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第二章「当世妖怪捕物帳」
第一話「再びの捕縛」
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江戸の外れ、亀戸の地に庵を構える青年、角田磐梯は周囲の者からは変わり者だと思われている。仕事をしている様には見えないのに金に困っている様には見えず、昼間から酒を飲み歩いたり書画や音楽をして暮らしている。噂では、どこぞの豪商の隠し子ではないかと囁かれている。
要は遊び人と言う事だ。
だが、単なる遊び人には留まらない点もある。かれが暇つぶしにする芸術活動は、どれも本職顔負けだ。江戸でも知られる有名な粋人達がこぞって彼の作品を求めている。また、彼の庵には時折幕府の要職にある人物や名の知れた豪商、武芸者、学者等が訪れるのである。
更に変わった所では、彼の庵には猫や犬が自由に立ち入っている。そして人間に馴れた動物だけでなく狐や狸までよく姿を現すし、磐梯が烏と話しているところを見たという者もいる。
そして磐梯は端正な顔立ちをした青年なのだが、付近に住む古老の中には自分が幼子であった頃から磐梯は今と変わらぬ外見だったと語る者もいる。よく似た別人を勘違いしているのか、単に呆けているのかは不明である。
だが、磐梯は単なる変わり者ではない。彼には裏の顔があるのだ。
「行け! 狐真智! 狸覇駆! 蹴散らせ!」
「合点承知! 食らえ! 蒼炎爆斬!」
「応! 雷霆発破!」
磐梯の呼びかけに答え、彼に従う二人の者が刀を振るった。その刀には炎や雷が纏わりつき、磐梯の前に群がる敵を蹴散らしていく。
彼らはただの人間ではない。人間にしては全身の毛が濃すぎる。彼らは二本の足で歩く狐と狸であり、相対する敵も手足が生えた琵琶やら琴といった怪物達なのだ。
要するに妖怪である。
妖怪を従え、妖怪と戦う。これが磐梯の裏の顔なのだ。人の世の裏で蠢く妖どもを、時には鎮め、時には退治するのが角田磐梯なのである。
今磐梯が相対しているのは、長い時を経て器物に意志が宿った妖怪である。所謂、付喪神だ。老中から夜な夜な付喪神が暴れ出し、江戸の民を苦しめていると依頼されてこうして調伏に来たのである。
「なあ、君達。ここは引いてくれないだろうか。そうすれば、君達を供養してやるし新たな主を見つけてやっても良い。せめて、暴れるのだけは止めてくれないか」
付喪神達は元はとある大身旗本の屋敷で、先祖代々受け継がれてきた器物であった。代々の当主たちは彼らを大切に扱い、そして付喪神と化したのである。
だが、幸せな時は永遠には続かなかった。旗本は政争に巻き込まれ、あらぬ疑いをかけられて切腹して果てた。そして家財が没収される運びとなって蔵が開放された時、怒れる付喪神達が解き放たれたのだ。
既に彼らの主を死に追いやった者は祟りに遭い無残な死を遂げている。だがそれでも彼らの怒りは収まらず、屋敷の周辺では怪異が頻発しているのだ。無関係な罪なき町民は恐れ戦き夜も眠れない。こうなっては放っておくことは出来ないのである。
「アマノサマ! オオオォォオ! ユルサヌゥ」
しかし磐梯の声は彼らには届かなかった。憎悪の言葉を口にし、磐梯達の方へ向かって来る。意を決した磐梯はかっと目を見開き、両手を前に突き出した。その手は光り輝き、神々しい気配を発している。そして奇妙な事に、磐梯の片目は翠色に輝いているのだ。
「さあ、安らかに眠るがいい。降魔閃光撃!」
磐梯の手から鋭い光が放たれる。それは一直線に付喪神達に向かったかと思うと爆発的に広がった。そしてその光が収まった時、辺り一帯に群れていた付喪神達は元の器物に戻っていたのであった。
「こうするしか無かったか……悲しきことだな」
古びた器物の残骸を見て、磐梯はそっと目を閉じた。
「いや~、夢野先生の『当世妖怪捕物帳』の売れ行きが好調で好調で、もう笑いが止まりませんよ。はっはっはっ」
「そうだろう、そうだろう。この、今を時めく戯作者の夢野枕辺の本が、売れないわけがないだろう」
