1,260 / 1,646
罠と依頼
しおりを挟む
シンの嫌な予感は的中した。宮殿へ向かう時点でそんな気はしていた。そしてケヴィンから連絡が入った時点でそれは確定的なものになっていた。中に入れず手を焼いている彼の前に、ジークベルトの許可を得て入れる者達が現れた。
彼がそれを利用しない手はない。厄介なことにケヴィンはまだ、アルバで起きている失踪事件とシン達の関与を疑っている。彼の報告一つで、シン達は失踪事件の容疑の疑いで事情聴取を受けることもあるだろう。
更に厄介なのは、ケヴィンがシンのスキルを見て知っているということだ。あのスキルを目の当たりにすれば、人を一人消すことなど造作もないことがわかる。
「この後に及んで、まだそんな事をさせる気か!?バレたらただでは済まないんだろ?」
「えぇ、そうですね。教団から目をつけられ、ジークベルト氏に消されるかもしれない。ですがそれは、私の依頼を断っても同じこと。脅すようで申し訳ないのですが、依頼を断れば貴方達のことを失踪事件の重要参考人として、警備隊に報告させていただきます」
「なッ・・・!?」
思わず出てしまったリアクションに、シンはツバキに気付かれていないかどうか視線を送る。僅かにこちらに気づいたようにも見えたが、彼はすぐに自分の作業に戻っていた。
「勿論、依頼を受けて頂けるのであれば私も協力します。これでも生物の感知については自信がありますので・・・」
グーゲル教会にて、彼はシンの影によるスキルの移動を検知し、その存在を見抜いたという実績がある。シンにもそれなりには気配を感知する能力はあるものの、スキルの使用中は注意力が低下するのも事実。
「それに、私達のスキルがあれば誰にもバレずに事を成すのは容易なはずです。安心して下さい。ベルヘルム氏の護衛についての調査も出来ています。私の見立てでは十分可能であると思っていますよ」
彼の言うように、二人でやればおそらくそれも可能だろう。何より、ベルヘルムについての情報がシンにはない。どの道面倒ごとに巻き込まれるのなら、成功率の高い方に賭け、デメリットなしにこの困難を切り抜けるしかない。
「・・・分かった。その代わり、ちゃんと算段はあるんだろうな?」
「任せて下さい。既に作戦は組んであります」
どうやら彼も、宮殿に入れなくなってから色々と作戦を考えていたらしい。その中で彼は、宮殿内を出入りするある人物に協力を仰いでいた。その人物とはパーティーの会場で、ウェイターの仕事を手伝っていたクリスだった。
ケヴィンが宮殿から摘み出された後、会場を出入りする人物に目をつけた彼は、シンと共にいる時に知り合ったクリスを見かけ、彼に協力をお願いしていた。
勿論、詳しい内容は伏せて、合図があったらベルヘルムの護衛を別の場所へ誘導して欲しいと依頼していた。彼は戸惑いながらもそれを承諾してくれたようで、シンのスキルが部屋に近づかなければならない事も覚えていたようだ。
「抜け目ないな・・・そんな事まで覚えていたのか・・・」
「記憶力とは日常生活においても重要なものですよ?それにこの作戦を考えるにあたり、貴方のスキルが第一に思い浮かぶのは必然ではないでしょうか」
「アンタに俺の能力を見せたのは失敗だったよ・・・」
「ははは、何をおっしゃりますか。こうして親しくなれて、私は嬉しいですよ。やはり貴方のデバイスにだけ、このカメラへのアクセスを許可しておいて良かった」
シンはまんまと嵌められたと頭を抱える。だが、彼の依頼を断ることもできないと、渋々指示されるがままにツバキに少し部屋の外へ行ってくると伝え、一階の広場へと向かう。
しかし、宮殿内に入れているものの、ベルヘルム達のように他所から来た要人達が泊まる三階への立ち入りを禁止されているのは自分も同じだとケヴィンに伝えると、それも織り込み済みだと嬉しそうな声のトーンで語る。
既に宮殿内を巡回している警備や護衛の動きを観察していたケヴィンは、一階の通路の先に従業員用の階段があるとシンに伝え、そこからまずは二階へ上がるよう指示する。
いくら自信ありげに指示するケヴィンであっても、実際に自分の目で確かめながら移動するシンは、誰もいないことを確認しながら慎重に歩みを進める。
「心配せずとも、今はパーティーの片付けで忙しいようで、そちらの階段はほとんど使われていませんよ?」
「それでも実際に危険を冒してるのは俺なんだ。自分の目で確かめながら進ませてもらう」
「なるほど、貴方は慎重な方なのですね。でもそちらの方が私としても信用できます。何も疑わず、全てを鵜呑みにする人間というのも、利用価値はあれど信用できないですからね」
同じような方法で、シンの他にもいろんな人間を利用して来たのだろうか。彼はその中でも特に、指示に忠実で何の疑問も持たない人間が特に信用できないと彼は語った。
ケヴィンの話に少しだけ耳を傾けながらも、シンは自身の気配感知とケヴィンの気配感知を頼りに三階へと登っていった。
彼がそれを利用しない手はない。厄介なことにケヴィンはまだ、アルバで起きている失踪事件とシン達の関与を疑っている。彼の報告一つで、シン達は失踪事件の容疑の疑いで事情聴取を受けることもあるだろう。
