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大規模スキルの所持者
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街の調査といっても、無闇矢鱈にあちこちを駆け回っていては時間が掛かる上に効率的ではない。時間が掛かれば宮殿の様子も変わってしまうだろうし、二人の体力や戦力の低下にも繋がることだろう。
宮殿から追手を振り払い、シン達が訪れたのはアルバの街の中心部。偶然にも何処かへ向かうには最適といえる位置にいる。ここまでの道中で分かったことは、街中には一般人が見当たらないと言う事。
正確には一般人というよりも、人や動物といった生き物の姿が見当たらない。代わりに街を徘徊しているのは、彼らを襲った不気味な格好をした素顔の見えない謎の人物達。
体格はまちまちで、大きい者から少し小さめの者もいる。それほど多く戦った訳ではないので正確な情報かどうか分からないが、謎の人物達は個体による強さの違いなどはなく、単純に標的の大きさくらいの違いはない。
「漸く落ち着けるな。さて、まずは何から調べる?」
「まずはこの音楽だろうな。街がこれ程の異常に包まれている中で、どうして落ち着いて演奏などできようか・・・。それは身の安全が分かっているからだ」
「つまり・・・」
「あぁ、犯人が直接演奏している。或いは共犯者が演奏しているのだろう。要するに音源を突き止めれば、犯人に繋がる重大な事柄が分かる可能性が高いということだ」
ニノンは早速音源を調べようと提案する。しかし二人とも嗜む程度には音楽は聴くものの、特別詳しい訳でも聴力に自信がある訳でもない。今も尚聞こえてくる演奏が、一体どこで演奏されているのかなど見当もつかなかった。
「だが音源なんてどうやって探す?音が反響してあちこちから聞こえてくるようで、どこから聞こえてくるなんて見当も・・・」
「私もアルバの街に詳しい訳ではないわ。でもこの街にはいくつか、誰でも演奏ができるスポットがいくつかある。その一つが式典が行われていた教会。まずは“グーゲル教会“へ向かってみましょう」
測らずともニノンは、アルバに向かうと分かってから始めた調査により、街の特徴的な建物や観光スポット、街の人間しかあまり知らないであろう事も知識として取り入れていた。それが幸いし、レオン達が見つけ出した音源を無意識に最初の場所に選んでいたのだ。
しかし、その道中は決して一直線に向かえるようなものではなかった。生き物の気配を持たないその謎の人物達には、シンのアサシンとしてのクラススキルやリナムルで身につけた獣の力による感知が通用しなかった。
目視による確認と行動の観察により、少しずつ目的地へ進む二人だったがこのままではグーゲル教会に辿り着くのにいくら時間がかかるか分からない。
そこでシンは、ニノンについて来た自分にできる事として、道中邪魔になる謎の人物達を影に引き摺り込み、別の場所に移動させるという事だった。
「このままじゃ教会に辿り着く前に朝になる・・・。できるか分からないが俺のスキルで邪魔なやつを移動させてやる」
「そんな事ができるのか?」
「あぁ、移動させられるの場所には距離的な限りはあるが、一旦退かすという意味では十分だと思う」
「我々がそれで移動することは?」
ニノンは影の中を通じて移動できるのなら、自分達を教会まで飛ばした方が早いのではと提案するが、まだ教会までの距離が長く、現状のシンのスキルではそこまでの長距離移動は不可能だと説明した。
要するに、教会まで移動できる場所に辿り着くまでは、邪魔者を排除しつつ前進するしかないということだ。
「条件は申し分ない。取り敢えずはそれで教会に近づくとしよう」
物陰から頭を出し、場ぞの人物を確認すると、周囲の影で最も近く最も濃い影を探し、小石を使った揺動で誘き出すと影が形を変え謎の人物の影と繋がると、まるで底なしの沼にでも踏み込んだかのように、謎の人物は影の中へと姿を消した。
「これが“アサシン“というクラスのスキル・・・!なんとも恐ろしいというかまさに暗殺向きだな」
「逆にいうと、暗殺がメインのクラスだからまともにやり合うのは向いてない。成功率は気付かれていくごとに低くなるし、警戒心が強いと仕掛ける前に読まれるから揺動も重要になってくる。今は夜だから影の純度も高くて拘束力や操作性も向上してるけど・・・」
「なるほど。明るさによってスキルの効果量や力が変わってくるのか」
実際にシンのスキルを目の当たりにすることで、宮殿で話を聞いていた時よりも実感でき理解力も増していく。アサシンというクラスに興味があるのか、ニノンはシンが謎の人物を次々に排除していく様子を、シンの様子も含め事細かに観察していた。
「あの・・・そんなに見られてるとやりづらいんだけど・・・」
「構うな。アンタはいつも通りやってくれればいい。万が一の時は私が戦うからな」
頼りにはなるのだが、手の内を晒すことで有効打を失うクラスであるが故に、誰かに観察されながら戦うのが苦手だったシンにとっては、何ともやりづらい空気感での作業となった。
幸いにも謎の人物達は、そこまで賢いという訳でもないようで、影による拘束自体には戸惑っている様子だが、移動させた先で先程までいた場所に戻ろうとする動きはなかった。
一律して同様の格好をしている事から、謎の人物達が各々の意思を持って行動している訳ではなさそうだった。恐らく何者かによって操られているのか、嘗て聖都ユスティーチで戦った、シュトラールが操っていた私兵のように能力で作り出した者なのだろう。
そういった類のものは、数が多ければ多いほど、範囲が広ければ広いほどその精密性が失われていくケースがほとんどだ。ただシュトラールの場合、本人の熟練度や魔力量が常人のものとは桁外れだった為、聖騎士達との戦闘でも苦戦を強いられるほどの精密度を実現していた。
