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第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
逃避行の中の安らぎ
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——ガタ、ガタ。
アイザックの街を脱出してから四日。
僕達は一路、港湾都市“ブラムス”を目指している。
「ふう……ようやく半分、というところですね」
のどかな街道を眺めながら、僕はポツリ、と呟く。
「うふふ、ブラムスの街はアイザックの街から早くても六日はかかりますから。この鋼鉄の馬車にこれだけの荷物を載せれば、遅くなってしまうのは仕方ないかと」
「そうなんですが……」
苦笑するハンナさん。
だけど、僕は不安で仕方ないんだ。
……あの『天国への階段』から、いつバケモノが溢れ出すのかと思うと。
地下水路の壁や床の材質も、僕達の知らない未知のものでできており、かなり頑丈であることは分かってはいるんだけど……それでも、『天国への階段』の壁や階段の材質よりは脆い。
それに……ジャックに穴の中に落とされた時、気づいたことがある。
暗闇へと落下する中、バケモノの呻き声のようなものが、徐々に上へと近づいていたのだ。
まるで……大量のバケモノが押し出されるようにせりあがっていくように。
「ふふ……アデル様、大丈夫ですよ。少なくとも、あの『天国への階段』の深さは相当なものでした。地上へと来るにはまだかなりの時間が掛かる筈です」
ライラ様が僕の手に白銀の手をそっと添えると、ニコリ、と天使のような微笑みを浮かべた。
「そうですね……そう信じましょう」
ライラ様に頷くと、僕はまた正面へと向き直る。
「ところで、ブラムスの街はどんなところなんでしょうかね?」
話題を変えようと、僕はハンナさんにそう尋ねた。
この中でブラムスの街に行ったことがあるのはハンナさんだけだし、僕にしても外国の玄関口っていう認識程度しかないから。
「はい。ブラムスの街は二大公爵の一人であるグロウスター公爵が治める街で、大陸の諸外国との外交を一手に担っております。なので、様々な異文化が混ざり合い、活気に溢れたところですよ。あとは……海産物が美味しいです」
そう説明すると、ハンナさんは人差し指を顎に当て、少しおどけた。
「そうですか……でしたら、この国の最後の思い出として、その海産物に舌鼓を打つというのも悪くありませんね」
乗り気になったライラ様が身を乗り出して提案する。
もちろん、僕としてもその提案に否やはない。
「ですね。ブラムスの街に着いたら、最後……いえ、僕達の新しい門出を祝して宴といきましょう」
「「はい!」」
僕達はお互いの顔を見合わせながら微笑み合う。
これからの前途多難な未来に立ち向かうために。
◇
「うーん……やっぱり今日中に“ヨーク”の街にたどり着くのは無理みたいですね……」
僕は茜色に染まった空を眺めながら、思わず溜息を吐く。
本当なら、今日中に“ヨーク”の街に到着して英気を養い、ブラムスの街までの残り一日の行程に臨みたかったんだけどなあ……。
「ふふ、仕方ありませんよ。それも旅というものですから」
「うふふ、そうですよアデル様。まあ、旅というより愛の逃避行ですが」
そんなことを言いながら、二人がクスリ、と笑う。
ああ……僕の愛する二人は本当に可愛いなあ……って。
「おっと、こうしちゃいられない。そうなると今夜は野宿になりますので、早速準備しましょう」
「「はい!」」
僕はハンナさんに夕食の準備をお願いし、その間にライラ様と一緒に近くに生えている木を数本伐採すると。
「【設計】【加工】【製作】」
早速今日の僕達の寝床となるテント……うん、もう完全に家になっちゃったね……。
「ふふ、さすがはアデル様です」
そんな家を眺めながら、ライラ様が右の瞳をキラキラさせた。
「あはは。せっかくですからお風呂も作ってみましょうか」
「「できるのですか!」」
夕食に取り掛かっていた筈のハンナさんもいつの間にかこちらに来て、二人が期待に満ちた瞳で僕を見つめる。
「え、ええ。近くに川もありますので、そこから水を引いて浴槽に溜めれば……」
「「ぜひ! ぜひお願いします!」」
「あ、はい」
二人の勢いに押され、僕は苦笑しながらお風呂の製作に取り掛かる。
幸いなことに先程伐採した木材も豊富にあるからね。
そして。
「はい、できました」
「「わああああ……!」」
水がたっぷり張られた木製のお風呂が完成し、それを眺める二人が感嘆の声を漏らした。
「いやあ、木製のお風呂って、いい香りがするものですね」
「ええ! 素晴らしいです!」
「本当です……!」
あはは、二人がこんなに喜んでくれたのなら、作った甲斐があったよ。
「ところで、お風呂に水を張ってしまってはお湯を入れづらいと思うのですが……」
ハンナさんが浴槽の水に手を入れながら、おずおずと尋ねる。
「あはは、それはお風呂に入る時のお楽しみです」
「「?」」
◇
「「わああああ……!」」
夕食も終わり、二人が登り立つ湯気の前で嬉しそうにはしゃぐ。
「こ、これはどうやってお湯に変えたのですか?」
「あはは。実は、お風呂に金属のパイプを外に伸ばしてあるんです。それで、そのパイプを熱してやれば、水がお湯に変わる仕組みです」
「「おおー!」」
僕の説明を聞き、二人が拍手してくれた。
お蔭でチョットだけ鼻が高い。
「ということで、どうぞごゆっくりお風呂をお楽しみください」
