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幕間①
幼馴染の想い
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■カルラ視点
「これで、良かったのよ……」
私は酒場で一人、飲み慣れないお酒を浴びるように飲む。
アデル……彼の職業は冒険者として続けていくにはあまりに不向きだった。
できることといえば、ガラクタのようなたいして役に立たない武器やアイテムを無駄に作るだけ。
それも、材料がなければ作れないんだから、本当に意味がない。
でも彼は、冒険者の夢が諦められなくて、私の傍から離れたくなくて、十五の時に私と一緒に村を飛び出してから四年間、必死でしがみついてきた。
雑用だって何だってこなし、不平不満も言わず、馬鹿にされても、蔑まれても、それでも笑って耐え続けてきた。
だけど。
「憧れや想いだけで、冒険者はできないのよ……」
ここにはいないアデルに諭すように、私は呟く。
このまま冒険者を続けてゆけば、アデルはいつかその命を落とす。
それほど冒険者というのは危険なのだから。
それに……幸いなことにアデルの職業、[技術者]は、最高の物は作れないけど、ガラクタとはいえ簡単な物なら量産できる。
これなら、普通に生活する分には困ることもない。
私はもう一度、グイ、とグラスを傾けて一気に酒を飲み干した。
すると。
「やあ、ここにいたのか」
後ろから声を掛けられ振り向くと……エリアル達がいた。
「……何の用?」
「何だ、つれないなあ。今日はアデルの新たな門出を祝して、乾杯しようと思っただけだろ?」
そう言ってニコリ、と微笑むエリアルに、私はそっぽを向ける。
「好きにすれば? 私はもう行くから」
「オイオイ、そんな寂しいことを言うなよ。俺達、恋人同士……「あれはただの演技でしょ? アデルに冒険者を辞めさせるための」」
そう……私は、アデルに冒険者を辞めてもらうために、エリアル達に頼んで一芝居打った。
アデルに冒険者への未練を断ち切らせるために。
もう……アデルが私に縛られないようにするために。
「ハハハ、何を言っているんだ。君だって、アデルとこれ以上一緒にいても意味がないと思ったから、そうしたんだろ? それに、俺なら君のパートナーとして充分な筈だ」
……確かに、エリアルの言葉には一理ある。
私の職業は[剣聖《ソードマスター》]……この職業を持っている者なんて、この世界に限られた数しかいない。それ程優秀で、希少な職業。
対してエリアルの持つ職業は[英雄《ヒーロー》]。
[勇者]程ではないにしろ、それでも私の[剣聖]よりも希少で能力の高い職業であることは間違いない。
「……だから、私はあなたのパーティーに加わっているの」
「ハハ、なら私生活でも俺達はパートナーとして「それとこれとは話は別。失礼するわ」」
私は席を立つと、一瞥もくれずに店を出た。
背中越しに、エリアルの舌打ちを聞きながら。
「ふふ……大切な幼馴染で恋人のアデルを裏切った時点で、そんな浮ついたものは持つつもりはないのよ……」
私は自嘲気味にそう言うと、少し酔い覚ましのために街中を歩く。
「あー! カルラ様じゃないですかー!」
「サラ……」
手をブンブンと振りながら声を掛けてきたのは、ギルドの受付嬢、サラだった。
「えへー、お帰りですかー?」
「ええ……あなたも?」
「はいー! そういえば、良かったですねー! “役立たず”がいなくなって!」
サラは嬉しそうに私にそう話し掛ける。
「ええ、そうね……」
私はムッとしながらも、面倒なので適当に相槌を打った。
「でもでも! もうあの人に二度と会うこともないですし、良かったですねー!」
「……どういうこと?」
「えへへー、実は私、あの“役立たず”にクエストを紹介したんですよー! それも、絶対に生きて帰れない系の!」
「はあ!?」
私は激昂し、思わずサラの胸倉をつかんだ。
「どういうことか説明して!」
「く、苦しいです……」
「話せば楽になるわよ」
「は、話します! 話しますからあ!」
私はつかんだ手を離すと、サラはせき込んだ。
「ゲホッ、ゲホッ……実は、ここの領主様からクエストの発注があって……」
サラが言うには、ここの領主、カートレット伯爵家が腕の立つ職人を募集していたとのこと。
ただし、依頼内容は直接面談して話すという条件で。
「これって明らかに怪しいじゃないですかー。だって、腕のいい職人なんて、ギルド通さなくてもいくらでもいるのに、わざわざギルドに依頼してきたんですよー? それでエリアル様に言ったら、『アデルが困ってるだろうから回してやってくれ。アイツにはちょうどいいだろ?』って……」
「へえ……」
「だから、絶対に新しい領主様に何かやらされて、それで口封じに消されると思う……ってキャッ!?」
私は怒りのあまり、サラの脚を払うと、彼女は尻餅をついた。
「そう……知ってる? 今、私達の周りには誰もいないの。つまり……私があなたを消しても、何の問題もないのよ」
「え、えへへー……じょ、冗談ですよねー……?」
「試してみる?」
私はニタリ、と口の端を吊り上げると。
「ヒ、ヒイイイイイ!?」
サラは悲鳴を上げ、よろめきながらその場から逃げ去った。
「……フン」
だけど、さっきのサラの話……アデルが、カートレット伯爵のところに依頼を……。
私は今すぐに駆けだそうとして……大きくかぶりを振った。
「今さら……今さら、私がアデルを助けに行ってどうしようっていうの……」
