92 / 146
第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編
羊皮紙と鍵
しおりを挟む
「あ……紋様……」
ライラ様がポツリと呟き、左胸に白銀の手をそっと押さえた。
そうだ! どこかで見たことがあると思ったら、ライラ様の左胸にあった紋様と同じものだ!
「なら、この羊皮紙には一体何が……それに、この鍵はどこの……」
「と、とりあえず羊皮紙を見てみましょう!」
ライラ様は穴の中から羊皮紙と鍵を取り出すと、まずは丸められている羊皮紙を広げた。
「これは……?」
「何かの地図みたい、ですね……」
ライラ様の問い掛けに、ハンナさんがポツリ、と呟く。
確かにハンナさんの言うように、羊皮紙に描かれていたのはどこかの地図のようなものにも見える。
だけど、これは地図というよりは……。
「……むしろ、見取り図と言ったほうが近いかもしれませんね……」
「……ソフィア様は何か御存じなのですか?」
「いえ……我がファルマ聖法国は、主神ファルマの聖地として長い歴史を誇っておりますが、当然その建物なども古く、様々な場所に遺跡があったりするのです」
「遺跡、ですか……?」
そう尋ねると、ソフィア様がコクリ、と頷く。
「今ではそれらの遺跡は全て調査し尽くされておりますが、その調査の際にはファルマ聖法国に伝わる見取り図を用いるのです」
「それが、この羊皮紙に描かれているものと似ている、ということですか?」
「はい」
うーん……そもそも、ソフィア様はファルマ聖教に関する建造物の調査に来られている訳で、そうなればファルマ聖法国で遺跡調査に使用していたという見取り図とこの羊皮紙が一致していても不思議じゃない。
いや、むしろそうだと考えるほうが正しいだろう。
「そうなると、後はこれがどこの見取り図なのか、ということですね……」
「ですが、この羊皮紙にはそういったことは何も記されておりませんよね?」
僕の呟きに反応したライラ様が指摘する。
そう……この羊皮紙には、これの場所がどこなのかは記されていない。
「……ですが、この羊皮紙に描かれている見取り図の場所は、少なくともアイザックの街のどこかの筈です。であれば、後は街中をしらみ潰しに探すほかはないですね」
「ほ、本当にそれで見つかるのでしょうか……」
僕の言葉に、ソフィア様が不安そうな表情を浮かべる。
「ええ、それは大丈夫です。今日はもう遅いので探すのは明日ですが、早ければその明日中に見つかると思いますよ?」
「「「ええ!?」」」
僕がそう言うと、三人が驚きの声を上げた。
「僕がこの部屋につながる隠し扉をどうやって見つけたか、皆さんお忘れですか?」
「「「あ!」」」
そう。僕は【設計】によってあの隠し扉を見つけ時と同じ要領で、この見取り図にある建造物を探せばいい。
とはいえ、さすがにアイザックの街全体を一気に、という訳にはいかないので、範囲を絞りながら根気よくやる必要はあるけど、それでも闇雲に探すよりは余程ましだろう。
「そういうことですので、続きは明日の朝にして、早く上に戻りましょう」
「は、はい。ところで、他にも同じようにこの部屋に何か隠されている可能性は……?」
僕がみんなをそう促すと、ソフィア様が尋ねた。
「僕の【設計】で確認した限りでは、ここだけしかありませんでしたので、その可能性はほぼありません」
「そ、そうですか」
そう説明するとソフィア様は納得して頷いた……かと思うと、どういう訳か恍惚とした表情を浮かべた。なんで!?
「ああ……アデル様……!」
そして、祈るように両手を組み、そのまま跪いてしまった!?
「ソフィア様!?」
僕は慌ててソフィア様の身体を起こすと、彼女は勢いよく抱きついてきた!?
