機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第二章 復讐その二 ジェームズ=ゴドウィン

震え

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 先程の一件もあり、“黄金の旋風”の連中は僕達に一切話しかけることなく、ただ無言で野営をしていた。

 それこそ、僕達を避けるように大きく距離を取って。

 まあ、僕達も正直関わり合いになりたくはないので、好都合ではあるけど。

「……寝つけないなあ」

 僕はライラ様達の隣に立てたテントから出ると、カルラが一人で見張りをしていた。
 ……ひょっとしたら、エリアルの奴が他の三人の誰かと寝ているせいで、一人だけ見張りする羽目になったのかもしれないけど。

 すると。

「アデル……」

 物音に気づいたカルラがこちらへと振り向き、僕の名前を呼ぶ。
 でも、僕はその呼びかけに返事をしなかった。

「……どうして」
「…………………………」
「どうして、あなたは冒険者を続けているのよ……」

 そう呟くと、唇を噛みしめながらカルラが俯く。
 だけど、残念ながら僕がその呟きに答える義理はない。

 無言のまま、僕はまたテントへと戻る。
 ジッと見つめる、カルラを無視して。

 すると。

「アデル様……」

 テントの中には、何故かライラ様とハンナさんがいた。
 その三つの瞳に、不安の色をたたえて。

「あはは、お二人共どうしました?」
「いえ……そ、その、ちょうどアデル様がテントをお出になったので……」

 ハンナさんが、戸惑いながらそう答える。
 ああ……二人はさっきのカルラとのやり取りを見てたのか。

「ちょっと寝つけなかったもので、夜風に当たっていたんですよ」
「……な、何かお話をされていたんですか……?」

 そう尋ねるライラ様の声が、若干震えていた。

「ああ、いえ……向こうが一方的に一人で呟いていただけですよ」
「そ、そうですか……」
「大体、今さら話しかけられても、僕としても困るだけですしね」

 少しおどけながらそう言うと、二人は安堵したのか、ホッと胸を撫で下ろした。

「……僕の居場所は、お二人の傍だけですよ」
「「っ!」」

 僕の言葉に、二人が息を詰まらせる。

「あはは、明日も早いですから、そろそろ寝ましょうか」
「「はい!」」

 すると、二人は先程とは打って変わって笑顔で返事をした。

「では、おやすみなさい」
「「……おやすみなさいませ」」

 だけど、二人は少しだけ名残惜しそうにテントを出て行った。

 ◇

 次の日も、僕達三人と“黄金の旋風”との間に言葉はなかった。

 ギスギスした空気が流れるが、そんなことはお構いなしに僕達三人は楽しく談笑しながら昨日と同じペースで歩く。

 すると、“黄金の旋風”は少しずつ遅れ始める。

 一番最初についてこれなくなったのはレジーナだった。
 まあ、彼女は[魔法使いマジシャン]でメンバーの中で最も非力だということもあるけど、一番は昨日の一件が尾を引いているからだろう。
 あんな目に遭って、僕達……というか、ライラ様に近づきたくない筈だからね。

 次に遅れたのはロロ。
 獣人とはいえ、彼女は体格も一番小さいし、職業ジョブも[斥候スカウト]だから重い荷物を運ぶのには向いていないんだろう。

 さらに、一番体格の良いセシルまでもが離脱した。
 彼女の場合、その甲冑と大きな盾があだとなったようだ。
 でも、整備された安全な街道を歩くのを分かっているんだから、軽装にすれば良かったんだけどね。

 そんな三人を待たずに、僕達は同じペースで黙々と進み続け、陽も落ちて辺りが暗くなる頃。

「アデル様!」
「ええ……着きましたね」

 僕達は、モーカムの街に到着した。

 早速ハンナさんが街の門番と話をして調整した後、僕達は街に入ると、中はもう夜だというのに活気にあふれていた。

 多くの店から笑い声が聞こえ、道端でも楽しそうに会話する街の人達で賑わっている。

「うふふ、モーカムの街は王国有数の繁華街ですから」
「へえ……そうなんですね」
「早く私達も宿に入って、すぐに街に繰り出しましょう!」

 ライラ様は待ちきれないとばかりに、僕達を急かした。

「うふふ、そうですね……ですが、その前に」

 ハンナさんがクルリ、と後ろを振り返り、結局最後までついて来れたエリアルとカルラを見やる。

「それでは、往路の護衛と荷物運びについてはここで終了といたしましょう。“黄金の旋風”の皆様、お疲れ様でした」
「ええと、は、はあ……」

 優雅にカーテシーをするハンナさんに、困惑の表情を浮かべたエリアルが微妙な返事をした。
 それもそうだろう。だって、まだ三人は合流できていないんだから。

「ああ、そうそう。皆様が運んでくださった荷物については、皆様で責任を持って管理しておいてください」
「は、はい……」

 うわあ……ひょっとして……。

「ハ、ハンナさん、ちょっと……」
「はい、何でしょうか?」

 僕が手招きをすると、ハンナさんが嬉しそうに傍にやって来た。

「え、ええと……彼等の運んだ荷物って、明後日のパーティーで使うものとかはないんですか?」
「はい。必要なものは、あらかじめ別の者に宿に届けさせております」

 ハンナさんが最高の笑顔で答えた。
 つまり、“黄金の旋風”にほとんど意味のない荷物運びをさせていたってことか……。

「うふふ。ですが、テントや食料などもありますから、全てが無駄、というわけではありませんよ?」

 僕の思考を察したハンナさんが、悪戯いたずらっぽい笑みを浮かべながらそう答えた。

「で、では俺達はここで失礼します」

 エリアルは愛想笑いをしながらライラ様に握手しようとして。

「……出発の際にも伝えた筈です。馴れ合いは不要だと」
「…………………………」

 凍りつくような視線で明確に拒否され、エリアルは無言のまま出した手を引っ込めた。

「ふふ。アデル様、早く宿へと行きましょう!」
「ええ。今度の宿は頑丈ですから、アデル様に改築していただかなくても大丈夫ですので」
「ハンナ!?」

 ハンナさんの皮肉にライラ様が抗議した。
 僕はそんな二人を眺めながら、一緒に宿へと向か……っ!?

 ——ドン。

「ひっ!?」

 突然、ライラ様が軽く悲鳴を上げた。

 どうやら、すれ違いざまに男の人と肩がぶつかったようだけど……ライラ様の様子がおかしい。

「ライラ様……?」
「い、いやあああ……!」

 ライラ様の身体が小刻みに震える。

「……アデル様、お嬢様はまだ……」

 ハンナさんが僕にそっと耳打ちして教えてくれた。

 僕と触れても何ともないし、ジェイコブ達もわらいながらからほふったから、ライラ様は過去を克服されているものだと思っていた。

 けど、本当は……。

「……ア、アデル様……?」
「ライラ様……行きましょう」

 僕はライラ様の震えを止めるかのようにその身体を抱き締めると、ハンナさんと共に宿へと急いだ。

 ……僕達の様子をジッと眺める、エリアルとカルラに気づかないまま。
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