機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編

愚者の悪夢

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■エリアル視点

「あ、もちろん嫌だなんて言わせないわよ? だって、アンタがそそのかしたせいで、私はアデルに拒絶されてしまったんだもの♪」

 カルラが今まで一度も見たことがないような不気味な笑みを浮かべ、そう言い放つ。

「だ、だがあれはカルラも賛同しただろ!? “役立たず”のアイツがあのまま“黄金の旋風”にいたところで……グアッ!?」

 俺の言葉が気に入らなかったのか、カルラは俺の太ももに剣を突き刺した。

「んふ♪ 忘れたの? アンタ、私に言ったじゃない。『このままアデルが“黄金の旋風”にいたら、近い将来アイツは死んでしまう。アデルが大切なら、カルラから引導を渡してやるべきだ』って」
「ツウ……あ、ああ、そう言った……」

 俺は太ももの痛みをこらえながら、カルラに返事した。

「で、反対した私にこうも言ったわよね? 『アデルはカルラからそう言われても、絶対にお前のことを待ってくれる筈だ。だから、冒険者としてアデルと暮らしていけるだけの金を稼いだら、その時はアイツを迎えに行ってやればいい』とも」
「そ、そうだ……」
「はあ……」

 脂汗を流しながら俺が頷くと、カルラが溜息を吐く。

 そして。

「っ!? ガアアアアアッ!?」
「アンタが毎日毎日、執拗に私にそんなことを言ったせいで、私はアデルを諦めさせられる羽目になったのよ! アデルを! 世界中の誰よりも愛していたのに!」
「ギャ!? や、やめっ!?」

 カルラは目を吊り上げ、太ももの怪我を踏みつける。何度も、何度も。

「それがどういうことよ! アデルはアンタ達が罵った[技術者エンジニア]の能力を開花させて! あの忌々しい伯爵と侍女と仲良くなって! 恋人だった私には見向きもしないで!」
「クハ、まあそろそろ止めとけよ。後に差し支えるだろ?」

 怒りに任せて踏みつけるカルラを、男がニヤニヤしながら止めた。

「ハア……ハア……そうね、コイツ等にはちゃんとすることがあったわね……」
「グ……グウ……」

 落ち着きを取り戻したカルラが、踏むのを止めた。
 俺はと言えば、うめき声を上げながらうずくまっている。

「んふ♪ それじゃ、行くわよ」
「ググ……い、一体どこへ……?」
「決まってるじゃない。ここの真ん中・・・よ」

 ◇

「……どうジャック、見つかった?」
「いやあ、暗いせいでなかなか見つかんねえなあ」

 俺達は手を縛られたまま、何かを探しているカルラと男の後について行く。

「ホラ! アンタ達もサボってないで探しなさいよ!」
「痛ッ!? ヤ、ヤメテ……!」
「んふ♪ アンタ、私の・・アデルにいつも酷いことしてたでしょう? だから、アンタと同じことをしてるだけよ」

 カルラはわらいながらレジーナを思い切り蹴飛ばす。
 その姿に、俺達の知っている彼女の面影はない。

「しかし……本当にあの[聖女セイント]様の言うようなものがここにあるのかしら……」
「クハハ、[聖女セイント]様が自分の考えだけで言ってるんだったら俺も半分しか信じねえが、何つってもあの・・教皇様のお墨付きで来てるんだぜ? だったらほぼ間違いねえよ」
「……というか、その教皇様は信用できるの?」
「ん? おお、少なくとも[聖女セイント]様の何倍もな」

 そう言うと、男は「クハハ」と笑い、カルラが溜息を吐いた。

 そして。

「お、これじゃねえか?」

 男がたいまつで照らされた床を見ながら手招きする。

 カルラと共に、俺達は男の傍に寄ると。

「な、何だこれは!?」

 俺は思わず声を上げた。
 レジーナ達も、その異様さに絶句している。

 何故なら……その床には、無数のニンゲンが涙を流しながら絶叫しているレリーフが施されていたのだから。

 さらにそのレリーフの真ん中には、あの水門を開くために付いていたものと同じような、丸いハンドルみたいなものが取り付けられていた。

「……どうやら、これで間違いないようね……」
「だろ? んじゃ、サッサと始めちまおうぜ」
「……そうね」

 カルラは頷くと、俺達をチラリ、と見やる。

「んふ♪ ホラ、やっとあなた達の出番、よ!」

 背中をカルラに蹴飛ばされ、俺はよろめきながらハンドルの前に立った。

「さあ、早く回しなさいよ」
「こ、こんな後ろ手に縛られている状態じゃ無理だろ!?」
「ハア……本当にメンドクサイ男ね……」

 カルラは肩を竦めながらかぶりを振ると、剣を抜いて俺の手を縛っているロープを切った。

「ホラ、これなら回せるでしょ」
「あ、ああ……」

 首元に剣を当てながらカルラが顎で指図する。
 俺は仕方なくハンドルを握り、回……………………か、固いっ!

「カ、カルラ、固くて回せないんだけど……」
「もう! 本当に使えないわね!」

 カルラが苛立ちながらそう叫ぶと、今度はセシルのロープを切った。

「早くしろ!」
「うう、す、すまない……」

 カルラにおののくセシルは、泣きそうになりながらハンドルに手を掛けた。

「さ、さあエリアル、一気に力を入れるぞ!」
「お、おう……」
「行くぞ! せーの!」

 セシルの合図で一気にハンドルに力を込める。

 すると。

 ——ギギ……。

 嫌な金属音と共に、ハンドルが少し動く。

「お、動いたみたいだぜ」
「そうみたいね」

 カルラと男が興味深そうにハンドルを眺める。
 俺とセシルはさらに力を込め、一気に回す。

 だが、ハンドルが固かったのは最初だけで、これなら一人でも回せそうだ。

「セシル、後は頼んだぞ」
「え!? わ、私一人でか!?」

 俺はセシルに任せると、彼女は困惑した表情を浮かべる。

「当たり前だろう? もう一人でも充分回せるし、何より俺は……「ウルサイ! ドッチでもいいからさっさとやれ!」」

 俺とセシルが言い争いを始めようとしたところで、カルラが怒鳴り散らした。
 そんなカルラに畏縮したセシルは、慌ててハンドルを回した。

 その時。

「っ!? な、何かヤベエぞっ!?」
「ええ!」

 突然光り出したレリーフを見て、男が叫ぶ。
 それと同時に、カルラと男が一気にその場から離れ、一目散に駆け出した。

 お、俺もこうしちゃいられん!
 俺も慌ててきびすを返すと、その場から離れた。

「「あ、ま、待って!?」」
「え? え?」

 レジーナとロロが俺の後を追ってくる。
 そして混乱しているセシルはハンドルを握ったまま、呆けた表情を浮かべていた。

 ——ゴゴゴゴゴゴ……!

 地鳴りのような音が響き、足元の床が動き出す。
 全力で走りながら後ろを振り返ると、床が真っ二つに割れ、少しずつ開いているのが見える。

 そして。

「…………………………え?」

 その隙間の中から真っ黒なニンゲンの手がニュ、と伸びたかと思うと。

「へ?」

 そんな間抜けな声と共に、セシルがその黒い手によって一瞬で引きずり込まれた。
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