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第三章 復讐その三 ハリー=カベンディッシュ
男の価値
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■ハリー=カベンディッシュ視点
「……ふう」
王都のレストランから戻り、私は執務室の椅子に腰掛け、一息吐く。
あれが……私のジェームズを無残に殺した、ライラ=カートレットとその一味、か……。
あの場でのやり取りを思い出し、私の胸が復讐の炎で熱くなる。
陛下からは、『天国への階段』に至るために必要なものをあのライラ=カートレットから全て引き出せば、その後は私の好きにして良いとの了解を得ている。
ただし、今回の件については全て私の独断で行ったものである、とすることが条件ではあるが。
まあ、陛下の二つ名である“賢王”としてのイメージを守るためならば当然か……。
私としても、そんな程度でジェームズの仇が討てるのならば安いものだ。
そんなお墨付きを得た私は、宮廷魔法使い五百名、弩兵五百名、それに近衛騎士千人をそれぞれ王宮の正門に配置している。
明日、連中が陛下への謁見のために王宮の門をくぐった時、遠距離から一斉に攻撃を仕掛ける予定だ。
ジェームスの軍勢五千があの連中の手によって壊滅したことを考えれば、これでも足らないくらいだが、それでも、今回は地の利はこちらにある上に、最初から遠距離攻撃に特化してしまえば、連中は手も足も出まい。
当初は王宮内で武器を持たないライラ=カートレットを殺すことを考えたが、それだと王宮に入ることができない従者の二人には逃げられてしまう可能性が高い。
いや、違うな……私は、何よりあの連中が絶望に打ちひしがれる顔が見たいのだ。
……私のジェームスへの供養として。
「クハハ! アンタ、口の端が吊り上がってるぜ? まるで三日月みたいによお」
突然ヘラヘラと笑いながら、男が壁からすう、とすり抜けるように現れる。
「なんだ、ジャックか」
「クハ、やけに楽しそうだけど、何考えてたんだ?」
「クック……なあに、明日王宮で行われるイベントを考えて、な」
そう言うと、私は含み笑いをした。
「へえ……そりゃ楽しみだ。だけど、そう上手くいくかねえ?」
ジャックはニヤリ、と笑いながら呟く。
「? 何が言いたい?」
「いやあ、俺もあの三人と軽く交えてみたけど、ありゃかなり厄介だと思うぜ」
「ほう、それで……?」
このジャックがそこまで評価する程か……。
私は興味が湧き、身を前に乗り出して話の続きを促す。
「まあ、まずはあのお嬢ちゃん……ライラ=カートレットだけどよ、あれはヤベエ。あの腕と脚もどうなってやがるのか分からねえが、金属製で速さも力も相当だ。それに、恐らくかなり希少な職業持ちだぜ」
ふむ……確かに、彼女の手脚については気になっていた。
ジェームスの部下やろくでなしのライラ=カートレットの叔父によってその手脚を失った筈なのに、まるでそんな事実はないかのように振舞っている。
しかも、その全てを白銀に輝く金属に変えて。
「んで、お嬢ちゃんの連れというか侍女な。アイツは俺の弟子で、俺が言うのも何だが暗殺技術は一流だ。それに、アイツも伯爵令嬢と同じようにとんでもねえ武器を持っていやがる」
「武器?」
「おお、俺がナイフの刃を当てたのに、アイツが持つククリナイフは刃こぼれ程度で済んだんだよ。信じられるか?」
ジャックはさもあり得ないと言わんばかりに説明するが、私にはいまいちピンとこない。
「うーむ……聞く限り、特に不思議な点はないと思うが……」
「何言ってやがる、俺は[切り裂き魔の職業持ちだぜ? それこそ、金属製の甲冑だってバターみたいに切り刻めるんだ。なのに、あのククリナイフは不可能だった]
「むむ……」
ジャックの説明に、私は思わず唸る。
この王国最強の暗殺者であるジャックがここまで言うのだ。余程のことであるに違いない。
「最後はその二人と一緒にいる男な。多分……コイツが一番ヤベエ」
男……あのレストランで一緒にいたあの男が、か?
