ぶよぶよ人間

クイン

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 帰路をたどりながら僕は今日のカレーライスと食事風景を思い出していた。それはとてつもなく奇妙な感じであったがどこか温かく、やわらかい感情が溢れてくるのに驚いた。家に着き、玄関のドアを開けると。お姉さんがとてもけわしい顔をして待っていた。
「何をしていたの?」
 落ち着きはらった声で僕に問いかけた。
「……ごめんなさい」
「謝罪を聴きたいわけじゃないの」
 僕は目を伏せる。あのやさしいお姉さんがとても恐い雰囲気をかもしだしていた。僕はどうしていいかわからなかった。心がだんだん狭くなるの感じ、動くこともできなくなる気がした。
 突然、柔らかいものに僕は包まれた。
「心配したんだからね」
 硬直した心身が一気にほだされる。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
 僕はお姉さんの胸の中で何分間か過ごした。
「お腹空いてない?」
 と聞かれた。さきほどあの奇妙な家族と食べたばかりと説明した。
「そっか……それじゃお薬飲もうか?」
 と一粒の錠剤を渡された。大きなその薬は僕は嫌いだった。
「う、うううう、うあああああああああああああああ」
 とお母さんが呻きだし、ガラスが割れる音がした。僕とお姉さんはびっくりして音の方に向き、お母さんの所に駆け付けた。そんなお母さんの様子を僕は、ただすました眼で見ていた。小さい頃、僕はお母さんが大好きだった。いつも僕の頭を撫でてくれた。それがなんだかくすぐったくて、とても僕は好きだった。あの時のお母さんの面影はない。今では代わりにお姉さんが僕にやさしくしてくれる。お姉さんが居ればいい。この人と親子の縁なんてあるのかな? と思ってしまう。僕はなんて薄情なやつなんだろう……。
 お母さんが大人しくなった。
「もう大丈夫」
 とお姉さんは微笑んだ。
「お薬はもう飲んだ?」
 と尋ねられ、僕は拳を強く握った。
「うん」
 嘘をついた。僕は飲みたくなかった。大きな丸い粒。甘くもなく喉にひっかかるような違和感を残す。とても気持ち悪い。
「そう、それじゃ私は帰るね」
 お姉さんは立ち上がり、玄関に向かって歩く。
「え、もう?」
 後ろ髪をひかれたお姉さんはこちらに振り向き「大丈夫。お薬飲んだからすぐに眠気がきて、ぐっすり眠れるわ」
 と僕の頭を撫でた。僕は拳を握りしめた状態で手を振った。これ以上駄々をこねてはいけない。お姉さんの足音が遠のいていった。
 
 その晩は寝苦しく、何度も起きた。怖い夢……ぶよぶよ人間が僕を追いかける夢。怖くて怖くて何度も起きた。お母さんはぐっすりと眠っている。
 窓からきれいな光が差した。きれいなまんまるお月様で、月明りが夜の街を明るく照らしているかのようだ。実際には街灯のが闇夜を照らし、動くものをはっきりと捉える。僕はそれが目に入った。四足歩行……犬? いや、違うあんな大きい犬がいるはずもない人の大きさくらいだ。
 目が合った!
 僕はカーテンをすぐに閉め、布団の中にもぐりこんだ。震えが止まらない……お姉さん、お姉さん。心でお姉さんを呼んだ。辺りの音が消えた気がした。布団から顔を出すと部屋は真っ暗で先ほどの月明りの光を感じられなかった。ふと、窓の方に目を向けると顔がぶよぶよ人間がこちらを見ていた。
「あああああああああああああああああああああああああああ」
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