本やら書きかけの紙片やらが散らばる狭い長屋の一室で、二人の男が笑い声をあげながら酒をあおっていた。また、彼らと車座になって、一人の女も座っている。
片方の男は戯作者の夢野枕辺と言い、もう一方の男は大手版元の虚屋という。
そして紅一点の女は、絵師の綾女――画号を谷風鼬である。夢野の書く読本は、常に彼女が挿絵を描いている。
彼らが言う通り、夢野が書いた読本「当世妖怪捕物帳」は売れに売れている。その祝勝会と続きの執筆の調整のためにこうして夢野の長屋に集まっているのであった。
「ところで、次の展開について話す前に、主人公の角田磐梯の正体について聞きたいのですが。これは読者からも多く聞かれるので、私としても気になっておりまして」
「ふふふ、聞いて驚くな? 磐梯は人間と鬼の間に生まれた子だったのだ。だから、不思議な神通力を使えるのだよ」
「ほほう、それは斬新な」
「いや、ちょっと待ちな」
自信ありげな夢野の返答に感心した様子の虚屋であったが、綾女が疑問の声を上げる。
「前にあたしが聞いた時は、確か天狗との間に生まれた子供だって言ってたよね? そっちの設定はどうしたのさ」
「ああ、それな。それは止めた」
「止めた? あんたが天狗の血を引いてるっていうから、天狗下駄を履かせたり修験者風の服を着せたりしてたんじゃないさ」
「そうなんだけどさ。次の展開で本気を出した磐梯が、本性の姿を見せる場面を考えているんだ。それで、鼻が伸びるよりは、角が伸びた方が格好いいかって思ってさ」
「そうかしら? まあそうかもね」
綾女は頭の中で鼻が伸びた主人公の姿を思い浮かべ、しばらく考え込むと夢野の言葉に同意した。
「私としても夢野先生の考えに賛成ですよ。『当世妖怪捕物帳』は前作の『異世界転生侍』に比べて女性読者が多いのです。鼻が伸びたりしたら、女性読者が幻滅して読むのを止めてしまうかもしれません」
虚屋も同意を示した。彼の言う通り、前作の異世界転生侍も人気作品であったが、当世妖怪捕物帳は新たな読者層を開拓し、更なる人気を博している。
異世界転生侍は部屋住みとして肩身の狭い旗本の三男坊が、童を助けて大八車に撥ねられ、御仏の加護により異世界に転生して活躍する話である。現世では穀潰し扱いだった主人公が、異世界では行く先々で女人を助け、次々と惚れられていく安直であるが男の欲望を満たす展開が特に男性読者の人気を呼んだのである。
それに対し当世妖怪捕物帳は、あまり女性の人物は登場しない。若い外見の主人公の他は、主人公を頼りにやって来る各界の著名人である爺や中年の親父が大半である。あと、犬猫や狐狸といった獣の妖怪ばかりだ。
この不思議な雰囲気を纏う主人公が、今度は女性読者に大いに受け、それまでの読者と合わせて売れに売れているのである。また、男性読者からも、一見やる気のない浮世離れした主人公が、要人達から頼られる展開が受けている様で、こちらは前作からの人気を継続しているのである。
なお、綾女が描く、どこか可愛らしく、どこか耽美な雰囲気の妖怪達も密かに人気なのであるが、時代を先取りし過ぎたせいか夢野も虚屋も気づいてはいない。綾女は何となく噂話から察しているのだが。
「と言う事で、次の本では角を生やした磐梯を描いてくれよな。綾女」
「ちょっと、仕事の話をする時は、谷風鼬だって言ってるでしょ」
「お、おおう。そうだな」
綾女の画号はころころ変わる。画風を変える時にもであるし、正月を迎えても美味しい物を食べても変わる。なので夢野としては昔から馴染みのある本名で呼んでしまうのだが、綾女には拘りがある様だ。
夢野の前作はお上に睨まれたために絶版の憂き目を見ている。しかも牢に入れられてもいるのだ。これは前作の主人公が次々と女性に惚れられる展開が、数十人の妾を持っていたかつての将軍を揶揄していると言いがかりをつけられての事である。だが、それに負けず書いた新たな作品が、こうして好評なのは喜ばしい限りである。
三人は、改めて祝杯を上げようとした。
その時だ。
「我等は南町奉行所である。『当世妖怪捕物帳』を書いたのは貴様らであるな? 虚屋、夢野枕辺、風谷鼬、神妙にお縄につけい!」