「や、やはりアデル様は素晴らしい御方です……! 奇跡のようなお力もさることながら、その機転、行動力、どれをとってもアデル様の右に並ぶ者はおりません……!」
「「ちょ、ちょっと!?」」
すぐさまライラ様とハンナさんが割って入り、ソフィア様を引き剥がしてくれた。
「わ、私達のアデル様に何をするのですか!」
「え……あ……す、すいません……アデル様の素晴らしさに、つい我を忘れてしまいました……」
ライラ様が問い詰めると、ソフィア様が苦笑した。
というか……そんなこと言われると、恥ずかしくて仕方ないんですけど……。
「……今後一切、アデル様のお傍に寄るのは禁止です」
「そ、そんな……!」
ハンナさんに冷たく言い放たれ、ソフィア様は表情を曇らせてガックリと肩を落とした。
「こ、今度こそ書斎に帰りましょう! よろしいですね!」
「「はい!」」
「……はい」
このままでは埒が明かないのでそう告げると、ライラ様とハンナさんは勢いよく首を縦に振って返事をするけど、ソフィア様だけはうなだれたまま渋々と言った様子で返事した。
僕はソフィア様を気にしないようにしつつ、急いで上の書斎へと戻った。
「ふう……先程お話ししました通り、調査の続きは明日の朝からということでよろしいでしょうか?」
「「「はい」」」
「では、今日のところはこれで解散としましょう」
そう告げると、ソフィア様はハンナさんに案内されて来賓室に向かい、ライラ様と僕はそれぞれ自室へと戻った。
「さあ……明日は何が出るかな」
ベッドに横になり、天井を見つめながら明日のことを考えていると、いつの間にか僕はそのまま眠りについた。
◇
「…………………………さま。アデル様」
……誰かが僕を呼ぶ声が聞こえる。
ライラ様? ……いや、ライラ様の声じゃない。
なら、ハンナさん? ……それも違う。
じゃあ、一体……。
僕を呼ぶ声に誘われるまま、ゆっくりと目を開ける。
すると。
「あ……アデル様……」
「え……?」
そこには……暗がりの中、微笑みながら僕の顔を覗き込む、ソフィア様の顔があった。
ライラ様がポツリと呟き、左胸に白銀の手をそっと押さえた。
そうだ! どこかで見たことがあると思ったら、ライラ様の左胸にあった紋様と同じものだ!
「なら、この羊皮紙には一体何が……それに、この鍵はどこの……」
「と、とりあえず羊皮紙を見てみましょう!」
ライラ様は穴の中から羊皮紙と鍵を取り出すと、まずは丸められている羊皮紙を広げた。
「これは……?」
「何かの地図みたい、ですね……」
ライラ様の問い掛けに、ハンナさんがポツリ、と呟く。
確かにハンナさんの言うように、羊皮紙に描かれていたのはどこかの地図のようなものにも見える。
だけど、これは地図というよりは……。
「……むしろ、見取り図と言ったほうが近いかもしれませんね……」
「……ソフィア様は何か御存じなのですか?」
「いえ……我がファルマ聖法国は、主神ファルマの聖地として長い歴史を誇っておりますが、当然その建物なども古く、様々な場所に遺跡があったりするのです」
「遺跡、ですか……?」
そう尋ねると、ソフィア様がコクリ、と頷く。
「今ではそれらの遺跡は全て調査し尽くされておりますが、その調査の際にはファルマ聖法国に伝わる見取り図を用いるのです」
「それが、この羊皮紙に描かれているものと似ている、ということですか?」
「はい」
うーん……そもそも、ソフィア様はファルマ聖教に関する建造物の調査に来られている訳で、そうなればファルマ聖法国で遺跡調査に使用していたという見取り図とこの羊皮紙が一致していても不思議じゃない。
いや、むしろそうだと考えるほうが正しいだろう。
「そうなると、後はこれがどこの見取り図なのか、ということですね……」
「ですが、この羊皮紙にはそういったことは何も記されておりませんよね?」
僕の呟きに反応したライラ様が指摘する。
