奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)

Anastasia

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Part1

Б.д もう二度と会わない - 04

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「本当は、マスガタコグチの裏で、弓兵きゅうへいを待ち伏せさせたかったんですが、弓兵きゅうへいがいません」

「そうですね。余程、いくさ慣れしている部隊でなければ、弓兵きゅうへいなど作らないでしょう。ですが、枡形ますがた虎口こぐちの裏から、やりで突かせればよいのでは? それで、かなりの数の騎馬を、牽制することができますからね」

「ああ、その手がありましたが」
「ただ、この戦法には、少々、問題点がありますけれど」

「入り口で馬が山積みになって、入り口を塞いでは、敵兵が入ってこれないことでしょう?」
「ええ、そうです」

「そうなると、マルウマダシの中側で、こちら側の兵を潜ませておくしかありませんね」
「それでも、入り口が塞がれてしまえば、外で待機している味方の兵士が、孤立してしまいます」

弓兵きゅうへいがいれば、その問題はかなり解決されるんですが」

「部族連合は騎馬兵を使い、最初に襲撃させ、道を開けてから、歩兵の兵士達がなだれ込んでくる、というパターンを使っているようですから、側面攻撃で、騎馬を牽制するのではなく、中までおびき寄せて、広い場所で一気に叩き潰すべきでしょう」

「わかりました。まずは、邪魔な馬をよけなければなりませんね」

「ええ、そう思います。それから、歩兵が侵入してきた場合、側面からのやり攻撃は、有効的になるでしょう」
「わかりました。即席のやりも作ってもらいます」

「その時は、私が指揮に出ます」
「ダメです」

 即答だ。それも、全く態度も変わらず、話の継続で、そのまま出されたような雰囲気で。

「ですが、ここぞと言う時には、タイミングを見計らい指示を出す必要がありますよ」
「それなら、私が」

 傍に控えていたイシュトールが、口を挟んで来た。

 こう見えても、イシュトールは――元はノーウッド王国の兵士だった。戦の経験がある兵士だった。

 それに、ただの一介の兵士などではない。
 イシュトールは、小隊を指揮していた小隊長でもあったのだ。

 だから、タイミングを見計らい、指示が必要と言うのなら、イシュトールにだって、その経験はある。

「マスターが動かなくても、頼りになる人がいますから、マスターはそのまま休んでいてください」
「わかりました」

 この様子だと、フィロとイシュトールなら、絶対に、セシルをベッドから出さなさそうである(無理矢理、縛り付けたとしても)。

「おびき寄せるのには、どうしますか?」

「部族連合がせっかく開けた穴を塞ごうと、王国軍が躍起やっきになっているので、その隙を狙い、部族連合が、また、王国軍を殲滅せんめつしに来ることを期待しているんですが」

「確かに、ギリトル側の国境からの進撃は、予想外でしたからね」

「そうですね。でも、今回なら、捕縛した部族連合の兵士を、外にはりつけにして囮にすれば、必ず腹を立てて、自分達の味方の兵士を取り返しに来るでしょう」

「そう、でしょうね……」

 そんな――恐ろしいことを、つらっとして口にするフィロに、セシルも少々困り顔だ。

 こういう所では、フィロは徹底して冷酷になれるし、それをとも思っていない本人だけに、フィロを怒らせると――本当に後始末が悪い。

 セシルが眠っている間、駐屯地を離れたリアーガ達の前で、やはり、隠し穴があったらしい。
 おまけに、そこで潜んでいる部族連合の兵士達が50人程。

 今まで、誰一人、しっかりと部族連合の動きを確認させたり、把握していない無能ばかりが揃っていたことが、この戦自体の敗因要素だった。

 その弱点と問題点があまりに明らかな為、部族連合だって、かなり以前より、領壁りょうへきを破壊し、二つの国境の砦以外から、ブレッカへの進入路を確保していたくらいだ。

 すぐに、リアーガ達にも部族連合の兵士達が襲い掛かって来たが、今回は、あの無能集団ではなく、ちゃんと準備をして行ったセシル側の思惑に引っかかり、後ろで控えていたアトレシア大王国の騎士団数百人も、すぐにリアーガ達に参戦した。

