頭が真っ白になりそうだ

クイン

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母・とも子の場合

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 カードの請求がきた。0の数が多く、家計にだいぶ響くくらいだ。

 昔からの悪い癖、それは浪費。ついつい買ってしまう。家庭でのストレスを何かを買うことによって解消する。夫の収入がそこまでいいわけではない。いつも家計は火の車なのにこの行為をやめることはできない。

 欲しかったプラダのバック。美しく洗練されたデザイン。これを持って繁華街に繰り出したい。その衝動を抑えることはできず、身なりを整え、街へと繰り出す。

 今日の晩御飯は何にしよう? そう考えながら歩いてると、駅前に肉屋があった。並べられた肉のショーケースの上に、揚げたてコロッケ1個三十円という表記が目に入った。今日の晩御飯はコロッケ4個で決まり。主婦の一つの大きな課題(今日の晩御飯)をやっつけることができ、上機嫌なまま繁華街へと向かった。

 あー、どれもこれも私を誘惑する。この街のこのお洒落な空気が、家庭に縛られた私の中の女を解放する。道なりに続くブランド品店の扉を片っ端から開いていった。

 

「んー」

 ストレスを発散しに行ったのに、また重なるストレスが私を襲ってくる。

 息子のテストの点があまりにも悪いため、学校側から呼びだしを受けてしまった。

 スマホを取り上げてやろうと怒りのボルテージを上昇させ息子の部屋に行くと、答案用紙を見つめながら、暗い部屋の中で、虚な目をしていた。その様子を見て、さすがの息子もショックだったのだと思い、その日は何も言わなかった。

 近所に住む教育ママの木村さんに相談してみることにする。木村さんの娘さんはヒロシと同じ歳なのに、頭もよく容姿も中学生とは思えぬほど洗練されている。中年の母親の身の私でさえ、女として嫉妬を感じてしまう。その娘の母親も五十手前というのになんと若々しいのであろう。これが世間でいうところの美魔女。

「李里香には何も強制はしていません。自分で家庭教師をつけてほしいとお願いされたので、雇いましたの」

 微笑を浮かべながら、木村さんは手元にある紅茶を啜った。

「娘の家庭教師を今度紹介しますわ。料金は少し高いですが、子どものためなら出せない範囲ではないと思うので」

 そう言われると、後には引けない。私はすぐに了承した。

 翌日早速家庭教師がきた。感じのいい青年で、息子ともすぐに打ち解け、家庭教師が来る日を待ち侘びるようになった。息子が勉強を楽しむようになったことはとても喜ばしく、私も上機嫌であった。しかしそんなことも束の間、カード払いの請求が来たのだ。頭が痛い。請求額が旦那の給料の約半分ではないか。そしてトドメを刺すかのように一通の封筒が届いた。中を開ける。息子の家庭教師の料金を見て、卒倒しそうになる。私はその紙をひっくり返し、こう思った。




頭が真っ白になりそうだ。
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