更に厄介なのは、ケヴィンがシンのスキルを見て知っているということだ。あのスキルを目の当たりにすれば、人を一人消すことなど造作もないことがわかる。
「この後に及んで、まだそんな事をさせる気か!?バレたらただでは済まないんだろ?」
「えぇ、そうですね。教団から目をつけられ、ジークベルト氏に消されるかもしれない。ですがそれは、私の依頼を断っても同じこと。脅すようで申し訳ないのですが、依頼を断れば貴方達のことを失踪事件の重要参考人として、警備隊に報告させていただきます」
「なッ・・・!?」
思わず出てしまったリアクションに、シンはツバキに気付かれていないかどうか視線を送る。僅かにこちらに気づいたようにも見えたが、彼はすぐに自分の作業に戻っていた。
「勿論、依頼を受けて頂けるのであれば私も協力します。これでも生物の感知については自信がありますので・・・」
グーゲル教会にて、彼はシンの影によるスキルの移動を検知し、その存在を見抜いたという実績がある。シンにもそれなりには気配を感知する能力はあるものの、スキルの使用中は注意力が低下するのも事実。
「それに、私達のスキルがあれば誰にもバレずに事を成すのは容易なはずです。安心して下さい。ベルヘルム氏の護衛についての調査も出来ています。私の見立てでは十分可能であると思っていますよ」
彼の言うように、二人でやればおそらくそれも可能だろう。何より、ベルヘルムについての情報がシンにはない。どの道面倒ごとに巻き込まれるのなら、成功率の高い方に賭け、デメリットなしにこの困難を切り抜けるしかない。
「・・・分かった。その代わり、ちゃんと算段はあるんだろうな?」
「任せて下さい。既に作戦は組んであります」
どうやら彼も、宮殿に入れなくなってから色々と作戦を考えていたらしい。その中で彼は、宮殿内を出入りするある人物に協力を仰いでいた。その人物とはパーティーの会場で、ウェイターの仕事を手伝っていたクリスだった。
ケヴィンが宮殿から摘み出された後、会場を出入りする人物に目をつけた彼は、シンと共にいる時に知り合ったクリスを見かけ、彼に協力をお願いしていた。
勿論、詳しい内容は伏せて、合図があったらベルヘルムの護衛を別の場所へ誘導して欲しいと依頼していた。彼は戸惑いながらもそれを承諾してくれたようで、シンのスキルが部屋に近づかなければならない事も覚えていたようだ。
「抜け目ないな・・・そんな事まで覚えていたのか・・・」
「記憶力とは日常生活においても重要なものですよ?それにこの作戦を考えるにあたり、貴方のスキルが第一に思い浮かぶのは必然ではないでしょうか」
「アンタに俺の能力を見せたのは失敗だったよ・・・」
「ははは、何をおっしゃりますか。こうして親しくなれて、私は嬉しいですよ。やはり貴方のデバイスにだけ、このカメラへのアクセスを許可しておいて良かった」
シンはまんまと嵌められたと頭を抱える。だが、彼の依頼を断ることもできないと、渋々指示されるがままにツバキに少し部屋の外へ行ってくると伝え、一階の広場へと向かう。
しかし、宮殿内に入れているものの、ベルヘルム達のように他所から来た要人達が泊まる三階への立ち入りを禁止されているのは自分も同じだとケヴィンに伝えると、それも織り込み済みだと嬉しそうな声のトーンで語る。
既に宮殿内を巡回している警備や護衛の動きを観察していたケヴィンは、一階の通路の先に従業員用の階段があるとシンに伝え、そこからまずは二階へ上がるよう指示する。
いくら自信ありげに指示するケヴィンであっても、実際に自分の目で確かめながら移動するシンは、誰もいないことを確認しながら慎重に歩みを進める。
「心配せずとも、今はパーティーの片付けで忙しいようで、そちらの階段はほとんど使われていませんよ?」
「それでも実際に危険を冒してるのは俺なんだ。自分の目で確かめながら進ませてもらう」
「なるほど、貴方は慎重な方なのですね。でもそちらの方が私としても信用できます。何も疑わず、全てを鵜呑みにする人間というのも、利用価値はあれど信用できないですからね」
同じような方法で、シンの他にもいろんな人間を利用して来たのだろうか。彼はその中でも特に、指示に忠実で何の疑問も持たない人間が特に信用できないと彼は語った。
ケヴィンの話に少しだけ耳を傾けながらも、シンは自身の気配感知とケヴィンの気配感知を頼りに三階へと登っていった。
0
あなたにおすすめの小説
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
ドラゴネット興隆記
椎井瑛弥
ファンタジー
ある世界、ある時代、ある国で、一人の若者が領地を取り上げられ、誰も人が住まない僻地に新しい領地を与えられた。その領地をいかに発展させるか。周囲を巻き込みつつ、周囲に巻き込まれつつ、それなりに領地を大きくしていく。
ざまぁっぽく見えて、意外とほのぼのです。『新米エルフとぶらり旅』と世界観は共通していますが、違う時代、違う場所でのお話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる