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炙り出された歌姫
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広場の遠くに見える柱の影から、一つ一つアカリ達のいる場所へゲートを逆戻りして移動してくるシン。瞬く間に彼らの元へ戻って来ると、シンはいよいよ計画を実行に移す。
「待たせた。早速紅葉の力を借りたい」
「キィー!」
「シン、援軍に来てくれたんだね!」
「あぁ、だが事情が少し変わって来ていてな。詳しいことは後で話す、今はアンナとやらを俺達の眼前に炙り出す!」
するとシンは、その場で可能な限り濃い影のゲートを柱に作り出す。宙を飛んでいる紅葉には、床に作るよりも壁や柱の方が風を送りやすいだろう。そして影を作り出している柱自身が最もシンにとって効率が良かった。
準備を整えたシンは、紅葉に柱に向かった例の炎の風を思いっきり吹かせてくれと頼む。煌びやかな光と魔力を纏った紅葉へ、その大きな翼を羽ばたかせ周りのシン達ですら、思わず腕で風除けを作る程だった。
紅葉はシンに言われた通り、全力で技を繰り出してくれた。そのおかげでシンの想像していた以上の結果を広場にもたらした。広場に作り出したシンの影のゲートから、それぞれ紅葉が吹かせる風と同じものが吹き荒ぶ。
それにより、広場に滞在していた見えざるシャボン玉や潜んでいた謎の人物達が炙り出される。火の粉が引火し、その全容を映し出す様に炎が物体を包み込む。
そこら中から謎の人物達の苦しむ声が響き渡る中、一つの特徴的なシルエットが動き出す。炎上すると身体に怯むことなく移動し始めたそのシルエットは、広場の中央で飛び上がると悲鳴の様な叫び声をあげて、周囲に激しい音の振動を撒き散らす。
振動を生み出す彼女の声は、全身を包み込む紅葉の炎を鎮火させ、近くにいた謎の人物達をもその炎から救った。
「音の振動で身体を震わせて、炎を鎮火してるッ・・・!?」
「思ってたよりも賢いね・・・。もしも犯人が遠隔で使役しているのなら、こうも器用な事が出来るものなのかい?」
「いや・・・明らかに遠隔操作の範囲を出ている・・・!?もしかして犯人が近くにいるのか!?」
アンナやベルンハルトが犯人によって使役されているのなら、その場その場の状況に臨機応変に対応している今の状況が不自然に思える。それこそ現場を見て状況を把握してでもいない限り、単純な指示を実行する機械の様な彼女が、ここまで厄介な相手になる筈がない。
そんなシンとツクヨの危惧していた通り、何者かの影が別の薄暗い場所で何らかの方法で宮殿入り口の様子を伺っていたのだ。その人物は何を語るでもなく、じっとその様子を眺めていた。
「来るぞ!ツクヨ、動けるか。」
「あぁ勿論だ!アカリの治療のおかげでね」
「紅葉!みんなを頼むッ!」
スキルを使った直後で披露した様子の紅葉は、疲れた様な鳴き声を上げながらアカリの方へと戻っていく。直後、紅葉の炎を振り払ったアンナが謎の人物達をシンとツクヨに差し向ける。
「シン!私が取り巻きの相手をする。君はアンナ本体を頼むよ!」
「分かった!」
シンはこれまでの霊体達との戦闘に習い、属性を纏ったエンチャント武器を取り出す。彼が手にしたのは短剣。そもそもアサシンというクラス事態が、多彩な武器を装備出来る訳ではない。槍や剣を持っているのは、あくまで投擲用の物であり、場面によって使い分けができる様にしているようだ。
勢いよく飛び上がって行ったシンは、短剣を握る反対の手で投擲用のナイフを取り出し、アンナへと投げる。彼女はそれを声だけで弾き飛ばすと、その場に衝撃を生み出すシャボン玉を残して、シンの攻撃の進路上から退避する。
このままではシンは、アンナの生み出した大きめのシャボン玉に衝突し、中身の衝撃でダメージを受けてしまう。空中で向かってしまった軌道を自身だけの力で変えるのは不可能。
そこでシンは、海上レースの時にツバキに開発してもらったアンカーを射出するガジェットを装備し、天井へ向けてそれを発射すると、アンカーが突き刺さったところへワイヤーを巻き取り飛び去って行く。
間一髪のところでシャボン玉を回避したシンは、ワイヤーを完全に巻き取る前にアンカーを外し、近くの柱に着地する。空中で華麗に攻撃を避けて見せたシンに、アンナはそのまま宙を飛びながら月光写譜を眼前に出現させながら歌声を披露する。
