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平常心の訳
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両名が確保されてから、宮殿内の者達には秘密裏に取り調べが行われていたようで、現在では宮殿内の者達の証言と噛み合わないなどという事もなかったことから、情報が公開されたのだという。
現在もフェリクスとカタリナは、シン達と同じように別室にて行動を制限されている。厳密には同じではないが、警備隊や教団の護衛により見張られている。
「お二人はどのような証言を?」
「勿論、自分はやってないと言っています。ですが、連れてこられた割には、どこかほっとしているような様子も私は見受けられました」
「ほっとする?囚われたことで安堵したと?普通ならパニックを起こしたり質問攻めになりそうな者ですが・・・」
アンドレイが二人の様子を見せてもらいに赴いた時には、既に彼らは落ち着いた様子で自分の事を話していた。調査を行なっている教団の護衛の質問に淡々と答え、まるで動揺していない。
不審に思ったアンドレイは一緒に立ち会った警備隊の者に、ジークベルト大司教の件はいつ彼らに話したのかと聞くと、身柄を拘束する時に事情は説明したと答えた。
すると、その時は二人ともまさかの出来事に驚いていたようだったと、警備隊から報告を受けていたと語る。
つまり、拘束される段階ではジークベルトが亡くなった事に関して、フェリクスもカタリナも知らなかった、或いは知っていて演技をしていたことになる。
それが宮殿へ到着するや否や、落ち着いて取り調べを受けていた。囚われた時には興奮状態にあった彼らが、宮殿内へやって来て落ち着きを取り戻すとは、彼らの間に一体どんな心境の変化があったのだろうとアンドレイは悩んでいた。
「彼らが質問してきた内容については、お聞きになられましたか?」
「聞いたとは思いますが・・・特に注目すべき内容はなかったと思いますよ?流石に全ては覚えていないので、後ほど新たな監視役の方が来た時にでも、一緒に伺ってみては?」
「そうですね。その時までしっかりとこの事を覚えておかないと・・・」
「?」
ケヴィンはどうにも、彼らの質問内容にその答えがあるのではないかと考えているようだ。だが質問内容だけで、彼らの落ち着いた様子の答えが出るとは到底思えなかったシンは、アンドレイらが情報の報告を済ませて去って行った後に、その真意を問うことにした。
「さて、このような場所で長話していても、彼らに迷惑をかけてしまいそうですから私達はこれで・・・」
「えぇ、また何かありましたらよろしくお願いします」
「おっと・・・忘れてはいないと思いますが、あくまで情報の共有ですよ?私達が一方的に情報を提示するのではフェアじゃありませんからね?」
「勿論ですとも。こちらでも何か分かりましたら報告に伺わせていただきます」
要件を済ませ、アンドレイ一行は自室へと戻っていった。会話の内容に何ら問題はなかったようで、部屋の前で会話を聞いていた警備隊も用が済んだのなら部屋へ戻るようにと声を掛けてきた。
分かっていると適当にあしらい、シンとケヴィンは扉を閉めて皆の元へ戻ると、アンドレイからの報告の内容を仲間達と共有する。例の如く、ツバキはあまり興味はなさそうだった。アカリも全体的な話の流れは頭に入っていたようだが、理解するので精一杯といった様子。
「それで?フェリクスやカタリナの質問内容が、何故気になったんだ?」
一通り話が終わった後、シンは先ほど部屋の前で話していた続きについてケヴィンに尋ねる。すると、話を聞いて彼の考えについて察しのついたミアが、先に答え合わせをせんとばかりに口を開いた。
「その内容と反応から、二人が妙に落ち着いている理由が分かるから・・・だろ?」
彼女の言葉にケヴィンは驚いた表情を見せる。どうやら図星だったらしい。宮殿内にいる彼らでさえ、犯人を突き止める糸口が見つからず疑われることに対して不満や不安を抱えている。
ましてや、事情を知らされたばかりの人間が、犯人が潜んでいるかもしれない危険な場所に連れてこられ、疑いをかけられて淡々と話ができるものだろうか。
「身柄を拘束する際に話をした時は、両名共に驚いていたようだと警備隊は言っていたようです。フェリクス氏は自宅、カタリナ氏はバッハ博物館にいたそうですが、その場を離れられた事も彼らの心境に何か関係があるように、私には思えます・・・」