「いや、それこそ一番信じられない。こちらもあの男の素性について調べてはいるが、つい数か月前まで、冒険者パーティーでもお荷物扱いで、挙句の果てにそのパーティーからも追放されたと聞いているぞ?」
「ああ、俺もそれについては確認してるさ。でもよお、実際にあんなモン目の当たりにするとそうも言ってられねえぞ?」
このジャックにそこまで言わせるか。
だが、私が得ている情報とジャックの評価とのギャップがあり過ぎて、どうにも見当がつかない。
「では、具体的にあの男がどうすごいのだ?」
「おお! 俺が仕掛けた罠を一瞬で無効化しやがるし、突然床から壁を出現させやがるし、とにかくメチャクチャなんだよ! んで、俺の予想だが……あのお嬢ちゃんの手脚と弟子の武器、その両方はあの男が作ったんじゃねえか、ってな」
「っ!? なんだと!?」
ジャックの言葉に、私は思わず立ち上がる。
だが……あの腕と脚は、それこそまるで本物の手脚であるかのようにスムーズに動かしていた。
そんなことを可能にする技術……いや職業とは一体……!?
「とにかく、俺も全部分かってる訳じゃねえけどよ」
「いや……ジャックの言う通りかもしれん。そう考えれば、全てのつじつまが合う……」
あのライラ=カートレットは、襲撃事件以降、屋敷に引きこもり、手脚も失っていたことはゴドウィンの部下を通じて確認しているから間違いなかった。
それに、あの男が冒険者パーティーを追放されたタイミングともある程度は合致する。
となると、あの白銀の手脚はあの男が作ったと考えるほうが自然だ。
「……これは、あの男だけは生かしたまま捕らえないといけないな……」
私はポツリ、と呟く。
「クハハ! 急に悪い顔になってるぜ?」
「そ、そうか?」
ジャックに指摘され、私はつい自分の顔を触ってしまった。
だが、それも仕方ない。
あの男さえ手に入れることができれば、それだけでどれ程この王国の利益につながることになるのか。
それに、これで明日のライラ=カートレットの殺害についての大義名分もできた。
「クハ! まあ、精々気張るんだな!」
「ああ、本当に有益な情報をありがとう。やはり君を雇ったのは正解だったよ」
「クハハハハ! そうかいそうかい! んじゃ、俺はもう行くわ」
そう告げると、ジャックは手をヒラヒラさせながら、また壁の中に溶け込んでゆき、その姿を消した。
「ハハ……まあ、得体が知れない点ではジャックのほうがあの連中よりも上かもしれんな」
ジャックが消えた壁を見つめながら、私は呟く。
とりあえずは、明日の朝一番で陛下に男の情報について報告し、宮廷魔法使いや近衛騎士達に男には危害を加えないよう厳命しないとな。
「本当に……明日が楽しみだよ……」
私はジェームズの仇が討てることと、規格外の能力の持ち主を手に入れることを考え、思わずほくそ笑んだ。
「……ふう」
王都のレストランから戻り、私は執務室の椅子に腰掛け、一息吐く。
あれが……私のジェームズを無残に殺した、ライラ=カートレットとその一味、か……。
あの場でのやり取りを思い出し、私の胸が復讐の炎で熱くなる。
陛下からは、『天国への階段』に至るために必要なものをあのライラ=カートレットから全て引き出せば、その後は私の好きにして良いとの了解を得ている。
ただし、今回の件については全て私の独断で行ったものである、とすることが条件ではあるが。
まあ、陛下の二つ名である“賢王”としてのイメージを守るためならば当然か……。
私としても、そんな程度でジェームズの仇が討てるのならば安いものだ。
そんなお墨付きを得た私は、宮廷魔法使い五百名、弩兵五百名、それに近衛騎士千人をそれぞれ王宮の正門に配置している。
明日、連中が陛下への謁見のために王宮の門をくぐった時、遠距離から一斉に攻撃を仕掛ける予定だ。
ジェームスの軍勢五千があの連中の手によって壊滅したことを考えれば、これでも足らないくらいだが、それでも、今回は地の利はこちらにある上に、最初から遠距離攻撃に特化してしまえば、連中は手も足も出まい。
当初は王宮内で武器を持たないライラ=カートレットを殺すことを考えたが、それだと王宮に入ることができない従者の二人には逃げられてしまう可能性が高い。
いや、違うな……私は、何よりあの連中が絶望に打ちひしがれる顔が見たいのだ。
……私のジェームスへの供養として。
「クハハ! アンタ、口の端が吊り上がってるぜ? まるで三日月みたいによお」
突然ヘラヘラと笑いながら、男が壁からすう、とすり抜けるように現れる。
「なんだ、ジャックか」
「クハ、やけに楽しそうだけど、何考えてたんだ?」
「クック……なあに、明日王宮で行われるイベントを考えて、な」