あの時の聖騎士達に比べれば対処が楽だったが、もしシュトラールのように自身のスキルによって生み出しているのなら、謎の人物達を作り出している犯人かその協力者は、相当な魔力を持っているという事になる。
宮殿から追手を振り払い、シン達が訪れたのはアルバの街の中心部。偶然にも何処かへ向かうには最適といえる位置にいる。ここまでの道中で分かったことは、街中には一般人が見当たらないと言う事。
正確には一般人というよりも、人や動物といった生き物の姿が見当たらない。代わりに街を徘徊しているのは、彼らを襲った不気味な格好をした素顔の見えない謎の人物達。
体格はまちまちで、大きい者から少し小さめの者もいる。それほど多く戦った訳ではないので正確な情報かどうか分からないが、謎の人物達は個体による強さの違いなどはなく、単純に標的の大きさくらいの違いはない。
「漸く落ち着けるな。さて、まずは何から調べる?」
「まずはこの音楽だろうな。街がこれ程の異常に包まれている中で、どうして落ち着いて演奏などできようか・・・。それは身の安全が分かっているからだ」
「つまり・・・」
「あぁ、犯人が直接演奏している。或いは共犯者が演奏しているのだろう。要するに音源を突き止めれば、犯人に繋がる重大な事柄が分かる可能性が高いということだ」
ニノンは早速音源を調べようと提案する。しかし二人とも嗜む程度には音楽は聴くものの、特別詳しい訳でも聴力に自信がある訳でもない。今も尚聞こえてくる演奏が、一体どこで演奏されているのかなど見当もつかなかった。
「だが音源なんてどうやって探す?音が反響してあちこちから聞こえてくるようで、どこから聞こえてくるなんて見当も・・・」
「私もアルバの街に詳しい訳ではないわ。でもこの街にはいくつか、誰でも演奏ができるスポットがいくつかある。その一つが式典が行われていた教会。まずは“グーゲル教会“へ向かってみましょう」
測らずともニノンは、アルバに向かうと分かってから始めた調査により、街の特徴的な建物や観光スポット、街の人間しかあまり知らないであろう事も知識として取り入れていた。それが幸いし、レオン達が見つけ出した音源を無意識に最初の場所に選んでいたのだ。
しかし、その道中は決して一直線に向かえるようなものではなかった。生き物の気配を持たないその謎の人物達には、シンのアサシンとしてのクラススキルやリナムルで身につけた獣の力による感知が通用しなかった。
目視による確認と行動の観察により、少しずつ目的地へ進む二人だったがこのままではグーゲル教会に辿り着くのにいくら時間がかかるか分からない。
そこでシンは、ニノンについて来た自分にできる事として、道中邪魔になる謎の人物達を影に引き摺り込み、別の場所に移動させるという事だった。
「このままじゃ教会に辿り着く前に朝になる・・・。できるか分からないが俺のスキルで邪魔なやつを移動させてやる」
「そんな事ができるのか?」
「あぁ、移動させられるの場所には距離的な限りはあるが、一旦退かすという意味では十分だと思う」
「我々がそれで移動することは?」
ニノンは影の中を通じて移動できるのなら、自分達を教会まで飛ばした方が早いのではと提案するが、まだ教会までの距離が長く、現状のシンのスキルではそこまでの長距離移動は不可能だと説明した。
要するに、教会まで移動できる場所に辿り着くまでは、邪魔者を排除しつつ前進するしかないということだ。
「条件は申し分ない。取り敢えずはそれで教会に近づくとしよう」
物陰から頭を出し、場ぞの人物を確認すると、周囲の影で最も近く最も濃い影を探し、小石を使った揺動で誘き出すと影が形を変え謎の人物の影と繋がると、まるで底なしの沼にでも踏み込んだかのように、謎の人物は影の中へと姿を消した。
「これが“アサシン“というクラスのスキル・・・!なんとも恐ろしいというかまさに暗殺向きだな」
「逆にいうと、暗殺がメインのクラスだからまともにやり合うのは向いてない。成功率は気付かれていくごとに低くなるし、警戒心が強いと仕掛ける前に読まれるから揺動も重要になってくる。今は夜だから影の純度も高くて拘束力や操作性も向上してるけど・・・」
「なるほど。明るさによってスキルの効果量や力が変わってくるのか」
実際にシンのスキルを目の当たりにすることで、宮殿で話を聞いていた時よりも実感でき理解力も増していく。アサシンというクラスに興味があるのか、ニノンはシンが謎の人物を次々に排除していく様子を、シンの様子も含め事細かに観察していた。
「あの・・・そんなに見られてるとやりづらいんだけど・・・」
「構うな。アンタはいつも通りやってくれればいい。万が一の時は私が戦うからな」
頼りにはなるのだが、手の内を晒すことで有効打を失うクラスであるが故に、誰かに観察されながら戦うのが苦手だったシンにとっては、何ともやりづらい空気感での作業となった。
幸いにも謎の人物達は、そこまで賢いという訳でもないようで、影による拘束自体には戸惑っている様子だが、移動させた先で先程までいた場所に戻ろうとする動きはなかった。
一律して同様の格好をしている事から、謎の人物達が各々の意思を持って行動している訳ではなさそうだった。恐らく何者かによって操られているのか、嘗て聖都ユスティーチで戦った、シュトラールが操っていた私兵のように能力で作り出した者なのだろう。
そういった類のものは、数が多ければ多いほど、範囲が広ければ広いほどその精密性が失われていくケースがほとんどだ。ただシュトラールの場合、本人の熟練度や魔力量が常人のものとは桁外れだった為、聖騎士達との戦闘でも苦戦を強いられるほどの精密度を実現していた。
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