機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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幕間③

幼馴染の旅立ち

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■カルラ視点

 依頼主だったカートレット伯爵を裏切り、ゴドウィン侯爵の依頼を受けた私達は、あれから三日経っても何の音沙汰もないので、侯爵邸を訪れた。

 だけど……。

「……ですので、お館様から何も伺っておりませんので、お支払いすることはできません。お引き取りを」
「これじゃ話にならない! 今すぐゴドウィン様に会わせてくれ!」

 エリアルが何度も訴えかけるが、執事は目を瞑ってかぶりを振るばかり。
 さっきからずっとこの調子……。

「とにかく、お引き取りを」

 とうとうたまりかねた執事が衛兵を呼ぶと、衛兵はエリアルと執事の間に割って入った。

「エ、エリアル……」

 セシルが不安そうな表情でエリアルの服を引っ張る。

「……また、来ますよ」

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、エリアルはきびすを返した。
 そして私達四人もエリアルの後に続き、侯爵邸から立ち去った。

「はあ……もう! 一体どうなってるのよ!」

 イライラを募らせたレジーナが顔をしかめながら叫ぶ。

「本当だよ……ボク達は領主様のクエストを放ったらかしにしてまで、侯爵様の依頼を受けたのに……」
「うむ……エリアル、これからどうするのだ……?」

 落ち込むロロを慰めるように彼女の背中を撫でながら、セシルがエリアルに尋ねた。

「そんなこと、俺に聞かれても分からないだろ!」
「っ!? す、すまない……」

 激高したエリアルが大声で叫ぶと、セシルが委縮して謝った。

「はあ……エリアルも落ち着きなさい。とにかく、今は待つしかないでしょ……」
「そ、そうだな……」

 私は溜息を吐いてたしなめると、エリアルはバツが悪いのか、素直に頷く。

 そして。

「こ、こんな時はパーっとやって憂さ晴らしをするのが一番だ! これからみんなで酒場に繰り出そう!」

 セシルへのお詫びの気持ちもあるのだろう。
 エリアルは、努めて明るく振舞いながらそう提案した。

「まあ……今さら慌ててもしょうがないしね……」
「うんうん! パーっと行こう!」
「うむ! そうしよう!」

 他の三人もエリアルの提案に乗っかる。
 やっぱり少しでも不安を払拭したいのだろう。

「もちろんカルラも行くよな?」

 エリアルをはじめ、他の三人も心配そうに私を見る。
 どうやら私が反対するとでも思っているみたい。

「……私だけ除け者にしようたって、そうはいかないわよ」

 そう告げると、私は口の端を持ち上げた。
 たまには……私だって、ね。

「ようし! じゃあ早速酒場に行こう!」
「「「「おー!」」」」

 そして、私達は意気揚々と酒場を目指した。

 ◇

「プハーッ! 美味い!」

 何杯目かのエールをあおり、それまでレジーナの隣に座っていたエリアルが、顔を真っ赤にしながらご機嫌で私の隣に座った。

「なあ……そろそろ俺達、本気で付き合わないか?」
「冗談。大体あなた、三人も彼女いるでしょ?」

 私は手で追い払う仕草をしながら苦笑すると、クイ、とエールを口に含んだ。

「三人だって、カルラならいいと言ってくれているんだ。な?」

 そう言ってエリアルが三人を見ると、三人共頷いた。
 はあ……揃いも揃って何をやってるんだか……。

「まあ、気が向いたらね」

 私はそう返事し、手をヒラヒラさせ「おい聞いたか? 領主様が死んだって話」……!?

 後ろからふいに飛び込んできた客の会話に、私は耳を疑った。
 領主様……つまり、ゴドウィン侯爵が死んだってこと!?

「チョ、チョット! その話、詳しく教えなさい!」
「うおっ!?」

 私は後ろに振り返って、話をしていた客に詰め寄る。

「お、おい、カルラ……「エリアルは黙ってて!」」

 私をたしなめようとエリアルが声を掛けるが、今はそれどころじゃない。
 とにかく、話を聞かないと!

