最強陰陽師異世界旅行 ~弱体化した魔術を駆使して元の世界を目指す~

大澤伝兵衛

文字の大きさ
27 / 43

第26話「元最強陰陽師、異世界の神話を研究する」

しおりを挟む
 アスモデウスを帰還させ、運河の開通に成功してからすぐ、魔術学院に戻り天文台に上った。アスモデウスに魔界への帰還の助力をした報酬として、俺が日本に帰るための手段の助言を受けていたためだ。

 天文台の資料室に入り、求める情報に関する記述のありそうなタイトルに目星をつけて目を通す。目的としているのは星座と神話に関する記述だ。

 俺が元居た世界と同じように、この世界でも星座は神話と強く結びついている。そしてそれは魔術とも大きな関りがあるのだ。

「これだ!」

「アツヤ君。何かわかったのかね?」

 喜びのあまり叫び声をあげて立ち上がると、すぐ後ろには裾の長いローブを着てとんがり防止を被った老人が立っていた。天文台の管理者であるミーティア師である。

「ええ。わかりましたとも。これで星宿の法則は解明できるはずです」

 これまで俺の陰陽道の術は、陰陽道の重要な要素である天体の配置や運行が、この世界では違う法則で成り立っていることにより効果を発揮することができなかった。

 そのため、この世界の天文学を学ぶことにより、この世界に適応した陰陽道を再構築しようとしていたのだ。ただ、これは生半可なことではなく、連絡の取れた陰陽道の本家の連中を総動員して研究しても進展が見られなかった。これは仕方がない。陰陽道は元の世界で何千年もかけて発達してきたのであり、俺たち現代の陰陽師はその上澄みを利用させてもらっているのだ。先人たちの積み重ねを一気に乗り越えていくのは難しいだろう。

 だが、天体に深い知識を持つ偉大な魔神であるアスモデウスの助言は新たな視点を与えてくれた。

「二つの世界の神話の共通点を突破口とすべし」

 これが助言であった。

 星座と神話、そして魔術には深いつながりがある。このことは当然知っていたのだが、アスモデウスに言われるまで、自分の研究していることに直結していることに思い至らなかった。

 不覚である。

 そして、学院に戻ってこの世界の神話を調べていくと、あっさりと関連する事項を発見した。

「ギガルテスの七姉妹。これってプレイアデスの七人の乙女と対応しているんだろうな」

 プレイアデスの乙女たちは、元の世界でのギリシア神話に登場する半神的な存在で、彼女らの名前を関したプレイアデス星団は知られている。このプレイアデス星団は日本では昴の名前で呼ばれており、陰陽道でも昴宿として二十八宿の一角を占める重要な存在だ。

 そして、この世界にはギガルテスの七姉妹と呼ばれる存在が神話で語られており、彼女らもまた星座になっているという。

 と言うことは、『ギガルテス=プレイアデス=昴宿』の構図が成り立ち、ギガルテスの星々を昴宿と見做すことが出来るとも言える。

 ならばあとは簡単だ。ギガルテスを昴宿と仮定して、この世界の星図に元の世界の星宿を当てはめていけば良いのだから。

「なるほどなるほど。それは興味深い。私もこれまで占星術を専門に長年研究してきましたが、その様な視点はありませんでした」

「それは仕方ありませんね。異世界という概念が薄かったんですから」

 この世界の魔術の常識では、違う世界とは天界、魔界、精霊界などの人間とは違う位階の存在が住まう次元の事だ。他にも人間が住んでいる異世界があるなどとは予想していなかっただろう。

 もっとも、それは俺のいた世界でも同様で、陰陽道を含めた世界各地の魔術においても他に人間が生きる世界があるなどとは夢にも思っていなかった。ましてやそこにエルフや猫妖精ケットシーが住んでいるなどと誰も考えていなかった。

 ただし、エルフなどの存在は実際には誰も見たことがなかったのにも関わらず、神話や伝説にその存在が語られていることから、大昔に誰かこの世界に迷い込んで、元の世界に帰還した後にこの世界の体験を伝えたのかもしれない。その逆もまた然りだ。

「では、ギガルテスを元に研究を進めるんだね?」

「はい。ですが、ギガルテスの姉妹以外にも共通する神話が有るかもしれないので、もう少し調べてから取り掛かることにします」

 取り掛かると言っても、俺一人でやるわけではない。元の世界にいる一門の陰陽師の研究員を総動員して実施するのだ。突破口こそ見つかったものの、これもまた力技になる。一人でやっていては何年かかるか分かったものではない。そして、そんなに長く一門の後継者たる俺が異世界に留まるのは、一門にとって不安材料だろう。何せ、元の世界で世界を征服しようとしていた魔術結社は滅びたものの、その残党はまだまだ生き残っている。そして表向きは友好関係にある他の魔術師達も、陰陽道の後継者にして先の魔術大戦で活躍した俺がが不在となればどう出てくるか分かったものではない。

 元の世界はまだまだ不安定なのだ。

「ところで、神話と天文学の関係を調べるように勧めてくれた、アスモデウスという魔神なんだが、安全に呼び出す方法は無いのかね?」

「あるとは聞いたことがありますが、俺は知らないですよ。そもそも呼び出す方法自体は詳しく知らないし、仮に呼び出せても制御できなければこの学院が全滅してもおかしくありませんよ」

「そうか。それは残念だ」

 アスモデウスは人知を超えた天文学の知識を持っている。占星術を専門とするミーティア師にとってアスモデウスの知識は垂涎の的なのだろう。

「しかしそんな恐るべき偉大な存在をよくもまあ呼び出せたものだな。そのミリグラム伯とやらは。それほど優れた魔術の知識を持っていないだろうに」

 そう。アスモデウスを呼び出したミリグラム伯は召喚術の専門家では無かった。断片的な知識だけでアスモデウスを魔界から呼び出したのだ。これには理由がある。

「悪魔や魔神という連中は、未熟な者に呼び出されたがる者なんですよ。現にミリグラム伯は制御しきれずに殺されました。まあその結果山に縛り付けられてしまったのは、アスモデウスの誤算だったようですが」

 未熟な腕前だったばかりに、召喚した悪魔を制御しきれずに不幸な結果となった事例は枚挙にいとまがない。そしてその様な不幸こそ悪魔達が望むものであり、奴らは意外と簡単に呼び出されるものだ。堂々とした態度で交渉すれば、それを受けてくれるアスモデウスは珍しい存在と言えよう。

 そんな事を考えている時に、ある事を思い出す。約十年前にこの世界を崩壊寸前に陥れたという魔王と呼ばれる者。魔王は何処かへと姿を消したというが、もしかしたら意外と簡単にこの世界に帰還するかもしれない。

 そう考えると、この世界から早く帰りたいという思いと、この世界の友人たちを守るために残りたいという気持ちが複雑に絡み合うのを感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...