 そして、その場で、50人ほどの部族連合の兵士達を制圧。

 ほぼ全滅させたに違いないが、もちろん、情報収集の為に、数人は捕虜として、生け捕りにしているのだ。

 それでまた、リアーガお得意の“チリペッパー”攻撃で尋問された部族連合の兵士達から、大体の状況は聞きだすことに成功した。

 今までの敗退結果から、やっと、一つ挽回ばんかいである。

 まだまだ、イーブンになるには、程遠い。

 今は、穴が開いている領壁りょうへき側を囲うように、待機させていた騎士団を並べ、あからさまに威嚇いかくさせている。

 その間に、ケルトの指示で、残りの騎士達は、大急ぎで大穴を掘りまくっている。


「ほら、さっさとしろよ。きびきび動け」


 騎士でも何でもない子供に命令されて、かなり頭に来ている騎士達だったが、王太子殿下から、厳しく命令されているだけに、これ以上、王国の恥をさらすわけにはいかない。

 それで、腹の立つ子供を前に、指示だけ聞いて体を動かし、あとは――その存在を無視しているような状態ではあったが、その程度の反抗など、ケルトなんか、気にも留めていない。

 元々、王国騎士団とは全くの無縁で、無関係な間柄で立場だ。まあ、ケルトも、いきなり見知りもしない余所者に命令されたら、それは、さすがに頭にくるものである。

 「命令すんなよっ」 と、そいつを蹴飛ばしていたことだろう。

 だから、腹の中で煮えくり返っているであろう騎士達でも、一応、王太子殿下の指示を守って、(渋々でも) 穴を掘って手伝いをしているので、ケルトも、騎士達をうるさく構っていない。

 領壁側はケルトが指揮し、領壁内では、ハンスが同じように騎士達を鞭打むちうちである。


「おい、さっさと動いてくれよ。仕掛けを作るのに、時間がかかるんだぜ」


 こちらも、ギロリ、程度の睨め付けはあったが、無言で、黙々と作業をしている騎士達だ。

 ハンスの役目は、“モンスターごっこ”で使う“鬼火”を作っている。

 ジャンとトムソーヤが、“モンスター”で使えそうなつたや草、枝などをかき集めている間、ハンスは縄を縛り付けながら、“鬼火”を連打できそうな仕掛けを作っている。

 領壁側で戦が始まったとして、万が一、南東側から攻められてきてもいいように、ハンス達が仕掛ける“モンスターごっこ”のトラップは、両方の砦を繋ぐ陸路側に仕掛けられている。

 これから夜半になれば、ジャンとリアーガ達に混ざった騎士達で茂みに潜み、部族連合の奇襲に備えるのだ。

 南東の砦への連絡が途絶えているだけに、コロッカルからやって来た両軍が、領壁りょうへき国境くにざかい側を押さえていようが、まだ、一体、どこにどれだけの部族連合の伏兵が潜んでいるのか、セシル達にも把握できていない。

 最初の奇襲は、300人近くの王国軍の兵士達が殲滅せんめつされた。
 そうなると、ギリトルから侵入してきた500人程の部族連合の兵士達が、ここら近辺を徘徊している恐れがある。

 それで、陸路側にも、今回は、しっかりと仕掛けを仕込んでおくのだ。

 今までの戦の情報から推測しても、今回の部族連合の数は1,000人ほど。部族連合の急進派が、国を求めての進撃・侵攻だ。

 何人の兵士が潜んでいるのかは知らないが、それでも、1,000人の敵兵が、一気に襲ってきた場合、穴の開いた領壁側の攻防と、陸路の攻防をしている間、南東のコロッカルの領軍の応援を呼びつけることができるよう、警戒はしている。

 まあ、それも全て、その場の状況次第だろう。

 もし、南東側の砦に半分の敵兵、そして、南のギリトル側、または、穴側で残っている半分だとしたら、騎士団の騎士達を全員投入すれば、まだこの地でも勝機はある。

 ここで勝利を勝ち取れば、残りの部族連合の最終決戦とて――アトレシア大王国側に、かなりの勝機が見えてくる。

 コロッカルの領軍は、元が王宮騎士団で、2,000人のうちの半数の騎士達は、全員、正規の訓練を受けた(立派な) 騎士達だ。役立たずの王国軍ではない。

 残りは、私営の騎士達や兵士達でも、コロッカルの指揮官がきちんと指揮をしているだけに、統率は取れている。

 だから、今回の戦で勝利が出れば――まだ、ブレッカを救う手立ては見えてくる。

 そんな思惑があり、王太子殿下だって、少々、無謀な計画とさえ言える子供達の作戦に、乗ることにしたのだ。

 その王太子殿下の思惑に、セシル達が気付いているのかいないのかは、王太子殿下も計り知れないことである。

 なにしろ、定義のつけられないに、戦の作戦を任せているくらいだから!

 おまけに、その子供達を統率しているのが、伯爵でもある。

 さすがに、狂った所業――としか言いようがない状況だ。


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