機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
116 / 146
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編

愚者の末路

しおりを挟む
■エリアル視点

「へ?」

 そんな間抜けな声と共に、セシルがニンゲンの手によって一瞬で引きずり込まれた。

「な、何なんだアレ・・は!?」

 俺は思わず大声で叫ぶ。
 ヤバイ! あれは絶対にヤバイヤツだ!

 すると、その真っ黒なニンゲンの手が同じように伸び……………………はああああ!?

 なんと、ニンゲンの手がうぞうぞと何本も現れ、同じように伸ばしてきた!?
 それだけじゃない! 手と一緒に何か大きな塊のような影が見えたかと思ったら……それは、ニンゲンの手のように見えたものを身体から無数に生やした、芋虫のようなバケモノだった。

 そして。

「あれは……セシ……ル……?」

 その無数の手の中から、セシルの顔が覗いていた。

 ——ぱき、めきょ、ぼり、ぐちゅ。

 これまで聞いたことがないような音が俺の耳に響く。
 だけど、その音の正体はすぐに分かった。

 何故なら。

「キャ……キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 レジーナが絶叫する。

 何故なら……セシルの首から下が、既に無かったのだから。
 その最後に残った頭も、芋虫のようなバケモノは大きな口を開け、それを放り込んだ。

 ——ぐちゅ、ぼり。

「に、にに……逃げろおおおおおおおおおおおお!」

 俺は二人に叫ぶと、全力で走る。

 幸いなことに、俺はロープをほどかれていたこともあり、上手く全力で走れるが、縛られたままの二人……特にレジーナはかなり走りづらそうだ。

 だが、今はそんなことに構っていられない。
 とにかく……この場から脱出しないと!

 ——オオオオオオオオオオオオオ……!

 腹の底から響くような、うめき声のような、叫び声のようなものが背中越しに聞こえる。
 これは、あの芋虫のバケモノが吠えているんだろうか。

 再度俺は首を後ろに向ける。

「っ!? ヒ、ヒイッ!?」

 芋虫だけじゃない!?

 ムカデ、ナメクジ、ヘビ……に似ているようなナニカが次々と開き続ける床の隙間から溢れてきていた。

「なんだよっ!? なんなんだよっ!? なんで俺達があんなバケモノなんかに追いかけられてんだよおおおおおおおおお!?」

 俺は絶叫しながら走り続ける。
 腕も、脚も、人生でここまで激しく動かしたことはない程に。

 その時。

「キャッ!?」

 レジーナの脚がもつれて盛大にこけると、腕が縛られたままで受け身の取れない彼女は顔面から床に倒れ込んだ。

「っ!? レジーナ!?」
「諦めろ! もう手遅れだ!」

 ロロが慌てた様子で叫ぶが、もう今からレジーナを助けに戻る暇はない。
 そんなことをすれば、コッチまでバケモノ共に食われちまう!

「エリアルウウウウウウウウウウウウウ! ロロオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 後ろでレジーナが怨嗟を込めて俺達の名前を呼ぶ。
 だが、その声を無視して俺達は全力で走り続けた。

「ヒイイイイ!? 来るな! 来るなあああああああアアアァアああアあア!?」

 ——ぼり、ぐちゃ。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 恐怖に染まった声が響いたかと思ったら、イヤな音と共にレジーナの悲鳴がこだました。

「ヤメテ!? アタシの脚! 脚いいいいいいいいいい……ガ……ギャ!? ガフッ!? ギ、ギギギ……イイ……!」

 ——ぐち、めきょ、ぺき、くちゅ……。

 悲鳴はすぐに聞こえなくなり、バケモノ共がレジーナを咀嚼する音だけになった。

 だが、バケモノ共がレジーナに群がっているお陰で、俺達はバケモノ共から少し距離を開けることができた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」

 俺と並走しながら、呪文のように『ごめんなさい』を繰り返すロロ。
 腕を縛られているのに俺と同じ速さで走る彼女に関心しつつも、今はただ一心不乱に走る。

 すると。

「っ! 階段だ!」

 床に転がるたいまつの光で照らされたらせん階段が、目の前に見えた。

 俺はまた後ろを振り返り、バケモノ共との距離を確認する。

 バケモノ共は相変わらず床の隙間から溢れ出ているが、先頭のバケモノがレジーナを食べるのに夢中で立ち止まっているため、それが邪魔をして後続が足止めを食らっているようだ。