そう言うと、私は含み笑いをした。
「へえ……そりゃ楽しみだ。だけど、そう上手くいくかねえ?」
ジャックはニヤリ、と笑いながら呟く。
「? 何が言いたい?」
「いやあ、俺もあの三人と軽く交えてみたけど、ありゃかなり厄介だと思うぜ」
「ほう、それで……?」
このジャックがそこまで評価する程か……。
私は興味が湧き、身を前に乗り出して話の続きを促す。
「まあ、まずはあのお嬢ちゃん……ライラ=カートレットだけどよ、あれはヤベエ。あの腕と脚もどうなってやがるのか分からねえが、金属製で速さも力も相当だ。それに、恐らくかなり希少な職業持ちだぜ」
ふむ……確かに、彼女の手脚については気になっていた。
ジェームスの部下やろくでなしのライラ=カートレットの叔父によってその手脚を失った筈なのに、まるでそんな事実はないかのように振舞っている。
しかも、その全てを白銀に輝く金属に変えて。
「んで、お嬢ちゃんの連れというか侍女な。アイツは俺の弟子で、俺が言うのも何だが暗殺技術は一流だ。それに、アイツも伯爵令嬢と同じようにとんでもねえ武器を持っていやがる」
「武器?」
「おお、俺がナイフの刃を当てたのに、アイツが持つククリナイフは刃こぼれ程度で済んだんだよ。信じられるか?」
ジャックはさもあり得ないと言わんばかりに説明するが、私にはいまいちピンとこない。
「うーむ……聞く限り、特に不思議な点はないと思うが……」
「何言ってやがる、俺は[切り裂き魔の職業持ちだぜ? それこそ、金属製の甲冑だってバターみたいに切り刻めるんだ。なのに、あのククリナイフは不可能だった]
「むむ……」
ジャックの説明に、私は思わず唸る。
この王国最強の暗殺者であるジャックがここまで言うのだ。余程のことであるに違いない。
「最後はその二人と一緒にいる男な。多分……コイツが一番ヤベエ」
男……あのレストランで一緒にいたあの男が、か?
「いや、それこそ一番信じられない。こちらもあの男の素性について調べてはいるが、つい数か月前まで、冒険者パーティーでもお荷物扱いで、挙句の果てにそのパーティーからも追放されたと聞いているぞ?」
「ああ、俺もそれについては確認してるさ。でもよお、実際にあんなモン目の当たりにするとそうも言ってられねえぞ?」
このジャックにそこまで言わせるか。
だが、私が得ている情報とジャックの評価とのギャップがあり過ぎて、どうにも見当がつかない。
「では、具体的にあの男がどうすごいのだ?」
「おお! 俺が仕掛けた罠を一瞬で無効化しやがるし、突然床から壁を出現させやがるし、とにかくメチャクチャなんだよ! んで、俺の予想だが……あのお嬢ちゃんの手脚と弟子の武器、その両方はあの男が作ったんじゃねえか、ってな」
「っ!? なんだと!?」
ジャックの言葉に、私は思わず立ち上がる。
だが……あの腕と脚は、それこそまるで本物の手脚であるかのようにスムーズに動かしていた。
そんなことを可能にする技術……いや職業とは一体……!?
「とにかく、俺も全部分かってる訳じゃねえけどよ」
「いや……ジャックの言う通りかもしれん。そう考えれば、全てのつじつまが合う……」
あのライラ=カートレットは、襲撃事件以降、屋敷に引きこもり、手脚も失っていたことはゴドウィンの部下を通じて確認しているから間違いなかった。
それに、あの男が冒険者パーティーを追放されたタイミングともある程度は合致する。
となると、あの白銀の手脚はあの男が作ったと考えるほうが自然だ。
「……これは、あの男だけは生かしたまま捕らえないといけないな……」
私はポツリ、と呟く。
「クハハ! 急に悪い顔になってるぜ?」
「そ、そうか?」
ジャックに指摘され、私はつい自分の顔を触ってしまった。
だが、それも仕方ない。
あの男さえ手に入れることができれば、それだけでどれ程この王国の利益につながることになるのか。
それに、これで明日のライラ=カートレットの殺害についての大義名分もできた。
「クハ! まあ、精々気張るんだな!」
「ああ、本当に有益な情報をありがとう。やはり君を雇ったのは正解だったよ」
「クハハハハ! そうかいそうかい! んじゃ、俺はもう行くわ」
そう告げると、ジャックは手をヒラヒラさせながら、また壁の中に溶け込んでゆき、その姿を消した。
「ハハ……まあ、得体が知れない点ではジャックのほうがあの連中よりも上かもしれんな」
ジャックが消えた壁を見つめながら、私は呟く。
とりあえずは、明日の朝一番で陛下に男の情報について報告し、宮廷魔法使いや近衛騎士達に男には危害を加えないよう厳命しないとな。
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