長屋の戸を勢いよく開けて飛び込んできたのは、町奉行所の同心達であった。同心は以前知り合った鍵崎という男であるが、その凄まじい剣幕に挨拶をするどころではなかった。
「は、はは~」
夢野達は思わずその場に平伏し、大人しく縛についたのであった。
要は遊び人と言う事だ。
だが、単なる遊び人には留まらない点もある。かれが暇つぶしにする芸術活動は、どれも本職顔負けだ。江戸でも知られる有名な粋人達がこぞって彼の作品を求めている。また、彼の庵には時折幕府の要職にある人物や名の知れた豪商、武芸者、学者等が訪れるのである。
更に変わった所では、彼の庵には猫や犬が自由に立ち入っている。そして人間に馴れた動物だけでなく狐や狸までよく姿を現すし、磐梯が烏と話しているところを見たという者もいる。
そして磐梯は端正な顔立ちをした青年なのだが、付近に住む古老の中には自分が幼子であった頃から磐梯は今と変わらぬ外見だったと語る者もいる。よく似た別人を勘違いしているのか、単に呆けているのかは不明である。
だが、磐梯は単なる変わり者ではない。彼には裏の顔があるのだ。
「行け! 狐真智! 狸覇駆! 蹴散らせ!」
「合点承知! 食らえ! 蒼炎爆斬!」
「応! 雷霆発破!」
磐梯の呼びかけに答え、彼に従う二人の者が刀を振るった。その刀には炎や雷が纏わりつき、磐梯の前に群がる敵を蹴散らしていく。
彼らはただの人間ではない。人間にしては全身の毛が濃すぎる。彼らは二本の足で歩く狐と狸であり、相対する敵も手足が生えた琵琶やら琴といった怪物達なのだ。
要するに妖怪である。
妖怪を従え、妖怪と戦う。これが磐梯の裏の顔なのだ。人の世の裏で蠢く妖どもを、時には鎮め、時には退治するのが角田磐梯なのである。
今磐梯が相対しているのは、長い時を経て器物に意志が宿った妖怪である。所謂、付喪神だ。老中から夜な夜な付喪神が暴れ出し、江戸の民を苦しめていると依頼されてこうして調伏に来たのである。
「なあ、君達。ここは引いてくれないだろうか。そうすれば、君達を供養してやるし新たな主を見つけてやっても良い。せめて、暴れるのだけは止めてくれないか」
付喪神達は元はとある大身旗本の屋敷で、先祖代々受け継がれてきた器物であった。代々の当主たちは彼らを大切に扱い、そして付喪神と化したのである。
だが、幸せな時は永遠には続かなかった。旗本は政争に巻き込まれ、あらぬ疑いをかけられて切腹して果てた。そして家財が没収される運びとなって蔵が開放された時、怒れる付喪神達が解き放たれたのだ。
既に彼らの主を死に追いやった者は祟りに遭い無残な死を遂げている。だがそれでも彼らの怒りは収まらず、屋敷の周辺では怪異が頻発しているのだ。無関係な罪なき町民は恐れ戦き夜も眠れない。こうなっては放っておくことは出来ないのである。
「アマノサマ! オオオォォオ! ユルサヌゥ」
しかし磐梯の声は彼らには届かなかった。憎悪の言葉を口にし、磐梯達の方へ向かって来る。意を決した磐梯はかっと目を見開き、両手を前に突き出した。その手は光り輝き、神々しい気配を発している。そして奇妙な事に、磐梯の片目は翠色に輝いているのだ。
「さあ、安らかに眠るがいい。降魔閃光撃!」
磐梯の手から鋭い光が放たれる。それは一直線に付喪神達に向かったかと思うと爆発的に広がった。そしてその光が収まった時、辺り一帯に群れていた付喪神達は元の器物に戻っていたのであった。
「こうするしか無かったか……悲しきことだな」
古びた器物の残骸を見て、磐梯はそっと目を閉じた。
「いや~、夢野先生の『当世妖怪捕物帳』の売れ行きが好調で好調で、もう笑いが止まりませんよ。はっはっはっ」
「そうだろう、そうだろう。この、今を時めく戯作者の夢野枕辺の本が、売れないわけがないだろう」
本やら書きかけの紙片やらが散らばる狭い長屋の一室で、二人の男が笑い声をあげながら酒をあおっていた。また、彼らと車座になって、一人の女も座っている。
片方の男は戯作者の夢野枕辺と言い、もう一方の男は大手版元の虚屋という。
そして紅一点の女は、絵師の綾女――画号を谷風鼬である。夢野の書く読本は、常に彼女が挿絵を描いている。
