機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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幕間③

天国への階段

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■???視点

「お待ちしておりました」
「うむ」

 国王陛下の執務室へとやって来ると、近衛兵が身を正して敬礼した。

 そして中へと通されると、アルグレア王国が誇る二人の公爵が既に揃い踏みしていた。

「いやはや、わざわざ我々を呼んで陛下はどのようなご用件なのでしょうか……」

 苦笑しながら肩を竦めるのは“グロウスター”卿。
 王国西海岸にある港湾都市“ブラムス”を保有し、外交と貿易を一手に担う若き公爵だ。

「…………………………」

 一方、そんなグロウスター卿の言葉を無視し、いかめしい面構えで腕組みをしているのが陛下の叔父に当たる“アーガイル”卿。
 かつては王国最強と謳われた程の軍事の天才だ。

「……アーガイル閣下、グロウスター閣下、ご足労いただき、ありがとうございます」

 私は二人の前に立つと、恭しく一礼した。

「! やあ、やっと来ましたね!」
「……………………………」

 微笑むグロウスター卿に対し、ジロリ、と一睨みするアーガイル卿。

 だが、二人の雰囲気が言外に告げている。
 『わざわざ呼んだ用件はなんだ』、と。

「……間もなく陛下が参られます。それまで、今しばらくお待ち下さいますよう……」
「ああそう」
「……………………………」

 私がそう告げると、二人は興味を失くしたかのように私から視線を外した。

 すると。

「待たせたな……」
「「「国王陛下!」」」

 私達は一斉に跪《ひざまず》き、首《こうべ》を垂れた。

「うむ……おもてを上げよ」
「「「ハッ!」」」

 顔を上げると、陛下はアーガイル卿とグロウスター卿に席に座るよう促す。
 陛下から向かって右側の席にはアーガイル卿が、左側の席にはグロウスター卿が着いた。

 そして私はといえば、陛下の右後ろに控える。

「今日集まってもらったのは他でもない……これ」
「ハッ! ここからはこの私が説明いたします」

 私はス、と前に出て一礼した。

「まず、あの・・カートレット伯爵の一人娘であるライラ=カートレットですが、どういう訳かその腕と脚が健在でした」
「「っ!?」」

 私の言葉に、二人の公爵は驚きを隠せない。

「……どういうことだ? 手脚を失い、もはや木偶人形に成り下がっていたのではないのか?」

 堪《たま》りかねたアーガイル卿が尋ねた。

「……現在調査中ではありますが、報告では間違いなく腕と脚はあった、と。ただし、甲冑を付けているため、どのような状態なのかは目視では確認できないようです」
「むう……」

 説明を聞いたアーガイル卿が唸る。

「イヤイヤイヤイヤ、切り落とされた人間の手脚が復活するとかあり得ないでしょう」

 全く信じていないのか、グロウスター卿は即座に否定した。
 もちろん、私も否定できるならしたい。

 だが……事実なのだ。

「……次です。ゴドウィン卿の軍勢がライラ=カートレット一味とモーカムの街とアイザックの街を結ぶ街道にある湿地帯で交戦。五千の軍勢は壊滅し、ゴドウィン卿の死亡が確認されました」
「な、なんだとおっ!?」

 大声で叫びながら、アーガイル卿が乱暴に立ち上がった。

「そんな馬鹿なことがあるかっ! ゴドウィンは王国の軍務大臣だぞ!? この王国内で、わし以外の者から遅れを取ることなど、ある訳がないであろう!」
「アーガイル卿……ですが、事実なのです」
「く……っ!」

 アーガイル卿は悔しそうに歯噛みすると、腕組みしながらドカッと椅子に座る。

「それで、五千の軍勢を相手にしたんだから、ライラ=カートレットもそれなりの兵士を用意したのかな?」

 グロウスター卿は少しでも辻褄つじつまを合わせようと尋ねる。

 だが。

「……確認しましたが、アイザックの街から出兵された事実はありませんでした」
「ええ!? じゃ、じゃあ一体、その五千の軍勢は誰が、どうやって殲滅したっていうんだ!?」

 グロウスター卿が目を見開いて問い質すが、そんなもの、この私こそが知りたい。
 何故、そんなことができたのかを。

「……いずれにせよ、今回の一件でカートレット伯爵家の襲撃には王国が関与していることが、ライラ=カートレットに認識されました。もしライラ=カートレットがアレ・・について承知している場合、すぐに公表されてしまうおそれもあります……」

 私は説明を終えると、深く息を吐いた。

「ぬうううう! そもそもこのような事態になったのは、一体誰の責任なのだ!」
「そうですねえ、さすがにこの失態は見過ごせません」

 激昂するアーガイル卿と、薄く開いた目から冷たい瞳を覗かせるグロウスター卿。

「……今回の件については、この私が陛下に進言してゴドウィン卿を任に当たらせました……」
「ほう……つまり、貴様の責任ということか」

 アーガイル卿が私を怒りに満ちた瞳で睨みつける。
 だが、私はそうされてもおかしくない程の失態を犯したのだ。

 その時。

「エドガー陛下。それで、アレ・・ついてどうするのですか?」
「“ソフィア”殿……今、王国としても手を打っているところだ」

 扉を開けて、法衣に身を包んだ一人の年若い女性がこの部屋に入室してきた。
 その後ろには、飄々ひょうひょうとした男……王国の暗殺者ギルドの長、“ジャック”がニヤニヤしながら控えている。

「陛下……こちらの女性は……?」
「うむ、お主達も知っておろう。彼女こそ、ファルマ聖法国の誇る[聖女セイント]、“ソフィア=アルベルティーニ”殿だ」
「初めまして、“ソフィア”と申します」

 [聖女セイント]のソフィア殿がうやうやしく一礼すると、私達三人も思わず頭を下げた。

「そ、それで、ソフィア殿がこちらにいらっしゃる理由は……?」

 グロウスター卿がおずおずと陛下に尋ねる。

「はい。ご神託を受け、このアルグレア王国にあるとされる『天国への階段』を、ファルマ聖法国としましても確認をいたしたく……」
「「っ!? な、何故それを……?」」

 ソフィア殿の言葉に、二人の公爵が狼狽うろたえた。
 もちろん、この私も内心では狼狽えている。

「いずれにせよ、一刻も早くアイザックの奥深くにある『天国への階段』を手中に収めねばならん。ライラ=カートレット排除の役目、“宰相”であるお主に任せる」

 国王陛下のご指名を受け、私の心が一気に高鳴る。

 そして。

「ハッ! この“ハリー=カベンディッシュ”、必ずや、ライラ=カートレットを排除し、『天国の階段』を奪還してみせましょう。既にライラ=カートレット宛に書簡を送るなど、そのための準備も着々と進めております」
「うむ。抜かるなよ」

 満足げに頷く陛下に、私はこうべを垂れる

 私の親愛なる友・・・・・、ジェームスを殺した罪、その身をもって償わせてやる……!
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