 ……これなら。

 俺は階段に足を掛け、そのまま駆け上がる。
 ロロもその後に続いて階段に足を踏み入れた。

 その瞬間。

 ——ドン。

「え……エリ……アル……?」
「悪いな」

 俺はクルリ、と振り返ってロロを突き倒すと、彼女は階段を転げ落ち、床に身体を打ちつけた。

 これでまた時間稼ぎになるだろう。
 それに、階段なら幅も狭いからバケモノ共も容易に上がっては来れない筈だからな。

「エリアルウウウウウウウウウウウウウウウ!」

 ロロが俺の名前を絶叫する。
 さっきの、レジーナのように。

 そして。

「ヒッ!? こないで! こないで……!」

 ズリズリと後ずさるロロに、ゆっくりとバケモノ共が近づく。
 さっきまでは振り返りざまでしか見なかったからよく分からなかったが、らせん階段を昇りながら注視してみると、バケモノ共にも表情のようなものがあり、まるで嘲笑あざわらうかのようにロロを見ていた。

 そして。

 ——シュウウウウウウウウウ……。

「アアアアアアアアアアアアアア!? あ、脚!? ボクの脚が溶け……ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイ!?」

 ナメクジのようなバケモノの口からよだれのようなものが垂れ、ロロの脚にポトリ、と掛かった瞬間、ロロの脚が溶け、骨が露わになった。

 ナメクジのバケモノは、うぞうぞと蠢きながらロロの身体にゆっくりと覆い被さっていく。

「ああああああああ! イヤアアアアアアアア! アヅ……アヅイイイイイイイイイイ!?」

 ロロがジタバタともがくが、ナメクジのバケモノはとうとうロロの身体をすっぽりと覆ってしまう。

 ロロの声も聞こえなくなり、ナメクジのバケモノがロロのいた場所を通過すると……そこには、ロロの形をした跡のようなものだけが残されていた。

「ウオロエエエエエエエエエエエエエ!?」

 俺は走りながら口から吐しゃ物をまき散らす。

 チクショウ! なんでこんなことに……!
 セシルも、レジーナも、ロロも、全部バケモノ共に食われちまった!

 俺は今回の探索で一旗掲げて、あの[聖女セイント]様と共に英雄の道を歩くんじゃなかったのか!?
 なのに気づけばこのざまだ!

 誰が悪い?
 誰のせいだ?

 決まっている! それもこれも、全てカルラとアデルの奴のせいだ!

「クソッ! 上に戻ったら、絶対にぶち殺してやる! 絶対にだ!」

 俺は怒りのあまり拳を強く握り過ぎたせいか、掌に爪が食い込んで血を流していた。

 すると。

「エリアル!」
「カルラ!」

 心配そうに俺を見つめるカルラが、階段の上で待っていた。

「あの三人はどうしたの!?」
「食われたよ! あの変なバケモノ共にな!」

 俺は吐き捨てるようにそう叫ぶ。
 貴様のせいでこうなったくせに、今さら罪悪感でも沸いたとでもいうのか?

「そう……バケモノ、ね……」

 カルラはチラリ、と『天国への階段』の下を覗き込む。

 俺も同じように覗くと、下には大量のバケモノ共がみっちりと詰まっており、その巨体と数のせいで思うように階段も昇れていないようだった…………………………って。

 ——ザシュ。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 突然カルラに両脚を切りつけられ、俺はもんどり打って階段に倒れる。

「んふ♪ アンタがロロを犠牲にして時間稼ぎしてたの、よく見えてたわよ? もちろん、その前にレジーナをアッサリ見捨てていたのも」
「カルラアアアアアアアアアアアアアアア!」
「……ウルサイわね。とにかく、今のアンタの役目は私達が逃げるための撒き餌なのよ。ホント、やっと役に立ったわ」

 俺は殺気を込めながらカルラを睨みつけるが、当のカルラは耳をほじりながら面倒くさそうに顔をしかめた。

「さあて、それじゃ私は退散するわね。せいぜい長生きして時間を稼ぐのよ?」

 そう言うと、カルラはきびすを返して階段を駆け上がっていく。

「んふふふふふふふふふふふふふふふふ♪」

 俺を置き去りにして、嬉しそうにわらいながら。

 そして。

「あ、ああああああああああああ……!? た、たしゅけ……!?」

 俺の元までやってきたミミズのようなバケモノが大きな口を開け……。

 ——ぼり。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...