機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第一章 復讐その一 ジェイコブ=カートレット

死を司る女神

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「ライラ様! そちらに一匹向かいました!」
「はい!」

 僕達は今、町はずれにある森で、初級クエストのゴブリン討伐を行っている。
 情報収集もしないで何やっているんだって話ではあるんだけど……。

『ぜひ! ぜひこの『白銀の翼』の初陣をしましょう!』

 と、ライラ様が幻の尻尾をブンブンと振っておねだりされて、その……まあ、僕もハンナさんも折れたという訳で……。

 まあでも。

「ハアッ!」
『グギャギャ!?』

 ライラ様が右手に持つ剣を一閃させると、ゴブリンの頭が文字通り爆ぜた・・・
 うん……あの腕とあの脚の威力なら、そうなるのも当然だよな……。

「アデル様! 見ましたか!」
「え、ええ、見ましたよ……」

 僕ははしゃぐ彼女の姿を見て、ただ苦笑するしかない。

「本当に……お嬢様のあの力は恐ろしい程ですね……」

 音もなくククリナイフでゴブリンの首を刈り続けながら、ハンナさんが驚きの表情を見せる。
 僕から言わせれば、そんな暗殺者みたいなハンナさんに驚きなんですが……。

「ま、まあ……そもそもあの腕と脚の動力源は、いくつもの魔物の魂の結晶ですから……当然、その力も圧倒的で……」

 そして、それを最適に使役するための役割を、ライラ様の左眼が担っている。
 まあ、当然ながらゴブリン程度じゃお話にもならない訳で。

「……ライラ様なら、たとえドラゴンであっても簡単にほふってしまわれるかと……」
「その言葉に同意します……」

 すると。

「あ……」

 ライラ様がガッカリした声を漏らした。
 この日、四本目の剣が壊れたのだ。

「はは……ライラ様のお身体には、並みの武器ではたないみたいですね。【加工キャスト】【製作クラフト】」

 僕は両手をかざし、壊れた剣を素材に加工してから元の剣と同じように戻した。
 この程度のものであれば、わざわざ【設計《デザイン》】しなくても、簡単に復元できる。

「はい、どうぞ」
「あ……ありがとうございます!」

 僕は元通りになった剣をライラ様に渡すと、彼女は大事そうに剣を受け取った。

「しかし……やはりアデル様の能力はすごいですね……」
「はは……全然大したものじゃないですよ……」

 ハンナさんはしきりに感心しているが、結局のところ、材料がなければ作れはしないし、あったところで簡単なものしか作れない。
 ましてや、例えば名剣を作ろうと思えば、ライラ様の身体を作った時程じゃないにしろ、僕の身体はボロボロになるだろう……。

「そんなことはありません! つまり、アデル様がいれば武器や防具の破損も気にする必要がない訳ですから! すごいです!」

 僕の言葉を否定し、手放しで褒め讃えるライラ様。
 だけど。

「いえ……今ライラ様がお使いになられているその剣が、安物の剣だからできるだけで、それが名剣だったりすれば、僕には復元は……」
「で、ですが! 私には名剣なんて不要ですから! わ、私にはアデル様の直してくださるこの剣があれば……!」
「はは、ありがとうございます」

 僕だって、こんなに真っ直ぐに好意を向けられれば、その……嬉しくない訳がない。
 でも……こんな程度で果たして本当に彼女の復讐の力になれるんだろうか。

 それに……。

「あはは……一度、ライラ様専用の武器と防具、作ってみてもいいかもしれませんね……」
「っ!? そ、それは……」

 僕がそう呟くと、ライラ様が不安そうな眼差しを向ける。

「……大丈夫ですよ。さすがにただの武器や防具であれば、あんなことにはならない筈ですから」
「は、はあ……」

 うん……屋敷に戻ったら、早速作ってみよう。

 そんなことを考えていると。

「……アデル様」
「うわ!?」

 いきなり左側から・・・・ハンナさんが現れ、僕は驚きの声を上げた。

「どうなさいました?」
「あ、い、いえ……その、いきなりハンナさんが現れたもので、つい……」
「? 私は先程からこちらにおりましたが……」
「あ、そ、そうでしたね……」
「?」

 不思議そうに首を傾げるハンナさん。

 ふう……危なかった。

「さて……ゴブリン討伐もこれくらいすれば充分でしょう。そろそろ戻……っ!?」
『ゴアアアアアアア!』

 突然、茂みの中から三メートルを超える巨躯を誇る“ビッグベア”が現れた。
 だけど……ところどころ身体に傷がある。

「ライラ様、お気をつけください! このビッグベア、手負いで狂暴になってます!」
「はい!」
『グオアアアアアア!』

 僕達はビッグベアから距離を取り、すぐに武器を構える。
 僕のボウガンじゃ手傷を与えるのは難しいけど、牽制くらいなら……っ!?

「ライラ様!?」
「ハアアアアアアア!」

 ライラ様が猛スピードでダッシュすると、あっという間に距離を詰め、ビッグベアの懐に潜りこむ。

 だけど。

『ゴアアアアアアア!』

 まるでそれを見計らったかのように、ビッグベアがその丸太のような腕をライラ様に振り下ろした。

「ライラ様!」
「お嬢様!」

 僕とハンナさんはライラ様を助けようと、慌てて駆け出す。
 でも……無用の心配だったみたいだ。

『グア!?』

 なんとライラ様はビッグベアの腕をあっさりと受け止め、そして。

 ——ベキ、ボキ。

『ガアアアアアアアア!?』

 まるで枯れ木の枝を折るかのように、ビッグベアの腕をあらぬ方向へと折り曲げた。

「フッ!」

 続けざま、右手に持つ剣をビッグベアの首元に突きつけると……ゴブリン達と同様、首周辺が爆散した。

「アデル様!」

 そして、嬉しそうな声で僕を呼ぶライラ様。

 ビッグベアの鮮血を全身に浴び、鋼の輝きと相まったその姿は……まるで、血だまりの中にたたずむ、おとぎ話に出てくる“死を司る女神”のようだった。
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