私は言いようのない罪悪感と焦燥感に駆られながらも、ただ無言で宿へと帰って行った。
「これで、良かったのよ……」
私は酒場で一人、飲み慣れないお酒を浴びるように飲む。
アデル……彼の職業は冒険者として続けていくにはあまりに不向きだった。
できることといえば、ガラクタのようなたいして役に立たない武器やアイテムを無駄に作るだけ。
それも、材料がなければ作れないんだから、本当に意味がない。
でも彼は、冒険者の夢が諦められなくて、私の傍から離れたくなくて、十五の時に私と一緒に村を飛び出してから四年間、必死でしがみついてきた。
雑用だって何だってこなし、不平不満も言わず、馬鹿にされても、蔑まれても、それでも笑って耐え続けてきた。
だけど。
「憧れや想いだけで、冒険者はできないのよ……」
ここにはいないアデルに諭すように、私は呟く。
このまま冒険者を続けてゆけば、アデルはいつかその命を落とす。
それほど冒険者というのは危険なのだから。
それに……幸いなことにアデルの職業、[技術者]は、最高の物は作れないけど、ガラクタとはいえ簡単な物なら量産できる。
これなら、普通に生活する分には困ることもない。
私はもう一度、グイ、とグラスを傾けて一気に酒を飲み干した。
すると。
「やあ、ここにいたのか」
後ろから声を掛けられ振り向くと……エリアル達がいた。
「……何の用?」
「何だ、つれないなあ。今日はアデルの新たな門出を祝して、乾杯しようと思っただけだろ?」
そう言ってニコリ、と微笑むエリアルに、私はそっぽを向ける。
「好きにすれば? 私はもう行くから」
「オイオイ、そんな寂しいことを言うなよ。俺達、恋人同士……「あれはただの演技でしょ? アデルに冒険者を辞めさせるための」」
そう……私は、アデルに冒険者を辞めてもらうために、エリアル達に頼んで一芝居打った。
アデルに冒険者への未練を断ち切らせるために。
もう……アデルが私に縛られないようにするために。
「ハハハ、何を言っているんだ。君だって、アデルとこれ以上一緒にいても意味がないと思ったから、そうしたんだろ? それに、俺なら君のパートナーとして充分な筈だ」
……確かに、エリアルの言葉には一理ある。
私の職業は[剣聖《ソードマスター》]……この職業を持っている者なんて、この世界に限られた数しかいない。それ程優秀で、希少な職業。
対してエリアルの持つ職業は[英雄《ヒーロー》]。
[勇者]程ではないにしろ、それでも私の[剣聖]よりも希少で能力の高い職業であることは間違いない。
「……だから、私はあなたのパーティーに加わっているの」
「ハハ、なら私生活でも俺達はパートナーとして「それとこれとは話は別。失礼するわ」」
私は席を立つと、一瞥もくれずに店を出た。
背中越しに、エリアルの舌打ちを聞きながら。
「ふふ……大切な幼馴染で恋人のアデルを裏切った時点で、そんな浮ついたものは持つつもりはないのよ……」
私は自嘲気味にそう言うと、少し酔い覚ましのために街中を歩く。
「あー! カルラ様じゃないですかー!」
「サラ……」
手をブンブンと振りながら声を掛けてきたのは、ギルドの受付嬢、サラだった。
「えへー、お帰りですかー?」
「ええ……あなたも?」
「はいー! そういえば、良かったですねー! “役立たず”がいなくなって!」
サラは嬉しそうに私にそう話し掛ける。
「ええ、そうね……」
私はムッとしながらも、面倒なので適当に相槌を打った。
「でもでも! もうあの人に二度と会うこともないですし、良かったですねー!」
「……どういうこと?」
「えへへー、実は私、あの“役立たず”にクエストを紹介したんですよー! それも、絶対に生きて帰れない系の!」
「はあ!?」
私は激昂し、思わずサラの胸倉をつかんだ。
「どういうことか説明して!」
「く、苦しいです……」
「話せば楽になるわよ」
「は、話します! 話しますからあ!」
私はつかんだ手を離すと、サラはせき込んだ。
「ゲホッ、ゲホッ……実は、ここの領主様からクエストの発注があって……」
サラが言うには、ここの領主、カートレット伯爵家が腕の立つ職人を募集していたとのこと。
ただし、依頼内容は直接面談して話すという条件で。
「これって明らかに怪しいじゃないですかー。だって、腕のいい職人なんて、ギルド通さなくてもいくらでもいるのに、わざわざギルドに依頼してきたんですよー? それでエリアル様に言ったら、『アデルが困ってるだろうから回してやってくれ。アイツにはちょうどいいだろ?』って……」
「へえ……」
「だから、絶対に新しい領主様に何かやらされて、それで口封じに消されると思う……ってキャッ!?」
私は怒りのあまり、サラの脚を払うと、彼女は尻餅をついた。
「そう……知ってる? 今、私達の周りには誰もいないの。つまり……私があなたを消しても、何の問題もないのよ」
「え、えへへー……じょ、冗談ですよねー……?」
「試してみる?」
私はニタリ、と口の端を吊り上げると。
「ヒ、ヒイイイイイ!?」
サラは悲鳴を上げ、よろめきながらその場から逃げ去った。
「……フン」
だけど、さっきのサラの話……アデルが、カートレット伯爵のところに依頼を……。
私は今すぐに駆けだそうとして……大きくかぶりを振った。
「今さら……今さら、私がアデルを助けに行ってどうしようっていうの……」
私は言いようのない罪悪感と焦燥感に駆られながらも、ただ無言で宿へと帰って行った。
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