そう……この羊皮紙には、これの場所がどこなのかは記されていない。
「……ですが、この羊皮紙に描かれている見取り図の場所は、少なくともアイザックの街のどこかの筈です。であれば、後は街中をしらみ潰しに探すほかはないですね」
「ほ、本当にそれで見つかるのでしょうか……」
僕の言葉に、ソフィア様が不安そうな表情を浮かべる。
「ええ、それは大丈夫です。今日はもう遅いので探すのは明日ですが、早ければその明日中に見つかると思いますよ?」
「「「ええ!?」」」
僕がそう言うと、三人が驚きの声を上げた。
「僕がこの部屋につながる隠し扉をどうやって見つけたか、皆さんお忘れですか?」
「「「あ!」」」
そう。僕は【設計】によってあの隠し扉を見つけ時と同じ要領で、この見取り図にある建造物を探せばいい。
とはいえ、さすがにアイザックの街全体を一気に、という訳にはいかないので、範囲を絞りながら根気よくやる必要はあるけど、それでも闇雲に探すよりは余程ましだろう。
「そういうことですので、続きは明日の朝にして、早く上に戻りましょう」
「は、はい。ところで、他にも同じようにこの部屋に何か隠されている可能性は……?」
僕がみんなをそう促すと、ソフィア様が尋ねた。
「僕の【設計】で確認した限りでは、ここだけしかありませんでしたので、その可能性はほぼありません」
「そ、そうですか」
そう説明するとソフィア様は納得して頷いた……かと思うと、どういう訳か恍惚とした表情を浮かべた。なんで!?
「ああ……アデル様……!」
そして、祈るように両手を組み、そのまま跪いてしまった!?
「ソフィア様!?」
僕は慌ててソフィア様の身体を起こすと、彼女は勢いよく抱きついてきた!?
「や、やはりアデル様は素晴らしい御方です……! 奇跡のようなお力もさることながら、その機転、行動力、どれをとってもアデル様の右に並ぶ者はおりません……!」
「「ちょ、ちょっと!?」」
すぐさまライラ様とハンナさんが割って入り、ソフィア様を引き剥がしてくれた。
「わ、私達のアデル様に何をするのですか!」
「え……あ……す、すいません……アデル様の素晴らしさに、つい我を忘れてしまいました……」
ライラ様が問い詰めると、ソフィア様が苦笑した。
というか……そんなこと言われると、恥ずかしくて仕方ないんですけど……。
「……今後一切、アデル様のお傍に寄るのは禁止です」
「そ、そんな……!」
ハンナさんに冷たく言い放たれ、ソフィア様は表情を曇らせてガックリと肩を落とした。
「こ、今度こそ書斎に帰りましょう! よろしいですね!」
「「はい!」」
「……はい」
このままでは埒が明かないのでそう告げると、ライラ様とハンナさんは勢いよく首を縦に振って返事をするけど、ソフィア様だけはうなだれたまま渋々と言った様子で返事した。
僕はソフィア様を気にしないようにしつつ、急いで上の書斎へと戻った。
「ふう……先程お話ししました通り、調査の続きは明日の朝からということでよろしいでしょうか?」
「「「はい」」」
「では、今日のところはこれで解散としましょう」
そう告げると、ソフィア様はハンナさんに案内されて来賓室に向かい、ライラ様と僕はそれぞれ自室へと戻った。
「さあ……明日は何が出るかな」
ベッドに横になり、天井を見つめながら明日のことを考えていると、いつの間にか僕はそのまま眠りについた。
◇
「…………………………さま。アデル様」
……誰かが僕を呼ぶ声が聞こえる。
ライラ様? ……いや、ライラ様の声じゃない。
なら、ハンナさん? ……それも違う。
じゃあ、一体……。
僕を呼ぶ声に誘われるまま、ゆっくりと目を開ける。
すると。
「あ……アデル様……」
「え……?」
そこには……暗がりの中、微笑みながら僕の顔を覗き込む、ソフィア様の顔があった。
0
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる