最強陰陽師異世界旅行 ~弱体化した魔術を駆使して元の世界を目指す~

大澤伝兵衛

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第2話「最強陰陽師、エルフと出会う」

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「こんにちは。お嬢さん」

 召喚魔術のゲートを抜け、地面に降り立つと、開口一番に目の前で驚いている少女に挨拶をした。

 さっきから式神を通して見ていた通り、少女はとがった耳をしている。年は同年代に見え、金髪で整った容姿をしている。服装は何故か俺が元いた世界でいう所の東洋風で、俺の所属している陰陽師一門の道服になんとなく似ているように見えた。

「通路は消えたはずなのに、なんで?」

 少女は消え入るような声でそんなことを言っている。この事態にかなり驚いているようである。

 そりゃあ折角、召喚魔術?を使ったのに、鳥の形をした変な紙切れが出現した上に、肝心のゲートは消えてしまい、しかも、消えたと思った転移の魔術が勝手に目の前で発動して、見ず知らずの人間が現れたのだから。

「俺は、九頭刃くずのはアツヤ、九頭刃家の次期当主だ。日本魔術師協会所属のS級魔術師で、専門は陰陽道だ。官位は従五位下じゅごいのげ陰陽助おんようのすけの職に就いている。もうすぐ陰陽頭おんようのかみになるがね。お嬢さんの興味深い魔術が俺の部屋に通じたので、興味を持って推参した次第。理解してくれるかな?」

「は、はぁ……」

 少女の驚きはまだ継続中のようで、言っていることを完全に理解してくれているようには見えない。そもそも日本における官位や陰陽師の職について名乗ってもこの異世界において意味はないだろう。元いた世界の社交界では名乗るのが普通だったので、つい名乗ってしまったのだ。

「あ、そういえば、日本語通じるんだ」

 ネットで読んだ小説なんかだと、色々便利なチートパワーなんかで言葉が都合よく通じることが良くある。読んでいる時はご都合主義に感じていたが、いざ自分に降りかかってみると、ご都合主義万歳と素直に感じる。

「これは、他のチート能力にも期待できるかな?」

「あっ、消えちゃう」

 欲張りな事を考えていると、元の世界と繋がっていたゲートが消滅していき、少女が警告の声を上げた。

「ん? ああ、俺の作った転移用の魔術が消滅してしまったようだな。でも、あの魔術なら完全に理解したからいくらでも再現できる。安心してくれ」

 ゲートが消えた今も、日本にある俺の部屋に置いてきた式神とは魔術的に繋がっており、いつでもそこに繋がるゲートを作り出す自信がある。

 元の生活を捨てる気などさらさらないので、戻れないことを覚悟して来たわけではないのだ。

「俺は、君も分かった通り、一目見ただけの魔術を完全に再現してみせた強力な魔術師だ。だけど、何の理由もなしに危害を加えるような真似はしない。安心してくれていいよ」

 もしかしたら少女が危険を感じているのではと思い、友好的な口調で語り掛けてみた。少しは効果があったらしく、少女の表情は少し和らいだ気がする。

「そうですか。私の名はカナデ=ペペルイといいます。ペペルイの森を治めるエルフの一族の族長候補で、今はバナード魔術学院の学生です」

 異世界の少女、カナデ=ペペルイはアツヤを信用したらしく、素直に自己紹介してくれた。友好関係を築けそうなことに安堵するとともに。カナデが自分の予想の通りエルフであったことに対し、内心快哉の声を上げる。

「学生さんか。で、何でさっきの魔術を使ったんだい? やっぱり、魔術の実験か何かかい?」

「ええ、そうなんです。苦手な系統の魔術を練習していたんですが、まさか、人間が現れるとは思ってもいませんでした。あの、勝手に呼び出してしまって申し訳ないんですが、質問があるんです。聞いてもいいですか?」

「いいよ。何でもどうぞ」

 俺は余裕を持って承諾する。正確には強制的に呼び出されたんじゃなく、自由意志により自らの魔術で異世界にきたのだが。

「さっき、ニホン魔術師協会って言ってましたが、多分地名だと思うんですが、ニホンってどこにあるんですか? そんな場所聞いたことがないし、そんな団体も聞いたことが無いんですが」

