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形勢逆転
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至近距離で彼女の歌を聞かされた事により、全身を駆け巡っていた悪寒がより実感しやすい振動となって、身体を流れる血液を震わせ、護衛達と同じように身体に異常をきたす。
かのように思われた。だが同じように音による攻撃を扱うシアラには、同じ手は通じなかったのだ。
護衛達が何をされて姿を消したのかはシアラには分からなかったが、彼女がどんな攻撃を主軸に用いるのかは既に何度も目にしているし、その身で体験している。
彼女が護衛達をサポートしている間に、いつの間にかアンナを攻撃していた護衛達が姿を消していたことから、大きな衝撃波を発生させるものや、広範囲に効果のある攻撃ではないのは明らかだった。
故に彼女は、自身の持つ音を吸収する素材で出来ている小さな棒を仕込んでいたのだ。髪の中に隠れていた耳裏からそのアイテムを摘んで引き抜いた彼女は、歌うアンナの前にそれを見せつけるように取り出す。
そしてその棒を指で弾いて見せると、アンナが護衛達にした攻撃がそっくりそのまま彼女に返っていく。棒に吸収されていた自身の歌声による振動を返されたアンナは、胸を押さえてふらふらと後退りする。
「やっぱり・・・。音に何か仕込んでいたのね」
「ア・・・ァァァ・・・!」
戦いが始まってからというものの、漸く歌声以外の声を上げさせることに成功したシアラ。そして彼女が苦しみのあまり歌を歌うことを中断したおかげで、周囲で音の衝撃波を放っていたスピーカーを破壊していた護衛達にも追い風が吹く。
スピーカーは故障したような音を出しながら、まとまりのない雑音で大したダメージにもならない音の衝撃波を拡散し始める。
「ッ!?これなら突っ込んで壊せるぞ!」
「畳みかけろ!手が空いたら彼女のサポートに回れ!」
一気呵成に攻め立てる一行。攻撃の反射で怯んだアンナに、今度はシアラが音の攻撃を魅せつける。事前に音をチャージしていた棒を複数本取り出すと、それをアンナの周りに放り彼女を囲むようにして宙に浮き始める。
そして自身の手の中に残る、周りに放ったものと同じ棒を手にすると、それを口の前に近づけ、高音の声を鳴り響かせる。すると宙に浮いている複数の棒が共鳴し合い、中央に囲んだアンナを閉じ込めるように、四方八方から増幅された高音が彼女を苦しめる。
シアラの放った棒に囲まれた空間だけ、まるで磁場が歪んでいるかのように細かく震え、視界が歪んでいる。その中で悶えるように、両耳を塞ぎ逃げ場もなくダメージを負い続けている。
彼女がアンナの拘束に成功している間に、周囲のスピーカーを一掃し終えた護衛隊が彼女の元へと駆けつける。三人の護衛は状況から見て、範囲の外から遠距離攻撃で本体を叩くべきだと判断し、それぞれの武器に精一杯の魔力を纏わせ、一斉にアンナに向けて投擲する。
「これで・・・終わりだッ!」
三方向から投げられた武器は、シアラの作り出した音響の空間へと飛び込み、中で苦しむアンナの身体に突き刺さる。これでトドメのように見えた。だが、何事においても最後の詰めというものが重要となる。
戦いにおいてそれは、生物の本能を呼び起こさせる瞬間でもある。今の彼女が生物としての本能を持ち合わせているのかは分からないが、その瞬間は彼女にも例外なく訪れた。
霊体であろう彼女の身体に、魔力を帯びた武器が突き刺さり、例えそれがトドメにならずとも致命的な一撃になった筈と一行が確信していた時、一瞬止まったアンナの身体から一直線に、護衛達とシアラに糸のようのものが閃光のような速さで放たれ繋がる。
それはあまりにも一瞬の出来事で、本人達でさえも何をされたのか分からないほど不可解な攻撃だった。視界の中に僅かな光を反射したその糸に気がついた瞬間、強い衝撃が心臓を打ち鳴らしたのだ。
その衝撃は意識を断つには十分過ぎるほどの一撃で、シアラの持つ音を吸収するアイテムにも影響されることなく、直接彼らの内臓を攻撃した。
まさに形勢逆転。当然声による攻撃を仕掛けていたシアラは、声を出すことも叶わぬ状態になってしまい拘束していた音の空間が解かれてしまう。武器を投擲していた護衛達もその場に倒れてしまい、唯一その場で立っているのは窮地に陥っていた筈のアンナだけという状況へと変わる。
そこへ救援に駆けつけたツクヨとプラチドらの護衛隊が到着する。
「これは・・・」
「急ぎ彼らを救出しろ!あの女に注意しろ、攻撃は二の次でいい。まずは満足に戦える戦況を整えるぞ」
プラチドの指示で、教団の護衛隊はすぐさま倒れている者達を前線から引かせる。その間、立ち尽くすアンナの挙動に注目しつつ彼らの守りを担当するツクヨとプラチド。
救助されたのは護衛の三人とシアラ。負傷者を抱えたままでは満足に戦えない為、一行は彼らの状態を診つつ一人に一人づつ隊員を付け、司令室へと向かわせた。
