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第三十八話 最高の日常
しおりを挟む「ふぁー、あぁー」
んーなんだかんだ異世界も悪いもんじゃねー気がしてきたな。そこそこにふかふかなベッドでこうして火が差し込む中無限二度寝できるんだからな。
会社員時代じゃ考えられなかったことだ。いつ起きていつ寝たのかすら曖昧なまま、まともに太陽を浴びることさえせずに馬車馬のごとく働いていた気がする。
現実世界で何の為に働いて何の為に生きているか分からなくなるよりかは、こっちで適当に働いて日銭を稼いで金が尽きるまで寝る、最高じゃねーか。
俺に友達とか家族とかはいなかったんだ。異世界に来て、俺は正解だったのかもしれない。
俺は、依頼を完了させてお金を受け取り、いつもの宿で寝て起きて食って寝てを繰り返していた。こんな暮らしも悪くはない、最初はチートスキル寄越せよって思っていたが、これをあのクソジジイは俺に教えたかったのかもしれない。
だが、それも今日で終わりのようだ。何故なら銭が尽きたから。
❇︎
何週間ぶりに——もはやこの世界に一週間という概念があるのかすら分からないが——冒険者ギルドにやってきたが、相変わらず活気があってどこか懐かしさすら感じてしまった。
俺は眠気をグッと堪えて受付に向かうと、いつもの受付の方がハッと驚いたような顔をして、
「あ、ヤマダさん! 今まで何してたんですか依頼もせずに! どこかで野垂れ死ぬ、なんてことはないでしょうからまた寝てたんですか? そしてお金がなくなったからまたきたんでしょう?」
もう、全くー。と言いながら全部ズバズバ当てるのはやめていただきたい。超能力者かと疑わずにはいられなくなってしまうからな。
「は、はいそうなんです。なんかいい感じの薬草採取ないですかね?」
全部図星なので俺は何事もないように低姿勢低姿勢で受付の方にそう聞いた。しかし、あまりにも休みをとった期間が長すぎたようで……
「ふっふー、そんなヤマダさんにとっておきの依頼を用意しております!」
この時点で俺にとっては悪い予感しかない。何故なら受付の方の目が笑っていないから。口元だけ歪めてとっておきの依頼というのはどこか狂気的だ。そんなんで大丈夫なのでしょうか、受付業は。
「い、一応お聞きしておきますが、どのようなご依頼で?」
「えーっとマラルルスの狩猟、ですね!」
「マラルルスの狩猟!? えーっと私最低ランクの薬草採取人なんですが……そんな狩猟とかできるわけないじゃないですかー! またまたご冗談をー」
「え、冗談じゃないですよ?」
いや分かってるって。これこそ冗談じゃん、そんな目を殺してこっち向かないでください。女性の真顔は怖いんですから。
「いや、でも冷静にそれはどんな生物なんですか? 小さな虫ですか?」
「いえ、大きいです」
「大きな虫ですか!? 大きいとなると流石にきつ
「いえ、大きな動物です」
「大きな動物!? 無理無理無理、そんなのできるわけないじゃないですか!」
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