機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第二章 復讐その二 ジェームズ=ゴドウィン

ハンナと大道芸人

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 結局、昨日は宿に入った後、外出したりすることもなく大人しく過ごした。
 宿に戻ってからもライラ様の震えは止まらず、ハンナさんに付き添われてずっと部屋に引きこもったままだ。

 ライラ様、今日は落ち着きを取り戻しているといいんだけど……。

 僕は部屋を出ようと、ドアノブに手を掛け……。

 ——コンコン。

「……アデル様、おはようございます」

 その前にドアの向こうからノックされ、ライラ様の遠慮がちな挨拶が聞こえた。

「おはようございます、ライラ様」

 僕はすぐにドアを開け、努めて笑顔でライラ様に挨拶をした。

「よ、よろしければ一緒に朝食でもいかがかと思いまして……」

 ライラ様がもじもじしながら誘ってくれた。
 だけど……うん、とりあえずいつもの様子に戻ったかな。

「ええ、ぜひご一緒させてください」
「! はい!」

 僕が快く返事をすると、ライラ様は嬉しそうに頷いた。

 そして、僕はス、と右手を差し出す。

「では、行きましょうか」
「はい……」

 ライラ様がおずおずと僕の右手に白銀の手を添えると、僕達は食堂へと向かった。

「お二人共、お待ちしておりました」

 食堂に入ると、ハンナさんが僕達を出迎えて一礼した。

「え、ええと……どうしてハンナさんが?」
「うふふ、お二人の給仕をさせていただくのは、この私の特権ですので」

 微笑みながらそう言うと、ハンナさんは僕達を席に案内してくれた。

「ふふ。では、いただきましょうか」
「はい」

 僕とライラ様は、楽しく朝食を摂る。
 さすがにモーカムの街一番の宿だけあって、その味も素晴らしかった。

「それで、本日はどうなさいますか?」

 紅茶をカップに注ぎながら、ハンナさんが尋ねる。

「そうですね……できればゴドウィン卿についての情報をできる限り仕入れたいので、まずは僕一人でこの街のギルドや酒場などで情報収集を……」
「「…………………………」」

 僕がそう告げると、二人が頬をパンパンに膨らませていた。

「……それは今日しないといけないものでしょうか」
「私は、明日パーティーが開催される前に調べれば済む話のような気がいたしますが?」

 二人が遠回しに告げる。
 今日すべきことはソレじゃないだろ、と。

 ……はあ、仕方ない。

「分かりました。では、情報収集としてモーカムの街を散策しましょうか……三人で」
「「! はい!」」

 すると今度は、二人は最高に良い返事をしてくれた。
 まあ……少しくらい、のんびり楽しんでもいいよね……。

 ◇

「アデル様! あれを見てください!」

 ライラ様が指を差す先には、数本のナイフでジャグリングをする顔半分を仮面で覆い、残り半分の顔に化粧を施した大道芸人がいた。

「へえ、見事ですね」

 僕が感心しながらそう呟くと。

「うふふ、あの程度・・・・でよろしければ、お二人にいつでもお見せいたしますよ?」

 何故か対抗意識を燃やしたハンナさんが、眼鏡をクイ、と持ち上げながら張り合うようにアピールしてきた。

「ふふ、ハンナったら、アデル様にいいところを見せようと必死ですね」
「ななななな!? お、お嬢様!?」

 クスクスと無表情で笑うライラ様に、顔を真っ赤にしたハンナさんが手をバタバタさせて慌てて止める。
 あはは、ライラ様も可愛いけど、ハンナさんも可愛いなあ。

「せっかくなので近くで見てみましょうか」

 僕はそんな二人の手を取ると。

「「あ……は、はい……」」

 二人は頬をほんのり赤く染めながら、手を引く僕と一緒に大道芸人の前に行った。

 それから僕達は大道芸人の芸を楽しみ、拍手を送る。

「さあ! では次で最後の芸となります! 上手くできましたら、盛大な拍手とお心づけをいただけますと幸いです!」

 そう言うと、大道芸人は集中するようにそっと目を瞑ると。

「ハアッ!」

 そのまま建物の屋根に飛び移るかと思う程の高さまで跳躍し……空中で静止した。

「「「「「おおおおおおおお!」」」」」

 そして、そのままクルリ、と逆さまになって両手を広げ、僕達を含めた観客に拍手を促した。

 ——パチパチパチパチパチ!

 僕達は大きな拍手を送ると共に、置かれている帽子の中へ思い思いにお金を投げ入れた。

「いやあ、すごかったですね!」
「はい! ですが、あれってどうやっているんでしょうか?」

 ライラ様が空中で優雅にお辞儀をする大道芸人を眺めながら、不思議そうに尋ねる。

 すると。

「……あれは、建物の間に周囲と同じ色を塗った金属の糸を張っておいて、その糸に乗っているのです」

 何故か暗い表情のハンナさんが、ポツリ、と説明した。

「へえー、よくご存じですね!」

 僕は努めて明るくそう言葉をかけると、ハンナさんはますますその表情を暗くした。

 そして。

「……どうして(ボソッ)」

 ハンナさんは聞こえない程の声で、そう一言だけ呟いた。

「……それじゃ、せっかくですし何か美味しいものでも食べに行きましょうか!」
「は、はい! そうしましょう!」

 僕とライラ様も、そんなハンナさんに気遣うようにそう告げると、急いでその場を離れる。

 けど。

「…………………………」

 ハンナさんは振り返ってもう一度大道芸人を見つめると、俯きながら無言で僕達の後をついてきた。
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