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身を清める森の湖
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数にして五体。ツクヨが相手にしている二体のモンスターとは別に、獣人型や獣型が入り混じっている。それぞれのモンスターの仲間なのかは分からないが、その爪や牙に付いたツクヨの血に誘われたのは確かだ
「クソッ!何考えてんのか分からんが、悪いが助太刀させてもらうぞ!」
シンは周囲のモンスターにバレるのを覚悟の上で、今も尚モンスターと対峙しているツクヨの前に姿を現した。彼はモンスターとの戦いに夢中だったようで、シンが現れたことで驚きの表情を浮かべた。
「シン!?どうしてここに!?」
「話は後だ!先ずはこの場を片付けてから・・・!」
瞬く間に周囲の影を集めたシンは、先に飛び掛かって来た方のモンスターを影の中へと引き摺り込む。スキルの隙を突いて攻撃を仕掛けるもう一体のモンスターの攻撃を、鞘に入った刀で受け止める。
「ありがとう、流石ツクヨだ」
「なんのこれしき」
スキルにクールタイムが終わり、再度集めた影をモンスターの足元で広げ、影の中へと落とし込んでいく。あっという間にその場を切り抜けたシンは、周囲に他にもモンスターが集まっている事をツクヨに話すと、今度は自分達が影の中へと入り移動した。
彼らを追っていたモンスター達は、その場に残されたツクヨの血に誘われ鉢合わせると、互いに戦いを始めた。その様子は宛ら、野生動物の縄張り争いのようだった。
モンスターと言えど、生物としての生態は基本変わらない。それは精気を纏ったモンスター達であっても変わらないようだった。だがそんな事があった事を知る由もなく、シンとツクヨはそこからある程度離れた森の中で姿を現す。
「流石だね。モンスターを傷付けずに転移させて、私達も安全なところまで逃げる事が出来た。私には出来ない事だ・・・」
「人には得意不得意があるだろ。俺にはツクヨのように強力な攻撃は無いし、武器も多くは扱えない。投げるだけだ。・・・それで?あれくらいにモンスターだったら、そんなに傷だらけになるほど苦戦する筈ないだろ?一体何をやってたんだ?」
ボロボロになったツクヨの服と、痛々しく刻まれた爪の痕、そして流れた血を吸って赤く染まる箇所を眺めながらシンはツクヨの思惑について尋ねた。
「あれは・・・そうだね、私に出来る方法でみんなからモンスターを引き離そうと考えたんだ。この血を使ってね・・・」
「自分を囮にしたのか!?なんて無茶を・・・。第一、夜明けまで逃げ切ったとして、その後はどうするつもりだ?匂いのついたままでは、野営には戻れないだろ?」
「どっかで回復薬でも使って止血した後、水で流そうかと・・・。山って山水とか湖があったりするものだろう?」
「まだ見つけてもいないのに・・・か?」
ただ、彼らはまだ知らない事だったが、回帰の山には嘗てのライノとミネが訪れた湖がある。そこでライノは気を失い、それっきりミネとは長らく会わなくなってしまった。
しかしそこでは、ライノがシン達も見たような光脈らしき黄金の川を見るという体験をしている。果たして安全な場所なのかは分からない。そもそも彼らはその場所さえ探し当てていないのだから、今心配することでもないのかも知れないが。
「じゃぁその水を探しに行くか」
「ちょっと、シンも付き合うつもりかい?それじゃぁ当初の私の目的が果たせないじゃないか」
「休息の事だろう?大丈夫さ、どの道陽が差し込めば俺のスキルは弱体化しちゃうから、きっとツクヨ達の足手纏いになる。今の内に活躍させておいてくれよ。じゃないと格好がつかない」
シンらしくない言葉ではあったが、ツクヨは何故数あるクラスの内シンはアサシンを選んだのかが分かったような気がした。人には役割がある。シンはそれをよく分かっているのだろう。
戦いの華である相手にダメージを与える火力役。傷付いた仲間を回復するヒーラー。相手の攻撃を一手に引き受け仲間を守るタンク役など。クラスによって様々な役割があり、それは戦いにおいてだけではなく、私生活や別の場所でも同じ事が言える。
「分かったよ、何を言っても引きそうにないし。それじゃぁ水を見つけるまで頼むよ」
「任せろ」
頼り甲斐のある笑みを浮かべて先導して森の中へと歩みを進めるシン。生物の気配感知に長けるクラスではあるが、実際の身体能力としてもアサシンのクラスは聴力が優れている。
それを頼りに周囲の環境音を聞き分けながら、二人は暗い森の中をモンスターを避けながら進み、そして漸くライノとミネが訪れた湖を見つけた。
「水だ!湖だ!まさに絵画のように美しい光景」
「さぁ、思う存分泳いでいいぞ、ツクヨ」
「私を何だと思っているんだ君は。まぁ確かに早く血を拭わなくては」
