1,489 / 1,646
希望の焔と影の使い道
しおりを挟む
結果的に紅葉の炎はアンナの生み出すシャボン玉を燃やす事が出来るようだ。やはりアンナのシャボン玉もまた、ベルンハルトの糸やシャボン玉と同じように属性で対処出来るのかも知れない。
ただ、ベルンハルトの時とは違い、感知も視認もしづらいアンナのシャボン玉に関しては、シンの影のスキルは相性が悪いと言えるだろう。試すまでもなく、目に見えないという事は光が目に届かないという事。光がなければ影は生まれない。つまりシンのスキルも通用しないという事だ。
あくまで影を用いたスキルに限りだが。どの道シンが扱える属性は、闇寄りのスキルになるので通用はしない。アンナのシャボン玉がベルンハルトのモノと同じ性質を持っているのなら、プラチドの聖属性でもシャボン玉を処理する事が出来そうなものだが、彼の話からはそのような話は出てこなかった。
「動けるか?」
「すっすまない、まだ一人では厳しいようだ。それに彼もいる」
プラチドは手元のツクヨに視線を落とす。何とか彼らをアカリの元へ連れて行ければと思ったが、それも難しいようだ。それにアカリ達を戦場のど真ん中に連れて来るのも危険だ。
周囲を見渡したシンは、そこで階段の踊り場にある大きめの柱に注目した。この場を何の対策も無しに移動するのは愚策。紅葉の炎で道を切り開くのも一つの手だが、現状で対処が可能な紅葉の炎を無駄に使わせるくらいなら、役に立たない自分のスキルを使おうというのだ。
「奴らにこっちの言葉が通じてる様子は?」
「いや、それはなかった。奴らは奴らで意思の疎通の方法があるみたいだ」
「良かった、なら声に出しても大丈夫だな。ツバキ!」
シンは上にいるツバキに大きな声で呼びかける。そして紅葉の炎を使い、一階へ降りる階段の踊り場の方を指差し、皆で移動してくるよう伝える。
「あそこに見える柱の陰まで、何とかして来てくれ!今から俺達もそこへ向かう!」
「向かうって・・・。そうか、君のスキルは・・・」
「あの柱の辺りなら、移動距離的にも広さ的にも丁度いい中継地点になる。これから俺の影の中を通ってあそこまで向かう。だがケイシーという彼は・・・」
そう言って近くにある大きな植物の種を見ると、プラチドは気にする事はないと言って置き去りにしても大丈夫だとシンに伝える。どうやらアレの外殻は非常に硬い強度を持っているようで、爆発でも割れる事はなかったのだと語る。
シンのスキルは移動させる物の大きさや質量によって、移動できる距離に制限が掛かってしまう。もしもケイシーまでともなっていたら、この話は破綻していたところだった。
自身とプラチド、それにツクヨの影も使って床に真っ黒な沼のような影でできたゲートを作るシン。自らが先に入り安全であることをしょうめいすると、続いてツクヨを抱えたプラチドが影の中へと落ちていく。
「ぉおらぁッ!紅葉ぃ!あっちに炎の風だぁ!」
まるで自分の召喚した使い魔のように、威勢の良い指示を出すツバキだったが、紅葉は全く彼の言うことを聞こうとはしなかった。その様子を呆れて見ていたアカリが、彼に代わってシンの指示を紅葉に伝える
「お願いね、紅葉。私達の道を切り開いて」
「キィーーー!」
大きく翼を羽ばたかせた紅葉は、勢い良く翼を羽ばたかせた階段の踊り場に向けて、火の粉舞う突風を巻き起こす。自分の言うことを聞かなかった紅葉に不服そうな表情を浮かべながらも、ツバキは紅葉の風の中を先陣を切って進み始める。
宙で引火したシャボン玉は、燃え尽きるその寸前までまるで人魂のように漂い、半分が崩壊したところで床へと落下していく。その殆どは、床に到達することなく全てを蒸発させていた。
少し焦げ臭い中を、残りの腕に取り付けられたガジェットの冷却ファンをふかしながら進むツバキ。先に到着していたのはシン達だった。司令室で見た事があるような男と、意識を失っている様子のツクヨを見て、無事なのかと問うツバキ。
「アカリ、君に二人の回復を頼みたい」
漸く自分を頼ってくれた仲間に、アカリは目を輝かせて自信に溢れた返事を返す。荷物を下ろし中に綺麗に入れてある薬草やお香を取り出し、治療の準備を始める。
「すまない、お嬢さん。世話になる・・・」
「いえ、お気になさらないで下さい」
「さてシン。何か作戦がお有りで?」
「先ずはフィールドを掌握している、奴の攻撃を処理する。その為に紅葉の力を借りたい・・・」
そう言ってシンがアカリの側で羽ばたく紅葉に視線を送ると、ツバキの時と同じようにそっぽを向いてしまう。
「コイツ、俺らの言うことは聞かないってよ」
「頼む、アカリを守る為だ・・・」
紅葉はシンの言葉を理解しているかのように、一度アカリの方を見た後俯きながらその場で翼を羽ばたかせる。
「お願い、紅葉・・・協力してあげて。貴方しかいないの」
アカリの言葉に話を聞く気になったのか、紅葉は大人しくなり近くの手摺りに止まり、何をすれば良いのかと尋ねるようにシンの方を見つめる。
「言葉が通じてんのか通じてねぇのか・・・」
「どちらでもいいさ。だがこの広さのフィールドに、一気にさっきの風を吹かせようとするなら、紅葉にはこの何処に爆弾があるかも分からない空間を飛び回ってもらう事になる・・・」
無論、そんな事をすれば唯一の対抗手段である紅葉までも失い兼ねない。そこでシンが参考にしたのは、アンナの歌声をスピーカーで拡散するという話だった。
