ドジな天使のせいで異世界転生したのでこの天使に仕返ししようとしたら幼馴染まで追いかけてきてこの世界で生き抜こうと思った件について

tai-bo

文字の大きさ
12 / 53

第12話 琢磨の覚悟

しおりを挟む
 一人ただずんでいる僧侶の女性を安心させるように肩に手を置くと、

「みんな!」
「なっ、琢磨!?」
「琢磨さん!?」

 驚く一同に琢磨は必死の形相でまくし立てる。

「早く撤退を! 今すぐに! このままじゃみんな無事ではすまない! だから早く!」
「こんなところで逃げられない。それよりちょうどよかった。ここは君も協力してくれ。君がいてくれば百人力だ!」
「そんなこと言ってる場合かっ!」

 琢磨はみんなを冷静にさせるためにも乱暴な口調で怒鳴った。何時《いつ》もは女たちに囲まれながらも適当に物事を流していた男がここまではっきり言ってくるタイプだとは思っていなかった。付き合いが他の者よりあるガブリエルと彩も琢磨の態度に目を見開いて驚いてる顔が横目で見えたがあえて気にしないで琢磨は続けた。

「あれが見えないのか!? みんなが勝手な行動するとその分、かえってみんなを危険にさらすんだ。自分一人ならまだいい。だが、自分たちの勝手な行動で仲間が死んだら取り返しがつかなくなる。少し落ち着いて冷静になれ」

 琢磨はいつも先頭で目立っている戦士の男の胸倉をつかみながら指を差した。
 その方向には魔法陣で新たに出現したゴブリンやウルフなどに囲まれ右往左往している後方にいた冒険者たちがいた。誰もが困難したように好き勝手に戦っている。効率的に倒せていないから敵の増援を未|《いま》だに突破できない。これまでのレベル上げとガブリエルと彩がうまくフォロしてるから今のところ被害も少ないが、それも時間の問題だろう。

「一撃で切り抜けるような大きな力が必要なんだ! みんなの恐怖を吹き飛ばして冷静にさせるしかない! だけどそれは俺一人じゃ無理だ! みんなで協力した一撃で目を覚ませるしかない! すこしは周りの状況も見てくれ!」

 呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げる後衛にいた冒険者たちを見ると前衛にいて好き勝手にやっていた冒険者たちは頭が冷えてきたのか、ぶんぶんと頭を振るとみんな琢磨に頷いた。

「わかった。今は撤退することが最優先だ! ガゼル団長! 先に――」
「下がれぇ――!」

 戦士の男が代表して「先に撤退します」とガゼル団長に言おうと振り替えた瞬間、ガゼル団長の警告が飛んできて、遂に凄まじい衝撃と共に障壁が砕け散った。
 暴風のように荒れ狂う衝撃波と共に、岩や石などが雨のように勢いよく降り注ぐ。  琢磨たちは各々の武器で捌いたりしている。後衛にいた者たちは反応が遅れたが、アザエルが咄嗟に前に出て大盾を掲げて防いだ。そして、運がいいことにゴブリンやウルフなどの魔物にことごとく当たって、ミノタウロス以外全滅した。新たな魔物が出ないうちに撤退するまたとないチャンスだろう。
 そして、衝撃で舞い上がった埃がミノタウロスの咆哮で吹き払われた。
 そこには、一番近いところにいたためか、倒れ伏し呻き声を上げるガゼル団長。衝撃波の影響で身動きが取れないようだ。しかもいくつかの岩などの破片が被弾したようで頭から血が出ている。もしかしたら脳震盪を起こしてるかもしれない。他の者たちは多少は被弾してる者もいたが行動には支障ないみたいだ。ガゼル団長の警告と離れたところにいたおかげだろう。

「ぐっ・・・・・・ナックル、ナザリー、時間を稼げるか?」

 ナックル? ナザリー? あいつらの名前か・・・・・・そういえば最初に自己紹介をしたな。俺、人の名前覚えるの苦手なんだよな。今更聞けないし、俺はあの二人の名前を心に刻んだ。ナックルは拳闘士であらゆる体術が得意な職業だ。頭にはバンダナを巻き、手には手甲をはめ、そこには魔法陣が刻んである。そうすることで自動的に祖の魔法を発動する仕掛けのようだ。
 ナザリーは日本刀のような刀を装備している女剣士だ。髪型はポニーテールで装備は胸に鎧を装着してるぐらいで目立つところには他の装備が見当たらない。おそらくスピードを活かすためだろう。

 そして、二人に聞いてるのが戦士であるアレクだ。光魔法が得意で装備も鎧にアームに兜、さらにマントと見た目が勇者みたいなやつでしかも神は金髪で目はブルーアイズの超イケメンだ。俺にしては珍しくこいつのことだけはすぐに覚えた。

 そんなアレクの問いに、苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る二人。ガゼル団長が倒れている以上自分たちが何とかする他ない。

