機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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プロローグ

伯爵家の依頼

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 どれくらい泣いていただろうか。

 いつの間にか日が沈み、夕陽が森の中を照りつけていた。

「……早く街に戻ろう」

 僕はグイ、と腕で涙を拭うと、街へ向かってトボトボと歩く。

 辺りが暗くなる頃、街にたどり着いた僕はその足でギルドへと向かった。

 ギルドの扉をくぐり、受付に顔を出す。

「いらっしゃ……あ! アデルさん!」
「……やあ」

 受付嬢の“サラ”さんが笑顔で出迎えてくれた。

「あれあれー? 今日は他の皆さんはどうされたんですかー?」

 サラさんはキョロキョロと周りを見回し、他のメンバーを探す。
 だけど……。

「は、はは……僕はもう、『黄金の旋風』は抜けたんだ……」

 安い自尊心が、“捨てられた”って事実を告げることを拒否し、僕はついそんな嘘をついてしまった。

「えー……そうなんですかー……」

 サラさんは少しガッカリした表情を浮かべたかと思うと、すぐにいつもの営業スマイルに戻った。

「でしたら、アデルさんにピッタリなクエストがあるんですけど、そちらを受けて見ませんかー?」
「……僕にピッタリのクエスト?」

 ニシシ、と含み笑いをするサラさんが、一枚の羊皮紙を差し出した。

「えっと、これ……」
「ええ、この街の領主が募集してるんですー。なんでも腕の良い職人を探してるとかでー」

 職人……ねえ。
 僕の能力は、確かに物作りには特化しているけど……。

「……まあ、気が向いたら」
「そうですかー」

 僕はその羊皮紙を無造作に懐にしまう。

「あ……そういえば、魔石を換金したいんだけど……」

 そう言って、僕はオーガの魔石をカウンターに置く。

「おおー……! これはなかなかの魔石ですねー!」
「それで……いくらになりそう?」
「んー……これでしたら、金貨二枚、ですねー」

 ……思ったよりいい値がついたな。

「じゃあそれで……」
「はいー!」

 サラさんは魔石を持って席から離れ、しばらくすると金貨の入った袋を持ってきた。

「はい、こちらが代金になりますー!」
「…………………………」

 僕は無言でその袋を手に取り、さっきの羊皮紙と同じように無造作にしまう。

「それじゃ……」

 きびすを返し、僕はカウンターを離れようとすると。

「はいー! それじゃ、仲間に捨てられたアデルさんー!」
「っ!?」

 思わず振り返ると、サラさんはニタリ、と口の端を吊り上げて嘲笑っていた。
 ……初めから知っていて、僕のことを馬鹿にしていたのか。

 よくよく見れば、ギルドの中にいるみんなが、僕を見てニヤニヤとわらっていた。

 ……チクショウ!

 僕はギルドを飛び出すと、いつも使っている宿……はやめて、別の安宿に入った。

「……いらっしゃい」
「一部屋借りたいんだけど……」

 不愛想な宿の主人は無言で鍵を手渡した。

「部屋は二階の一番奥だよ」
「…………………………」

 二階へ上がると、僕は一番奥の部屋に入り、ベッドに自分の身体を投げ捨てるように倒れ込んだ。

「……もう、僕も終わりだな」

 僕が『黄金の旋風』を追放されたことがギルド内にあんなに広まっていて、その全部が僕を馬鹿にするものだけだった。
 こんな僕と、パーティーを組むような奴なんている筈がないし、かといって僕はソロでなんて活動できない。

 ……パーティーから捨てられ、幼馴染の恋人にも捨てられ……もう、このままいっそ……。

 ——ガサ。

 あ……そういえば、サラさ……もうさん・・付けなんていいや。サラが僕に変な依頼紙を渡したんだよな……。

「えーと……『腕の良い職人募集。依頼内容は直接面談時に説明』か……」

 依頼主は、この街の領主である“カートレット”伯爵家。

 だけど、カートレット伯爵家といえば三か月前に賊に襲われて当主とその家族が全員殺された筈じゃ……。

「……どういうことだ?」

 僕はもう一度その依頼紙によく目を通すが、やっぱり依頼主はやっぱりカートレット伯爵家だった。

 ただし。

「……当主、“ライラ=カートレット”」

 この名前は……カートレット伯爵の一人娘、だったよね……?

 生き残りが、いたんだ……。

 だけど、まだ家族が殺されて日も浅いのに、職人を募集しているなんて、一体何の目的で……?

 急に興味が湧いた僕は、依頼紙をまた懐にしまって部屋を出た。

 向かう先は酒場。
 ここなら、色々と情報を集めやすいから。

 ——ギイ。

 酒場の扉を開けて中に入ると、カウンターに座る。

「お客さん、注文は?」
「あー、うん……それじゃ、ミルクで」
「はいよ」

 店のマスターは返事をすると、ジョッキに並々とミルクを注ぎ、僕の前にドン、と置いた。

「はは……ところで、ちょっと教えて欲しいことがあるんだけど」
「……何だい?」
「うん……“カートレット伯爵家”について、なんだけど……」
「ああ……領主様、ねえ……」
「例の事件、生き残りっていたの?」
「……ひどい話さ」

 するとマスターは、例の事件について訥々とつとつと語り始めた。

 カートレット伯爵家が馬車で領地に帰還している途中、賊の集団に襲われたこと。
 当然護衛の騎士達もいたが、多勢に無勢、賊に皆殺しにされた。もちろん、伯爵とその夫人も。

「……だけど、領主様の一人娘だけはかろうじて生きていたらしい。かろうじて・・・・・、だがな……分かるだろ?」
「…………………………」
「で、一応はその一人娘のライラ様が名目上跡を継いで、その後見人として、領主様の弟君である“ジェイコブ”様がついていらっしゃるってワケだ」

 ……色々、複雑な事情がありそうだな。

「ありがとう」

 僕はミルクを一気飲みすると、少し多めに代金をカウンターに置いた。

「毎度」

 酒場を出た僕はその場で立ちすくむと。

「明日……行ってみるか……」

 ポツリ、とそう呟き、宿屋を目指して重い足取りで歩いた。
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