機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
83 / 146
第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編

僕達のこれから

しおりを挟む
 王都から帰って来たあの日、僕達三人はたくさん話をした。

 復讐のこと……そして、その後のことを。

「……アルグレア国王、エドガー=フォン=アルグレアを討つことで、私はこの復讐に終止符をうちたいと思います……」

 ライラ様は、その右の瞳でどこか遠くを見つめながら、静かにそう告げた。

「……分かりました。では、国王を討つために全力を尽くしましょう。それで、その後はどうなさいますか?」

 僕はライラ様にそう問い掛けると、少しだけ迷う仕草をした後、すぐに意を決したように僕を見つめた。

「私は……“カートレット”の姓を捨てようと思います」
「「っ!?」」

 ライラ様の決意めいた告白に、僕とハンナさんは思わず息を飲んだ。

「それは……今のお立場を捨てる、ということですか?」

 そう尋ねると、ライラ様は無言で頷いた。

「……アデル様とハンナには、大変申し訳なく思っています。ここまで……それこそ、その全てを捧げる覚悟でこんな私のためについて来てくださっているのに、結局は何もお返しすることもないまま……」

 そう言うと……ライラ様が俯き、肩を震わせた。

 僕は……。

「あ……アデル、様……」
「僕は……あなたに救われました……幼馴染の恋人や、四年も一緒にいた仲間から“役立たず”と罵られ、捨てられた僕を認めてくれたのは……心から必要としてくれたのは、他ならぬライラ様でした……」

 ライラ様をそっと抱き締めながら、僕はそう告げる。

「分かりますか? これまでの全てを否定され、居場所すら失くした僕が、どれ程ライラ様のあの言葉・・・・で救われたか……」
「…………………………」
「僕は……僕は、何物にも代えがたいあの言葉・・・・を、ライラ様からいただいたのです……それこそ、僕の人生の全てを捧げてもお返しできない程の……」
「う……うう……」

 すると、ライラ様は僕の胸に顔をうずめ、聞こえない程の嗚咽を漏らした。

「お嬢様……このハンナも同じです……ドブネズミのような生活を強いられ、挙句人攫いにさらわれ、玩具にされ、[暗殺者アサシン]に堕ち、復讐を果たして空っぽになってしまった私に、お嬢様は“家族”をくださいました……」
「ハ、ハンナ……」

 ハンナさんもそっとライラ様の背中に寄り添い、耳元で静かに告げる。

「それに……私がお嬢様のために全てを捧げるのは当然ではないですか……だって、あなたは私の大切な、“妹”なのですから……!」
「ハンナ……ハンナ……!」

 僕とハンナさんはライラ様をそっと包み込む。

 この大切な……誰よりも大切な人を……。

 その後も、僕達は復讐の後にことについて話し合った。

 決まったことは、ライラ様は“カートレット”の姓を捨て、平民の道を選ぶこと。
 そして、このアイザックの街を遠く離れ、辺境の地で静かに暮らすこと。

 もちろん、僕達三人はこれからもずっと一緒にいる。
 その命が尽きた後も、永遠に。

 ◇

「……ということでアデル様。お嬢様がお作りになられた食事をどうぞご堪能くださいませ」

 ハンナさんが眼鏡をクイ、と持ち上げ、まるで仮面を被っているかと思う程無表情でそう告げた。

「ア、アデル様、どうぞお召し上がりください……!」

 ライラ様が顔を伏せたまま、ずい、とバスケットを差し出した。
 僕はそれを手に取り、蓋を開けると……。

「おお……!」

 そこには、見るからに美味しそうな、パンでハムや野菜、チーズをサンドしたものが入っていた。

「こ、これをライラ様が?」
「……(コクコク)」

 感嘆の声を漏らしながら尋ねると、ライラ様が恥ずかしそうにしながら頷いた。
 どれどれ、それじゃ早速……。

「! ライラ様、美味しいです!」

 僕はこれ以上ないくらい大きな口を開けて頬張ると、美味しそうな表情を浮かべながらそう告げた。

 すると。

「ほ、本当ですか!」

 ライラ様は顔を上げ、ぱあ、と咲き誇るような笑顔を見せた。

 だけど。

「え……?」

 一方のハンナさんは、あまりにも意外だという反応を見せ、そして……何故か、ぽろぽろと大粒の涙を零し始めた。

「ハ、ハンナさん!? ど、どうしたんですか!?」

 突然のことに驚いた僕は、思わずハンナさんの両肩をつかんで尋ねた。
 ライラ様も、心配そうにハンナさんを見つめる。

「ア、アデル様……わ、私のせいで……っ!」
「え……?」

 ハンナさんの言っている意味が分からず、僕はおろおろしてしまう。
 ど、どうしてハンナさんのせいなんだ!?

「ハ、ハンナ! 一体どうしたというのですか!?」

 ライラ様が問い質すと、ハンナさんがス、とパンのサンドを指差した?

 …………………………あ。

「こ、これが何だと……?」

 ライラ様は不思議そうにパンのサンドをつかむと、おもむろにそれを口に含む。

「……美味しく、ないですね……」

 ライラ様はシュン、とした様子で俯いてしまった。
 だけど、つまりはそういうことだ。

 ハンナさんは気づいてしまった。

 ……僕の舌が、もう何も感じなくなってしまっていることを。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...