「そりゃあ聞いたことなんてないだろう。俺がいたのは此処とは違う世界なんだからな」

 自信満々に答えてから、俺はある疑問を抱く。

「あれ? 君が使ったのは、異世界転移か何かの魔術じゃないの?」

「いいえ。異世界とかそんな大それた魔術じゃなくて、この世界のどこかとつなげる魔術なんですが……」

「そうなのか? 推測でしかないが、多分君の魔術は異世界に通じてしまったのだと思うぞ? 理由は、一つ、魔術師の一族で、日本を知らない人がいるとは思えない。二つ、俺の世界には、君の様な耳のとがった人……エルフはいない。三つ、俺が転移する前に残してきた式神との連接の感覚が尋常ではない。例え地球の裏や結界に封印されてもこうは感じない。全部俺の主観でしかないが、こんなところかな。君はどう思う?」

 俺を呼び出した少女、カナデは少し考え込んだ。眉根を寄せた表情が何となくそそるものがある。

「異世界……ありえなくはないとは思います。異世界から召喚する魔術を使う一派もいますから。精霊界とか、魔界とか、そういうのですね。あっ、じゃあ、あなたはもしかしてまか……」

「魔界の魔神じゃないからね。別の世界の人間ですからね。後、精霊界ってことは、火の精霊とか、水の精霊とか呼び出すやつ?」

 魔界の住人に勘違いされそうだったので、慌てて訂正した。魔神とは任務で戦ったことが何度かあり、奴らは怪物的な本来の姿だけではなく人間そっくりになることが出来るのだ。

「そうです。私は専門外だから詳しくはありませんが、精霊魔術はサラマンダーやシルフを呼び出して魔術を行使できますよ」

 これは驚いた。

 元の世界にも同じような魔術が存在し、そこでもサラマンダーやシルフという同じ名前の精霊の力を借りていた。世界は違えども、魔術の探究者は同じ結論にたどり着くのか、それとも実は俺の世界とこの世界で魔術の知識を伝えた者が過去にいたのかは定かではない。

 俄然興味がわいてきた。この世界の謎を解明して報告すれば、俺の地位は日本魔術師協会だけでなく、世界規模において更に確固たるものになるだろう。

「よしっ。俺はこの世界の謎を解き明かしたいと思います」

「はあ、そうですか。お気をつけて」

 カナデは何を言っているんだこの人は、といった風の反応だ。そんな顔をするなよ。

「よって、今日から君の通っている何とか学院に通おうと思う」

「えっ? 何でですか?」

 怪訝そうな顔をするカナデさんである。だから何でだよ。

「俺はこの世界の根源に迫りたいと思っている。となると魔術の学校はこれ以上ない場所だ。俺の世界の魔術と君の世界の魔術には共通点がありそうだしね。色々基礎的なことを学んでおきたいんだ」

「でも、学院で授業を受けるには、紹介や、高額な授業料や、素養試験があるんですけど」

「大丈夫。俺の持ってきた『降魔杖』には無駄に高価な宝石がいくつもついてるし、魔術の素養はさっき見せたとおりだ。それに君が紹介すればいいだろ」

「そうかもしれませんが……」

 まだ渋るか。

「紹介してくれるなら、君にも宝石を一つあげよう。迷惑料と思ってくれればいい」

「いえ、お金には困ってはいません」

 マジか? 魔術師ってのはいろんな研究でいつも金欠なのが相場だと思ってたけど、この世界は違うのか? それともカナデがまだ学生で本格的な魔術の研究をしていないからか?

「あー分かりました。あの。学院ではあまり話しかけないで下さいね」

 困っているのを見かねたのかカナデは、少し視線を逸らしながらそんなことを言った。

 ああ、そういう事か。

 年頃の娘としては、同年代の男を引き連れて登校などしたくはないのだろう。まあエルフの年齢など知る由もないのだが。

 その気持ちは何となく分かる。異世界転移の興奮で気にしていなかったが、家族以外の女性と話したのは久しぶりのことだ。しかも、相手は見目麗しい妖精の少女であり普段ならまともに話しかけることは出来ないだろう。ちなみに、高校では硬派を気取って男としか交流したことが無い。

「分かった、分かった心配するなよ」

 俺の安請け合いに折れたカナデは、手続きのための手順を説明した。
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