モンスター達から逃げるように影に忍び湖までやって来た二人。距離を取り気配を消してここまでやって来たが、モンスターがツクヨの血の匂いに誘われてやって来るのも時間の問題。
直ぐにその身に付いた血を洗い流そうと、湖の辺りへとツクヨがやって来る。そして水面を覗き込もうとしたその瞬間、彼らの意識の中に再び何かの記憶の映像が映り込む。
「クソッ!何考えてんのか分からんが、悪いが助太刀させてもらうぞ!」
シンは周囲のモンスターにバレるのを覚悟の上で、今も尚モンスターと対峙しているツクヨの前に姿を現した。彼はモンスターとの戦いに夢中だったようで、シンが現れたことで驚きの表情を浮かべた。
「シン!?どうしてここに!?」
「話は後だ!先ずはこの場を片付けてから・・・!」
瞬く間に周囲の影を集めたシンは、先に飛び掛かって来た方のモンスターを影の中へと引き摺り込む。スキルの隙を突いて攻撃を仕掛けるもう一体のモンスターの攻撃を、鞘に入った刀で受け止める。
「ありがとう、流石ツクヨだ」
「なんのこれしき」
スキルにクールタイムが終わり、再度集めた影をモンスターの足元で広げ、影の中へと落とし込んでいく。あっという間にその場を切り抜けたシンは、周囲に他にもモンスターが集まっている事をツクヨに話すと、今度は自分達が影の中へと入り移動した。
彼らを追っていたモンスター達は、その場に残されたツクヨの血に誘われ鉢合わせると、互いに戦いを始めた。その様子は宛ら、野生動物の縄張り争いのようだった。
モンスターと言えど、生物としての生態は基本変わらない。それは精気を纏ったモンスター達であっても変わらないようだった。だがそんな事があった事を知る由もなく、シンとツクヨはそこからある程度離れた森の中で姿を現す。
「流石だね。モンスターを傷付けずに転移させて、私達も安全なところまで逃げる事が出来た。私には出来ない事だ・・・」
「人には得意不得意があるだろ。俺にはツクヨのように強力な攻撃は無いし、武器も多くは扱えない。投げるだけだ。・・・それで?あれくらいにモンスターだったら、そんなに傷だらけになるほど苦戦する筈ないだろ?一体何をやってたんだ?」
ボロボロになったツクヨの服と、痛々しく刻まれた爪の痕、そして流れた血を吸って赤く染まる箇所を眺めながらシンはツクヨの思惑について尋ねた。
「あれは・・・そうだね、私に出来る方法でみんなからモンスターを引き離そうと考えたんだ。この血を使ってね・・・」
「自分を囮にしたのか!?なんて無茶を・・・。第一、夜明けまで逃げ切ったとして、その後はどうするつもりだ?匂いのついたままでは、野営には戻れないだろ?」
「どっかで回復薬でも使って止血した後、水で流そうかと・・・。山って山水とか湖があったりするものだろう?」
「まだ見つけてもいないのに・・・か?」
ただ、彼らはまだ知らない事だったが、回帰の山には嘗てのライノとミネが訪れた湖がある。そこでライノは気を失い、それっきりミネとは長らく会わなくなってしまった。
しかしそこでは、ライノがシン達も見たような光脈らしき黄金の川を見るという体験をしている。果たして安全な場所なのかは分からない。そもそも彼らはその場所さえ探し当てていないのだから、今心配することでもないのかも知れないが。
「じゃぁその水を探しに行くか」
「ちょっと、シンも付き合うつもりかい?それじゃぁ当初の私の目的が果たせないじゃないか」
「休息の事だろう?大丈夫さ、どの道陽が差し込めば俺のスキルは弱体化しちゃうから、きっとツクヨ達の足手纏いになる。今の内に活躍させておいてくれよ。じゃないと格好がつかない」
シンらしくない言葉ではあったが、ツクヨは何故数あるクラスの内シンはアサシンを選んだのかが分かったような気がした。人には役割がある。シンはそれをよく分かっているのだろう。
戦いの華である相手にダメージを与える火力役。傷付いた仲間を回復するヒーラー。相手の攻撃を一手に引き受け仲間を守るタンク役など。クラスによって様々な役割があり、それは戦いにおいてだけではなく、私生活や別の場所でも同じ事が言える。
「分かったよ、何を言っても引きそうにないし。それじゃぁ水を見つけるまで頼むよ」
「任せろ」
頼り甲斐のある笑みを浮かべて先導して森の中へと歩みを進めるシン。生物の気配感知に長けるクラスではあるが、実際の身体能力としてもアサシンのクラスは聴力が優れている。
それを頼りに周囲の環境音を聞き分けながら、二人は暗い森の中をモンスターを避けながら進み、そして漸くライノとミネが訪れた湖を見つけた。
「水だ!湖だ!まさに絵画のように美しい光景」
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「私を何だと思っているんだ君は。まぁ確かに早く血を拭わなくては」
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