World of Fantasia

神代 コウ

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創造の剣と聖職者

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「彼女は何者なんだ・・・?」

「さぁな。だがコイツが襲撃者達を使役してるのは事実」

「つまり、彼女を倒せば宮殿への攻撃は収まる・・・?」

「それは分からないが、少なくとも外への一つの道が開放されるんじゃないか?」

 現状、宮殿からの脱出を考えるなら正面の入り口か、反対側にある裏口から出て行くのが正攻法だろう。勿論、今の彼らの記憶にはないが、ブルースらのように壁を破壊し、塀を乗り越え強行突破も可能だろうが、宮殿に残された非戦闘員の者達を救出するには現実的ではないだろう。

 今ここでツクヨ達がアンナの霊体を撃退できれば、戦えない者や怪我人を外に連れ出すこともできる。或いは街の病院へ向かい、薬や治療薬を持ってくることが出来る。

 二人が様子を伺っていると、遂に停止していたアンナに動きがあった。その霊体という存在が故に、先程護衛達やシアラから受けた傷はすっかり消えて無くなっている。

 彼らと戦っていた時と同様に、彼女の周りに目に見えるほどの魔力が煙のように渦を巻いて集まっていく。同時に彼らを取り巻く戦場のあちこちに、シアラ達が戦っていた時とは少し形状の変わったスピーカーが召喚される。

 それだけではなく、今度は先程の失敗から学んだのか、襲撃者達も同時に呼び寄せたのだ。これにより相手の側の手数が増えただけでなく、襲撃者達がスピーカーを持ち運ぶ事により、固定された砲台ではなくなったのだ。

「相変わらず数に物を言わせた戦闘か?ホント芸がないな」

「その相変わらずってのはよく分からないけど、敵は音を使うらしいから目に見える情報だけに惑わされないようにしないとね」

 自身の発した言葉にも関わらず、以前にも戦ったことのあるような事を口にしたプラチドもまた、自身の発言に違和感を覚えた。宮殿への謎の人物達による襲撃は、これまで数日間の事件の間では初めての体験の筈。

 無意識の内に、彼らの魂が前日の記憶をどこかで覚えているのだろうか。

「ん?確かに、俺ぁなんでさっきあんな事を・・・?まぁいいか!お互い、お手並み拝見といこうじゃないの!」

 プラチドは前日の失われた記憶だと、音楽学校の生徒の一人であるクリスを護衛しながら、死体安置所へと向かっていた。その時は突然の敵側の攻撃により不意打ちを受けてしまったので、戦いにまでは発展しなかった。

 故に彼にとって今回がアルバでの初の戦闘のお披露目となる。ジークベルト大司教を護送する為に組まれた今回の部隊の編成において、オイゲンは盾を駆使した教団最強の盾に恥じない守りの戦いを得意とし、ニノンはその見た目からは想像がつかない程の肉弾戦を得意とし、格闘術においては海上レースで共闘した武術の達人ハオランにも引けを取らない動きと力を示した。

 そんな彼らが一目を置くプラチドがどんな戦い方をするのか。彼が取り出した武器は、長いロッドのようなもので、先端には何らかの宝石のような物があてがわれていた。

 それをバトンのように巧みに振り回し、戦闘体勢に入る。ツクヨが今回の戦闘に選んだ武器は、グラン。ヴァーグにてグレイス・オマリーとハオランとの共同作戦で貰い受けた、WoFのユーザーでなければ真価を発揮しない不思議な剣、布都御魂剣だった。

 目で見るもので状況を読むのではなく、布都御魂剣は視覚情報以外のもので状況を把握し、所有者の想像する仮想空間の中で戦う事のできる、この世界においても常軌を逸した力を持つ能力がある剣。

 音という目に見えない振動を攻撃に利用する霊体のアンナとは、比較的相性の良い性能を有している武器と言えるだろう。彼は抜刀の構えを取り、瞼を閉じる。彼がその場の戦場に選んだのは、崩壊し瓦礫が散らばる前の宮殿広場だった。

 相手が霊体であるという事も相まって、敵の位置を把握するのには困らなかった。互いに準備の整ったところで、先に動き出したのは襲撃者の軍勢だった。

 アンナの召喚した持ち運べるスピーカーを手に持ち接近してくる謎の人物達。一緒にいると自身の攻撃で巻き込んでしまう事を危惧したツクヨは、プラチドから離れるように横へと飛ぶ。

 それを追いかけながら、謎の人物達は二手に分かれ攻撃を始める。アンナの歌声に反応し、スピーカーからは超音波のような波紋状に広がる、発射口から範囲の広がっていく衝撃波が放たれる。

 プラチドには僅かに空間が歪んでいるくらいにしか見えていなかったが、布都御魂剣の能力を駆使したツクヨには、それが見える波紋状の衝撃波としてはっきりと認識できていた。

 それを目を瞑ったまま、抜刀した布都御魂剣で両断する。衝撃波は真っ二つに割れ、均等に空気中へと伝わっていた振動が波長を崩し、衝撃波は消滅した。

「なるほど、剣士のクラスだったか!見事な剣捌きだ、まさか音を斬るとはな」

「悠長な事を言ってる場合ですか!?背後からも来てますよ!?」

「大丈夫さ、だって・・・」

 ツクヨの忠告通り、プラチドの方は背後からも謎の人物達が迫っていた。だが彼は慌てる様子もなく、振り向くことすらないままロッドの槍で言うところの石突の部分で床を打ち鳴らす。

 すると、彼覆うようにドーム状の障壁が出現し、周囲から迫る攻撃を一気に相殺して見せたのだ。

「俺もオイゲン程ではないが、守りのスキルを得意とする“クレリック“何だからな!」

 プラチドのクラスは、聖職者や僧侶を意味するクレリック。まさに教団の者と言わんばかりの、正統派のクラス保持者だったのだ。
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