「そ、それで、領主……ゴドウィン侯爵が死んだって本当なの!?」
「お、おお……アイザックの街からこの街に来た行商人が言ってたんだよ。途中の湿地帯の橋が無くなってて、しかも、湿地帯を埋め尽くす程の兵士の死体が浮かんでたって……」
「「「「「はあ!?」」」」」

 いつの間にか後ろで同じく聞き耳を立てていた仲間達も、私と同じように驚きの声を上げた。

「そ、それってどういう……」
「知らないのか? 三日前、領主様が兵隊を連れてこの街を出たのを。俺達もてっきり戦争にでも行くのかと思ったりしたんだけど、まさか領内で戦争なんてあり得ないしなあ……」

 客の男の言葉に、私は声を失った。

 モーカムの街と湿地帯を結んだ線の先には、アイザックの街しかない。
 つまりゴドウィン侯爵は、カートレット伯爵に戦争を仕掛け、そして……敗れたってこと!?

「あ、あり得ない……」

 私は力なくそう呟く。

 そもそも、表面上とはいえ貴族同士の争いはこの国ではご法度だ。
 当然、大勢の軍隊を引き連れて他貴族の領地に踏み込むような行為、下手をすれば侯爵家は取り潰しになりかねない。

 なのに、ゴドウィン侯爵は進軍した。

 ゴドウィン侯爵とカートレット伯爵の間に何があるのかは分からないけど、これは王国を揺るがしかねない事件だ。
 そして……私達はもう一つとんでもない事実を突きつけられた。

 カートレット伯爵が、ゴドウィン侯爵に勝利したという事実を。

「オ、オイオイ! そうしたら、俺達の報酬はどうなるんだ!?」
「そ、そうよ! 侯爵様が死んじゃったら貰えないじゃない!」

 エリアル達が口々に慌て出した。
 だけど、本当に心配すべきはそこじゃない。

「みんな! 今すぐこの街を出るわよ!」
「はあ!? カルラ、何を言い出すんだ!?」

 私がそう告げると、エリアルが困惑しながら詰め寄った。

「いい? ゴドウィン侯爵はカートレット伯爵に戦を仕掛け、そして敗れたの! じゃあ、カートレット伯爵の依頼を無視してゴドウィン侯爵についた私達はどうなると思う?」
「あ……」

 ここまで言って、エリアルはようやく思い至ったようね。
 そう……カートレット伯爵からすれば、私達“黄金の旋風”は裏切者・・・以外の何者でもない。

 だったら……もしカートレット伯爵とこの街で出遭ったら、私達は……。

「わ、分かった! 今すぐ出よう!」
「え、ええ!」
「とと、とりあえず宿の荷物を……!」
「わ、私は鍛冶屋に預けている盾を取って来る!」

 私達は大慌てで店を出ると、すぐにこの街を出るための準備をする。

 そして……私達は、街の入口に集合した。

「と、とりあえず今すぐにでも出られるが……これから俺達、どうなるんだ……」

 エリアルが肩を落としながら、不安そうな表情で呟いた。

「……今さら嘆いても仕方ないでしょ……少なくとも、この街とアイザックの街以外に拠点を移すしか……」
「ね、ねえ……ちょっと、いい……?」

 すると、ロロがおずおずと声を掛けた。

「その……せっかくだから、王都で活動してみない? ホ、ホラ、一応ボク達もアイザック一の冒険者パーティーなんだし、名を売る意味でもいいと思うんだけど……」

 王都で活動、か……。
 確かに、この周辺から離れることもできるし、冒険者として高みを目指すにはもってこいかも……。

「……いい提案ね」

 気づけば、私はロロの提案に賛成していた。

「わ、私もそれがいいわ!」
「うむ! 腕が鳴るな!」
「ハハ! ようし、王都で一旗掲げるか!」

 私達五人は笑顔で頷き合う。

 色々と選択を間違えはしたけど、今度こそ……!

 私は、これからの明るい未来を信じ、王都に希望と期待を膨らませた。
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