専業ネカマの生態

5話 迫る危機

「えっ？」

「っはー、まじでだるいんだけど、ってかキモいんだけど。連れて来たから早くやっちゃってくんない？　コイツ、マジでキモいんだけど鼻の下伸ばしやがってよ！」

　バゴッ

　俺は顔面を思い切り蹴られてしまった、しかも女性に。これは寧ろごh

　ボゴッ

「笑ってんじゃねーよこのキモオタブスが！　どうせリアルではキモオタデブメガネなんだろ！　あーもう、さっきの気持ち悪い視線といい、触られた所がムズムズするーっ！」

　は？　こ、これはどういうことだ？　さっきまではあんなに美しかった女性がこんなにも罵詈雑言を吐きまくってる？　誰に？　この俺に？　なんで？　ってか、なんで肩外したの、おかげで立ち上がることもできないじゃないか！

「ヒヒヒヒー、こんな天然記念物がまだいたとはな。おい、さっさと縛れ。あ、別にそんな今年なくても立てねーか、なら適当に見張ってろ、まあどうせ誰も近寄らねーと思うけどな」

「な、なんなんだお前らは！　こんなことをして許されると思ってるのか！　そもそも、俺はだな深刻なバグでだな」

「あぁん？　深刻なバグ？　お前が歩く所かまともに立てないことか？　クハハ！　コイツはとんでもねー鴨を引いたな！　折角だから教えてやるよ、それはバグなんかじゃねー歴とした仕様だよ、馬鹿が」

「仕様、だと？」

「あぁ、そのアバターと喋り方を見るからにお前はリアルでは中肉中背のおっさんだろ？　このゲーム開始当初はお前みたいな奴がわんさかいたんだよ、そして、スタート地点でバッタバッタ倒れてやがんの。あれは今思い出しても笑える光景だっだぜ、クククク。お前、盛ったろ、身長？」

「なっ！？」

「クハハハ、これはこれは図星とはな！　まあ、そうじゃなきゃスタート地点で倒れる訳がないもんなぁ？　今じゃみんな身長や体重を盛らないことなんて常識だぜ？　そうじゃなきゃ足の感覚は竹馬のように、手は思うように動かないただの棒になるんだぜ？　そんなんでまともにプレイなんかできやしねーんだよ。こんなことも知らずにここに来てくれるとはな。ほんと良いカモになってくれてサンキューな、おっさん」

「おい！　こんなことをしてタダで済むと思っているのか！」

「はぁ？　おっさんまだ自分の状況を掴めていないみたいだけど、お前、そんなこと言える立場じゃねーぞ？　お前は今から俺たちに連れられてログアウトしても永遠に抜け出すことのできない監獄にぶち込まれるんだよ」

「な、何っ！？」

「ふっ、おっさんは本当に何も知らずにここへ来たんだな。ほんと一周回って可哀想に思えてきたぜ。ここはメタバース、いわゆる第二の現実世界にして未開の地だ。当然、法も秩序も存在しない。そんな世界じゃ当たり前の様に奴隷が存在するんだぜ？　どうだおっさん、新たな世界に夢を膨らませ、身長まで盛ったにも関わらず、文字通り躓いて奈落の底まで転落する気分はよ～？　最高だろ？」

「くっ……」

　外道だ、コイツらは外道だ！　なんで、なんでこんな奴らがここにも蔓延っているんだ！　なんでこんな奴らが俺よりも楽しそうに笑ってやがるんだ！

　いつもそうだ、義務教育という名の監獄では常に強者が権力を振り翳し、その檻から抜け出したと思えば社会というより悲惨な地獄が待っていた。

　なんで、なんで！　いつも俺ばっかりこんな目に遭わないといけないんだ！　少しブスで少し太っていたくらいで何がダメだというんだ！

「クックック、おっさん相当参っている様だな。そんなおっさんに特大チャンスを与えてやろう。やっぱり奴隷落ちは嫌だろう？　だったらさ、ここで終わらせないか？　キャラ削除しちゃいなよ」

「キャラ削除？」