何かを隠しているのではと考えるケヴィン。何よりフェリクスに至ってはジークベルト大司教に恨みを持っていたとしても何ら不思議ではない、所謂犯行動機がある。そんな彼が事件当日に、アリバイを証明する者もいない自宅にいたとなれば、疑われるのは必然と言えるだろう。
現在もフェリクスとカタリナは、シン達と同じように別室にて行動を制限されている。厳密には同じではないが、警備隊や教団の護衛により見張られている。
「お二人はどのような証言を?」
「勿論、自分はやってないと言っています。ですが、連れてこられた割には、どこかほっとしているような様子も私は見受けられました」
「ほっとする?囚われたことで安堵したと?普通ならパニックを起こしたり質問攻めになりそうな者ですが・・・」
アンドレイが二人の様子を見せてもらいに赴いた時には、既に彼らは落ち着いた様子で自分の事を話していた。調査を行なっている教団の護衛の質問に淡々と答え、まるで動揺していない。
不審に思ったアンドレイは一緒に立ち会った警備隊の者に、ジークベルト大司教の件はいつ彼らに話したのかと聞くと、身柄を拘束する時に事情は説明したと答えた。
すると、その時は二人ともまさかの出来事に驚いていたようだったと、警備隊から報告を受けていたと語る。
つまり、拘束される段階ではジークベルトが亡くなった事に関して、フェリクスもカタリナも知らなかった、或いは知っていて演技をしていたことになる。
それが宮殿へ到着するや否や、落ち着いて取り調べを受けていた。囚われた時には興奮状態にあった彼らが、宮殿内へやって来て落ち着きを取り戻すとは、彼らの間に一体どんな心境の変化があったのだろうとアンドレイは悩んでいた。
「彼らが質問してきた内容については、お聞きになられましたか?」
「聞いたとは思いますが・・・特に注目すべき内容はなかったと思いますよ?流石に全ては覚えていないので、後ほど新たな監視役の方が来た時にでも、一緒に伺ってみては?」
「そうですね。その時までしっかりとこの事を覚えておかないと・・・」
「?」
ケヴィンはどうにも、彼らの質問内容にその答えがあるのではないかと考えているようだ。だが質問内容だけで、彼らの落ち着いた様子の答えが出るとは到底思えなかったシンは、アンドレイらが情報の報告を済ませて去って行った後に、その真意を問うことにした。
「さて、このような場所で長話していても、彼らに迷惑をかけてしまいそうですから私達はこれで・・・」
「えぇ、また何かありましたらよろしくお願いします」
「おっと・・・忘れてはいないと思いますが、あくまで情報の共有ですよ?私達が一方的に情報を提示するのではフェアじゃありませんからね?」
「勿論ですとも。こちらでも何か分かりましたら報告に伺わせていただきます」
要件を済ませ、アンドレイ一行は自室へと戻っていった。会話の内容に何ら問題はなかったようで、部屋の前で会話を聞いていた警備隊も用が済んだのなら部屋へ戻るようにと声を掛けてきた。
分かっていると適当にあしらい、シンとケヴィンは扉を閉めて皆の元へ戻ると、アンドレイからの報告の内容を仲間達と共有する。例の如く、ツバキはあまり興味はなさそうだった。アカリも全体的な話の流れは頭に入っていたようだが、理解するので精一杯といった様子。
「それで?フェリクスやカタリナの質問内容が、何故気になったんだ?」
一通り話が終わった後、シンは先ほど部屋の前で話していた続きについてケヴィンに尋ねる。すると、話を聞いて彼の考えについて察しのついたミアが、先に答え合わせをせんとばかりに口を開いた。
「その内容と反応から、二人が妙に落ち着いている理由が分かるから・・・だろ?」
彼女の言葉にケヴィンは驚いた表情を見せる。どうやら図星だったらしい。宮殿内にいる彼らでさえ、犯人を突き止める糸口が見つからず疑われることに対して不満や不安を抱えている。
ましてや、事情を知らされたばかりの人間が、犯人が潜んでいるかもしれない危険な場所に連れてこられ、疑いをかけられて淡々と話ができるものだろうか。
「身柄を拘束する際に話をした時は、両名共に驚いていたようだと警備隊は言っていたようです。フェリクス氏は自宅、カタリナ氏はバッハ博物館にいたそうですが、その場を離れられた事も彼らの心境に何か関係があるように、私には思えます・・・」
何かを隠しているのではと考えるケヴィン。何よりフェリクスに至ってはジークベルト大司教に恨みを持っていたとしても何ら不思議ではない、所謂犯行動機がある。そんな彼が事件当日に、アリバイを証明する者もいない自宅にいたとなれば、疑われるのは必然と言えるだろう。
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