機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編

聖女が街にやって来る

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 僕の身体のことをライラ様に気づかれてから十日。

 今日も僕は、アイザックの要塞化にいそしんでいる。

 というか、もう街全体を囲い終えてはいるし、これ以上は最終確認くらいしかすることはないんだけど。

「アデル様……」

 後ろで様子を眺めているライラ様が、僕の名前をポツリ、と呟く。

 あの日以来、ライラ様とハンナさんは交替で僕に付きっきりだ。
 これ以上、僕が[技術者エンジニア]の能力を、限界を超えて行使しないように。

 そして。

「はい、これでアイザックの街の要塞化は終わりです」
「お疲れ様でした……」

 ライラ様が僕を労うように、そっと僕の背中に白銀の手を当てた。

「ですけど……この街も、すっかり寂しくなってしまいましたね……」
「はい……」

 要塞の壁の上から、僕達は街を見下ろす。

 街の要塞化によって不安を募らせた住民達は、次々と移住を始めた。
 といっても、その大半はモーカムの街へと移っているため、カートレット領としての人口は変わらないんだけど。

「まあ、モーカムの街には、実質自治権を与えておりますから……」

 僕の考えていることを読み取ったライラ様が、そう答えた。

 そう……陞爵しょうしゃくにより新たに領地として加わったモーカムの街は、今は住民の投票によって選出された者を街の長に任命し、政務のほとんどを任せている。

 僕達の手がそこまで回らないというのもあるが、そもそもゴドウィンが統治していたあの街の住民が、ゴドウィンを殺したライラ様に従うかどうか怪しかったこと、そして、復讐を果たしてこの地を去った後、混乱することなく街が機能するようにとの配慮でもあった。

「あはは……ですが、この街から人が減って好都合ではありますけどね」
「そうですね。仮に王国と全面戦争になったとしても、住民への被害が少なくなりますから」

 そう……ただでさえこちらの戦力は、実質三人しかいないんだ。
 そこに住民の防衛まで考えていたら、王国には到底太刀打ちできない。

「といっても、できれば戦争は避けたいですね」
「はい……一番良いのは、国王が国内を視察するタイミングで襲撃するのが一番ではありますが……」

 宰相とゴドウィンを殺した僕達のところまで、わざわざ視察に来たりはしない、か……。

「いずれにせよ、その機会はどこかで必ずやってきます。僕達にできることは、その日のために準備を怠らないことですから」
「そうですね……はい!」

 僕の言葉に、ライラ様は元気よく返事した。

 その時。

「お嬢様ー! アデル様ー!」
「あれ? ハンナさんだ」

 見ると、ハンナさんが壁の下から大声で僕達を呼んでいた。

「とりあえず、降りましょうか」
「はい」

 僕はライラ様につかまると、ライラ様はクロウ=システムを発動させて一緒に下まで降りた。

「ええと、どうされました?」
「は、はい……王都にあるファルマ聖教会からお嬢様あてに書簡が参りました」
「「教会から?」」

 僕とライラ様が揃って声を上げる。
 いや、ファルマ聖教会がライラ様に一体何の用があるっていうんだ?

「と、とにかく、中身を確認しましょう」
「は、はい」

 ライラ様はハンナさんから書簡を受け取ると、封を切って内容に目を通す。

「ええと……『アイザックの街において、主神ファルマに関連する建造物があるとの情報あり。よって、ファルマ聖法国の[聖女セイント]を派遣するため、調査に協力願いたし』……だそうです……」
「「セ、[聖女セイント]!?」」

 今度は僕とハンナさんが揃って驚きの声を上げた。
 いやいや、この街に宗教絡みのものなんて、それこそ教会くらいしかないよね!?

「ど、どうしましょう……」

 視線を泳がせながら、ライラ様が尋ねる。

「こ、これだけを読むと、どうやら[聖女セイント]がここに来ることは確定のようですし、さすがにあの[聖女セイント]を追い返すというのも……」
「で、ですよね……」

 そう言うと、僕達は顔を見合わせた。
 どうやら、今の状況では答えは一つしかないようだ。

「だ、だけど、まさか[聖女セイント]がこの国に来ているとは思いませんでしたよ……」
「「た、確かに……」」

 [聖女セイント]は、[勇者ブレイブ]と並んでこの世界では最も希少な職業ジョブで、[聖女セイント]に関してはファルマ聖法国にいるというその一人しか確認されていない。
 [勇者ブレイブ]に至っては、現在のところ見つかってはいない。

 まあ、[勇者ブレイブ]の場合は世界に危機が起こった時にだけ、突然現れるって伝説があるけど……。

 そんな[聖女セイント]を王国、しかもアイザックの街に調査のために派遣してくるということは……ほ、本当に神様ゆかりのものがこの街にあるのか!?

「い、一体この街に、何があるというんでしょうか……」
「「さ、さあ……」」

 僕達は王都の教会からやってきたこの突然の予告に、思わず不安を覚えた。
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