戦場に残ったのはツクヨとプラチドだけ。シアラ達を救出した際に、かろうじて意識のあった彼女から、アンナの攻撃手段が音であることを聞いた
二人は、不気味に佇む彼女と一定の距離を保ち様子を伺っていた。
かのように思われた。だが同じように音による攻撃を扱うシアラには、同じ手は通じなかったのだ。
護衛達が何をされて姿を消したのかはシアラには分からなかったが、彼女がどんな攻撃を主軸に用いるのかは既に何度も目にしているし、その身で体験している。
彼女が護衛達をサポートしている間に、いつの間にかアンナを攻撃していた護衛達が姿を消していたことから、大きな衝撃波を発生させるものや、広範囲に効果のある攻撃ではないのは明らかだった。
故に彼女は、自身の持つ音を吸収する素材で出来ている小さな棒を仕込んでいたのだ。髪の中に隠れていた耳裏からそのアイテムを摘んで引き抜いた彼女は、歌うアンナの前にそれを見せつけるように取り出す。
そしてその棒を指で弾いて見せると、アンナが護衛達にした攻撃がそっくりそのまま彼女に返っていく。棒に吸収されていた自身の歌声による振動を返されたアンナは、胸を押さえてふらふらと後退りする。
「やっぱり・・・。音に何か仕込んでいたのね」
「ア・・・ァァァ・・・!」
戦いが始まってからというものの、漸く歌声以外の声を上げさせることに成功したシアラ。そして彼女が苦しみのあまり歌を歌うことを中断したおかげで、周囲で音の衝撃波を放っていたスピーカーを破壊していた護衛達にも追い風が吹く。
スピーカーは故障したような音を出しながら、まとまりのない雑音で大したダメージにもならない音の衝撃波を拡散し始める。
「ッ!?これなら突っ込んで壊せるぞ!」
「畳みかけろ!手が空いたら彼女のサポートに回れ!」
一気呵成に攻め立てる一行。攻撃の反射で怯んだアンナに、今度はシアラが音の攻撃を魅せつける。事前に音をチャージしていた棒を複数本取り出すと、それをアンナの周りに放り彼女を囲むようにして宙に浮き始める。
そして自身の手の中に残る、周りに放ったものと同じ棒を手にすると、それを口の前に近づけ、高音の声を鳴り響かせる。すると宙に浮いている複数の棒が共鳴し合い、中央に囲んだアンナを閉じ込めるように、四方八方から増幅された高音が彼女を苦しめる。
シアラの放った棒に囲まれた空間だけ、まるで磁場が歪んでいるかのように細かく震え、視界が歪んでいる。その中で悶えるように、両耳を塞ぎ逃げ場もなくダメージを負い続けている。
彼女がアンナの拘束に成功している間に、周囲のスピーカーを一掃し終えた護衛隊が彼女の元へと駆けつける。三人の護衛は状況から見て、範囲の外から遠距離攻撃で本体を叩くべきだと判断し、それぞれの武器に精一杯の魔力を纏わせ、一斉にアンナに向けて投擲する。
「これで・・・終わりだッ!」
三方向から投げられた武器は、シアラの作り出した音響の空間へと飛び込み、中で苦しむアンナの身体に突き刺さる。これでトドメのように見えた。だが、何事においても最後の詰めというものが重要となる。
戦いにおいてそれは、生物の本能を呼び起こさせる瞬間でもある。今の彼女が生物としての本能を持ち合わせているのかは分からないが、その瞬間は彼女にも例外なく訪れた。
霊体であろう彼女の身体に、魔力を帯びた武器が突き刺さり、例えそれがトドメにならずとも致命的な一撃になった筈と一行が確信していた時、一瞬止まったアンナの身体から一直線に、護衛達とシアラに糸のようのものが閃光のような速さで放たれ繋がる。
それはあまりにも一瞬の出来事で、本人達でさえも何をされたのか分からないほど不可解な攻撃だった。視界の中に僅かな光を反射したその糸に気がついた瞬間、強い衝撃が心臓を打ち鳴らしたのだ。
その衝撃は意識を断つには十分過ぎるほどの一撃で、シアラの持つ音を吸収するアイテムにも影響されることなく、直接彼らの内臓を攻撃した。
まさに形勢逆転。当然声による攻撃を仕掛けていたシアラは、声を出すことも叶わぬ状態になってしまい拘束していた音の空間が解かれてしまう。武器を投擲していた護衛達もその場に倒れてしまい、唯一その場で立っているのは窮地に陥っていた筈のアンナだけという状況へと変わる。
そこへ救援に駆けつけたツクヨとプラチドらの護衛隊が到着する。
「これは・・・」
「急ぎ彼らを救出しろ!あの女に注意しろ、攻撃は二の次でいい。まずは満足に戦える戦況を整えるぞ」
プラチドの指示で、教団の護衛隊はすぐさま倒れている者達を前線から引かせる。その間、立ち尽くすアンナの挙動に注目しつつ彼らの守りを担当するツクヨとプラチド。
救助されたのは護衛の三人とシアラ。負傷者を抱えたままでは満足に戦えない為、一行は彼らの状態を診つつ一人に一人づつ隊員を付け、司令室へと向かわせた。
戦場に残ったのはツクヨとプラチドだけ。シアラ達を救出した際に、かろうじて意識のあった彼女から、アンナの攻撃手段が音であることを聞いた
二人は、不気味に佇む彼女と一定の距離を保ち様子を伺っていた。
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