僕は二人にお辞儀をすると、その場を離れ……って。
「あ、そ、その……アデル様も、一緒に……」
「そ、そうです……お背中、お流しします……」
結局、二人のお誘いを断り切れずに、僕達三人でお風呂に入った。
アイザックの街を脱出してから四日。
僕達は一路、港湾都市“ブラムス”を目指している。
「ふう……ようやく半分、というところですね」
のどかな街道を眺めながら、僕はポツリ、と呟く。
「うふふ、ブラムスの街はアイザックの街から早くても六日はかかりますから。この鋼鉄の馬車にこれだけの荷物を載せれば、遅くなってしまうのは仕方ないかと」
「そうなんですが……」
苦笑するハンナさん。
だけど、僕は不安で仕方ないんだ。
……あの『天国への階段』から、いつバケモノが溢れ出すのかと思うと。
地下水路の壁や床の材質も、僕達の知らない未知のものでできており、かなり頑丈であることは分かってはいるんだけど……それでも、『天国への階段』の壁や階段の材質よりは脆い。
それに……ジャックに穴の中に落とされた時、気づいたことがある。
暗闇へと落下する中、バケモノの呻き声のようなものが、徐々に上へと近づいていたのだ。
まるで……大量のバケモノが押し出されるようにせりあがっていくように。
「ふふ……アデル様、大丈夫ですよ。少なくとも、あの『天国への階段』の深さは相当なものでした。地上へと来るにはまだかなりの時間が掛かる筈です」
ライラ様が僕の手に白銀の手をそっと添えると、ニコリ、と天使のような微笑みを浮かべた。
「そうですね……そう信じましょう」
ライラ様に頷くと、僕はまた正面へと向き直る。
「ところで、ブラムスの街はどんなところなんでしょうかね?」
話題を変えようと、僕はハンナさんにそう尋ねた。
この中でブラムスの街に行ったことがあるのはハンナさんだけだし、僕にしても外国の玄関口っていう認識程度しかないから。
「はい。ブラムスの街は二大公爵の一人であるグロウスター公爵が治める街で、大陸の諸外国との外交を一手に担っております。なので、様々な異文化が混ざり合い、活気に溢れたところですよ。あとは……海産物が美味しいです」
そう説明すると、ハンナさんは人差し指を顎に当て、少しおどけた。
「そうですか……でしたら、この国の最後の思い出として、その海産物に舌鼓を打つというのも悪くありませんね」
乗り気になったライラ様が身を乗り出して提案する。
もちろん、僕としてもその提案に否やはない。
「ですね。ブラムスの街に着いたら、最後……いえ、僕達の新しい門出を祝して宴といきましょう」
「「はい!」」
僕達はお互いの顔を見合わせながら微笑み合う。
これからの前途多難な未来に立ち向かうために。
◇
「うーん……やっぱり今日中に“ヨーク”の街にたどり着くのは無理みたいですね……」
僕は茜色に染まった空を眺めながら、思わず溜息を吐く。
本当なら、今日中に“ヨーク”の街に到着して英気を養い、ブラムスの街までの残り一日の行程に臨みたかったんだけどなあ……。
「ふふ、仕方ありませんよ。それも旅というものですから」
「うふふ、そうですよアデル様。まあ、旅というより愛の逃避行ですが」
そんなことを言いながら、二人がクスリ、と笑う。
ああ……僕の愛する二人は本当に可愛いなあ……って。
「おっと、こうしちゃいられない。そうなると今夜は野宿になりますので、早速準備しましょう」
「「はい!」」
僕はハンナさんに夕食の準備をお願いし、その間にライラ様と一緒に近くに生えている木を数本伐採すると。
「【設計】【加工】【製作】」
早速今日の僕達の寝床となるテント……うん、もう完全に家になっちゃったね……。
「ふふ、さすがはアデル様です」
そんな家を眺めながら、ライラ様が右の瞳をキラキラさせた。
「あはは。せっかくですからお風呂も作ってみましょうか」
「「できるのですか!」」
夕食に取り掛かっていた筈のハンナさんもいつの間にかこちらに来て、二人が期待に満ちた瞳で僕を見つめる。
「え、ええ。近くに川もありますので、そこから水を引いて浴槽に溜めれば……」
「「ぜひ! ぜひお願いします!」」
「あ、はい」
二人の勢いに押され、僕は苦笑しながらお風呂の製作に取り掛かる。
幸いなことに先程伐採した木材も豊富にあるからね。
そして。
「はい、できました」
「「わああああ……!」」
水がたっぷり張られた木製のお風呂が完成し、それを眺める二人が感嘆の声を漏らした。
「いやあ、木製のお風呂って、いい香りがするものですね」
「ええ! 素晴らしいです!」
「本当です……!」
あはは、二人がこんなに喜んでくれたのなら、作った甲斐があったよ。
「ところで、お風呂に水を張ってしまってはお湯を入れづらいと思うのですが……」
ハンナさんが浴槽の水に手を入れながら、おずおずと尋ねる。
「あはは、それはお風呂に入る時のお楽しみです」
「「?」」
◇
「「わああああ……!」」
夕食も終わり、二人が登り立つ湯気の前で嬉しそうにはしゃぐ。
「こ、これはどうやってお湯に変えたのですか?」
「あはは。実は、お風呂に金属のパイプを外に伸ばしてあるんです。それで、そのパイプを熱してやれば、水がお湯に変わる仕組みです」
「「おおー!」」
僕の説明を聞き、二人が拍手してくれた。
お蔭でチョットだけ鼻が高い。
「ということで、どうぞごゆっくりお風呂をお楽しみください」
僕は二人にお辞儀をすると、その場を離れ……って。
「あ、そ、その……アデル様も、一緒に……」
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