World of Fantasia

神代 コウ

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教会と青年の関係

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 部屋を出て寮の入り口の方へ向かうミア。時間帯もあるのだろうか、通路で他の学生達を見かけることはなかった。途中で彼らの話でも聞ければよかったのだが、仕方なくミアは建物の構造や窓から見える街並みを眺めながあら歩いていく。

 ミア達が借りていた部屋は、寮の中でも入り口からだいぶ離れた場所にあった。少し部屋を離れる予定だったが、思わぬ距離の移動に、少しだけアカリのことが心配になるミアだった。

 寮の入り口が見えてくると、昨夜クリスに案内された時には閉まっていた受付が開いており、中には警備員らしき人が暇そうに座っていた。

 「すみません、少しお伺いしても?」

 「あれ?アンタ見ない顔だねぇ。・・・あぁ~そういえばクリスがなんか言ってたなぁ。なるほど、それがアンタって訳か!女連れ込むなんて、アイツも隅に置けないねぇ」

 「いや、そういうんじゃなくて・・・」

 「すまん、冗談だよ。それで?聞きたい事っていうのは?」

 男の冗談に付き合わされ、そっとため息をついたミアは寮の学生についてや教会の事。そしてクリスの事について、知っている限りのことを男に尋ねる。

 一行が泊まった教会の寮には、音楽について学ぶ学生が何人も住んでおり、それぞれ歌手や作曲家、神父など聖職者を目指す者達も寮を借りて住んでいるそうだ。

 要するに教会に関係する職種を目指す者や、音楽に関することを学ぶ者、そして場合によってはシン達のように泊まるところの無い者達を泊めるということも、少なく無いようだ。

 彼らが何の学生なのかは服装でも見分けられるらしく、基本的にローブのようなものを着ている者が聖職者希望の学生で、普段は私服が多くコンサートなどがある日に正装へと変わるのが音楽関係の学生なのだと男は語る。

 そして、そんな学生達へ泊まるところを提供しているグーゲル教会は、“マティアス・ルター“という司祭が仕切っており、顔の利く彼はその伝を使い歌手や合唱団を呼んでコンサートを開いたり、学生らに向けた講義を依頼したりなど多くの才能あふれる若者を育ててきたのだという。

 そんな司祭の手伝いをしているクリスは、この寮の中でもあまり才能に恵まれていないようで、教会の者や司祭の知り合いに媚を売ることで、かろうじて自分の居場所を繋ぎ止めておこうと必死になっている。と、いうのが寮の受付の者が感じている印象だった。

 「自分の居場所を・・・」

 「あぁ、まぁ無理もねぇことなのかもな。他の学生達はそれなりに結果を出してる、謂わばある程度の才能を持っている。そんなライバル達についていく才能を持っていない奴は、クリスみたいになりふり構わず何でもするか、潔く諦めるかの二択だろうな」

 どんな職種、業界であれライバルが多い世界では珍しくない事なのかもしれない。そんな環境が妙に現実の世界を彷彿とさせ、ミアは表情を曇らせる。明るく振る舞っていたようだが、クリスには他人を面倒見ている余裕などなかったに違いない。

 クリスについての話を聞き、そんな彼を疑っていた事に対し、申し訳ない気持ちがミアの中に湧きつつあった。

 「なるほどな・・・教えてくれてありがとう。忙しいところ悪かった」

 「おいおい、どこをどう見たら忙しいように見えるんだぁ!?まぁ俺もいい暇潰しになったよ。またな」

 一通り自分達の身の回りの話を聞いたミアは、受付を去りアカリの待つ部屋へと戻っていった。思ったより早い帰りにアカリは驚いたような反応を見せる。

 戻ってきた彼女に対し、どんな話をしてきたのかと問うアカリ。シン達の帰りを待つ間、ミアは受付の男に聞いてきた話をアカリにも話した。そして僅かながら、異様に親切だったクリスへの不信感も少しだけ晴れたと明かす。

 「そうでしたのね・・・クリスさんにそんな背景が・・・」

 「こういう業界じゃよくある事なのかもしれないが、アタシらがあまり長居しちゃぁ彼に迷惑が掛かるかもしれないのは、確かな事になったな。シン達が戻ったら、また宿屋探しをしねぇとな」

 「でも、また外を見て回れるようで、私は楽しみでもありますわ」

 二人が話していると、再びいくつかの足音が部屋へと近づいてくる。今度の足音は分かり易かった。三人分のものと買い物袋の音だろうか。僅かに香る美味しそうな匂いと楽しげな話し声がミア達の元へ近づき、部屋の扉を開く。

 「お待たせぇ。お店混んでたからさぁ、買って来ちゃった」

 「めちゃくちゃ美味いモンとかもあったぞ!後で二人にも教えてやっからな!」

 「随分と騒がしいな、そんなに美味いモンでも食ったのか?」

 先程までとは違い、一気に賑やかになる部屋の中で、今度はシン達が街の中で体験した事を二人に伝えた。それは前の街で噂に聞いていたように、目に見える音というものに触れたという話だった。
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