機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
71 / 146
第三章 復讐その三 ハリー=カベンディッシュ

男の価値

しおりを挟む
■ハリー=カベンディッシュ視点

「……ふう」

 王都のレストランから戻り、私は執務室の椅子に腰掛け、一息吐く。

 あれが……私の・・ジェームズを無残に殺した、ライラ=カートレットとその一味、か……。

 あの場でのやり取りを思い出し、私の胸が復讐の炎で熱くなる。

 陛下からは、『天国への階段』に至るために必要なものをあのライラ=カートレットから全て引き出せば、その後は私の好きにして良いとの了解を得ている。
 ただし、今回の件については全て私の独断で行ったものである、とすることが条件ではあるが。

 まあ、陛下の二つ名である“賢王”としてのイメージを守るためならば当然か……。
 私としても、そんな程度でジェームズの仇が討てるのならば安いものだ。

 そんなお墨付きを得た私は、宮廷魔法使い五百名、弩兵五百名、それに近衛騎士千人をそれぞれ王宮の正門に配置している。
 明日、連中が陛下への謁見のために王宮の門をくぐった時、遠距離から一斉に攻撃を仕掛ける予定だ。

 ジェームスの軍勢五千があの連中の手によって壊滅したことを考えれば、これでも足らないくらいだが、それでも、今回は地の利はこちらにある上に、最初から遠距離攻撃に特化してしまえば、連中は手も足も出まい。

 当初は王宮内で武器を持たないライラ=カートレットを殺すことを考えたが、それだと王宮に入ることができない従者の二人には逃げられてしまう可能性が高い。

 いや、違うな……私は、何よりあの連中が絶望に打ちひしがれる顔が見たいのだ。

 ……私の・・ジェームスへの供養として。

「クハハ! アンタ、口の端が吊り上がってるぜ? まるで三日月みたいによお」

 突然ヘラヘラと笑いながら、男が壁からすう、とすり抜けるように現れる。

「なんだ、ジャックか」
「クハ、やけに楽しそうだけど、何考えてたんだ?」
「クック……なあに、明日王宮で行われるイベントを考えて、な」

 そう言うと、私は含み笑いをした。

「へえ……そりゃ楽しみだ。だけど、そう上手くいくかねえ?」

 ジャックはニヤリ、と笑いながら呟く。

「? 何が言いたい?」
「いやあ、俺もあの三人と軽く交えてみたけど、ありゃかなり厄介だと思うぜ」
「ほう、それで……?」

 このジャックがそこまで評価する程か……。
 私は興味が湧き、身を前に乗り出して話の続きを促す。

「まあ、まずはあのお嬢ちゃん……ライラ=カートレットだけどよ、あれはヤベエ。あの腕と脚もどうなってやがるのか分からねえが、金属製で速さも力も相当だ。それに、恐らくかなり希少な職業ジョブ持ちだぜ」

 ふむ……確かに、彼女の手脚については気になっていた。
 ジェームスの部下やろくでなしのライラ=カートレットの叔父によってその手脚を失った筈なのに、まるでそんな事実はないかのように振舞っている。
 しかも、その全てを白銀に輝く金属に変えて。

「んで、お嬢ちゃんの連れというか侍女な。アイツは俺の弟子で、俺が言うのも何だが暗殺技術は一流だ。それに、アイツも伯爵令嬢と同じようにとんでもねえ武器・・を持っていやがる」
「武器?」
「おお、俺がナイフの刃を当てたのに、アイツが持つククリナイフは刃こぼれ程度で済んだんだよ。信じられるか?」

 ジャックはさもあり得ないと言わんばかりに説明するが、私にはいまいちピンとこない。

「うーむ……聞く限り、特に不思議な点はないと思うが……」
「何言ってやがる、俺は[切り裂き魔ザ・リッパー職業ジョブ持ちだぜ? それこそ、金属製の甲冑だってバターみたいに切り刻めるんだ。なのに、あのククリナイフは不可能だった]
「むむ……」

 ジャックの説明に、私は思わずうなる。
 この王国最強の暗殺者であるジャックがここまで言うのだ。余程のことであるに違いない。

「最後はその二人と一緒にいる男な。多分……コイツが一番ヤベエ」

 男……あのレストランで一緒にいたあの男が、か?

「いや、それこそ一番信じられない。こちらもあの男の素性について調べてはいるが、つい数か月前まで、冒険者パーティーでもお荷物扱いで、挙句の果てにそのパーティーからも追放されたと聞いているぞ?」
「ああ、俺もそれについては確認してるさ。でもよお、実際にあんなモン目の当たりにするとそうも言ってられねえぞ?」

 このジャックにそこまで言わせるか。
 だが、私が得ている情報とジャックの評価とのギャップがあり過ぎて、どうにも見当がつかない。

「では、具体的にあの男がどうすごいのだ?」
「おお! 俺が仕掛けた罠を一瞬で無効化しやがるし、突然床から壁を出現させやがるし、とにかくメチャクチャなんだよ! んで、俺の予想だが……あのお嬢ちゃんの手脚と弟子の武器、その両方はあの男が作ったんじゃねえか、ってな」
「っ!? なんだと!?」

 ジャックの言葉に、私は思わず立ち上がる。
 だが……あの腕と脚は、それこそまるで本物の手脚であるかのようにスムーズに動かしていた。
 そんなことを可能にする技術……いや職業ジョブとは一体……!?

「とにかく、俺も全部分かってる訳じゃねえけどよ」
「いや……ジャックの言う通りかもしれん。そう考えれば、全てのつじつまが合う……」

 あのライラ=カートレットは、襲撃事件以降、屋敷に引きこもり、手脚も失っていたことはゴドウィンの部下を通じて確認しているから間違いなかった。
 それに、あの男が冒険者パーティーを追放されたタイミングともある程度は合致する。

 となると、あの白銀の手脚はあの男が作ったと考えるほうが自然だ。

「……これは、あの男だけは生かしたまま捕らえないといけないな……」

 私はポツリ、と呟く。

「クハハ! 急に悪い顔になってるぜ?」
「そ、そうか?」

 ジャックに指摘され、私はつい自分の顔を触ってしまった。
 だが、それも仕方ない。

 あの男さえ手に入れることができれば、それだけでどれ程この王国の利益につながることになるのか。
 それに、これで明日のライラ=カートレットの殺害についての大義名分もできた。

「クハ! まあ、精々気張るんだな!」
「ああ、本当に有益な情報をありがとう。やはり君を雇ったのは正解だったよ」
「クハハハハ! そうかいそうかい! んじゃ、俺はもう行くわ」

 そう告げると、ジャックは手をヒラヒラさせながら、また壁の中に溶け込んでゆき、その姿を消した。

「ハハ……まあ、得体が知れない点ではジャックのほうがあの連中よりも上かもしれんな」

 ジャックが消えた壁を見つめながら、私は呟く。

 とりあえずは、明日の朝一番で陛下に男の情報について報告し、宮廷魔法使いや近衛騎士達に男には危害を加えないよう厳命しないとな。

「本当に……明日が楽しみだよ……」

 私はジェームズの仇が討てることと、規格外の能力の持ち主を手に入れることを考え、思わずほくそ笑んだ。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...