彼らが言う通り、夢野が書いた読本「当世妖怪捕物帳」は売れに売れている。その祝勝会と続きの執筆の調整のためにこうして夢野の長屋に集まっているのであった。
「ところで、次の展開について話す前に、主人公の角田磐梯の正体について聞きたいのですが。これは読者からも多く聞かれるので、私としても気になっておりまして」
「ふふふ、聞いて驚くな? 磐梯は人間と鬼の間に生まれた子だったのだ。だから、不思議な神通力を使えるのだよ」
「ほほう、それは斬新な」
「いや、ちょっと待ちな」
自信ありげな夢野の返答に感心した様子の虚屋であったが、綾女が疑問の声を上げる。
「前にあたしが聞いた時は、確か天狗との間に生まれた子供だって言ってたよね? そっちの設定はどうしたのさ」
「ああ、それな。それは止めた」
「止めた? あんたが天狗の血を引いてるっていうから、天狗下駄を履かせたり修験者風の服を着せたりしてたんじゃないさ」
「そうなんだけどさ。次の展開で本気を出した磐梯が、本性の姿を見せる場面を考えているんだ。それで、鼻が伸びるよりは、角が伸びた方が格好いいかって思ってさ」
「そうかしら? まあそうかもね」
綾女は頭の中で鼻が伸びた主人公の姿を思い浮かべ、しばらく考え込むと夢野の言葉に同意した。
「私としても夢野先生の考えに賛成ですよ。『当世妖怪捕物帳』は前作の『異世界転生侍』に比べて女性読者が多いのです。鼻が伸びたりしたら、女性読者が幻滅して読むのを止めてしまうかもしれません」
虚屋も同意を示した。彼の言う通り、前作の異世界転生侍も人気作品であったが、当世妖怪捕物帳は新たな読者層を開拓し、更なる人気を博している。
異世界転生侍は部屋住みとして肩身の狭い旗本の三男坊が、童を助けて大八車に撥ねられ、御仏の加護により異世界に転生して活躍する話である。現世では穀潰し扱いだった主人公が、異世界では行く先々で女人を助け、次々と惚れられていく安直であるが男の欲望を満たす展開が特に男性読者の人気を呼んだのである。
それに対し当世妖怪捕物帳は、あまり女性の人物は登場しない。若い外見の主人公の他は、主人公を頼りにやって来る各界の著名人である爺や中年の親父が大半である。あと、犬猫や狐狸といった獣の妖怪ばかりだ。
この不思議な雰囲気を纏う主人公が、今度は女性読者に大いに受け、それまでの読者と合わせて売れに売れているのである。また、男性読者からも、一見やる気のない浮世離れした主人公が、要人達から頼られる展開が受けている様で、こちらは前作からの人気を継続しているのである。
なお、綾女が描く、どこか可愛らしく、どこか耽美な雰囲気の妖怪達も密かに人気なのであるが、時代を先取りし過ぎたせいか夢野も虚屋も気づいてはいない。綾女は何となく噂話から察しているのだが。
「と言う事で、次の本では角を生やした磐梯を描いてくれよな。綾女」
「ちょっと、仕事の話をする時は、谷風鼬だって言ってるでしょ」
「お、おおう。そうだな」
綾女の画号はころころ変わる。画風を変える時にもであるし、正月を迎えても美味しい物を食べても変わる。なので夢野としては昔から馴染みのある本名で呼んでしまうのだが、綾女には拘りがある様だ。
夢野の前作はお上に睨まれたために絶版の憂き目を見ている。しかも牢に入れられてもいるのだ。これは前作の主人公が次々と女性に惚れられる展開が、数十人の妾を持っていたかつての将軍を揶揄していると言いがかりをつけられての事である。だが、それに負けず書いた新たな作品が、こうして好評なのは喜ばしい限りである。
三人は、改めて祝杯を上げようとした。
その時だ。
「我等は南町奉行所である。『当世妖怪捕物帳』を書いたのは貴様らであるな? 虚屋、夢野枕辺、風谷鼬、神妙にお縄につけい!」
長屋の戸を勢いよく開けて飛び込んできたのは、町奉行所の同心達であった。同心は以前知り合った鍵崎という男であるが、その凄まじい剣幕に挨拶をするどころではなかった。
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