機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編

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 ハンナさんは気づいてしまった。

 ……僕の舌が、もう何も感じなくなってしまっていることを。

「あなたは……あなたはいつも……!」

 ハンナさんが僕の胸に縋りつき、号泣する。
 僕には、そんな彼女を受け止め、抱き締めることしかできない。

「……ハンナ、どういうことか話してください」

 ライラ様はこれ以上ない程冷たい声で、ハンナさんに問い掛ける。
 その右の瞳は、有無を言わせないとばかりに。

「……アデル、様は……限界を超えてお力を使われると、身体の機能の一部を……失って……しまうのです……っ!」

 絞り出すような声で、ハンナさんがライラ様に告げる。
 苦しそうに……つらそうにしながら……。

「アデル様……?」

 ライラ様は、今度は僕を睨みながら真偽を確かめる。

「……ハンナさんがおっしゃった通りです」
「っ!?」

 そう告げると、ライラ様が息を飲んだ。

「ど、どこを!? どこを悪くなられたのですか!?」
「……左眼と右手、そして……舌、です」

 白銀の手で激しく揺するライラ様に観念した僕は、全てを話した。

 白銀の手脚と義眼を作った時に、左眼の視力を失ったこと。
 クロウ=システムを作った時に、右手の感覚を失ったこと。
 そして、フギンとムニンを作った時に、味覚を失ったこと。

 ……限界を超えて[技術者エンジニア]の能力を使った、その代償として……。

「そ、そんな……そんな……!」

 僕の肩をつかんだまま、ライラ様はガクリ、と肩を落とす。
 ライラ様のその右の瞳は、悲しみや、怒りや、悔しさ、様々な感情が入り混じっているように見えた。

「……どうして」
「ライラ様……?」
「どうして! そのことを言ってくれなかったのですか! どうして教えてくれなかったのですか! どうして……どうして……!」

 ライラ様の右の瞳から涙が溢れ出し、大声で叫ぶ。

「私は! あなたにとって何なのですか! ただ、あなたを苦しめるだけの存在でしかないのですか! どうして……どうして私に、あなたをこんな風にしてしまった罪を受けさせてくださらないのですかあ……っ!」
「ライラ様……申し訳、ありません……」

 泣き叫ぶライラ様に、僕はただ謝った。

 それは、僕の浅はかな考えが、ライラ様を苦しめることになったことに対して。
 ライラ様の想いを、傷つけてしまったことに対して。

「僕が……馬鹿でした……っ!」

 泣き続けるライラ様とハンナさんを、僕は強く抱き締めた。
 僕が本当に二人を大切だと想うなら、ちゃんと伝えるべきだったんだ。

 僕のしたことは、二人の想いを無視した、ただの独り善がりだ。

 それが……この二人を、こんなにも傷つけてしまったんだ……!

「アデル様! もう……もうこんなことは絶対にしないでください! 絶対に……絶対に……!」
「はい……僕が間違えていました……!」
「アデル様……アデル様あ……!」

 大切な二人を抱き締めながら、僕は誓う。

 もう二度と、間違えないと。

 ◇

「ぐす……」
「ひっく……」

 少し落ち着いた二人だけど、それでもまだ、その肩が震えていた。

「……ほ、本当に、それ以上のことはないんですよね……?」

 ライラ様が泣き腫らした右眼で見つめながら、僕を問い質す。

「はい……お話したことで、全てです……」
「い、今されている要塞の建造でも、どこにも負担はかかっていないんですよね?」
「はい、何一つ問題はありません」

 ライラ様にこれ以上不安にさせまいと、僕はハッキリと事実を告げた。

「もう……嘘はきませんよね……?」
「……はい」

 そう答えると、ライラ様はグイ、と白銀の腕で涙を拭った。

「……これ以上はもう言いません。ですが……もう、こんなことはこれっきりにしてください……」
「はい……」

 強い眼差しで見つめるライラ様に、僕はただ頷いた。

「アデル様……わた、私は……!」

 だけど、ハンナさんはまだ気持ちの整理がついていないらしく、うなだれたまま、また涙を零していた。

「ハンナ……あなたも、もう受け入れるしかないんです。アデル様を壊してしまった、その罪を……」
「お、お嬢様……!」
「一緒に……受け入れましょう……?」
「はい……はい……!」

 ライラ様に優しく諭され、ハンナさんが両手で顔を押さえてうずくまった。

 そんな彼女の背中を、ライラ様が優しく撫でた。

「今度こそ……アデル様にその力を使っていただく訳にはいかない、ですね」
「……限界さえ越えなければ、身体への負担もなく問題ありません。それに、こう言っては何ですが、限界を三回超えたことで、僕の能力も、耐性も、飛躍的に伸びています……つまり、もう限界を超える必要はないと思っています……」
「そんなの! ……そんなの、嬉しくありません……」

 僕がそう説明すると、ライラ様は唇を噛みながら顔を伏せた。
 あはは……その言葉、ハンナさんにも言われたっけ……。

「とにかく、これからはお二人にはちゃんと相談しますし、嘘も吐きません。もう、僕一人だけの身体ものじゃないですから……」
「はい……絶対、ですからね……?」
「はい」

 僕はライラ様に向かって力強く頷いた。

 一つだけ、嘘を吐いたまま。
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