしさを身をもって体験させる。それが音が溢れるという噂の由来なのだろうか。
人通りの多い大通りを進んでいくと、前方に大きく聳える立派な建造物が見えてくる。所謂、教会といったその外観と入り口に何者かの銅像のようなものも立っていた。
「見えて来ました!あそこが”グーゲル教会“です。先に楽譜を届けてきます。あと、寮に案内するに伴って、皆さんのことを司祭様にお話しておかなければならないのですが・・・」
教会の寮に泊めてもらう以上、教会の者に話を通しておかなければならないのは当然のことだろう。一行はクリスのお話を承諾すると、教会の中へと通された。
「司祭様、頼まれていた物をお届けにあがりました」
「ありがとう、クリス。おや?そちらの方々は?」
「旅の方々らしく、泊まるところに困っておられたので、お連れしました。司祭様、私達の寮には空きがございます。この方々にお貸しすることはできませんでしょうか?」
「えぇ、勿論構いませんよ。皆さんもお疲れでしょう、すぐに案内して差し上げなさい」
親身になって頼んでくれたクリスの働きもあり、シン達は何とか泊まれるっと頃を確保することができた。
クリスから荷物を受け取った司祭は、彼と一緒にシン達の方へと歩み寄る。
「ようこそアルバへ。私はこのグーゲル教会で司教をしております“マティアス“と申します。教会は助けを求める者や困っている者を拒みません。何かお困りならば、何なりとお話ください。きっと力になりますよ」
聖職者らしい暖かな表情と言葉で一行を受け入れたマティアス司祭。親切な対応に感謝しつつ、一行は用件を済ませたクリスに連れられ、彼らの寮へと案内された。
教会を出て少し歩いたところにその寮はあった。立派とは言えないがそれなりにしっかりした作りをしているようだ。それに彼らの想像していた寮というものよりも、随分と大きな外観をしていた。
「これが・・・寮?もっとその・・・古びた感じのものを想像してたけど」
「あぁ、こいつぁ意外だ。寮っていうよりも、しっかり宿屋みたいじゃないか」
寮と聞いて日本風の簡易的なものを想像していたツクヨとミアは、クリスら作曲家の卵達が暮らしているという寮の違いに困惑していた。
「有志の方々の寄付のおかげですよ。教会という事もあって、色々な方々に救いの手を差し伸べる活動をする一方で、それなりの資金も必要となってしまいます」
慈善事業もタダでは出来ない。当然の話だろう。ただこの街自体が観光客や移住民も多く、金の回りはすこぶる好調であるように見受けられた。その証拠といってはなんだが、街の外観や照明、人々の暮らしをサポートするインフラなどは、これまでにシン達が訪れた街よりも充実している。
「これも“音楽の力“ってやつか」
「そうです!音楽は僕達にとって“誇り“なんです」
誇らしげに語るクリスの表情は今までにないほど嬉しそうだった。余程音楽が好きで好きでたまらないのだろう。それ故に、うだつの上がらない作曲家としての実力に悩んでいるのかもしれない。
気分を良くしたクリスに、敢えてそういった話はせず、気持ちよさそうに話を続けさせる一行は、彼らの寮にある空き部屋の前までやって来た。
「空き部屋なので中は何もないですが、生活には不便はないと思います。皆さんの人数にしては少し狭いかもしれませんが、ご容赦ください」
「いやいや、十分過ぎるほどだよ。ありがとうクリス」
案内を終えたクリスは、寮の自分の部屋へと戻っていく。朝食の勧めを受けたが、そこまで世話になる事はできないと、一行はクリスの邪魔にならないように誘いを断った。
そもそも、アルバへやって来たのも噂に聞く限り、訪れた者を異様な魅力で虜にし移住までしてしまうほどに引きつける何かを確かめる為だった。
そこに黒いコートの者達による差金があるのではないか。もし何もなければ、そのままアークシティへの道中にあるアルバを通過してしまえばいい。
第一印象としては、なんの変哲もない賑やかな街だった。数件の宿屋を回った時も、断られはしたものの特におかしな点もなく、皆丁寧な対応をしてくれた。
嫌に感じる事もなく、ましてやこれまでに経験してきたような異変は何も感じられない。少し引っかかる事といえば、噂で聞いていたような“目に見える音“というものを目にすることがなかったくらいだろう。
「アルバ・・・いい街じゃないか。異変なんて見当たらないけどね?」
「まだ数時間しか経ってないんだ。何もないと決め付けるには早過ぎる」
「でもミアだって感じただろ?聞こえてきた音楽は、別に近所迷惑みたいなことにもなってないし、初めて聞く割には凄く気持ちが安らいだと私は思うけど?」
「音が溢れるっていうのは、音が日常に溶け込んでるっていう事なのか・・・?それ以上でも以下でもないと?」
確かにアルバの街には音楽が溢れていたように思う。だが、噂になるほどのことなのだろうか。ミアは噂になるほどの事には思えないといった様子だった。
他の街と比べれば音楽はよく耳にする。ゲームのシステムで言うと、一定の間隔で音楽が切り替わったり、或いは特定の建物に近づくとそちらの音楽が強調され始め、それまでの音楽が小さくなっていくような感覚だろうか。
「いいじゃねぇか、何でもよぉ。それより俺ぁこの街が気に入ったぜ!明日はもっといろんなところを回ってみたいな!」
「私も何だか身体が踊り出しそうでした!こんなに音楽が溢れているところは初めてです!」
ツバキとアカリはすっかりアルバの街が気に入ったようだ。実際のところ、シンもツクヨも街の居心地自体は良いところだと感じていた。聞こえてくる音楽に頭を揺らしたり、思わずリズムに誘われ足取りを変える事もあった。
音感の有無に関わらず、全ての生物に無自覚の内に音楽の素晴らしさを身をもって体験させる。それが音が溢れるという噂の由来なのだろうか。
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