短いお話

クイン

文字の大きさ
12 / 22

『恋は盲目』

しおりを挟む
 浮気ぐらい、いいはずだ。男はそうゆうものだ。目に映る女性には片っ端から声をかけたいと思うし、色んな女を抱きたい。イタリア人だってそうだろう?

 それなのに、こんなことがあってたまるものか! 


 あの日、妻と夫婦喧嘩をした。三年以上前の浮気についてであった。入社当時から私のことが好きだという女に言い寄られて一晩だけ、彼女を抱いた。ほんの出来心だ。付き合ってられないと寝室に入り眠った。
 何か痛みが走り、気づいたら真っ暗闇の中にいた。変な感じだったが、妻の声が聞こえた。眠っている私に何かをしたのだろう。関わるのもめんどくさいので、私はまた再び眠りについた。

 こうなった経緯を説明するとこうである。

 三年前だ。妻の実家の会社が倒産した。私も勤めていたから責任の一端を担ってしまった。玉の輿が見事に真っ逆さまに叩き落とされた。それでも私は逃げずに、別の会社に入り、負債を少しでも減らす努力は続けた。その時から妻の様子がおかしかった。悲しんでいるというよりもなぜか楽しそうなのだ。頭がやられたのか、家の呪縛から解放されたのか、真意はわからないが以前よりも私を支えようとしてくれた。それはもう何もかもだ。家事から夜の営みまで、今まで以上に尽くしてくれた。

 そんな彼女を裏切った俺は屑だと言われても仕方がないのだが、元を正せば彼女の父親が悪いのだし、むしろ俺はなんとかしようと別のところに働きに行き、金の援助をしてあげているのだ。お礼や労いの言葉をくれてもいいのに、あの嫁の両親は俺に直接、頭を下げにこず、全て妻を通している。そんな話があるか! 心身共に疲れて一つの過ちを犯してもいいじゃないのか、それなのに、今の私以外のそれも過去の私であっても、欲情なんて許せないとか、訳のわからんことを言って発狂された。

「としお!」
 妻の上擦った声で私は目覚めた。
「どうして、どうして」
「どうしてって俺が聞きたいよ。痛てて」
 目の痛みで、瞼を開けられない。真っ暗だ。
「私を置いて三年間ずっと行方をくらまして、私、私、ごめんなさい」
 何を言っているのだ? 三年間、行方をくらましてって、妻の言葉の意味がわからなかった。
「話の脈略がわからない」
「お父さんの会社のことで、私も実家に入り浸る形になって、やっと帰れたと思ったら、私たちの家は、もぬけの殻だったのよ」
「それは君が、今の生活ができないから早急に家を出ないといけないって、もう部屋は用意したって言ったじゃないか。だからわざわざこんな地方まできたんだろ?」
「私はそんなこと言ってないよ」
 一体全体どうなっているんだ。噛み合わなさすぎる。
 考えを巡らせようとすると、再び強烈な目の痛みに襲われた。
「クソー! なんだこの痛みは、それになんでずっと真っ暗なんだ!」
 私の喚き声と共に、また妻が泣き出した。ごめんなさいを繰り返すだけで、なんなのかがわからない。問い詰めても泣くだけだった。すると扉の開く音ともに女性の声がした。彼女は看護師であると述べ、私の現状を告げた。

 私の両目はくり抜かれていたのだ。



 落ち着くまでに時間がかかった。光の差さないトンネルを歩いているみたいだ。
 私は三年間一体誰と暮らしていたのだろう。最後に見た妻の姿。あれは妻ではないのなら誰なんだ。考えれば考えるほど背筋が凍る。
 困惑しているところに、妻が私に小包が届いていると言った。開けるよう指示をした。
 届いた箱の中には義眼と瓶の中にくり抜かれた目が入ってたそうだ。私以外、その瞳に映すなという意味なのか、小さな紙にこう書かれていた。

LOVE IS BLIND
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...