「アレが“月光写譜”・・・!何とか取り上げてジルに渡さないと」
アンナの歌声に反応して、天井からスピーカーの様なものが召喚される様に生えてくる。それらが一斉に向きを変えてシンに狙いを定めると、弾丸の様な音の衝撃を固めたものを発射する。
「待たせた。早速紅葉の力を借りたい」
「キィー!」
「シン、援軍に来てくれたんだね!」
「あぁ、だが事情が少し変わって来ていてな。詳しいことは後で話す、今はアンナとやらを俺達の眼前に炙り出す!」
するとシンは、その場で可能な限り濃い影のゲートを柱に作り出す。宙を飛んでいる紅葉には、床に作るよりも壁や柱の方が風を送りやすいだろう。そして影を作り出している柱自身が最もシンにとって効率が良かった。
準備を整えたシンは、紅葉に柱に向かった例の炎の風を思いっきり吹かせてくれと頼む。煌びやかな光と魔力を纏った紅葉へ、その大きな翼を羽ばたかせ周りのシン達ですら、思わず腕で風除けを作る程だった。
紅葉はシンに言われた通り、全力で技を繰り出してくれた。そのおかげでシンの想像していた以上の結果を広場にもたらした。広場に作り出したシンの影のゲートから、それぞれ紅葉が吹かせる風と同じものが吹き荒ぶ。
それにより、広場に滞在していた見えざるシャボン玉や潜んでいた謎の人物達が炙り出される。火の粉が引火し、その全容を映し出す様に炎が物体を包み込む。
そこら中から謎の人物達の苦しむ声が響き渡る中、一つの特徴的なシルエットが動き出す。炎上すると身体に怯むことなく移動し始めたそのシルエットは、広場の中央で飛び上がると悲鳴の様な叫び声をあげて、周囲に激しい音の振動を撒き散らす。
振動を生み出す彼女の声は、全身を包み込む紅葉の炎を鎮火させ、近くにいた謎の人物達をもその炎から救った。
「音の振動で身体を震わせて、炎を鎮火してるッ・・・!?」
「思ってたよりも賢いね・・・。もしも犯人が遠隔で使役しているのなら、こうも器用な事が出来るものなのかい?」
「いや・・・明らかに遠隔操作の範囲を出ている・・・!?もしかして犯人が近くにいるのか!?」
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そんなシンとツクヨの危惧していた通り、何者かの影が別の薄暗い場所で何らかの方法で宮殿入り口の様子を伺っていたのだ。その人物は何を語るでもなく、じっとその様子を眺めていた。
「来るぞ!ツクヨ、動けるか。」
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「紅葉!みんなを頼むッ!」
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「シン!私が取り巻きの相手をする。君はアンナ本体を頼むよ!」
「分かった!」
シンはこれまでの霊体達との戦闘に習い、属性を纏ったエンチャント武器を取り出す。彼が手にしたのは短剣。そもそもアサシンというクラス事態が、多彩な武器を装備出来る訳ではない。槍や剣を持っているのは、あくまで投擲用の物であり、場面によって使い分けができる様にしているようだ。
勢いよく飛び上がって行ったシンは、短剣を握る反対の手で投擲用のナイフを取り出し、アンナへと投げる。彼女はそれを声だけで弾き飛ばすと、その場に衝撃を生み出すシャボン玉を残して、シンの攻撃の進路上から退避する。
このままではシンは、アンナの生み出した大きめのシャボン玉に衝突し、中身の衝撃でダメージを受けてしまう。空中で向かってしまった軌道を自身だけの力で変えるのは不可能。
そこでシンは、海上レースの時にツバキに開発してもらったアンカーを射出するガジェットを装備し、天井へ向けてそれを発射すると、アンカーが突き刺さったところへワイヤーを巻き取り飛び去って行く。
間一髪のところでシャボン玉を回避したシンは、ワイヤーを完全に巻き取る前にアンカーを外し、近くの柱に着地する。空中で華麗に攻撃を避けて見せたシンに、アンナはそのまま宙を飛びながら月光写譜を眼前に出現させながら歌声を披露する。
「アレが“月光写譜”・・・!何とか取り上げてジルに渡さないと」
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