ただ、ベルンハルトの時とは違い、感知も視認もしづらいアンナのシャボン玉に関しては、シンの影のスキルは相性が悪いと言えるだろう。試すまでもなく、目に見えないという事は光が目に届かないという事。光がなければ影は生まれない。つまりシンのスキルも通用しないという事だ。
あくまで影を用いたスキルに限りだが。どの道シンが扱える属性は、闇寄りのスキルになるので通用はしない。アンナのシャボン玉がベルンハルトのモノと同じ性質を持っているのなら、プラチドの聖属性でもシャボン玉を処理する事が出来そうなものだが、彼の話からはそのような話は出てこなかった。
「動けるか?」
「すっすまない、まだ一人では厳しいようだ。それに彼もいる」
プラチドは手元のツクヨに視線を落とす。何とか彼らをアカリの元へ連れて行ければと思ったが、それも難しいようだ。それにアカリ達を戦場のど真ん中に連れて来るのも危険だ。
周囲を見渡したシンは、そこで階段の踊り場にある大きめの柱に注目した。この場を何の対策も無しに移動するのは愚策。紅葉の炎で道を切り開くのも一つの手だが、現状で対処が可能な紅葉の炎を無駄に使わせるくらいなら、役に立たない自分のスキルを使おうというのだ。
「奴らにこっちの言葉が通じてる様子は?」
「いや、それはなかった。奴らは奴らで意思の疎通の方法があるみたいだ」
「良かった、なら声に出しても大丈夫だな。ツバキ!」
シンは上にいるツバキに大きな声で呼びかける。そして紅葉の炎を使い、一階へ降りる階段の踊り場の方を指差し、皆で移動してくるよう伝える。
「あそこに見える柱の陰まで、何とかして来てくれ!今から俺達もそこへ向かう!」
「向かうって・・・。そうか、君のスキルは・・・」
「あの柱の辺りなら、移動距離的にも広さ的にも丁度いい中継地点になる。これから俺の影の中を通ってあそこまで向かう。だがケイシーという彼は・・・」
そう言って近くにある大きな植物の種を見ると、プラチドは気にする事はないと言って置き去りにしても大丈夫だとシンに伝える。どうやらアレの外殻は非常に硬い強度を持っているようで、爆発でも割れる事はなかったのだと語る。
シンのスキルは移動させる物の大きさや質量によって、移動できる距離に制限が掛かってしまう。もしもケイシーまでともなっていたら、この話は破綻していたところだった。
自身とプラチド、それにツクヨの影も使って床に真っ黒な沼のような影でできたゲートを作るシン。自らが先に入り安全であることをしょうめいすると、続いてツクヨを抱えたプラチドが影の中へと落ちていく。
「ぉおらぁッ!紅葉ぃ!あっちに炎の風だぁ!」
まるで自分の召喚した使い魔のように、威勢の良い指示を出すツバキだったが、紅葉は全く彼の言うことを聞こうとはしなかった。その様子を呆れて見ていたアカリが、彼に代わってシンの指示を紅葉に伝える
「お願いね、紅葉。私達の道を切り開いて」
「キィーーー!」
大きく翼を羽ばたかせた紅葉は、勢い良く翼を羽ばたかせた階段の踊り場に向けて、火の粉舞う突風を巻き起こす。自分の言うことを聞かなかった紅葉に不服そうな表情を浮かべながらも、ツバキは紅葉の風の中を先陣を切って進み始める。
宙で引火したシャボン玉は、燃え尽きるその寸前までまるで人魂のように漂い、半分が崩壊したところで床へと落下していく。その殆どは、床に到達することなく全てを蒸発させていた。
少し焦げ臭い中を、残りの腕に取り付けられたガジェットの冷却ファンをふかしながら進むツバキ。先に到着していたのはシン達だった。司令室で見た事があるような男と、意識を失っている様子のツクヨを見て、無事なのかと問うツバキ。
「アカリ、君に二人の回復を頼みたい」
漸く自分を頼ってくれた仲間に、アカリは目を輝かせて自信に溢れた返事を返す。荷物を下ろし中に綺麗に入れてある薬草やお香を取り出し、治療の準備を始める。
「すまない、お嬢さん。世話になる・・・」
「いえ、お気になさらないで下さい」
「さてシン。何か作戦がお有りで?」
「先ずはフィールドを掌握している、奴の攻撃を処理する。その為に紅葉の力を借りたい・・・」
そう言ってシンがアカリの側で羽ばたく紅葉に視線を送ると、ツバキの時と同じようにそっぽを向いてしまう。
「コイツ、俺らの言うことは聞かないってよ」
「頼む、アカリを守る為だ・・・」
紅葉はシンの言葉を理解しているかのように、一度アカリの方を見た後俯きながらその場で翼を羽ばたかせる。
「お願い、紅葉・・・協力してあげて。貴方しかいないの」
アカリの言葉に話を聞く気になったのか、紅葉は大人しくなり近くの手摺りに止まり、何をすれば良いのかと尋ねるようにシンの方を見つめる。
「言葉が通じてんのか通じてねぇのか・・・」
「どちらでもいいさ。だがこの広さのフィールドに、一気にさっきの風を吹かせようとするなら、紅葉にはこの何処に爆弾があるかも分からない空間を飛び回ってもらう事になる・・・」
無論、そんな事をすれば唯一の対抗手段である紅葉までも失い兼ねない。そこでシンが参考にしたのは、アンナの歌声をスピーカーで拡散するという話だった。
0
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる