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第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
愚者の末路
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■エリアル視点
「へ?」
そんな間抜けな声と共に、セシルがニンゲンの手によって一瞬で引きずり込まれた。
「な、何なんだアレは!?」
俺は思わず大声で叫ぶ。
ヤバイ! あれは絶対にヤバイヤツだ!
すると、その真っ黒なニンゲンの手が同じように伸び……………………はああああ!?
なんと、ニンゲンの手がうぞうぞと何本も現れ、同じように伸ばしてきた!?
それだけじゃない! 手と一緒に何か大きな塊のような影が見えたかと思ったら……それは、ニンゲンの手のように見えたものを身体から無数に生やした、芋虫のようなバケモノだった。
そして。
「あれは……セシ……ル……?」
その無数の手の中から、セシルの顔が覗いていた。
——ぱき、めきょ、ぼり、ぐちゅ。
これまで聞いたことがないような音が俺の耳に響く。
だけど、その音の正体はすぐに分かった。
何故なら。
「キャ……キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
レジーナが絶叫する。
何故なら……セシルの首から下が、既に無かったのだから。
その最後に残った頭も、芋虫のようなバケモノは大きな口を開け、それを放り込んだ。
——ぐちゅ、ぼり。
「に、にに……逃げろおおおおおおおおおおおお!」
俺は二人に叫ぶと、全力で走る。
幸いなことに、俺はロープをほどかれていたこともあり、上手く全力で走れるが、縛られたままの二人……特にレジーナはかなり走りづらそうだ。
だが、今はそんなことに構っていられない。
とにかく……この場から脱出しないと!
——オオオオオオオオオオオオオ……!
腹の底から響くような、呻き声のような、叫び声のようなものが背中越しに聞こえる。
これは、あの芋虫のバケモノが吠えているんだろうか。
再度俺は首を後ろに向ける。
「っ!? ヒ、ヒイッ!?」
芋虫だけじゃない!?
ムカデ、ナメクジ、ヘビ……に似ているようなナニカが次々と開き続ける床の隙間から溢れてきていた。
「なんだよっ!? なんなんだよっ!? なんで俺達があんなバケモノなんかに追いかけられてんだよおおおおおおおおお!?」
俺は絶叫しながら走り続ける。
腕も、脚も、人生でここまで激しく動かしたことはない程に。
その時。
「キャッ!?」
レジーナの脚がもつれて盛大にこけると、腕が縛られたままで受け身の取れない彼女は顔面から床に倒れ込んだ。
「っ!? レジーナ!?」
「諦めろ! もう手遅れだ!」
ロロが慌てた様子で叫ぶが、もう今からレジーナを助けに戻る暇はない。
そんなことをすれば、コッチまでバケモノ共に食われちまう!
「エリアルウウウウウウウウウウウウウ! ロロオオオオオオオオオオオオオオオ!」
後ろでレジーナが怨嗟を込めて俺達の名前を呼ぶ。
だが、その声を無視して俺達は全力で走り続けた。
「ヒイイイイ!? 来るな! 来るなあああああああアアアァアああアあア!?」
——ぼり、ぐちゃ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
恐怖に染まった声が響いたかと思ったら、イヤな音と共にレジーナの悲鳴がこだました。
「ヤメテ!? アタシの脚! 脚いいいいいいいいいい……ガ……ギャ!? ガフッ!? ギ、ギギギ……イイ……!」
——ぐち、めきょ、ぺき、くちゅ……。
悲鳴はすぐに聞こえなくなり、バケモノ共がレジーナを咀嚼する音だけになった。
だが、バケモノ共がレジーナに群がっているお陰で、俺達はバケモノ共から少し距離を開けることができた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
俺と並走しながら、呪文のように『ごめんなさい』を繰り返すロロ。
腕を縛られているのに俺と同じ速さで走る彼女に関心しつつも、今はただ一心不乱に走る。
すると。
「っ! 階段だ!」
床に転がるたいまつの光で照らされたらせん階段が、目の前に見えた。
俺はまた後ろを振り返り、バケモノ共との距離を確認する。
バケモノ共は相変わらず床の隙間から溢れ出ているが、先頭のバケモノがレジーナを食べるのに夢中で立ち止まっているため、それが邪魔をして後続が足止めを食らっているようだ。
……これなら。
俺は階段に足を掛け、そのまま駆け上がる。
ロロもその後に続いて階段に足を踏み入れた。
その瞬間。
——ドン。
「え……エリ……アル……?」
「悪いな」
俺はクルリ、と振り返ってロロを突き倒すと、彼女は階段を転げ落ち、床に身体を打ちつけた。
これでまた時間稼ぎになるだろう。
それに、階段なら幅も狭いからバケモノ共も容易に上がっては来れない筈だからな。
「エリアルウウウウウウウウウウウウウウウ!」
ロロが俺の名前を絶叫する。
さっきの、レジーナのように。
そして。
「ヒッ!? こないで! こないで……!」
ズリズリと後ずさるロロに、ゆっくりとバケモノ共が近づく。
さっきまでは振り返りざまでしか見なかったからよく分からなかったが、らせん階段を昇りながら注視してみると、バケモノ共にも表情のようなものがあり、まるで嘲笑うかのようにロロを見ていた。
そして。
——シュウウウウウウウウウ……。
「アアアアアアアアアアアアアア!? あ、脚!? ボクの脚が溶け……ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイ!?」
ナメクジのようなバケモノの口からよだれのようなものが垂れ、ロロの脚にポトリ、と掛かった瞬間、ロロの脚が溶け、骨が露わになった。
ナメクジのバケモノは、うぞうぞと蠢きながらロロの身体にゆっくりと覆い被さっていく。
「ああああああああ! イヤアアアアアアアア! アヅ……アヅイイイイイイイイイイ!?」
ロロがジタバタともがくが、ナメクジのバケモノはとうとうロロの身体をすっぽりと覆ってしまう。
ロロの声も聞こえなくなり、ナメクジのバケモノがロロのいた場所を通過すると……そこには、ロロの形をした跡のようなものだけが残されていた。
「ウオロエエエエエエエエエエエエエ!?」
俺は走りながら口から吐しゃ物をまき散らす。
チクショウ! なんでこんなことに……!
セシルも、レジーナも、ロロも、全部バケモノ共に食われちまった!
俺は今回の探索で一旗掲げて、あの[聖女]様と共に英雄の道を歩くんじゃなかったのか!?
なのに気づけばこのざまだ!
誰が悪い?
誰のせいだ?
決まっている! それもこれも、全てカルラとアデルの奴のせいだ!
「クソッ! 上に戻ったら、絶対にぶち殺してやる! 絶対にだ!」
俺は怒りのあまり拳を強く握り過ぎたせいか、掌に爪が食い込んで血を流していた。
すると。
「エリアル!」
「カルラ!」
心配そうに俺を見つめるカルラが、階段の上で待っていた。
「あの三人はどうしたの!?」
「食われたよ! あの変なバケモノ共にな!」
俺は吐き捨てるようにそう叫ぶ。
貴様のせいでこうなったくせに、今さら罪悪感でも沸いたとでもいうのか?
「そう……バケモノ、ね……」
カルラはチラリ、と『天国への階段』の下を覗き込む。
俺も同じように覗くと、下には大量のバケモノ共がみっちりと詰まっており、その巨体と数のせいで思うように階段も昇れていないようだった…………………………って。
——ザシュ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
突然カルラに両脚を切りつけられ、俺はもんどり打って階段に倒れる。
「んふ♪ アンタがロロを犠牲にして時間稼ぎしてたの、よく見えてたわよ? もちろん、その前にレジーナをアッサリ見捨てていたのも」
「カルラアアアアアアアアアアアアアアア!」
「……ウルサイわね。とにかく、今のアンタの役目は私達が逃げるための撒き餌なのよ。ホント、やっと役に立ったわ」
俺は殺気を込めながらカルラを睨みつけるが、当のカルラは耳をほじりながら面倒くさそうに顔をしかめた。
「さあて、それじゃ私は退散するわね。せいぜい長生きして時間を稼ぐのよ?」
そう言うと、カルラは踵を返して階段を駆け上がっていく。
「んふふふふふふふふふふふふふふふふ♪」
俺を置き去りにして、嬉しそうに嗤いながら。
そして。
「あ、ああああああああああああ……!? た、たしゅけ……!?」
俺の元までやってきたミミズのようなバケモノが大きな口を開け……。
——ぼり。
「へ?」
そんな間抜けな声と共に、セシルがニンゲンの手によって一瞬で引きずり込まれた。
「な、何なんだアレは!?」
俺は思わず大声で叫ぶ。
ヤバイ! あれは絶対にヤバイヤツだ!
すると、その真っ黒なニンゲンの手が同じように伸び……………………はああああ!?
なんと、ニンゲンの手がうぞうぞと何本も現れ、同じように伸ばしてきた!?
それだけじゃない! 手と一緒に何か大きな塊のような影が見えたかと思ったら……それは、ニンゲンの手のように見えたものを身体から無数に生やした、芋虫のようなバケモノだった。
そして。
「あれは……セシ……ル……?」
その無数の手の中から、セシルの顔が覗いていた。
——ぱき、めきょ、ぼり、ぐちゅ。
これまで聞いたことがないような音が俺の耳に響く。
だけど、その音の正体はすぐに分かった。
何故なら。
「キャ……キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
レジーナが絶叫する。
何故なら……セシルの首から下が、既に無かったのだから。
その最後に残った頭も、芋虫のようなバケモノは大きな口を開け、それを放り込んだ。
——ぐちゅ、ぼり。
「に、にに……逃げろおおおおおおおおおおおお!」
俺は二人に叫ぶと、全力で走る。
幸いなことに、俺はロープをほどかれていたこともあり、上手く全力で走れるが、縛られたままの二人……特にレジーナはかなり走りづらそうだ。
だが、今はそんなことに構っていられない。
とにかく……この場から脱出しないと!
——オオオオオオオオオオオオオ……!
腹の底から響くような、呻き声のような、叫び声のようなものが背中越しに聞こえる。
これは、あの芋虫のバケモノが吠えているんだろうか。
再度俺は首を後ろに向ける。
「っ!? ヒ、ヒイッ!?」
芋虫だけじゃない!?
ムカデ、ナメクジ、ヘビ……に似ているようなナニカが次々と開き続ける床の隙間から溢れてきていた。
「なんだよっ!? なんなんだよっ!? なんで俺達があんなバケモノなんかに追いかけられてんだよおおおおおおおおお!?」
俺は絶叫しながら走り続ける。
腕も、脚も、人生でここまで激しく動かしたことはない程に。
その時。
「キャッ!?」
レジーナの脚がもつれて盛大にこけると、腕が縛られたままで受け身の取れない彼女は顔面から床に倒れ込んだ。
「っ!? レジーナ!?」
「諦めろ! もう手遅れだ!」
ロロが慌てた様子で叫ぶが、もう今からレジーナを助けに戻る暇はない。
そんなことをすれば、コッチまでバケモノ共に食われちまう!
「エリアルウウウウウウウウウウウウウ! ロロオオオオオオオオオオオオオオオ!」
後ろでレジーナが怨嗟を込めて俺達の名前を呼ぶ。
だが、その声を無視して俺達は全力で走り続けた。
「ヒイイイイ!? 来るな! 来るなあああああああアアアァアああアあア!?」
——ぼり、ぐちゃ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
恐怖に染まった声が響いたかと思ったら、イヤな音と共にレジーナの悲鳴がこだました。
「ヤメテ!? アタシの脚! 脚いいいいいいいいいい……ガ……ギャ!? ガフッ!? ギ、ギギギ……イイ……!」
——ぐち、めきょ、ぺき、くちゅ……。
悲鳴はすぐに聞こえなくなり、バケモノ共がレジーナを咀嚼する音だけになった。
だが、バケモノ共がレジーナに群がっているお陰で、俺達はバケモノ共から少し距離を開けることができた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
俺と並走しながら、呪文のように『ごめんなさい』を繰り返すロロ。
腕を縛られているのに俺と同じ速さで走る彼女に関心しつつも、今はただ一心不乱に走る。
すると。
「っ! 階段だ!」
床に転がるたいまつの光で照らされたらせん階段が、目の前に見えた。
俺はまた後ろを振り返り、バケモノ共との距離を確認する。
バケモノ共は相変わらず床の隙間から溢れ出ているが、先頭のバケモノがレジーナを食べるのに夢中で立ち止まっているため、それが邪魔をして後続が足止めを食らっているようだ。
……これなら。
俺は階段に足を掛け、そのまま駆け上がる。
ロロもその後に続いて階段に足を踏み入れた。
その瞬間。
——ドン。
「え……エリ……アル……?」
「悪いな」
俺はクルリ、と振り返ってロロを突き倒すと、彼女は階段を転げ落ち、床に身体を打ちつけた。
これでまた時間稼ぎになるだろう。
それに、階段なら幅も狭いからバケモノ共も容易に上がっては来れない筈だからな。
「エリアルウウウウウウウウウウウウウウウ!」
ロロが俺の名前を絶叫する。
さっきの、レジーナのように。
そして。
「ヒッ!? こないで! こないで……!」
ズリズリと後ずさるロロに、ゆっくりとバケモノ共が近づく。
さっきまでは振り返りざまでしか見なかったからよく分からなかったが、らせん階段を昇りながら注視してみると、バケモノ共にも表情のようなものがあり、まるで嘲笑うかのようにロロを見ていた。
そして。
——シュウウウウウウウウウ……。
「アアアアアアアアアアアアアア!? あ、脚!? ボクの脚が溶け……ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイ!?」
ナメクジのようなバケモノの口からよだれのようなものが垂れ、ロロの脚にポトリ、と掛かった瞬間、ロロの脚が溶け、骨が露わになった。
ナメクジのバケモノは、うぞうぞと蠢きながらロロの身体にゆっくりと覆い被さっていく。
「ああああああああ! イヤアアアアアアアア! アヅ……アヅイイイイイイイイイイ!?」
ロロがジタバタともがくが、ナメクジのバケモノはとうとうロロの身体をすっぽりと覆ってしまう。
ロロの声も聞こえなくなり、ナメクジのバケモノがロロのいた場所を通過すると……そこには、ロロの形をした跡のようなものだけが残されていた。
「ウオロエエエエエエエエエエエエエ!?」
俺は走りながら口から吐しゃ物をまき散らす。
チクショウ! なんでこんなことに……!
セシルも、レジーナも、ロロも、全部バケモノ共に食われちまった!
俺は今回の探索で一旗掲げて、あの[聖女]様と共に英雄の道を歩くんじゃなかったのか!?
なのに気づけばこのざまだ!
誰が悪い?
誰のせいだ?
決まっている! それもこれも、全てカルラとアデルの奴のせいだ!
「クソッ! 上に戻ったら、絶対にぶち殺してやる! 絶対にだ!」
俺は怒りのあまり拳を強く握り過ぎたせいか、掌に爪が食い込んで血を流していた。
すると。
「エリアル!」
「カルラ!」
心配そうに俺を見つめるカルラが、階段の上で待っていた。
「あの三人はどうしたの!?」
「食われたよ! あの変なバケモノ共にな!」
俺は吐き捨てるようにそう叫ぶ。
貴様のせいでこうなったくせに、今さら罪悪感でも沸いたとでもいうのか?
「そう……バケモノ、ね……」
カルラはチラリ、と『天国への階段』の下を覗き込む。
俺も同じように覗くと、下には大量のバケモノ共がみっちりと詰まっており、その巨体と数のせいで思うように階段も昇れていないようだった…………………………って。
——ザシュ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
突然カルラに両脚を切りつけられ、俺はもんどり打って階段に倒れる。
「んふ♪ アンタがロロを犠牲にして時間稼ぎしてたの、よく見えてたわよ? もちろん、その前にレジーナをアッサリ見捨てていたのも」
「カルラアアアアアアアアアアアアアアア!」
「……ウルサイわね。とにかく、今のアンタの役目は私達が逃げるための撒き餌なのよ。ホント、やっと役に立ったわ」
俺は殺気を込めながらカルラを睨みつけるが、当のカルラは耳をほじりながら面倒くさそうに顔をしかめた。
「さあて、それじゃ私は退散するわね。せいぜい長生きして時間を稼ぐのよ?」
そう言うと、カルラは踵を返して階段を駆け上がっていく。
「んふふふふふふふふふふふふふふふふ♪」
俺を置き去りにして、嬉しそうに嗤いながら。
そして。
「あ、ああああああああああああ……!? た、たしゅけ……!?」
俺の元までやってきたミミズのようなバケモノが大きな口を開け……。
——ぼり。
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