「やってやらー!」
「・・・・・・やるしかないわね!」

 二人がミノタウロスに突進する。

「セシリー、ガゼル団長の治療を!」
「わ、分かったわ。ガブリエルさん、協力してください!」

 セシリーとはさっきの僧侶の女性のようだ。アレクの指示でセシリーが走り出し、後方をガブリエルがついて行った。琢磨は既にガゼル団長の元に行き、英雄のマントをかぶせてあらかた回復させていた。応急措置程度だがやらないよりはましだろう。
 前方を見るとアレクがてきぱきと指示を飛ばす。どうやら、人を動かすことに向いてるようだ。琢磨はあまりしゃべるのが得意じゃないので裏方に徹して様子をうかがっていた。

 その頃、ガゼル団長の治療に駆けつけたセシリーだが、容体を見てほとんど回復してるのを確認すると、回復魔法『ヒール』をかけると傷口がみるみる治っていった。
 回復魔法をかけ終わるとここまでのことをした琢磨に羨望の眼差しを送ったが前方を見ていた琢磨は気づく素振りもなかった。そんな様子を見ていたガブリエルは「まさか、セシリーは琢磨さんのことが・・・・・・」と考えたがそれ以上何も言わなかった。


 アレクは今の自分が出せる最大の技を放つための詠唱を開始した。

「天につかさどる大天使よ! 全ての邪悪を滅ぼし光を与えたまえ! 願わくばこの一撃で全ての罪を許したまえ! 【聖なる光】|《ほーりーあろう》」

 詠唱と共に真っ直ぐ突き出した聖剣から光の矢が橋を振動させ、地面を抉りながらミノタウロスへと直進する。
 ナックルとナザリーは、詠唱の終わりと同時に離脱している。二人ともボロボロだ。この短い時間だけで相当ダメージを受けたようだ。そんな二人の元へセシリーが駆けつけ、すぐに回復魔法をかける。
 一方、放たれた光の矢は轟音と共にミノタウロスに直撃した。光が当たりを塗りつぶす。衝撃でアレクたちがいる橋に大きく亀裂が入っていく。

「はぁはぁ、やったか・・・・・・」
「これでくたばってくれなかったらきついぜ」
「だといいけど・・・・・・」

 ナックルとナザリーは立ち上がるとアレクの傍に戻って、状況を見守っている。アレクは莫大な魔力を消費したようで肩で息をしている。先ほどの攻撃は、アレクが今現在のレベルで繰り出せる最強の技だ。残存魔力のほとんどが持っていかれた。背後では意識を取り戻したガゼル団長が起き上がろうとしている。

 そんな中、徐々に光が収まり、舞う埃が吹き払われる。
 その先には・・・・・・
 無傷のミノタウロスがいた。
 いつの間にか斧を前に構えて防御態勢を取っていて周りを風の膜が覆っていた。そして、斧の中心にある石が緑色に輝いていた。少しすると徐々に光が弱まっていき消えると、風の膜も消失した。どうやら、斧にはめ込まれてる石の仕業だしい。
 ミノタウロスは低い唸り声をあげ、魔物特有の赤黒い魔力を発しながら、アレクを射殺さんとばかりに睨んでいる。と、その直後、ミノタウロスがスッと斧を前にかがげると石がだんだん赤くなっていき灼熱化していく。そして、遂には斧から炎がマグマのように燃えたぎり温度が急上昇する。

「ボケっとするな! 死ぬぞ!」

 ガゼル団長の叫びに、ようやく無傷というショックから正気に戻ったアレクたちが身構えた瞬間、ミノタウロスが斧を上空に向けると魔法陣が現れ、そこから赤く燃えた岩が隕石のように落下した。
 アレクたちは咄嗟に横跳びで回避するが、着弾時の衝撃波をモロに浴びて吹っ飛ぶ。その衝撃で地面を何回かバウンドしてようやく止まった。その姿は満身創痍でとても戦える状態じゃない。
 ガゼル団長が駆け寄ってくる。

「お前ら、まだいけるか!」

 ガゼル団長が叫ぶように尋ねるもうめき声だ。やはり、相当なダメージを負ったようだ。
 ガゼル団長はセシリーを呼ぼうと振り返るとその視界に、駆け込んでくる琢磨を捕らえた。

「琢磨! アレクを担いで、セシリーかガブリエルの元に行け!」

 琢磨に指示を出すガゼル団長。
 アレクを担いでということは他二人を助ける時間はないのだろう。そんだけ二人が吹き飛ばされた場所は俺たちのいる場所から正反対のところに飛ばされている。即座に判断したガゼル団長は唇が切れるほど強く嚙み締めながら盾を構えた。ここを死地と定め、命を懸けて食い止めるつもりだ。
 だが、そんなガゼル団長の前に立つ者がいた。琢磨だ。ガゼル団長は一瞬目を見開いたが、すぐに冷静になり、

「・・・・・・やれるんだな?」
「ああ、任せてくれ」

 決然とした眼差しを真っ直ぐ向けてくる琢磨に、ガゼル団長は一瞬英雄を見たような気がした。それが幻でも構わないと後は琢磨に任せ、アレクを担いで引き下がった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...